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エンシット化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

エンシット化(エンシットか、enshittification[注釈 1])は、二面市場のオンライン製品やサービス(プラットフォームエコノミー英語版)が、時間の経過とともに段階的に質を失っていく現象を指す。初期段階では、プラットフォームは利用者を獲得するために高品質なサービスを提供する。次の段階では、広告主などの法人顧客により多くの価値を与えるため、一般利用者向けのサービスを意図的に劣化させる。そして最終的には、株主の短期的利益を最大化するために、一般利用者と法人顧客の双方に対してサービスの質を低下させるに至る。

この語「enshittification」は、カナダの作家コリイ・ドクトロウが2022年11月に作った新語である[1]。彼が最初にこの現象を定義したわけではないが[2][3]、この呼称は急速に広まり広く受け入れられた。アメリカ方言学会英語版はこの語を2023年の「ワード・オブ・ザ・イヤー(今年の言葉)」に選出し、オーストラリアの『マッコーリー辞典英語版』も翌2024年に同様の選定を行った。さらに、『メリアム=ウェブスター辞典』およびDictionary.comにもこの語が掲載されている[4][5]

ドクトロウは、エンシット化を抑制するための方法として2つの方策を提唱している。1つは、プラットフォームがアルゴリズムではなく利用者の要求に応じてデータを送信すべきとする「エンドツーエンド原理」を維持すること。もう1つは、利用者がデータを失うことなくプラットフォームを離脱できるようにする「離脱する権利英語版」を保障することであり、そのためには相互運用性の確保が不可欠とされる。これらの方策は、オンラインプラットフォームの健全性と信頼性を保ち、利用者中心の設計と市場競争の促進を目的としている。

歴史と定義

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コリイ・ドクトロウは2022年、自身のブログ投稿でこの造語「エンシット化」(enshittification) を使い、広く普及させた。
「インターネットのエンシット化を止めるための大胆な計画」(An Audacious Plan to Halt the Internet's Enshittification) と題したコリイ・ドクトロウによる講演、2023年DEF CON英語版 31にて

「糞便」を意味する俗語に接尾辞「-fication」(~化)を付けた語は、2010年代後半から2020年代初頭にかけて散発的に使われており、その中には劣化していくソフトウェアシステムを指す用例も見られた。2018年の『ネイキッド・キャピタリズム』(Naked Capitalism) への投稿では、ボーイングが使用するソフトウェアの「crapification(クソ化)」に言及があり[6][7]、また歴史学者ウェンディ・A・ウォロソン英語版は、アメリカ経済史における安価な商品の氾濫を「encrappification(粗悪化)」と表現している[8][9]

しかし、サービス品質の低下を意味する語として「enshittification(エンシット化)」を明確に用い、その定義を体系化したのは作家のコリイ・ドクトロウが初めてである。彼は2022年11月のブログ投稿でこの概念を提唱し[10]、その記事は3か月後にSF雑誌『ローカス』に再掲載された[11]。さらに、2023年1月号の『WIRED』に再掲した別の投稿で[12]、この概念を次のように発展させている[13]

プラットフォームの死はこうして訪れる。最初はユーザーにとって良いものであり、次にビジネス顧客のためにユーザーを搾取し始め、最後にはビジネス顧客も搾取して、すべての価値を自社の利益に還元する。そして死に至る。私はこれを「エンシット化 (enshittification)」と呼ぶ。これは、プラットフォームが価値配分を容易に操作できること、「二面市場」という性質の組み合わせによって必然的に生じる現象である。プラットフォームは買い手と売り手の間に立ち、両者を人質に取りながら、取引の中で発生する価値のより大きな割合を自らのものにしていく。

2024年に『フィナンシャル・タイムズ』紙に掲載された論説で、ドクトロウは「エンシット化はあらゆる分野に及び、こうした“エンシット化した”プラットフォームは人類を“エンシット世 (enshittocene)”に取り残す」と述べている[14]

