旅行代理店

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旅行代理店(りょこうだいりてん、: Travel agency)とは、交通宿泊などの要素から構成された旅行商品を、企画・実施、あるいは仲介して販売する会社のこと[1]

旅行会社(りょこうがいしゃ)とも呼ばれる。他の呼称として、旅行業者(りょこうぎょうしゃ)、旅行斡旋業者(りょこうあっせんぎょうしゃ)、ツーリストビューロー(: Tourist bureau)など。店舗を持たないオンライン旅行会社や、ビジネストラベルマネジメント対応の旅行会社に関しても、本項で記述する。

日本の旅行業における登録制度[編集]

日本の旅行業者には、観光庁長官[2]登録が必要な第1種旅行業、本社所在地の都道府県知事の登録が必要な第2種旅行業、第3種旅行業および旅行業者代理業者(旅行会社と旅行商品の代理販売契約を結んだ旅行代理店)がある。区分としては以下となる[3]

種別 取扱業務 基準資産 営業保証金 備考
第1種 国内・海外パッケージツアーおよび手配 3,000万円以上 7,000万円以上
第2種 国内のみのパッケージツアーおよび手配 700万円以上 1,100万円以上
第3種 手配のみ 300万円以上 300万円以上
旅行業者代理業者 1種もしくは2種・3種の旅行業登録のある旅行業者に委託された業務の範囲内のみ 基準なし 供託金なし

旅行業法によると、第1種、第2種、第3種旅行業を営む場合は一定額以上の財産的基礎(資本金・それぞれ3000万円以上、700万円以上、300万円以上)があることが求められており、また供託所にあらかじめ一定額を供託しなければならない。供託金(営業保証金)もそれぞれ最低7000万円、1100万円、300万円が必要となる[3]。なお、旅行業法第三章の定める旅行業協会日本旅行業協会または全国旅行業協会)に加入した事業者は、弁済業務保証金分担金として5分の1の金額を納付することにより、これに代えることができる[3]

法的には、各営業所に1名以上の「総合旅行業務取扱管理者、国内旅行業務取扱管理者」の資格を持つ者の選任と、営業時間中の常駐が必要となる[4]

なお、旅行を申し込む利用者が、これらのいずれにも登録していない無登録業者と契約した場合、トラブル発生時において、旅行業法その他の関係法令に基づく法的保護は受けられない。また、日本語のホームページを開設しているが日本国内に営業所を持たない海外の企業と契約した場合は、同様に法的保護の対象外となる[5]

第1種旅行業者は、観光庁のウェブサイトから確認が可能である[5]。第2種旅行業者・第3種旅行業者・旅行業者代理業者は、東京都大阪府等、各都道府県のウェブサイトで確認可能となっている[6]

標準旅行業約款[編集]

標準旅行業約款とは、観光庁長官及び消費者庁長官が定める旅行業者の標準普通約款である。[7]

構成[編集]

  • 募集型企画旅行契約の部
    • 第1章 総則
    • 第2章 契約の締結
    • 第3章 契約の変更
    • 第4章 契約の解除
    • 第5章 団体・グループ契約
    • 第6章 旅程管理
    • 第7章 責 任
    • 第8章 営業保証金
  • 受注型企画旅行契約の部
    • 第1章 総則
    • 第2章 契約の締結
    • 第3章 契約の変更
    • 第4章 契約の解除
    • 第5章 団体・グループ契約
    • 第6章 旅程管理
    • 第7章 責任
    • 第8章 営業保証金
  • 別紙 特別補償規程
    • 第1章 補償金等の支払い
    • 第2章 補償金等を支払わない場合
    • 第3章 補償金等の種類及び支払額
    • 第4章 事故の発生及び補償金等の請求の手続
    • 第5章 携帯品損害補償
  • 手配旅行契約の部
    • 第1章 総則
    • 第2章 契約の成立
    • 第3章 契約の変更及び解除
    • 第4章 旅行代金
    • 第5章 団体・グループ手配
    • 第6章 責任
    • 第7章 営業保証金
  • 渡航手続代行契約の部
  • 旅行相談契約の部

旅行会社のタイプ[編集]

従来型の旅行代理店[編集]

店舗を通じた旅行商品の販売を行う事業者。英語圏では、Traditional Travel Agency (TTA、伝統的旅行会社)と呼ばれる[8][9]

