エアロ・ダブルウィング

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新幹線N700系電車 > エアロ・ダブルウィング

エアロ・ダブルウィングとは新幹線N700系電車の先頭車ノーズ部分の形状のこと。

N700系の先頭形状 2006年7月23日撮影
N700系の先頭形状 2006年7月23日撮影

概要[編集]

N700系先頭車の開発にあたっては、300km/h運転を実現しつつも700系など従来からの16両編成車と同じ定員、できるだけ短いノーズ形状という条件も満たすことが主な目的とされた。ノーズ部長さは10.7mで、700系ノーズ部の9.2mより1.5m長い(先頭車全長は両者とも27.35m)。ワシが翼を広げた形に見えることから「エアロ・ダブルウイング形」と呼ばれる。

エアロストリーム形」と呼ばれている700系先頭車は、トンネル微気圧波を抑えるためには「車両の断面積を一定の割合で変化させる先頭形状が最も有効」という、当時としては最良と考えられていた理論の基、連結器運転台などに必要な容積を加味して設計されている。しかし、最高速度を285km/hから300km/h(山陽区間)へと引き上げた場合、700系の先頭形状ではトンネル微気圧波による騒音が約1.26倍になってしまう。東海道新幹線走行時と同等の騒音レベルにするためには、小断面部分の長さが13m必要と試算された。

しかし、客室スペースを犠牲にして小断面部を伸ばすと先頭車の定員が減少し、700系や300系と共通運用を組むには不都合である。一方、定員を確保するために先頭車の全長を伸ばすと、車両限界建築限界への抵触するほか、従来車に合わせて設計された車両基地ホームでの運用に問題を生ずる。特に行き止まり式の東京駅などでは大規模な改修を余儀なくされる。そこで、先頭車両の形状デザインの再検討が行われた。

コンピュータによる理想的な断面積の増加割合の計算結果と、運転士など4人が乗ることのできる運転台、連結器などの必要な部分のスペース確保を考慮して最終的な先頭形状が決定されている。

N700系の先頭車は、遺伝的アルゴリズムを使用し、約5000パターンのコンピュータシミュレーションの結果から決定された。先頭部は横方向にウイング断面の形状をして飛行機でいう水平尾翼的な役目を持たしており、また運転室を中心した部分はエッジを持たせることにより同じく飛行機でいう垂直尾翼的な役目を持たしている。これは最後尾車になった際、これによって空気を整流することにより、走行中の動揺を抑えることができる[1]。その為先頭車の先端部分では断面積の増加割合を大きくしているため、700系よりも先端部の形状が丸みを帯びている。またこれだけでは万全ではないため、両先頭車の屋根高さを可能な限り低くし、断面を小さく抑えている。これらの施策により、トンネル微気圧波のピークを700系と同程度に分散させることに成功している。

そのまた、N700系の先頭形状の決定はコンピュータシミュレーションの結果からのみではなく、実際に乗務する運転士の意見も参考にされた。具体的には、前照灯の視認性や、運転台のモニターに映りこむ陽光の排除などで、運転席の内装も含め、近年増えている女性運転士にも配慮されている。ワイパーと作業用取っ手についても音源探査試験を行って位置と形状が決定されている。「エアロ・ダブルウイング形」の先頭部から続く部分にある、乗務員室扉両側のつかみ棒は車体内部に埋め込まれており、70km/h以上になるとふさぎ板で自動的に閉じられ面一となるほか、1、16号車の博多、東京寄りの客用ドアをプラグドアにするなど、パンタグラフ形状の簡素化や「全周ホロ」の導入、車両全体の平滑化などの改良に加えて、先頭車にも徹底した騒音対策が講じられている。

脚注[編集]

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  1. ^ 『鉄道のテクノロジー 13 新幹線2012』 三栄書房2011年、p.43。ISBN 9784779613890

参考文献[編集]

  • YOMIURI ONLINE 「新幹線・最速への挑戦」
  • デジタルARENA 新型新幹線「N700系」の"顔"を生んだ「遺伝子アルゴリズム」の秘密