ドクトロウによると、新しいプラットフォームは新規ユーザーを獲得するため、採算を度外視して有用な製品やサービスを提供する。ユーザーが一度定着(ロックイン)すると、今度は供給者(サプライヤー)を引きつけるため、ユーザーベースへのアクセスを低価格で提供する。そして供給者もロックインされると、プラットフォームは利益の配分を株主へと移すようになる[15]。こうして株主の利益を最優先する段階に達すると、ユーザーと供給者がいずれもロックインされているため、プラットフォームには品質を維持する動機が失われる[12][16]

このようにエンシット化したプラットフォームは、仲介者として機能する過程で、サービス供給における独占(モノポリー)であると同時に、顧客に対して独占的購買者(モノプソニー)としても振る舞うことができる。なぜなら、代替サービスが技術的に存在しても、乗り換えコストの高さがユーザーや供給者の離脱を阻むためである[12]

ドクトロウはまた、エンシット化の進行は「トゥイドリング (twiddling)」と呼ばれる過程を通じて起こると説明している。これは、他の目的を顧みず、わずかな利益向上を狙ってシステムのパラメータを絶えず微調整し続ける行為を指すもので[17]、彼はこれをレントシーキング(経済的地代の追求)の一形態とみなしている[12]

この問題を解決するために、ドクトロウは次の2つの一般原則を提唱している。

  • エンドツーエンド原理の尊重 - ネットワークの役割は、「送信を望む送信者」から「受信を望む受信者」へデータを確実に届けることである。この考えをプラットフォームに当てはめると、ユーザーにはプラットフォームが提示したい情報ではなく、ユーザー自身が要求した情報が提供されるべきとする。たとえば、ユーザーは自分がフォローまたは購読したすべての投稿を、アルゴリズムの介在なしに閲覧できるべきであり、検索エンジンでは、検索クエリと完全に一致する結果がスポンサー付きの結果よりも優先されるべきである[18]
  • 離脱する権利英語版 (Right of Exit) - プラットフォームに不満を持つユーザーが、容易に他のサービスへ移行できるようにすること。ソーシャルメディアの場合、これは相互運用性 (interoperability) の確保を意味し、ユーザーのロックインやネットワーク効果による競争阻害に対抗する手段となる。デジタルメディアプラットフォームでは、ユーザーがデジタル著作権管理 (DRM) によって保護された購入済みコンテンツを失うことなく、別のプラットフォームへ移行できることを意味する[18]

2025年10月、ドクトロウは著書『Enshittification: Why Everything Suddenly Got Worse and What To Do About It』(ISBN 1836742223, 978-1836742227) を出版した[19]

受容と影響

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ドクトロウが提唱したこの概念は、オンラインプラットフォームにおける品質低下を理解するための分析枠組みとして、複数の学者やジャーナリストによって引用されている。「エンシット化」に関する議論は多くのメディアで取り上げられ、FacebookGoogleAmazonといった大手IT企業が、いかにしてユーザー体験を犠牲にして利益を優先するビジネスモデルへ移行したかを分析する報道も見られる[20]。この現象は、デジタルプラットフォームの健全性と品質を維持するために、規制介入や代替的な運営モデルが必要かどうかという議論を呼び起こしている[21]

アメリカ方言学会英語版は「enshittification」を2023年の「ワード・オブ・ザ・イヤー」に選出した[14][22]

また、オーストラリアの『マッコーリー辞典英語版』も同語を2024年の「ワード・オブ・ザ・イヤー」に選定した。これは、2006年の選定開始以来、委員会と一般投票の両方で選ばれた語句としては3例目となった[23]

一部の事例では、世論の強い反発がエンシット化の進行を逆転させることもある。2025年3月25日、ユニバーサル・オーディオ英語版 (Universal Audio, UA) は、自社のデジタル著作権管理 (DRM) 方針に対する大規模な反発を受け、iLokによるDRMポリシーを緩和した。UAは常時インターネット接続の要件を撤廃し、マシン単位またはUSBドングルベースの認証方式へ移行した。さらに、1つのキーで認証できるソフトウェアのインスタンス数を2から3に増やした。ユーザーはこれらの変更を歓迎し、「UAが利用者の声に耳を傾けてくれてうれしい」といったコメントを寄せている[24]