日本の場合、従来型の旅行代理店の業務としては、主に以下があげられる。

旅行会社の業務は、旅行商品の企画造成とその販売の2つの面を持つ。大手企業では両業務を共に行う企業が多いが、企画造成に特化して販売を提携企業に委託するホールセラー専業の企業もある[11]。これに対し、ホールセラーから受託された旅行商品を販売する企業はリテーラーと呼ばれる。「旅行代理店」と呼ばれる旅行会社の営業店舗は、リテールを専門としている[12]

旅行サイト全世界訪問数
(2016年6月、PC・モバイル合計)
サイト名 訪問数
トリップアドバイザー 3億6581万
ブッキングドットコム 3億2300万
Airbnb 1億3040万
エクスペディア 1億0642万
スカイスキャナー 7779万
トリバゴ 6244万
ホテルズドットコム 5623万
KAYAK 5186万
シートリップ 3727万
プライスラインドットコム 3400万
*シミラーウェブ調べ[13]
*訪問数の集計
*「※」はメタサーチ
旅行サイト国内訪問者数
(平成28年(2016年)6月、PC経由)
サイト名 訪問者数
楽天トラベル 1000万
じゃらんnet 910万
Yahoo!トラベル 574万
トリップアドバイザー※ 408万
ジェイティービー 395万
*ヴァリューズ調べ[14]
*ユニークユーザーの集計
*「※」はメタサーチ

日本の旅行業法の規定では、従来型の旅行代理店が販売する旅行商品は、募集型と受注型の企画旅行、および手配旅行に分類される。インターネットの普及以前は、遠隔地の宿泊施設や交通機関の手配は、旅行代理店を通さなければ困難とされていた。しかし、インターネットの普及以降、ウェブを利用して、個人で容易に手配が可能となったことから、旅行者が、旅行代理店を経由せず、宿泊施設や航空会社などと直接契約するケースが増加した。この影響から、日本の旅行業者及び旅行業者代理業者数は、1995年から2015年の間に、約4分の3に減少(旅行業者代理業者数は半減)している[15]

他産業と比較して、旅行業の収益性の低さが指摘されており[15]、このため、従来型の旅行代理店は、オンライン販売を併せて行う[15]と同時に、企画力の強化にシフトし、パッケージツアーの開発や販売に力を入れている場合が多い。価格以上にサービスの手厚さを求める需要層に向けて、テーマや目的を絞った特化型旅行商品の開発[16]や、富裕層[17]シニア[18]を対象とした高品質旅行商品の提供など、差別化されたサービスの強化が図られている。また、ジェイティービーなど大手企業を中心に国境を越えた事業展開も進められている[15]

オンライン旅行会社[編集]

オンライン販売に特化した企業で、英語圏を中心に、Online Travel Agency (OTA)と呼ばれる企業[1][19]

伝統的旅行代理店の淘汰が進んだアメリカ[1][15]をはじめとして、2010年代に旅行産業における主要プレイヤーとなっており、日本においても、楽天トラベルを運営する楽天じゃらんnetを運営するリクルートなど、従来型の旅行代理店と異なる企業が、旅行業者としての登録を行い[20]、旅行産業の中でウェイトを持つようになっている。世界的には、エクスペディアプライスライングループが、この分野の代表的企業となっている。また、各企業でオンライン販売される同内容の旅行商品を、企業の枠を横断して旅行者に提示するメタサーチ運営企業が存在感を高めており、世界的には、トリップアドバイザーが代表的企業となっている。

ビジネストラベルマネジメント[編集]

企業の出張業務を一元的に受注・管理し、出張費用の削減、経費管理、危機管理などのサービスを行う、ビジネストラベルマネジメント(Business Travel Management, BTM)対応の旅行会社が、欧米を中心に広がっている[1]。企業活動のグローバル化に伴い発達した事業形態であり[21]、一般企業が旅行業者として登録されたBTM対応のグループ企業(インハウス旅行会社と呼ばれる)を持つ場合[22]のほか、近年ではビジネストラベル専門のノウハウを持つ旅行会社が現れている。世界的には、カールソン・ワゴンリー・トラベルアメリカン・エキスプレスなどが、BTMを専門とする代表的企業となっている。

主な旅行会社[編集]

日本企業ランキング[編集]

平成27年(2015年)度の取扱額[23]によるランキングを示す。観光庁による集計[24][25]。取扱額は四捨五入表示であり、海外旅行外国人旅行・国内旅行の各部門の加算値が合計と一致しない場合がある。旅行業以外の部門(出版業・航空セールス業など)は含めない。

