エリーザベト・シュヴァルツコップ
| エリーザベト・シュヴァルツコップ | |
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1961年 | |
| 基本情報 | |
| 生誕 | 1915年12月9日 |
| 出身地 |
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| 死没 |
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| 学歴 | ベルリン音楽大学 |
| ジャンル | クラシック音楽 |
| 職業 | 声楽家(ソプラノ) |
エリーザベト・シュヴァルツコップ(Olga Maria Elisabeth Frederike Schwarzkopf, 1915年12月9日 - 2006年8月3日)は、ドイツのソプラノ歌手[1]。ドイツ・オーストリアのオペラと歌曲における優れた歌唱で知られる。
経歴[編集]
プロイセン王国ポーゼン州(現ポーランド、ヴィエルコポルスカ県)のヤロチン(独:Jarotschin, 波:Jarocin - ロック・フェスティヴァルで有名)で生まれ、ベルリン音楽大学で学んだ。最初はコントラルトであったが、後に歌手で名教師のマリア・イーヴォギュンに師事し、ソプラノに転向した。1938年、ベルリン・ドイツ・オペラで『パルジファル』の花の乙女を歌い、デビューした。1943年に当時ウィーン国立歌劇場の総監督だったカール・ベームに認められたため、同歌劇場と契約し、コロラトゥーラ・ソプラノとして活躍を始めた。
第二次世界大戦後、後に夫となるHMV/EMI/英コロムビアレコードの名プロデューサー、ウォルター・レッグと出会った。レッグは『セビリアの理髪師』のロジーナを歌うエリーザベトを聴き、即座にレコード録音の契約を申し出た。しかし、当時から完全主義者だった彼女がきちんとオーディションをするよう望むと、レッグは厳しいオーディションを行った。ヴォルフの『誰がお前を呼んだのか』(Wer rief dich denn?:『イタリア歌曲集』中の1曲)を繰り返し様々な表情で歌わせるというもので、これを1時間以上も続けたという。居合わせた指揮者カラヤンはあまりの執拗さに、レッグに対し「あなたは余りにもサディスティックだ」と言い置いて立ち去った。しかし、シュヴァルツコップはレッグの要求以上の才能を見せ、2人はその夜EMIへの専属録音契約を交わした。それ以来レッグは彼女のマネージャーと音楽上のパートナーを務め、1953年に2人は結婚した。
当初は彼女の声質により、ブロントヒェン(『後宮からの誘拐』)やツェルビネッタ(『ナクソス島のアリアドネ』)などコロラトゥーラの役を歌っていたが、レッグの勧めもあって、次第にリリックなレパートリー、すなわちアガーテ(『魔弾の射手』)や伯爵夫人(『フィガロの結婚』)などに移行していった。 バイロイト音楽祭やザルツブルク音楽祭にも出演し、ベーム以外にもカラヤンやフルトヴェングラーともしばしば共演した。1947年にはイギリスのコヴェント・ガーデン王立歌劇場に、1948年にはミラノ・スカラ座に、1964年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビューし、そのほか各地の歌劇場で歌い、あるいは歌曲のリサイタルを行った。 1952年には元帥夫人(『ばらの騎士』)をスカラ座においてカラヤンの指揮で歌い、成功を収めた。以来、この役は彼女を代表する役柄として知られるようになった。1960年には映画(ライブ録音をもとに、映像は舞台上で別途再現撮影することで鮮明さを確保)も制作され、今なお名作としてDVDなどで親しまれている。
オペレッタの録音にも非常に熱心で、オットー・アッカーマンとカラヤン(『こうもり』のみ)の指揮のもと、全曲録音6点とアリア集を残し、EMIの名物シリーズの礎を築いた。『メリー・ウィドウ』はマタチッチ指揮でステレオ再録音も行った。
R.シュトラウスやヴォルフの歌曲録音は高く評価された。
他人を誉める事は少ない。しかしながら、フィッシャー=ディースカウを「神のような存在」、白井光子とハルトムート・ヘルのリート・デュオを「世界最高の音楽家夫婦」と賛辞を送っている。フィッシャー=ディースカウとは理知的な歌唱、技術の高さ、広範なレパートリーでドイツ声楽界をリードした業績などが男女の双璧といわれるが、ドイツ語に強い誇りとこだわりを持つ点も共通している。言葉のニュアンスをじゅうぶん理解せずに歌う行為を嫌い、自身も外国語の歌唱には比較的慎重である。
シュヴァルツコップは1976年に歌劇場での現役を退くとともに、歌曲リサイタル(1979年引退)と後進の指導に力をいれた。1992年、イギリス女王エリザベス2世は、シュヴァルツコップにDBE(Dame Commander of the Most Excellent Order of the British Empire)の称号(ナイト爵に相当し、女性に与えられる)を授与した。
