エンハンストゲームズ
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エンハンストゲームズ(英:Enhanced Games)は、オーストラリアの実業家アーロン・デスーザの提唱で2026年初開催の競技会[1]。
背景
[編集]本大会は薬物の使用に関する国際競技連盟のルールを無視して開催され、第1回はアメリカ合衆国・ラスベガスで現在開催されている[2]。主に陸上競泳短距離種目や重量挙げが実施予定。一方でWADAやIOCなどは非難している[3][4]。
日程
[編集]第1回
[編集]アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスにあるリゾート・ワールド・ラスベガス特設会場で2026年5月24日開催。種目は以下の通り[5]。
- 陸上競技 : 100メートル競走、100メートルハードル、110メートルハードル。
- 競泳 : 50メートル自由形、100メートル自由形、50メートルバタフライ、100メートルバタフライ。
- 重量挙げ : スナッチ、クリーン&ジャーク
最終種目の50m自でクリスチャン・ゴロメエフが20秒81で世界水連公認世界記録を0.07上回り優勝25万ドルとボーナス100万ドルを確保[6]。他種目では世界記録を上回る種目は出なかった。
第1回大会終了後の反応
[編集]男子陸上競技100m走で優勝したフレッド・カーリーはドーピングを行わずに競技に臨んだが、「おいおい、もっとマシな結果を出さないと。もう少し努力して、あの『ブツ(薬物)』をもっとうまく使わないとな」と語った[7]。同じくドーピングを行わず女子100mを制したトリスタン・エブリンは、「これで証明されたわ。勝つためには化学の力以上のものが必要だってことがね」と述べた[7]。クリスチャン・ゴロメエフがドーピングを行い、かつ水泳統括団体によって禁止されている水着を着用して男子50m自由形の世界記録を0.07秒更新した際に、公式の世界記録保持者であるキャメロン・マケボイは自身のSNSにて「マジかよ!? その程度かよ!」と投稿した[8]。
数多くのメディアが第1回エンハンスト・ゲームズを失敗だったと評している[9]。ガーディアン紙でスポーツジャーナリストとして活動しているショーン・イングルは、競技のパフォーマンスは大半が平凡であり[10]、結果は期待外れだったと指摘した[7]。モーガン・キャンベルはCBCニュースの分析記事で、第1回エンハンスト・ゲームズにおけるパフォーマンス・教義結果の多くは国際大会では話題にもならず、スポーツ界で波紋を呼ばないレベルだったと指摘した[11]。キャンベルはさらに出場した男子選手のほとんどはエリートの高校生アスリート相手でも苦戦しただろうと付け加え、マイク・ブライアンが100mで記録した最下位のタイム(10秒87)について、「その年のトロント・カトリック教育委員会の男子上級生向け決勝レースであれば4位に入っていた程度の記録だ」とコメントした[11]。ドーピングを行っていない選手が優勝したことを受け、Awful Announcingのマット・ヨーダーは、これによってこの大会のそもそもの意義は何なのかという疑問が浮上したと述べた[12]。AP通信は、こうした結果について、パフォーマンス向上薬の効果と、このリーグに参加した選手のレベルの両方について疑問を抱かせるものだと報じた[13]。ショーン・イングルは、エンハンスト・ゲームズは今後5年以内に失敗に終わるだろうと予測し、その理由として運営の主導者たちは裕福で賢明だが、スポーツを心から大切にしているようには見えないからだと述べた[10]。またイングルは、エンハンスト・ゲームズの本当の狙いについて、自社製品は安全であり、人生を変えるものだと潜在的な顧客に納得させることにあると述べた[10]。エル・パイスのカルロス・アリバスは、このイベントを華やかな商業事業であり、スポーツ競技としては平凡なものと評し、またエンハンスト・ゲームズの根底にあるのは販売プラットフォームであり、ドーピングやそれが健康にもたらすリスクを軽視するものだと評した[14]。ニューヨーク・タイムズのヴィック・タファーは、このイベントの主目的はビジネス機会と視聴者へのサプリメント販売にあると指摘した[15]。MITテクノロジー・レビューのアミット・カトワラは、エンハンスト・ゲームズはもはやスポーツイベントというより、サプリメントを販売するための「客寄せ商品(ロスリーダー)」のように見えると指摘した[16]。MITテクノロジー・レビュー内で引用されたオスロ大学病院のステロイド専門家アストリッド・クリスティン・ビョルネベックは、ホルモンやペプチドその他の能力増強化合物を扱うオンライン・マーケットプレイスのように見えるものの前では、大会そのものが二の次のように思えてくる」と語った[16]。ABCニュースのサイモン・スメイルは、「バイオハッカー志望者に能力増強薬(ドーピング薬)を売ることを目指すブランドを宣伝するための、巨額の費用を投じた広告フェスティバルとしては、成功していたと評した[17]。
この第1回の開催結果を受けて、エンハウストグループの株価は70%下落した[9]。
サイモン・スメイルは、一部の選手にとってはこのイベントは出場によって得られる賞金自体が目的であったと述べた[17]。またスメイルは、ベン・プラウドのように競技レベルで最高の結果を得て成功していてもも金銭的な報酬を得られない選手がいると指摘した[17]。プラウドは2024年パリオリンピックで銀メダルを獲得した際に金銭的な報酬は一切なかったが、第1回エンハウストゲームでは52万2000ドルを獲得したが、これは彼が世界水泳選手権で2つの金メダルを獲得するまでの期間に受け取った2つの助成金を合わせた額をはるかに上回るものだったという[17]。モーガン・キャンベルは、ドーピングを行わずに出場して平凡なタイムながらも100m走で優勝して賞金25万ドルを獲得したトリスタン・エヴリンの起業家としての精神を称賛している[11]。ヘリオット・ワット大学エディンバラ・ビジネス・スクールのエイプリル・ヘニング博士は、多くのアスリートが成功に見合った報酬を得ることができず、家賃などの生活必需品の支払いに苦労している事があると指摘した[18]。その上で、エンハウストゲームをめぐる議論は薬物の使用に焦点が当てられるあまり、選手をゲームの参加へと駆り立てた経済的な現実・金銭的事情についての議論が欠落していたと述べた[18]。ヘニングは各競技のルール決定において選手がより大きく関与すべきだと主張し、またエンハウストゲームがこうしたアスリート達の金銭面の問題を自らの利益のために利用していると示唆し、大会運営会社について鋭いマーケティングの勘と、選手にインセンティブを与える意欲を持つ、製薬会社になろうとしている企業と評した[18]。