順位 企業名 取扱額合計 海外旅行部門 外国人旅行部門 国内旅行部門 備考
1 ジェイティービー(連結) 1兆5833億円 4336億円 750億円 10747億円 JTB東北JTB九州i.JTB等グループ15社合計(グループ中リテールを行う企業の集計)
2 KNT-CTホールディングス 5093億円 1441億円 154億円 3498億円 近畿日本ツーリストクラブツーリズム等グループ8社合計
3 楽天 4885億円 157億円 77億円 4652億円 オンライン旅行会社
4 エイチ・アイ・エス(連結) 4285億円 3451億円 240億円 593億円 オリオンツアー等グループ5社合計
5 日本旅行 4277億円 1206億円 310億円 2761億円
6 阪急交通社(連結) 3358億円 2011億円 22億円 1325億円 阪急阪神ビジネストラベル等グループ3社合計
7 JTBワールドバケーションズ 2206億円 2206億円 - - ホールセラー専業
8 ANAセールス 2050億円 221億円 21億円 1807億円 ホールセラー専業
9 ジャルパック 1795億円 563億円 0.2億円 1232億円
10 東武トップツアーズ 1481億円 338億円 62億円 1081億円

世界の旅行会社[編集]

伝統的旅行代理店

2016年の伝統的旅行代理店の規模を示す。数値は各社の年次報告書に拠る。

企業名 売上 本部所在国 備考
トゥイ(連結)[26] 171億8460万ユーロ(Turnover ドイツの旗 ドイツ ヌーベル・フロンティエール等グループ企業を含む
トーマス・クック・グループ[27] 78億1200万英ポンド(Revenue イギリスの旗 イギリス ネッカーマン等グループ企業を含む
オンライン旅行会社

2016年のオンライン旅行会社の規模を示す(収益=Revenue、総予約額=Gross Bookings、宿泊販売室数=Room Nights)。数値は各社の年次報告書に拠る。金額は米ドル表示。

企業名 収益 総予約額 宿泊販売室数 本部所在国 備考
プライスライングループ[28] 107.4億米ドル 681億米ドル 5億5660万室 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ブッキングドットコムアゴダ等グループ企業を含む
エクスペディア[29] 87.7億米ドル 724億米ドル 2億4600万室 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ホテルズドットコムトリバゴ等グループ企業を含む
シートリップ[30] 28.5億米ドル - - 中華人民共和国の旗 中国 スカイスキャナーを2016年12月買収
トリップアドバイザー[31] 14.8億米ドル - - アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ビジネストラベルマネジメント

2015年の売上(Sales)を示す。数値はTravel Weeklyのデータに拠る[32]米ドル表示。

企業名 売上 本部所在国 備考
アメリカン・エキスプレス・
グローバル・ビジネス・トラベル
300億米ドル アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 アメリカン・エキスプレスCertares LPの合弁企業
日本旅行と合弁企業設立
カールソン・ワゴンリー・トラベル 242億米ドル フランスの旗 フランス ジェイティービーと合弁企業設立
BCDトラベル 238億米ドル オランダの旗 オランダ
HRG 160億米ドル イギリスの旗 イギリス
FCMトラベル 134億米ドル オーストラリアの旗 オーストラリア

旅行代理店の起こり[編集]

大衆の旅行の起源として近世参詣をあげられることと関連して、日本の旅行代理店のルーツの一つとして、御師や先達などが挙げられる。

彼らは、社寺に所属する下級の神職僧侶などで、各社寺の布教のために村々に(信者団体)を組織し、信者を獲得していった。定期的に村を訪れ、社寺のお札を配ったり、教えを説教したりした。そして、村人が社寺に参拝する際には、彼らは案内人として社寺まで先導し、社寺に到着すれば宿泊先の斡旋や提供、旧所名跡の案内解説を行い、社寺参拝の取次ぎを行なった。この際の参拝者のもたらす収益は大きなもので、信者名簿は顧客リストとして重要視され、高額で取引されるようになり、また借金のかたともされた。

これらの制度は、明治に入り政府により廃止されたものの、近代大衆旅行の基本的な形が既に出来上がっていた。

世界的には、イギリストーマス・クック社が、近代的な意味での最初の旅行代理店とされる[33]

