エゾゼミ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
エゾゼミ
Tibicen japonicus - National Museum of Nature and Science, Tokyo - DSC06840.JPG
エゾゼミの標本
国立科学博物館
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
亜綱 : 有翅昆虫亜綱 Pterygota
: カメムシ目(半翅目) Hemiptera
亜目 : 頚吻亜目 Auchenorrhyncha
上科 : セミ上科 Cicadoidea
: セミ科 Cicadidae
亜科 : セミ亜科 Cicadinae
: クマゼミ族 Cryptotympanini
: エゾゼミ属 Lyristes
: エゾゼミ L. japonicus
学名
Lyristes japonicus
(Kato,1925)
シノニム

Tibicen japonicus

エゾゼミ(蝦夷蟬、学名Lyristes japonicus)は、カメムシ目(半翅目)・セミ科に分類されるセミの一種。クマゼミとは分類学上かなりの近縁である。

従来までの分類ではについてはTibicenだったが、命名規約上無効とされ、Lyristesに移行されている[1]Lyristesギリシア語で「竪琴の奏者」を意味する[2]

分布[編集]

名前に「エゾ」とあるが、北海道にのみ分布するセミというわけではない。

北海道焼尻島奥尻島を含む)のほか、本州四国九州佐渡島隠岐諸島に分布する[1]。北海道では十勝地方を分布の東限とする[1]。もともとエゾゼミは、コエゾゼミと異なり南方系のセミであり、夏でも気温があまり上がらず涼しい北海道よりもむしろ長野県南東北(特に長野県)で多く見られる傾向がある。

中国にも分布するといわれるが、韓国の記録は誤同定と考えられる[1]

なお、エゾゼミ属のセミは北半球に広く分布している。特にアメリカ合衆国ではきわめて多種多様なエゾゼミ属のセミが生息しており、その種数は70を超える。南部のテキサス州フロリダ州などでは都市部でも鳴き声が聞かれることが多い。とはいえ、生息数自体はそれほど多くはない。また、ヨーロッパ南部ではオオナミゼミ(ヨーロッパエゾゼミ)というエゾゼミ属のセミが生息しており、フランス南部やイタリア南部、ギリシャなどで見られる。特に、夏場の気温が高いギリシャでは生息数が多く、首都のアテネの中心部でも毎年夏になるとこのセミの鳴き声がたくさん聞かれる。このように、欧米では日本と異なり、エゾゼミ属のセミが市街地でも普通に生息している。

なお、ファーブルは『昆虫記』にて、フランス南部でのこのセミの生態を詳細に記している。

形態[編集]

全長59-66mm、体長40-46mm、前翅開張115-130mmで、アカエゾゼミと同程度の大きさであり、コエゾゼミやキュウシュウエゾゼミあるいはヤクシマエゾゼミと比べて大型になる。

中胸背側方が白粉で覆われる点で、同属のセミ類と区別ができる。前胸背外片には黄褐色の帯があり、基本的に途切れることはない。しかし、まれに黒色部で黄褐色の帯が途切れる変異個体がいる。これ以外にもさまざまな変異があり、なかには体全体が黄褐色で、W型の黄色い模様のないエチゴエゾゼミ L. j. var. echigo と呼ばれる変種も確認されている[1]

生態[編集]

北海道や東北地方では主に平地でもみられるが、本州中部以西では標高500-1000mの山地に生息する。出現期は7月中旬から9月中旬にかけてで、地域によって差がある。アカマツ、スギ、ヒノキなどの樹木に、頭を下にして逆さにとまり、クマゼミやミンミンゼミと同じくよく晴れた午前中を中心に「ギー」と鳴く。その鳴き声はコエゾゼミやアカエゾゼミとよく似るが、それらはエゾゼミと異なり震えるような独特のビート音がない点で区別される。また、交尾はV字型で行われる。

なお、このセミはヒグラシエゾハルゼミと同じく森林性のセミであり、札幌市長野市などの街中でこのセミの鳴き声が聞かれることはまずない。特に長野県北部ではこのセミが普通種となっているが、生息場所は薄暗い雑木林がほとんどである。 これはエゾゼミに限らず、日本に生息するエゾゼミ属のセミ全般について言える。

ただし、仙台市に限っては例外的に、稀にではあるが中心部でもこのセミの声が聞かれることがある。泉区などの郊外の針葉樹林帯で発生した成虫が中心部に移動してきていると考えられるが、高いとはいえないエゾゼミの移動能力を考えると中心部近くの緑地で発生している可能性もある。このように、本来は都市部で見られないはずのセミが観察されるという状況から、仙台はエゾゼミの生息にとりわけ適した気候の都市であると考えられる。ちなみに、同じく森林性のヒグラシの声が青葉区の中心部(勾当台公園など)で聞こえることも少なくない。仙台は夏に冷涼多湿なやませが頻繁に吹き、曇りがちの天気となることが多い都市であるが、このような気候がエゾゼミのような森林性のセミの生態に一定の影響を及ぼしているものと考えられる。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 林&税所(2011)
  2. ^ 『学名論―学名の研究とその作り方』p.92

参考文献[編集]

  • 林正美税所康正編著『日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図』誠文堂新光社、2011年2月28日。ISBN 978-4-416-81114-6 - 附録:CD1枚。
  • 平嶋義宏『学名論―学名の研究とその作り方』東海大学出版会、2012年10月1日。ISBN 978-4486019237

外部リンク[編集]