オープンデータ

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2007年9月のLinked Open Data
2011年9月のLinked Open Data Cloud
ライセンス条項の明示はオープンデータのキーとなる要素で、写真のようなアイコンはその目的に使われる。
「オープンデータ」を動画でシンプルに解説
(スマートフォンにて閲覧の場合はフリーなライセンスで提供されている[1]の動画参照)

オープンデータ(Open Data)とは、特定のデータが、一切の著作権特許などの制御メカニズムの制限なしで、全ての人が望むように利用・再掲載できるような形で入手できるべきであるというアイデアである。オープンデータ運動のゴールは、オープンソースオープンコンテントオープンアクセスなどの、他の「オープン」運動と似ている。オープンデータを支える哲学は古くから確立されているが(マートン・テーゼのように)、「オープンデータ」という言葉自体は、インターネットワールドワイドウェブの興隆、特に、data.gov英語版のようなオープンデータガバメントイニシアティブによって、近年一般的になってきた。

概要[編集]

オープンデータの概念は新しいものではない。しかし、形式的な定義は新しい。Open Definitionによる形式化は、「オープンデータとは、自由に使えて再利用もでき、かつ誰でも再配布できるようなデータのことだ。従うべき決まりは、せいぜい「作者のクレジットを残す」あるいは「同じ条件で配布する」程度である」という命題として要約できる[1]

オープンデータではよく、地図、ゲノムコネクトーム化合物、数学や自然科学の数式、医療のデータや実践、バイオサイエンス生物多様性などのテキストでない素材に焦点が当てられる。商業的な価値があったり、価値のある業績にまとめられることがあるため、よく問題が発生する。データのアクセスや再利用は、公共的にも私的にも組織によってコントロールされる。コントロールはアクセスや再利用への、アクセス制限、ライセンス、著作権、特許や利用料などを通じてなされる。オープンデータの支援者は、これらの制限は公共的な利益に反し、またこれらのデータは一切の制限や課金なしで手に入れられるべきだと主張している。さらに、データをさらなる許可を要求することなく再利用でき、とはいえ再利用(創造や派生的な成果のような)の形式がライセンスによってコントロールされてよいことが重要である。

オープンデータへのニーズの典型的な描写は、以下のようなものである。

多くの科学者が、科学データの世界的な入手可能性と分散されたプロセス、広いコラボレーションや、発見の深度とペースを加速させることを可能にするような技術を手にしたとき…データを探すのに忙しくなり、知識に関する同様に発達した技術の利用を妨げているということが、この歴史的瞬間には正しい皮肉を指摘した。

[2]John Wilbanks, VP Science, Creative Commons[要出典]

データの作者は、しばしば所有権、ライセンス、再利用について述べる必要性について議論しない。例えば、多くの科学者が、彼らの作業から生じた出版されたデータが彼らのコントロール下にあると考えず、論文誌を公刊するということは、暗黙にデータをコモンズに公表することだと考えている。しかし、ライセンスの不足は、データセットの状態を特定することを難しくし、オープンの精神によって提供されたデータの使用を制限するかもしれない。この不確かさのため、IEEEのような公的、私的な組織が、出ているデータを集め、著作権によって制限し、再販することも可能になっている。

Dan Connollyは2005年の"Semantic Web Data Integration with hCalendar and GRDDL"という講演で、2つの引用を載せている[3]

  • 「私のデータを返して」(Jon Bosak英語版、1997年頃)
  • 「私は、どのアプリケーションでも、顧客が入力したデータは顧客のものだとずっと信じていた」(Jeffrey Veen、2005年11月2日)[4]

オープンデータの主なソース[編集]

オープンデータはあらゆるソースを起源とできる。この節では、多くのオープンデータを公開する(もしくは、少なくとも公開が議論されている)いくつかのフィールドを列挙する。

科学におけるオープンデータ[編集]

科学データのオープン・アクセスの概念は、1957-58年の国際地球観測年の準備の中で、世界資料センターの形をとって、組織的に確立された[5]。国際科学連合評議会(現国際科学会議)は、いくつかの世界資料センターをデータの紛失のリスクを最小化してデータへの入手可能性を最大化するために設立し、さらに1955年にデータはマシン・リーダブルな状態で入手できるべきだと推奨した。[6]

オープンサイエンスデータ運動がインターネットよりずっと先行していたにもかかわらず、高速で遍在するネットワークはオープンサイエンスデータの文脈を著しく変えた。データを公開、取得することが、非常に低価格で時間がかからないようになったのだ。