旅行代理店を利用するメリット・デメリット[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 観光産業の現状について (PDF)”. 観光庁 (2012年9月10日). 2015年1月1日閲覧。
  2. ^ 2008年9月以前は国土交通大臣2001年1月以前は運輸大臣
  3. ^ a b c 旅行業の登録制度の概要 (PDF)”. 観光庁. 2015年1月1日閲覧。
  4. ^ 旅行業法”. 観光庁. 2015年1月1日閲覧。
  5. ^ a b 旅行業・宿泊業関係情報(旅行業者ネガティブ情報含む)”. 観光庁 (2014年11月26日). 2015年1月1日閲覧。
  6. ^ 旅行業・通訳案内士 登録業者等リスト”. 公益財団法人 東京観光財団. 2015年1月1日閲覧。登録旅行業者の登録情報の公開について”. 大阪府. 2015年1月1日閲覧。
  7. ^ 旅行業法第十二条の三
  8. ^ JATA経営フォーラム2013開催報告「グローバル視点で強くなる! ~新たな価値創造に向けて~」”. 日本旅行業協会. 2015年4月11日閲覧。
  9. ^ 日本のオンライン旅行市場 (PDF)”. 電通 (2015年1月26日). 2015年4月11日閲覧。
  10. ^ 旅行業法第1章第二条
  11. ^ ホールセラーとは・用語集”. JTB総合研究所. 2016年8月21日閲覧。
  12. ^ リテーラーとは・用語集”. JTB総合研究所. 2016年8月21日閲覧。
  13. ^ [1]「tripadvisor.jp」「tripadvisor.com」など各地域で異なるドメイン名が使用されているサイトは、その合算値に拠る。なお、アクセス数が微少なドメインに関しては集計されていない。
  14. ^ ネットユーザー行動分析トレンドreport【2016夏の旅行】”. 株式会社ヴァリューズ (2016年8月9日). 2016年8月11日閲覧。
  15. ^ a b c d e 平成28年版 観光白書 (PDF)”. 観光庁. 2016年7月8日閲覧。
  16. ^ 特化型旅行商品に加えて、目的を絞った専門店舗を開設する場合もある。JTB首都圏、銀座に海外ウエディング旗艦店を開業”. トラベルビジョン (2013年3月26日). 2015年6月7日閲覧。
  17. ^ 富裕層の旅行、新旧モデルを理解して「本物」の提供を”. トラベルボイス (2013年11月27日). 2015年4月11日閲覧。
  18. ^ 70代に「ゆとり旅行」”. 讀賣新聞 (2012年10月31日). 2015年11月3日閲覧。
  19. ^ 旅行業界の役割と変化への挑戦”. 航空経営研究所. 2015年4月11日閲覧。
  20. ^ 楽天は第1種旅行業者としての登録、リクルートは第3種旅行業者としての登録。
  21. ^ 経営の最適化を実現するビジネストラベルマネジメント”. ダイヤモンド社 (2013年1月21日). 2015年4月11日閲覧。
  22. ^ 富士フイルムブリジストンなど多数。
  23. ^ 旅行業界における「取扱額」と「売上高」の関係に関しては以下を参照。旅行業の財務分析 (PDF)”. 明治大学. 2015年9月13日閲覧。
  24. ^ 平成27年度主要旅行業者旅行取扱状況年度総計(速報) (PDF)”. 観光庁 (2016年5月31日). 2016年8月21日閲覧。なお、同資料では、第1種・第2種旅行業者のみを集計対象としており、じゃらんnetを運営するリクルート(第3種旅行業者)などは集計対象外。
  25. ^ 記者発表資料(平成27年度総計)の一部訂正について (PDF)”. 観光庁 (2016年7月26日). 2016年8月21日閲覧。
  26. ^ Annual Report 2015/2016 (PDF)” (英語). TUI Group AG (2016年12月8日). 2017年3月31日閲覧。
  27. ^ Annual Report and Accounts 2016 financial statements (PDF)” (英語). Thomas Cook Group plc. 2017年3月31日閲覧。
  28. ^ Annual Report 2016 (PDF)” (英語). The Priceline Group Inc. (2017年2月27日). 2017年3月31日閲覧。
  29. ^ Annual Report 2016 (PDF)” (英語). Expedia Inc. (2017年2月10日). 2017年3月31日閲覧。
  30. ^ Quarterly Results” (英語). Ctrip.com International Ltd.. 2017年3月31日閲覧。
  31. ^ Annual Report 2016 (PDF)” (英語). TripAdvisor Inc. (2017年2月17日). 2017年3月31日閲覧。
  32. ^ Travel Weekly's 2016 Power List” (英語). Travel Weekly. 2016年7月8日閲覧。
  33. ^ Thomas Cook History” (英語). Thomas Cook Group plc (2014年). 2015年1月1日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

旅行業界全般を扱う情報サイト