2006年8月3日、オーストリア西部のフォアアールベルク州シュルンスの自宅で死去。死因は不明。90歳だった。
代表的なレパートリー[編集]
オペラ[編集]
- モーツァルト : 『フィガロの結婚』の伯爵夫人、『ドン・ジョヴァンニ』のエルヴィーラ、『コジ・ファン・トゥッテ』のフィオルディリージ
- ヴェルディ : 『ファルスタッフ』のフォード夫人
- R.シュトラウス『ばらの騎士』の元帥夫人、『カプリッチョ』の伯爵夫人
歌曲[編集]
(作曲者名のみ)
など
ディスコグラフィ[編集]
オペラ・オペレッタ全曲[編集]
- 『フィガロの結婚』(1950、コロムビア=EMI)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏:エーリッヒ・クンツ(フィガロ)、イルムガルト・ゼーフリート(スザンナ)、ジョージ・ロンドン(アルマヴィーヴァ伯爵)、シュヴァルツコップ(伯爵夫人)、セーナ・ユリナッチ(ケルビーノ)、エリーザベト・ヘンゲン(マルチェリーナ)
- 『ディドとエネアス』(1952、HMV=EMI)ジェレイント・ジョーンズ指揮マーメイド管弦楽団演奏:キルステン・フラグスタート(ディド)、シュヴァルツコップ(ベリンダ)
- 『メリー・ウィドウ』(1953、コロムビア=EMI)オットー・アッカーマン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(ハンナ)、エーリッヒ・クンツ(ダニロ)、ニコライ・ゲッダ(カミーユ)、エミー・ローゼ(ヴァランシェンヌ)
- 『ヘンゼルとグレーテル』(1953、コロムビア=EMI)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:エリーザベト・グリュンマー(ヘンゼル)、シュヴァルツコップ(グレーテル)、ヨーゼフ・メッテルニヒ(ペーター)
- 『微笑みの国』(1953、コロムビア=EMI)オットー・アッカーマン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(リーザ)、ニコライ・ゲッダ(スー・チョン)、エーリッヒ・クンツ(グストル)、エミー・ローゼ(ミー)
- 『ウィーン気質』(1954、コロムビア=EMI)オットー・アッカーマン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:ニコライ・ゲッダ(ツェドラウ伯爵)、シュヴァルツコップ(ガブリエーレ)、エーリッヒ・クンツ(ヨーゼフ)、エリカ・ケート(フランツィスカ)、エミー・ローゼ(ペピ)
- 『ヴェネツィアの一夜』(1954、コロムビア=EMI)オットー・アッカーマン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:ニコライ・ゲッダ(グイド)、シュヴァルツコップ(アンニーナ)、エミー・ローゼ(チボレッタ)
- 『コジ・ファン・トゥッテ』(1954、コロムビア=EMI)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(フィオルディリージ)、ナン・メリマン(ドラベッラ)、リーザ・オットー(デスピーナ)、レオポルド・シモノー(フェルランド)、ロランド・パネライ(グリエルモ)、セスト・ブルスカンティーニ(ドン・アルフォンソ)
- 『ナクソス島のアリアドネ』(1954、コロムビア=EMI)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(アリアドネ)、イルムガルト・ゼーフリート(作曲家)、リタ・シュトライヒ(ツェルビネッタ)、ルドルフ・ショック(バッカス)、ヘルマン・プライ(道化師)
- 『ジプシー男爵』(1954、コロムビア=EMI)オットー・アッカーマン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:ニコライ・ゲッダ(シャーンドル)、シュヴァルツコップ(ザッフィ)、ヘルマン・プライ(ホモナイ伯爵)、エーリッヒ・クンツ(カールマーン)、エリカ・ケート(アルゼーナ)
- 『こうもり』(1955、コロムビア=EMI)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:ニコライ・ゲッダ(アイゼンシュタイン)、シュヴァルツコップ(ロザリンデ)、ヘルムート・クレプス(アルフレード)、リタ・シュトライヒ(アデーレ)
- 『バグダードの理髪師』(1956、コロムビア=EMI)エーリヒ・ラインスドルフ指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(マルジアーナ)、ニコライ・ゲッダ(ヌレッディン)、ヘルマン・プライ(カリフ)
- 『ファルスタッフ』(1956、コロムビア=EMI)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:ティート・ゴッビ(ファルスタッフ)、ルイジ・アルヴァ(フェントン)、ロランド・パネライ(フォード)、ニコラ・ザッカリア(ピストーラ)、シュヴァルツコップ(アリーチェ)、アンナ・モッフォ(ナンネッタ)、フェドーラ・バルビエーリ(クイックリ―夫人)、ナン・メリマン(メグ)