政治学者のヘンリー・ファレル英語版は、この概念をアメリカの国力全般——軍事ハードウェア、米ドル、衛星コンステレーションなど——にも応用している[25]

事例

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以下の事例は、報道や評論、研究において「エンシット化」の傾向を示す例として言及されたものである。これらの分析は必ずしも普遍的に受け入れられているわけではなく、概念の適用範囲や有効性については議論がある。

Airbnb

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Airbnbは、当初はホテルに代わる安価な宿泊手段として登場し、プラットフォームエコノミー英語版の代表的企業の一つとなった。しかし、その後の報道や評論では、ベンチャーキャピタルによる資金投入が減少すると、低価格を維持できなくなるプラットフォームビジネスの傾向が指摘されている。

左派系メディア『ジャコビン英語版』は、Airbnbが当初の理念とは対照的に、多くの物件で宿泊料金がホテルを上回るようになったと報じ、アメニティの不足、ホストによる追加料金や規則、品質管理のばらつきなどを問題視している[26]。また、CNNは2024年の調査報道で、Airbnbの一部宿泊施設において隠しカメラが発見された事例を取り上げ、プラットフォームの安全対策が十分でないとする批判を紹介している[27]

Amazon

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ドクトロウは自身の最初の投稿で、オンライン小売業大手Amazonの商慣行について取り上げている。彼によれば、同社は当初、商品を原価を下回る価格で販売し、Amazonプライム会員には送料無料を提供することで利用者を獲得した。顧客基盤が形成されると、より多くの販売業者がAmazonを通じて商品を販売するようになり、最終的には利益を確保するために手数料を追加し始めたという。ドクトロウは2023年時点で「販売価格の45%以上が各種手数料としてAmazonに支払われている」と指摘している[28]

また彼は、Amazon内での広告についても、販売業者が検索順位の優遇を求めて互いに入札し合う「ペイオラ英語版(賄賂)に似た仕組み」であると批判し、たとえば「猫用ベッド」を検索した場合、最初の5ページのうち半分が広告枠で占められていると述べている[12]

さらにドクトロウは、同社が運営するオーディオブック配信サービス「Audible」についても批判している。Audibleはオーディオブック市場の9割以上を占め、すべての作品にデジタル著作権管理 (DRM) を適用しているが、これにより利用者がプラットフォームを離脱すると購入済みの作品にアクセスできなくなると指摘した。ドクトロウは2014年、AmazonによるDRM適用を甘受することで得られるであろう収入を放棄し、自身のオーディオブックをAudible経由で販売しないことを決断した。それ以来、彼はDRMのない独自配信モデルを採用し、6作以上のオーディオブックを自主的に制作・発表している[29][30]

Facebook

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ドクトロウによれば、Facebookは利用者数が「クリティカル・マス(臨界規模)」に達するまでは良質なサービスを提供していた。しかし、ユーザーが一定規模に達すると、友人関係がサービス内に固定化されることで離脱が難しくなり、ユーザーが他のプラットフォームへ移行する際には友人全員を説得する必要が生じたという[12]

ドクトロウはまた、メディア企業がFacebook経由のトラフィックに依存するようになった後、Facebookがそれらの投稿をニュースフィードに加え、さらにアルゴリズムを調整して有料の「ブースト」投稿を優先表示するようになったと指摘している[12]。テクノロジー評論家のエド・ジトロン英語版も同様の見解を示しており、『ビジネスインサイダー』誌の記事の中で、Facebookが「スポンサー付き(または“おすすめ”)コンテンツをユーザーのフィードに絶えず流し込み、人々が見たい投稿をFacebookの判断による“関連性の高い”投稿の下に埋没させているようだ」と述べた[31]

さらにドクトロウは、Facebookの動画視聴回数を巡る「メトリクス論争」にも言及している。これは、Facebook上での動画の再生統計が実際よりも高く表示されていたとされる問題で、メディア企業が同社プラットフォームへの過剰投資を行い、その後倒産に追い込まれたケースもあったと報じられている。ドクトロウはこうした状況を踏まえ、Facebookを「末期的なエンシット化状態 (terminally enshittified)」にあると表現している[12]

