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エマス国立公園

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
世界遺産 セラード保護地域:
ヴェアデイロス平原国立公園とエマス国立公園
ブラジル
エマス国立公園
エマス国立公園
英名 Cerrado Protected Areas: Chapada dos Veadeiros and Emas National Parks
仏名 Aires protégées du Cerrado : Parcs nationaux Chapada dos Veadeiros et Emas
面積 65514.726563 ha
登録区分 自然遺産
IUCN分類 II
登録基準 (9),(10)
登録年 2001年
座標 南緯18度05分 西経52度55分 / 南緯18.083度 西経52.917度 / -18.083; -52.917座標: 南緯18度05分 西経52度55分 / 南緯18.083度 西経52.917度 / -18.083; -52.917
公式サイト 世界遺産センター(英語)
地図
エマス国立公園の位置(ブラジル内)
エマス国立公園
エマス国立公園の位置(ゴイアス州内)
エマス国立公園
使用方法表示

エマス国立公園ポルトガル語: Parque Nacional das Emas)は、ブラジルにおける国立公園の1つであり、2001年ユネスコ世界遺産に登録された。登録名は、「セラード保護地域:ヴェアデイロス平原国立公園とエマス国立公園」である。

ブラジル中西部の州であるゴイアス州に位置し、範囲は、南緯17度49分から18度28分、西経52度39分から53度10分に広がる[1][2]

エマス国立公園はブラジル最後にして最大規模を誇るセラードの一つであり、本来のセラード生態系の約10万ヘクタールからなる土地に、開けたセラード(サバンナ)、セラダン英語版、沼沢地、森林、河谷林英語版、開けた原野といった環境が見られる[3]。気候は湿潤熱帯性で夏が多湿、冬が乾燥し、ケッペンの気候区分でいう Aw(サバナ気候)である[2]。年間降水量は1200–2000ミリメートルで10月から3月にかけてに集中し[4]、年間平均気温は24.6℃である[2]。公園の周囲は農地に囲まれており、いわばセラードの植生を保護する「島」の状態となっている[5]。公園の主な水源はフォルモーゾ川Formoso)とジャクバ川Jacuba)という2つの川である[5]

ここでは、典型的なセラードの生態系を見ることが可能である。40℃を超える暑さと厳しい乾燥のため、生育できる植物は限られ、ほとんどがイネ科の草である。灌木が多いサバンナが広がり、そこはシロアリの巣となっていることが多い。

国立公園の名前となっている「エマス」とは、ポルトガル語でレア(アメリカ・レア)を意味している。

生物相

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動物相

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哺乳類

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パンパスジカ Ozotoceros bezoarticus (Linnaeus, 1758)

2002年に発表された論文によると、エマス国立公園とその近隣地域において86種の哺乳類の存在が記録され、その中にはヤブイヌSpeothos venaticus (Lund, 1842))やアメリカヌマジカBlastocerus dichotomus (Illiger, 1815))といった希少種も含まれていた[6]。公園の貴重な哺乳類としては、他にコロコロLeopardus colocola (Molina, 1782))やピューマPuma concolor (Linnaeus, 1771)[1]タテガミオオカミChrysocyon brachyurus (Illiger, 1815))、オオアリクイMyrmecophaga tridactyla Linnaeus, 1758)、オオアルマジロPriodontes maximus (Kerr, 1792))が挙げられる[7]

鳥類

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レア
アナホリフクロウ

バードライフ・インターナショナルによると、重要野鳥生息地および生物多様性重要地域: Key Biodiversity Area; KBA)の基準を満たす鳥類の個体群として以下のものが挙げられる[5][注 1]

また、以下に挙げる鳥も見られる[8]

魚類

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Simpsonichthys parallelus

1999年に行われた調査によると、エマス国立公園およびスクリウ川Sucuriú River)で最も頻繁に確認された魚はいずれもカラシン目に属し、それはカラシン科アステュアナクス属英語版のもの(Astyanax scabripinnis cf. paranae)とエリュトリヌス科英語版ホプリアス属英語版のもの(Hoplias aff. malabaricus)の2種類であった[9]

エマス国立公園はまた、Simpsonichthys parallelus Costa, 2000(ウィキスピーシーズ)カダヤシ目リブルス科英語版)のような珍種も擁している[5]

昆虫類

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緑色に光るシロアリ塚。光っているのはシロアリではなく、巣に居候するコメツキムシ科の Pyrearinus termitilluminans の幼虫である。

一般的にエマス国立公園の風景として知られるのは、無数に点在するシロアリ塚が夜に光る様子である[7]。この緑色の光はシロアリ塚に棲みついたコメツキムシ科サビキコリ亜科英語版Pyrearinus termitilluminans Costa, 1982[注 2] の幼虫によるものであり[12]シロアリなどが光に集まる習性を利用しておびき寄せ、捕食するためのものであると考えられている[13][14]。こうした幼虫の発光は雨期の初めの数週間のみ見ることができる[13][注 3]。ブラジルは世界でも最大の発光甲虫の多様性を誇り、多種多様なバイオーム[注 4]に分布するホタル科フェンゴデス科英語版、コメツキムシ科、ハネカクシ科の約500種が記載済みであり、エマス国立公園やその周辺地域に関しては合計32種が記録されている[16]。ただエマス国立公園を含めたブラジル中西部での30年間の継続的な調査活動[注 5]の結果、1990年代後半の国立公園周辺において元来の牧草地が農耕地やサトウキビ畑へ転換されるに伴っての、豊かさの減少が浮き彫りとなっている[3]

