ウォッチメン

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ウォッチメン』(Watchmen)は、DCコミックスが1986年から1987年まで出版した12巻のアメリカン・コミック。ライターのアラン・ムーア、アーティストのデイブ・ギボンズ、カラリストのジョン・ヒギンズからなるイギリスの作家により作成された。

『ウォッチメン』はアイズナー賞を受賞し、1988年にはヒューゴー賞の特別部門に選ばれた。2005年には『タイム』誌によって1923年以降に発表された長編小説ベスト100に選ばれた。

ザック・スナイダーの監督するウォッチメン (映画)は全米では2009年3月6日、日本では3月28日に松竹・東急系で公開された。映倫管理委員会によってR-15指定を受けている。

日本では、1998年にメディアワークスより、石川裕人、秋友克也、沖恭一郎、海法紀光による訳書『WATCHMEN』が刊行された。長らく絶版状態であったが、2009年2月28日に小学館プロダクションより再刊された。

概要[編集]

DCコミックスはチャールトン・コミックからキャラクターの権利を取得しており、ムーアのそれらのスーパーヒーローを登場させた物語の提案から『ウォッチメン』は始まった。ムーアの提案した物語では多くのキャラクターが将来的に使えなくなるため、DCの編集長ディック・ジョルダーノは代わりのキャラクターを作るようムーアを説得した。

ムーアは現代の不安を反映してスーパーヒーローの概念を脱構築し、パロディにするための手段として物語を使った。『ウォッチメン』は歴史改変SFを描いており、1940年代1960年代に本物のスーパーヒーローが登場した影響で歴史が変わり、ベトナム戦争アメリカ合衆国が勝利してウォーターゲート事件は暴露されなかった。1985年には、同国とソビエト連邦は徐々に第三次世界大戦に向けて進んでいる。フリーランスのコスチュームを着た自警団は非合法化されており、ほとんどのスーパーヒーローは引退するか政府のために働いている。物語は個人の道徳的な闘争に焦点を当て、主人公は政府に所属するスーパーヒーローの殺人事件の調査として引退した仲間を訪ねる。

『ウォッチメン』は12の章から構成され、第1章は矢印のような血痕が付着したスーパーヒーロー「コメディアン」のスマイリーフェイスの極端なクローズアップから始まる。この血痕の形のイメージは物語を通じて何度も繰り返され、第2章以降は11時49分から始まり深夜0時0分に至る世界終末時計を彷彿とさせる時計の文字盤から始まる。各章のタイトルは章の終りで示される引用文からの抜粋であり、この引用文ではその章での出来事が暗示される。

最終章を除く各章には、キャラクターの背景設定や彼らによって世界が受けた影響を様々な側面から記述する架空の文書が含まれている。これらの作中内資料は引退したスーパーヒーローの自伝・新聞記事・インタビュー・警察と精神科医の報告書・その他の記事からの抜粋という形式をとっており、『ウォッチメン』の世界を知るのに有効であると共に世界観にリアリティを与えている。

『ウォッチメン』のタイトルは、ユウェナリスの風刺詩第6歌『女性への警告』からの抜粋に由来する[1]

noui consilia et ueteres quaecumque monetis amici,
"pone seram, cohibe".
sed quis custodiet ipsos custodes
cauta est et ab illis incipit uxor

この引用の逐語訳が、ムーアの『ウォッチメン』に込められた主題を暗示している。

I hear always the admonishment of my friends:
"Bolt her in, and constrain her!"
But who will watch the watchmen?
The wife arranges accordingly, and begins with them

私は我が友の忠告を常に聞く。
「彼女に閂を掛け、拘束せよ!」
しかし、誰が見張りを見張るのか?
妻は手筈を整えて、彼らと事を始める

制作背景[編集]