Google検索

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ドクトロウは、Google検索を「エンシット化」の一例として挙げている。彼によれば、Googleは当初、精度の高い検索結果と最小限の広告によって市場を支配したが、その後、広告主を優遇するために広告の量を増やし、検索エンジン最適化 (SEO) や詐欺的手法が横行することで検索品質が低下したと指摘している[12][18][32]

また、彼はGoogleが「ジェダイ・ブルー英語版 (Jedi Blue)」と呼ばれる協定によって広告市場を操作し、自社の利益を優先したと主張している[12]。さらに、2023年1月に行われた約1万2000人の従業員削減[33]と、同時期に実施された「27年分の給与に相当する規模の自社株買い」を並行して行った点にも言及し[18]、これらをプラットフォームの短期的利益重視の一例とみなしている[12][18]

英紙『ガーディアン』のジョン・ノートンも、同様に「インターネット全体が“エンシット化”の過程にある」と論じ、Googleを含む主要テック企業が、利用者と広告主の双方を囲い込む構造を形成していると指摘している[34]

ドクトロウはまた、GoogleがAI検索チャットボットの開発を急いでいることにも批判的であり、これを「ユーザーが求める情報ではなく、AIが“見せるべき”と判断した結果を提示するツール」であると評している[12]

Netflix

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熾烈な「ストリーミング戦争」を経て、Netflixは2020年代初頭に主要な勝者として浮上した[35]。準独占的な地位を確立したのち、同社は価格の引き上げや広告付きプランの導入、パスワード共有の取り締まりといった施策を段階的に進めた[36]。2024年には、イギリスおよびカナダで最も安価だった広告なしプランの提供を終了した[37]

これらの変化について、テック系メディア『Techdirt』のカール・ボードは、「ストリーミングサービス全体が緩やかに“エンシット化”しつつある兆候」だと評しており、Netflixの料金改定をその一例として挙げている[36]

Reddit

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Reddit利用者らはr/placeでAPI課金に対し抗議した。「Spez」はReddit CEOスティーブ・ハフマンのユーザー名。

2023年、Reddit新規株式公開 (IPO) の初期申請を行った直後に、APIアクセスを有料化する方針を発表した。この変更により、Apollo英語版など多くのサードパーティー製アプリの運営コストが高騰し、サービス継続が困難となった[38][39][40]。CEOのスティーブ・ハフマンはこの措置を「AI企業による無断データスクレイピングへの対抗策」と説明したが、一部の報道ではIPO準備との関連性を指摘する見方も示された[38][40]。この結果、ユーザーの多くが公式アプリの利用を余儀なくされ、同社の収益構造がプラットフォーム依存型へと移行したとの分析もある[38][40][41]。方針転換に抗議して、Redditのモデレーターたちは掲示板を一時的に非公開化する「ブラックアウト運動」を展開したが、最終的にAPI変更は予定どおり実施された[40][42]

2024年9月には、Redditがモデレーターによるサブレディットの公開設定変更に制限を加える方針を発表した。この措置により、モデレーターはRedditスタッフの承認なしに「公開」から「非公開」へ切り替えることができなくなった。モデレーターの間では、この新方針が2023年のAPI抗議活動に対する報復的対応であるとの見方が広く共有された[43]

Twitter / X

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この用語は、2022年にイーロン・マスクTwitterを買収した後に起きた一連の変化を指すものとして用いられている[44][34]。これには、相互運用ソフトウェアを排除するためのAPIアクセス制限、プロフィールに競合サービス(Mastodonなど)のハンドル名を記載したユーザーの一時的凍結、ログインなしでサイトを閲覧する機能の制限などが含まれる。その他の変更点として、1日に閲覧できる投稿数の制限(レートリミット)の導入、有料サブスクリプション「Twitter Blue」(のちに「X Premium」へ改称)[44]、およびモデレーション体制の縮小が挙げられている[45]