植物相

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Tristachya leiostachya

1998年11月から1999年10月にかけて行われた植物相調査では80303の601が採取され、草本性の種と木本性の種の比率は 3.03:1、豊富な科の上位5位はキク科 (88種)、マメ科 (87種)、イネ科 (51種)、フトモモ科 (39種)、シソ科 (24種) で、この5科が全種の48パーセントを占めるという結果が得られた[17]。この調査においてはトケイソウ科 (APG IV) の Piriqueta emasensis Arbo のような新種も発見されている[18]

開けた草原であるカンポ・リンポポルトガル語版低木混じりの草原カンポ・スージョポルトガル語版においても最もよく見られるイネ科草本Tristachya leiostachya Nees である[5]。セラードにはいずれも樹高5メートルに達する Anadenanthera falcata (Benth.) Speg.(マメ科) 、Pouteria ramiflora (Mart.) Radlk.アカテツ科)といった木本が目立つ[5]。川沿いには多数のオオミテングヤシMauritia flexuosa L.f.)を擁する河谷林が広がり、Geonoma pohliana Mart. subsp. weddelliana (H.Wendl. ex Drude) A.J.Hend.シノニム: G. brevispatha Barb.Rodr.; ヤシ科)、Protium heptaphyllum (Aubl.) Marchandカンラン科)、Vochysia pyramidalis Mart.ウォキシア科)、Xylopia emarginata Mart.バンレイシ科)といった植物の存在も特徴的である[5]

世界遺産

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登録基準

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この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

脚注

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注釈

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  1. 和名は原則として『世界の鳥の和名 XVI. 南アメリカの鳥 スズメ目』(山階鳥類研究所、1981年; doi:10.11501/12638215)によった
  2. エマス国立公園内で発見され、新種として記載されたのは1982年のことである[10]が、ゴイアス州の「光るシロアリ塚」自体については南米探検を行ったカステルノー伯が1850年に自身の『南米探検記』に記録しており[11]、その後も複数の旅行者たちが記述を行っている[10]
  3. 1980年および1981年の場合、雨期の始まりは9月下旬であった。
  4. 生物群系とも言い、「生育地として共にグループ分けされた類似する特色を有する植生の類型、および最も広い地球規模の生育地のカテゴリ」と定義される概念である[15]
  5. この調査活動の本来の目的はセラード生態系における生物発光を行う種の生化学生物学生態学側面に関する知識を得ることであった。

出典

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  1. 1 2 Ramos-Neto & Pivello (2000:676).
  2. 1 2 3 Batalha & Martins (2002:297).
  3. 1 2 Viviani et al. (2023:387).
  4. Ramos-Neto & Pivello (2000:676, 678).
  5. 1 2 3 4 5 6 7 BirdLife International (2026) Site factsheet: Parque Nacional das Emas. Downloaded from https://datazone.birdlife.org/site/factsheet/22221-parque-nacional-das-emas on 10/01/2026
  6. Rodrigues et al. (2002:589).
  7. 1 2 ブルーガイド編集部 (2014).
  8. Observação de aves no Parque Nacional das Emas. (ポルトガル語) 2026年1月10日閲覧。
  9. Benedito-Cecilio et al. (2004:371).
  10. 1 2 Costa (1982).
  11. Francis de Castelnau (1850) (フランス語). Expédition dans les parties centrales de l'Amérique du Sud : de Rio de Janeiro à Lima, et de Lima au Para. 2. Paris: P. Bertrand. p. 103
  12. Viviani et al. (2023:386, 392).
  13. 1 2 Redford (1982).
  14. 大場裕一 編『光る生き物 深海や暗闇できらめく奇跡の世界を探訪! DVD付』学研、2015年、22頁。ISBN 9784054061712
  15. Burgess, N.; Hales, J. D'Amico; Underwood, E.; Dinerstein, E.; Olson, D.; Illanga, I.; Schipper, J.; Ricketts, T. et al. (2004). Terrestrial Ecoregions of Africa and Madagascar – A Conservation Assessment. Washington DC: Island Press. p. 19
  16. Viviani et al. (2023:386, 390–393).
  17. Batalha & Martins (2002:295).
  18. Batalha & Martins (2002:299).

参考文献

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英語
ポルトガル語
日本語

関連文献

[編集]
ポルトガル語
  • Redford, K.H. (1983). “Lista preliminar de mamíferos do Parque Nacional das Emas”. Brasil Florestal 55: 29–33. 
  • Costa, W.J.E.M. (2000). “Descrições de quatro novas espécies de peixes anuais do gênero Simpsonichthys (Cyprinodontifomes: Rivulidae) das bacias dos rios São Fransisco e Paraná, nordeste e centro do Brasil”. Aquarium, Rio de Janeiro 3 (25): 8–15. 

外部リンク

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