ウデムシ目

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ウデムシ目
生息年代: 315–0 Ma[1]
ペンシルベニア紀現世
Amblypigid.jpg
タンザニアオオウデムシ Damon diadema ♂
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモ綱 Arachnida
: ウデムシ目 Amblypygi
  • ヒメウデムシ科 Charinidae
  • カニムシモドキ科 Charontidae
  • オニウデムシ科 Phrynichidae
  • ウデムシ科 Phrynidae

ウデムシ目(ウデムシもく、Amblypygi、別名に無鞭目)は、節足動物門鋏角亜門クモ綱に所属する分類群であり、カニムシモドキとも言われる。ただし、カニムシとは形態的類似性は低く、系統的にも近縁ではない。偏平で丈夫な体と横に張り出した長い足を持ち、その外貌は他に類するものがないほど異様である。小さいものでは体長5mm程度だが、大きいものは体長4cmを越え、しかも足は体長の2〜4倍以上あるため、陸生の節足動物としては大型の種を含む。学名"Amblypygi"は"鈍い尻"を意味する。これは近縁であるサソリモドキに対して鞭の様な尾節を欠すことに由来する。

形態[編集]

Phrynus marginemaculatusの頭胸部

胴部は腹背に偏平で、頭胸部(前体)と腹部(後体)に分かれる。頭胸部と腹部との間は、クモほどではないがくびれる。毒腺と出糸能力は持たない、体表に防水物質を分泌することが知られている[2]

頭胸部は平たくハート形の頭胸甲に覆われており、前方中央1対と左右とに3対単眼を配置し、目が退化する種もある。付属肢として1対の鋏角触肢、4対の歩脚をもつ。鋏角は小鋸歯が並ぶ鎌状に近い鉗脚構造で小さく目立たない。 和名の示す通り、触肢は腕の様に左右に張り出し、強大な鎌状になっている。内側には鋸歯が並び、小動物の捕獲に向いた造りとなっている。 歩脚(歩肢)は頭胴長に対し非常に細長く、大きく横に張り出し、アシダカグモのように関節が前方に向いている、膝節と脛節の接続部は不可動で、天敵に襲った場合は自切の割れ目として役に立つ[3]。第一脚は特に細長くて歩行には用いず、先端部がのように伸びて昆虫の触角のような感覚器官として用いられる。

腹部は体節に分かれて付属肢はなく、それぞれの節に左右1対の凹み(内突起)が見られる、腹側に呼吸器官として書肺を2対もち、生殖孔はその間に付く。

性的二形は不明瞭で、生殖孔の形状で判別する以外にも、雄の触肢が長く・雌の腹部が幅広い分類群も少なくない。

生態[編集]

タンザニアオオウデムシ(Damon diadema)の幼生、成体より鮮明な模様と赤い触肢を持つ。
タンザニアオオウデムシ(Damon diadema)脱皮直後の体色変化

森林の朽ち木の隙間や、樹皮上、洞穴などに生息する。夜行性で、昼間は物陰に隠れる。主に集団で生活し、洞穴の壁に張りつく。凶暴な外見に反し、クモ形類にしては大人しい動物である。同種間の交流や闘争行為を持つ種も知られている。

前歩きは可能だが、左右に向けて横歩きが得意とされる。普段の動きは鈍く、捕食と避難の場合は瞬発的に素速く走る。視力は弱く、鞭のような第一脚で周りの環境と獲物の行方を偵察し、他の個体との交流にも使える。肉食性で、昆虫など小動物を捕食する。また、この第一脚は非常に長い為、遠くから獲物を捕食範囲まで誘導することも可能である。

繁殖行動として、求愛;婚姻ダンスを行う種が知られている。真の交尾は行わず、雌は雄の排出した縦長い精嚢を生殖孔に付けて交接を完成させる。卵は卵塊として雌の腹部につけて、両縁の膜に包まれて保護する。生まれた幼生は雌の背中に登り、脱皮するまでそこで過ごす。幼生、特に触肢の部分は赤くて成体より派手な体色を持ち、成長に伴って地味な色に変化する。また、脱皮直後の体色は鮮やかな種類も多い。

一般のクモ形類と異なり、雌雄共に性成熟になっても脱皮に続けて成長する。

分布と分類[編集]