報道によれば、マスクは自らの投稿を他の投稿よりも優先表示されるようアルゴリズムを変更させ、2023年2月には一部ユーザーのフィードが彼の投稿で埋め尽くされる状態となった[46]。2024年4月には、新規ユーザーが投稿機能を利用するために料金を支払う必要があると発表された[47]

これらの方針転換により、広告収入は大幅に減少したと報じられている。ガザ紛争中には、プラットフォーム上での反ユダヤ主義イスラム嫌悪を含むヘイトスピーチの増加が報告され、いくつかの組織が広告出稿を停止した[48]。『ニューヨーク・タイムズ』が入手した2023年後半の内部文書では、広告撤退による損失が年末までに7500万ドルに達すると予測されていた[49]。マスクは2023年11月29日のインタビューで、サイトから撤退した広告主に対し「Go fuck yourself(くそ食らえ)」と発言した[50][51]。2024年8月までに、同社の収益はマスクによる買収前と比較して84%減少した[52]

報道各社は、こうした変化の結果として、多くのユーザーが新興プラットフォーム「Bluesky」へ移行したと伝えている[53][54][55]

Uber

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テクノロジー評論家のイーサン・ザッカーマンは、ライドシェアアプリ企業Uberの事例を「エンシット化」の一形態として挙げている[56]。彼によれば、同社はタクシーメダリオン英語版などの地域的な認可制度を回避しつつ、ベンチャーキャピタルからの資金で配車料金を補助することで、人工的に低価格を維持し、市場シェアを拡大したという。さらに、競合のLyft複占状態を確立したのちには、需要に応じて料金を変動させるダイナミック・プライシングを導入し、利用者の料金を引き上げる一方で、運転手への報酬も動的に調整するようになったと述べている[56]

Unity

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2023年に提案され、のちに撤回されたUnityゲームエンジンのライセンスモデル変更は、業界誌『Gameindustry.biz』によって「エンシット化」の一例として取り上げられた。同誌によると、この変更は数年来開発が続けられていた既存プロジェクトにも遡及的に適用され、開発者とエンドユーザー双方に不利益をもたらすとともに、手数料を引き上げる内容であった[57]。Unityエンジン自体は二面市場に直接該当しないが、同社がアプリ内課金システムなどのモバイル向け基本プレイ無料サービスを開発者に提供しているという事業構造に関連した動きとみなされている[58]

提案発表後、多くのゲーム開発者がUnityの方針に反発し、高い乗り換えコストを伴うにもかかわらず、他のエンジンへの移行を検討・表明した。ゲームデザイナーのサム・バーロウ英語版 は、この料金体系を批判する際に明確に「エンシット化」という表現を用いた[59]。この反発を受けて、2024年にはゲームジャムにおけるUnityエンジンの使用率が急速に低下した。グローバルゲームジャムにおけるUnityの使用率は、前年の61%から36%へ減少し、GMTK Game Jam英語版でも同様の傾向が報告された[60][61]

マッチングアプリ

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マッチングアプリ市場は、一部の報道や研究で「エンシット化」の例として取り上げられている。これは、アプリの表向きの目的である「利用者同士を結びつけること」と、運営側が「利用者を有料会員として長期間維持しようとする動機」との間に矛盾が生じるためだとされる。米国公共ラジオ局NPRのグレッグ・ロサルスキーは、この構造的矛盾が「利用者を独身のまま留めることで収益を得る」という倒錯したインセンティブ英語版 (perverse incentive) を生み出し、収益化が支配的になるにつれてサービス全体の質が低下していく傾向があると報じている[62]

また、経営学者セバスティアン・フォイクトとオリバー・ヒンツによる二面市場の数理モデル分析では、アプリ運営者にとって「利用者に最適とはいえない体験を提供することが収益上有利となりうる」と示唆されている[63]

関連項目

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脚注

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出典

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注釈

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  1. ^ 別名:crapification(クラップ化)、platform decay(プラットフォーム腐敗)

関連文献

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