2004年に、先進国を含むOECD加盟国の全ての科学担当大臣が、公的資金による研究で作成されたデータへのアクセスを増進すること、データへのオープンなアクセスの重要性などを謳う宣言に署名した[7]。加盟国のデータを提供する機関の要求と集中的な議論を受け、OECDは2007年に OECD Principles and Guidelines for Access to Research Data from Public Funding を発表した[8]。法的拘束力はないが加盟国政府への圧力となる soft law英語版 の一種である[9]

科学におけるオープンデータの例:

政府におけるオープンデータ[編集]

いくつかの国は、収集したデータの一部を配布するウェブサイトを作成した。それはオープンデータに向けた文化や、オープンガバメントデータを作成、整理するための、地方政府との共同作業のプロジェクトに向けたコンセプトである。200以上の地方、地域、国のオープンデータのカタログが、オープンな情報源のdatacatalogs.orgプロジェクト上で利用可能である。datacatalogs.orgは、世界中のデータカタログの網羅的なリストになることを目指している。

有名な例:

日本の現状[編集]

日本政府・国会の取り組み[編集]

日本では東日本大震災がオープンデータの機運が高まる契機になった[14][15]

2012年7月、IT総合戦略本部が「電子行政オープンデータ戦略」を策定し、オープンデータの取り組みを推進するために以下を定めた。

  • オープンデータの基本原則(積極的な公共データの公開、機械判読可能なデータ形式、営利目的を含む二次利用の促進等)
  • 政府が取組を推進し、独立行政法人、地方公共団体、公益企業等の取組に波及させる
  • 推進体制として官民による実務者会議の設置

また、IT総合戦略本部は2013年6月「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ」を定めた。[16] さらに、2013年6月25日、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議は「二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)」を決定し、政府ウェブページにおける著作権の扱いの考え方を定めた。

オープンデータ2.0[編集]

2016年5月20日、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は以下の内容を中心とした「オープンデータ2.0」を定めた。[17] オープンデータ2.0では以下の内容が定められている。

  • オープンデータにおける強化分野(集中取組期間、対象分野)の指定を行い、オープンデータサイクルを推進
  • 民間企業等による、協調領域な領域におけるオープンデータ公開の協力依頼
  • 地域をまたいだ共通分野の取り組みと、地域特性に応じた取り組みの促進

日本政府・国会による実施事項[編集]

  • 実務者会議の設置: 2013年3月28日、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部にてオープンデータ実務者会議(以下、実務者会議)の開催が決定され、電子行政オープンデータ戦略に基づく施策に関する調査及び検討する会議体の設置を行った。
  • G8でのオープンデータ憲章への合意: 2013年英国ロック・アーンで開催されたG8サミットにおいて、日本も含めた参加各国がオープンデータ憲章について合意した。政府はこれをうけ、2013年10月、日本のオープンデータ憲章アクションプランを策定。オープンデータの一元的ポータルサイトの作成などを定めた。
  • 政府標準利用規約の策定: 「政府標準利用規約」を参照
  • カタログサイトの作成: 2013年12月、データカタログサイトの試行版としてdata.go.jpが公開され、2014年10月、本格版として公開がスタートした。
  • ハッカソンの開催: オープンデータ活用の取り組みとしてハッカソンが2014年3月までに月平均約5件程度開催された[18]
  • 官民データ連携推進基本法: 2016年の国会にて議員立法として「官民データ連携活用推進基本法案」が提出され、12月7日の参議院本会議において可決、成立し、即日施行された。

地方自治体の現状[編集]

自治体では鯖江市が2012年1月に初めてオープンデータを提供した。都道府県では静岡県が2012年8月に初めてデータカタログを公開した[19][20]

その他には、神奈川県横浜市、千葉県千葉市、福島県会津若松市などが早い時期から取り組みを始めたとされる[21]。2017年2月現在、267の団体(都道府県、市区町村)[22]がオープンデータに取り組むようになっている。

福井県鯖江市は、市が保有するデータのXML形式やRDF形式での提供にいち早く乗り出し、「データシティ鯖江」として知られている。公共施設等のトイレやAEDの位置情報、地図、コミュニティバスの位置情報などをクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで提供するとともにアプリ開発コンテストも開催し、地元企業等によって多数のアプリが生み出されている。2014年にはWeb技術の標準化団体World Wide Webコンソーシアム(W3C)に全国の自治体で初めて加盟した[21]