世界中の熱帯地方に中心として広く分布する。稀に温帯地方に生息し[3]日本には分布しない。

四肺類

クモ目


脚鬚類

ウデムシ目


有鞭類

サソリモドキ目



ヤイトムシ目





分類学上、クモ形類の中ではサソリモドキ目ヤイトムシ目を含める有鞭類(Uropygi)の姉妹群となり、共に脚鬚類(Pedipalpi)を構成する。この分類はクモ目の姉妹群となり、更に四肺類(Tetrapulmonata)を構成する。共通点として書肺の数は最大2対、歩脚の基節と転節の構造、有鞭類と同じく感覚器官に特化した第一脚と捕脚状の触肢を持ち、クモ目と同じく吸胃(sucking stomach)とくびれる体を持つこと[3]

下位分類[編集]

種は少なく、Paracharontidae科・ヒメウデムシ科 (Charinidae)・カニムシモドキ科 (Charontidae)・オニウデムシ科 (Phrynichidae)・ウデムシ科 (Phrynidae)[4]5科からなり、約24属190種が含めると推測される[1]


(科なし)
†Graeophonus Scudder, 1890 (2-3種,石炭紀)[1]


Paracharontidae Weygoldt, 1996 [1]
現存1種のみ知られる原始的なウデムシ、頭胸甲はより縦長く脚と触肢は短く、触肢の形はウデムシよりヤイトムシに近い。歩脚先端に爪間盤を持つ。
Paracharon Hansen, 1921 (1種)
Paracharon caecus Hansen, 1921
Paracharonopsis Engel & Grimaldi, 2014 (1種, 始新世)


ヒメウデムシ科 Charinidae Weygoldt, 1996
頭胸甲は丸く、艶消しの薄い体色を持つ種類が多い。歩脚先端に爪間盤を持つ。
Catageus Thorell, 1889 (1種)
Charinus Simon, 1892 (33種)
Sarax Simon, 1892 (10種)


カニムシモドキ科 Charontidae Simon, 1892
オニウデムシ科とよく似ているが、触肢の棘に間隔がある。歩脚先端に爪間盤を持つ。
Charon (genus)|Charon Karsch, 1879 (5種)
Stygophrynus Kraepelin, 1895 (7種)


(科なし)
Kronocharon Engel & Grimaldi, 2014 (1種, 白亜紀)


オニウデムシ科 Phrynichidae Simon, 1900
全体的に横幅があり、触肢は長く発達し、棘はより先端に集約する。歩脚先端に爪間盤はない。鋏角の内歯は3本。頭胸部の腹板は発達する。
Damon C. L. Koch, 1850 (10種)
Euphrynichus Weygoldt, 1995 (2種)
触肢は極端に細長く、途中にほとんど棘が無い。
Musicodamon Fage, 1939 (1種)
Phrynichodamon Weygoldt, 1996 (1種)
Phrynichus Karsch, 1879 (16種)
Trichodamon Mello-Leitão, 1935 (2種)
Xerophrynus Weygoldt, 1996 (1種)


ウデムシ科 Phrynidae Blanchard, 1852
Heterophrynusを除くと触肢はオニウデムシ科より短く、多数の棘が密着に並んでいる。歩脚先端に爪間盤はない。鋏角の内歯は3本。頭胸部の腹板は小さい。
Acanthophrynus Kraepelin, 1899 (1種)
Acanthophrynus coronatus Butler, 1873
体長45㎜まで達する世界最大のウデムシである。
Britopygus Dunlop & Martill, 2002 (1種; 白亜紀)
Electrophrynus Petrunkevich, 1971 (1種; 中新世)
Heterophrynus Pocock, 1894 (14種)
脚は本科の他属よりも細長い。一部の種の触肢も細長くなる。触肢膝節の先端は外側に湾曲し、そこに3本の長い棘が等間隔に配置される。
Paraphrynus Moreno, 1940 (18種)
Phrynus Lamarck, 1801 (28種, 漸新世 - 現世)


incertae sedis
Sorellophrynus Harvey, 2002 (1種, 石炭紀:ミシシッピ紀)
Thelyphrynus Petrunkevich, 1913 (1種, 石炭紀:ミシシッピ紀)

人間との係わり[編集]

人間の生活との係わりはほとんどない動物だが、しばしば熱帯産の大型クモ類や甲虫類と同様に観賞用に飼育されることがある。中でもタンザニアオオウデムシ(Damon diadema)は普遍で、最も広く知られるウデムシの一種である。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、中山書店。