- 『賢い女』(1956、コロムビア=EMI)ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(賢い娘)、ヘルマン・プライ(第2の浮浪者)
- 『ばらの騎士』(1956、コロムビア=EMI)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(元帥夫人)、クリスタ・ルートヴィヒ(オクタヴィアン)、テレサ・スティッチ=ランドール(ゾフィー)、オットー・エーデルマン(オックス男爵)、エバーハルト・ヴェヒター(ファニナル)、ニコライ・ゲッダ(イタリア人歌手)、リューバ・ヴェリッチュ(マリアンネ)
- 『トゥーランドット』(1957、コロムビア=EMI)トゥリオ・セラフィン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団演奏:マリア・カラス(トゥーランドット)、エウジェニオ・フェルナンディ(カラフ)、シュヴァルツコップ(リュー)、ニコラ・ザッカリア(ティムール)、マリオ・ボリエッロ(ピン)、ピエロ・デ・パルマ(ポン)
- 『カプリッチョ』(1958、コロムビア=EMI)ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(マドレーヌ)、ニコライ・ゲッダ(フラマン)、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(オリヴィエ)、ハンス・ホッター(ラ・ロッシュ)、クリスタ・ルートヴィヒ(クレロン)、アンナ・モッフォ(イタリア人歌手)
- 『ドン・ジョヴァンニ』(1959、コロムビア=EMI)カルロ・マリア・ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:エバーハルト・ヴェヒター(ドン・ジョヴァンニ)、ジョーン・サザーランド(ドンナ・アンナ)、ルイジ・アルヴァ(ドン・オッターヴィオ)、シュヴァルツコップ(ドンナ・エルヴィーラ)、ジュゼッペ・タッデイ(レポレッロ)、ピエロ・カプッチルリ(マゼット)、グラツィエラ・シュッティ(ツェルリーナ)
- 『フィガロの結婚』(1960、コロムビア=EMI)カルロ・マリア・ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:ジュゼッペ・タッデイ(フィガロ)、アンナ・モッフォ(スザンナ)、エバーハルト・ヴェヒター(アルマヴィーヴァ伯爵)、シュヴァルツコップ(伯爵夫人)、フィオレンツァ・コッソット(ケルビーノ)、ピエロ・カプッチルリ(アントニオ)
- 『メリー・ウィドウ』(1962、HMV=EMI)ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(ハンナ)、エバーハルト・ヴェヒター(ダニロ)、ニコライ・ゲッダ(カミーユ)、ハニー・シュテフェク(ヴァランシェンヌ)
- 『コジ・ファン・トゥッテ』(1962、HMV=EMI)カール・ベーム指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:シュヴァルツコップ(フィオルディリージ)、クリスタ・ルートヴィヒ(ドラベッラ)、ハニー・シュテフェク(デスピーナ)、アルフレード・クラウス(フェルランド)、ジュゼッペ・タッデイ(グリエルモ)、ヴァルター・ベリー(ドン・アルフォンソ)
- 『魔笛』(1964、HMV=EMI)オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団演奏:ニコライ・ゲッダ(タミーノ)、ヴァルター・ベリー(パパゲーノ)、グンドゥラ・ヤノヴィッツ(パミーナ)、ルチア・ポップ(夜の女王)、シュヴァルツコップ(第一の侍女)、クリスタ・ルートヴィヒ(第二の侍女)
- 『ホフマン物語』(1964年、HMV=EMI)アンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団演奏:ニコライ・ゲッダ(ホフマン)、ジャンナ・ダンジェロ(オランピア)、シュヴァルツコップ(ジュリエッタ)、ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス(アントニア)、ジョージ・ロンドン(コッペリウス)、エルネスト・ブラン(ダペルトゥット)
脚注[編集]
- ^ 湾岸戦争時の米中央軍司令官ノーマン・シュワルツコフ陸軍大将は彼女の甥と言われているが、エリーザベトに兄弟姉妹はないので、これは都市伝説である。
参考文献[編集]
- 『レッグ&シュヴァルツコップ回想録 レコードうら・おもて』(原題 : On and Off the Records )シュヴァルツコップ著、河村錠一郎訳、1986年
音楽之友社 ISB4-276-20352-X C1073 \2800E 他