神奈川県横浜市は市民主導の「横浜オープンデータソリューション発展委員会」とともに様々なワークショップや開発イベント等を開催している。2014年には地域の課題をさまざまなオープンデータを用いて可視化するとともに、「地域をよくする活動」を紹介したりクラウドファンディングで応援したりすることができるサイト「LOCAL GOOD YOKOHAMA」を立ちあげた[21]

千葉県千葉市・福岡県福岡市・奈良県奈良市・佐賀県武雄市が2013年に発足させた「オープンガバメント推進協議会」は2017年3月現在、12の地方公共団体と4つの企業・団体が加盟する組織となり、合同でアイディアコンテストなどを開催している[21]

岡山県の高梁川流域圏では、倉敷市など7市3町が連携し、データ整備・データ公開・データ活用を進めている。一般社団法人データクレイドルが運営する高梁川流域圏データポータルdataeyeでは、圏域のデータを分析した結果を図やグラフで表示するコンテンツと、データカタログが提供されている[23]

脚注[編集]

  1. ^ Open Definition home pagefull Open Definitionを参照。和訳はオープンデータとは何か?から
  2. ^ Science Commons » Towards a Science Commons
  3. ^ Semantic Web Data Integration with hCalendar and GRDDL Dan Connolly XML Conference & Exposition 2005 | From Syntax to Semantics (XML 2005) Atlanta, GA, USA16 November 2005
  4. ^ Polar Heart Rate Monitors: Gimme my data! by Jeffrey Veen(「Polar製心拍数モニター:私のデータを寄越せ」)2005年11月2日
  5. ^ Committee on Scientific Accomplishments of Earth Observations from Space, National Research Council (2008). Earth Observations from Space: The First 50 Years of Scientific Achievements. The National Academies Press. pp. 6. ISBN 0-309-11095-5. http://books.nap.edu/openbook.php?record_id=11991&page=6 2010年11月24日閲覧。. 
  6. ^ World Data Center System (2009年9月18日). “About the World Data Center System”. NOAA, National Geophysical Data Center. 2010年11月24日閲覧。
  7. ^ Science, Technology and Innovation for the 21st Century. Meeting of the OECD Committee for Scientific and Technological Policy at Ministerial Level, 29-30 January 2004 - Final Communique 2004年1月30日
  8. ^ OECD Principles and Guidelines for Access to Research Data from Public Funding April 2007
  9. ^ OECD Principles and Guidelines for Access to Research Data from Public Funding 英語版 2007年、7ページ
  10. ^ “Open Government Data Catalogues”. http://www.epractice.eu/en/news/340341 
  11. ^ “Open Government Data Catalogues”. http://opengovernmentdata.org/data/catalogues/ 
  12. ^ “Wikitalia ovvero la partecipazione civica dopo e oltre i referendum”. Libertiamo. (2011年10月21日). http://www.libertiamo.it/2011/10/21/wikitalia-ovvero-la-partecipazione-civica-dopo-e-oltre-i-referendum/ 2011年11月7日閲覧。 
  13. ^ “Brasil Launches Data Portal in April”. (2012年1月3日). http://epsiplatform.eu/content/brasil-launches-data-portal-april 
  14. ^ オープンデータをはじめよう ∼ 地方公共団体のための最初の手引書 ∼ 内閣官房情報通信技術総合戦略室平成27年8月3日
  15. ^ 災害情報はPDFだけでなくHTMLでも公開を、地方公共団体に通達
  16. ^ 総務省|平成26年版 情報通信白書|我が国政府におけるオープンデータの取組
  17. ^ 【オープンデータ 2.0】官民一体となったデータ流通の促進 ~課題解決のためのオープンデータの「実現」~ 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部2016年5月20日決定
  18. ^ オープンデータのビジネス展開に向けて 経済産業省 平成26年3月
  19. ^ 野村総合研究所 渡辺信一 国のオープンデータ政策と自治体のオープンガバメントに向けた取り組み -オープンデータの活用による自治体行政の展開に向けて- NRI パブリックマネジメントレビュー June 2014 vol.131
  20. ^ ふじのくにオープンデータカタログ 更新日:平成26年2月20日
  21. ^ a b c d 庄司昌彦 オープンデータの動向とこれから 情報の科学と技術. 2015, 65(12), 496-502.
  22. ^ オープンデータ|政府CIOポータル
  23. ^ データアイについて

関連フォーマット[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]