バーミンガム大学のスポーツ・運動心理学教授であるイアン・ボードリーは、医学誌のブリティッシュ・メディカル・ジャーナルにおいてエンハンスト・ゲームズを厳しく批判し、この大会が参加選手達の健康を危険にさらし、一般の人々による危険な物質の使用を助長するものであると指摘し、パフォーマンスの向上は限定的でありそれゆえにリスクを正当化することはさらに困難であると述べた[19]。更にボードリーは、大会主催者が危険な物質の使用を可能にするために、選手を科学的研究の被験者として登録するという管轄権や規制を回避する手法を用いたと指摘した[19]。またボードリーは、この科学的研究の手法は不十分であり得られた知見も限られていると述べ、科学的知見の進歩を謳う主張は誇張されており誤解を招くものであると批判した[19]。
結論としてボードリーは以下のように述べた[19]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ↑ 荒船, 清太. “「薬物解禁」スポーツ大会、来年開催へ トランプ氏長男支援 水泳で世界記録「更新」主張”. サンケイニュース. 2025年5月22日閲覧。
- ↑ “米・ドーピング公認大会「エンハンスド・ゲームズ」はアスリートを破壊に導く《人体実験》でしかない――五輪銀メダリストと医師が語る"怖さ"”. toyokeizai.net. 2025年6月12日閲覧。
- ↑ “薬物容認大会、阻止要請へ WADA、米当局に”. www.tokyo-np.co.jp. 2025年6月12日閲覧。
- ↑ “薬物大会「エンハンスト・ゲームズ」参加者は世界陸連の資格を停止 コー会長が明言”. www.sankei.com. 2025年6月12日閲覧。
- ↑ Event Details Enhanced Ltd、2025年7月1日閲覧
- ↑ “Missile bombs, clean athletes shine as late 'record' spares blushes at drug-fuelled Enhanced Games”. Fox Sports (2026年5月25日). 2026年5月25日閲覧。
- 1 2 3 “Enhanced Games claim ‘we changed the world’ but only one record broken and three clean athletes win”. theguardian.com (2026年5月25日). 2026年5月25日閲覧。
- ↑ “‘Seriously?! That’s all you got!’ – Cam McEvoy makes dig at Enhanced Games performances”. theguardian.com (2026年5月25日). 2026年5月25日閲覧。
- 1 2 “We watched the first Enhanced Games live in Las Vegas – this is what we learned”. theconversation.com (2026年6月4日). 2026年6月4日閲覧。
- 1 2 3 “After attending the Enhanced Games, I told its founder it will fail by 2031. This is why”. theguardian.com (2026年5月26日). 2026年5月26日閲覧。
- 1 2 3 “Enhanced Games showed you can't turn semi-retired athletes into world-record contenders”. cbc.ca (2026年5月28日). 2026年5月28日閲覧。
- ↑ “The Enhanced Games were a major flop”. awfulannouncing.com (2026年5月25日). 2026年5月25日閲覧。
- ↑ “Enhanced Games’ juiced athletes fizzle, break few records in Las Vegas”. latimes.com (2026年5月25日). 2026年5月25日閲覧。
- ↑ “The Enhanced Games: A night of hypertrophic delirium in a Las Vegas parking lot”. english.elpais.com (2026年5月26日). 2026年5月26日閲覧。
- ↑ “A day at the Enhanced Games, the controversial sporting experiment in a Vegas parking lot”. nytimes.com (2026年5月25日). 2026年5月25日閲覧。
- 1 2 “The “steroid olympics” were a circus—and a window into our culture”. technologyreview.com (2026年6月10日). 2026年6月10日閲覧。
- 1 2 3 4 “The sporting spectacle of the Enhanced Games was underwhelming but the financial rewards were not”. abc.net.au (2026年5月26日). 2026年5月26日閲覧。
- 1 2 3 “The Enhanced Games has shown exactly where we are failing elite athletes”. hw.ac.uk (2026年6月15日). 2026年6月15日閲覧。
- 1 2 3 4 “Enhanced Games: Bold claims, weak evidence, and serious risks”. bmj.com (2026年5月28日). 2026年5月28日閲覧。
外部リンク
[編集]- 公式ウェブサイト
- Athletes unite to create the Enhanced Games, a competitor to the Olympic Games: The first global sports event without drug testing, 2023 press release
- The Enhanced Games: An Olympics-style event WITHOUT drug-testing 😳, 2023 video at Talksport
- Swimmer James Magnussen Signs Up For Drug-Enhanced Games, 2024 The Project video