ウチナータイム

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ウチナータイム(日:沖縄タイム、沖縄時間)とは、日本の南西端沖縄県に存在する、日本本土とは異なる独特の時間感覚。または、沖縄において集会・行事などが予定時刻より遅れて始まること[1]

概要[編集]

日本の沖縄県においては、特に本土または内地と呼ばれる他46都道府県と異なる[* 1]独特の時間感覚が存在する。これをウチナータイム、または沖縄タイムと呼ぶ(ウチナーとは琉球語で沖縄のこと)[2]南国であるためかその時間はゆっくり流れ[2]県民性は「テーゲー」(適当、いい加減)と称され[2]、または「なんくるないさー」(なんとかなるさ)[2]、細かいことや過ぎたことは気にしないとされる[2]

飲み会や私的な集まりにおいては、約束の時間に間に合わせるといった意識、あるいは間に合わないことは悪いことであるという概念は希薄、もしくは存在しないと言われるほどであり[2]、30分や1時間の遅刻はザラであるという[3]。 その他各種集会などについてもそのような傾向があり、主催者側も心得たもの、特に慌てもしないし、そもそも開始時間にサバを読んでおくなどと言う場合もある[4][5][* 2]。 そもそも定刻に到着してもどうせまだ誰も来ていないのであるから、遅れていくのも仕方ないと言った次第であり[4]、待つ側に怒りや苛立ちはなく、待たせる側にも罪悪感はない。逆に遅刻くらいで文句を言う人間は口うるさいなどとして嫌われる場合もある[6]

沖縄に造詣の深い紀行作家、カベルナリア吉田は、「うちな〜んちゅ行動の最大の特徴が、時間にルーズ」であるとし[* 3]、2006年に至っても沖縄人は「今日やらなきゃいけない事も平然と明日に延ばす」「遅れるより急ぐ方が罪だ」と言った人々であり、「神様のお告げで、出掛けるの遅れたねー」などと言い訳をすると言う[7](斜体部はカベルナリア吉田「うちな〜んちゅ行動の謎」(『入門 大人の沖縄ドリル』)より引用)。

その他にも文献では、沖縄のにわか雨は「スコール」とも言えるもので、急に降りだし短時間で止むと言うこともあり、雨傘などは持ち歩かずに、にわか雨に対しては雨宿りで対応する[2]、などと言った事例も紹介されている。

『沖縄コンパクト辞典』によれば、が長く、鉄道なども無い風土柄によって培われてきた概念とされ、その遅れ方にも地域差があると言われる。また、夜型社会でもあり、飲酒を好む県民性や車社会であると言った面も原因として考えられるようだ[8]

本土復帰前である1964年(昭和39年)に制定された那覇市民憲章には「時間をまもりましょう」が盛り込まれていたほどであった[9][10][* 4]1972年の本土復帰後はさすがに減少傾向にあり、ビジネスの現場ではかなり改善されてきているようであるが[1][4][9]、それを「企業の内地化」と呼ぶ向きもある[11]

文化によって時間感覚が異なることについて、アメリカ文化人類学者エドワード・ホールはポリクロニック(polychronic)とモノクロニック(monochronic)という概念を用いて説明を試みている[12]

脚注[編集]

  1. ^ ただし鹿児島県 奄美群島には「島時間」、宮崎県には「日向時間」という言葉があり、これらの地域の一部には沖縄にも似た南国気質が存在する。[要出典]
  2. ^ ただし、沖縄大百科事典 (1983) 当該項目部(儀間進執筆部)では、「現代の能率社会に適応していくには第一に克服すべきものである」としている。
  3. ^ 当該文献は沖縄を紹介する、日本本土向けのものであり、すなわちあくまで「日本本土と比較して」、である。その他にはとにかく何事につけても面倒くさがりである、老人がいつまでもスケベである、などを特徴としている。
  4. ^ 那覇市議会報 No.53(1964年1月20日)によれば、市民憲章の時間の部分については冠婚葬祭その他集会時に時間を守ることが筆頭に挙げられているほか、深夜の踊りを慎む、規則正しい生活の励行、も視野に入れられ、(時間感覚で)他人に迷惑をかけない様にするのが狙い、とある。また市民憲章全体としては、市民の「道徳倍増」が目的である(琉球新報 1963年12月13日 朝刊 p.1)。

出典[編集]

  1. ^ a b 『沖縄コンパクト辞典』
  2. ^ a b c d e f g 『沖縄ルール』
  3. ^ 『沖縄ナンクル読本』p.26
  4. ^ a b c 『好きになっちゃった沖縄』 pp.38-
  5. ^ 『沖縄大百科事典』上・553
  6. ^ 『沖縄ナンクル読本』pp.27 - 28
  7. ^ 「うちな〜んちゅ行動の謎」(『入門 大人の沖縄ドリル』)
  8. ^ 『熱烈!沖縄ガイド』pp.133-134
  9. ^ a b 『爆笑 沖縄移住計画』p.152 ただし参照した版では制定を1968年としている。
  10. ^ 市民憲章”. 那覇市. 2011年8月11日閲覧。
  11. ^ 『沖縄のナ・ン・ダ』pp.17-19
  12. ^ 『沈黙のことば』

参考文献[編集]

  • エドワード・ホール 『沈黙のことば』、國弘正雄長井善見斎藤美津子(共訳) 南雲堂、1966(原著1959)。ISBN 4523260206 
  • 沖縄大百科事典刊行事務局 (1983). “オキナワ・タイム”. 沖縄大百科事典. 沖縄タイムス. p. 上・553. 
  • 沖縄ナンデモ調査隊、2001、『沖縄のナ・ン・ダ』、双葉社
  • カベルナリア吉田、2006、「うちな〜んちゅの行動の謎」、『入門 大人の沖縄ドリル』 pp. 73-75
  • 篠原章、1993 / 2000、『熱烈!沖縄ガイド (ハイサイ!沖縄ガイド改題・文庫版)』、宝島社
  • 下川裕治、ゼネラルプレス、1998、『好きになっちゃった沖縄』、双葉社
  • 下川裕治、篠原章、2002、『沖縄ナンクル読本』、講談社
  • 都会生活研究プロジェクト 沖縄チーム、2009、『沖縄ルール リアル沖縄人になるための49のルール』、中経出版
  • 中村清司、2000、『爆笑 沖縄移住計画』、夏目書房
  • 那覇市議会事務局、1964 / 1983、「那覇市議会報 No.53 1964年1月20日」、『那覇市議会報復刻版第1集』  pp. 644
  • 琉球新報, ed (1998). “オキナワタイム”. 沖縄コンパクト辞典. 琉球新報. p. 88. 

関連項目[編集]