1985年にDCコミックスはチャールトン・コミックから一連のキャラクターの権利を取得した[2]。当時、本書の原作者アラン・ムーアは、かつて1980年代初頭に『ミラクルマン』シリーズで行ったように、自らの手で改革可能なキャラクターを登場させたストーリーの執筆を考えていた。アーチー・コミックの前身MLJコミックのマイティ・クルセイダーシリーズがこの計画に使用できるかもしれないとムーアは考えており、星条旗をモチーフにしたコスチュームを身にまとった愛国ヒーローで、FBIの諜報員でもあるザ・シールドの死体が港湾で発見される事から始まる殺人ミステリーのプロットを温めていた。読者に見覚えのあるキャラクターを使うことで、「読者がこれらのキャラクター達にリアリティを感じ、大きな驚きと衝撃を受け」さえすれば、最終的に使用するキャラクター達は誰であろうと構わないとムーアは思っていた[3]。ムーアはこの着想を用いてチャールトンのキャラクターを登場させた企画書『Who Killed the Peacemaker』(『誰がピースメーカーを殺したか』)を作り上げ[4]、DCの編集長ディック・ジョルダーノにいきなり送り付けた[2]。ジョルダーノはこの企画を採用したが、チャールトンのキャラクターを使用するという案には反対した。ムーアは「金のかかったキャラクター達が、死んだり役立たずにされて終わってしまう事に、DCは気付いたんだ」と述べている。ジョルダーノはその代わりに、オリジナルキャラクターを使用して企画を作り直すようムーアを説得した[5]。最初のムーアはオリジナルのキャラクターでは読者の感動は引き起こせないと考えていたが、後に考えを改めた。ムーアは「結局、私が代用となるキャラクターを充分に描写すれば、彼らはある意味で見慣れた存在となり、彼らの外見はある種のスーパーヒーロー一般を思い起こさせる物となる事に気付いた。そして、それはうまくいった」と述べた[3]

過去の作品でムーアと組んだ事のある作画家のデイブ・ギボンズは、ムーアがある読み切り作品の構想に取り組んでいる事を聞き付けた。自分も参加したいと述べたギボンズに、ムーアはストーリーの概略を送った[6]。ギボンズはジョルダーノにムーアが企画したシリーズの作画を手掛けたいと伝えた。ジョルダーノはギボンズにムーアの意向はどうかと尋ね、ギボンズがムーアも自分の作画を望んでいると答えた事で、ギボンズは作画家の地位を得た[7]。カラリストのジョン・ヒギンズの風変わりな作風を好んでいたギボンズは、ヒギンズをこの企画に誘い入れた。ヒギンズはギボンズの近所に住んでおり、二人は「(作画について)語り合ったり、海を越えて手紙を送りあうよりは親密な近所づきあいをしていた」[4]。ジョルダーノが監修者としての地位に留まる一方で、レン・ウェインが編集者として加わった。ウェインとジョルダーノの両者は企画から距離を置き、やがて企画を離れた。ジョルダーノは「そもそも、アラン・ムーアの校正ができる奴がいるかね?」と述べている[2]

企画の許可を得たムーアとギボンズは、ギボンズの自宅でキャラクターの創造と、物語内の詳細な社会環境の構築、着想の元となるアイデアについての議論を行った[5]。二人が特に影響を受けたのは、『MAD』誌における『スーパーマン』のパロディ『スーパーデューパーマン』である。ムーアは「我々はスーパーデューパーマンの180度反対を目指した――喜劇的ではなく、劇的な」と語った[5]。ムーアとギボンズは、「全く新しい世界で生きる、懐かしいお馴染みのスーパーヒーロー達」の物語を考え出した[8]。ムーアの意図したのは「ある程度の重厚さと密度を備えた何か。言わば、スーパーヒーロー版『白鯨』だ」と述べた[9]。ムーアは登場人物の名前と説明を思い付いたが、その外見の詳細はギボンズに任せた。ギボンズは敢えてその場でキャラクターのデザインはせず、代わりに「手の空いた時にそれをやった。(中略)おそらくスケッチだけで2、3週間は掛かった」[4]。ギボンズは彼のキャラクター達を描き易いようにデザインした。ロールシャッハが一番お気に入りのキャラクターだったとギボンズは語っている。その理由について「描かねばならないのは帽子だけだ。帽子さえ描ければ君にもロールシャッハは描ける。後はただ顔の輪郭を描いて黒インクの染みを何滴か垂らせば、それでロールシャッハの出来上がりだ」と述べた[10]

DCの読み切り作品『キャメロット3000』が原因で直面していた出版延期を避けようと、ムーアはすぐさま原作の執筆に着手した[11]。ムーアは第1話の原作を執筆していた時に「私は6話分のプロットしか考えていなかった。我々は12話の作品を契約していたというのに!」と述べた。ムーアが考えた解決策は、物語の本筋と登場人物の過去の出来事を、各話で交互に扱うという物であった[12]。ムーアはギボンズに対して非常に詳細な原作を執筆した。ギボンズは「『ウォッチメン』第1話の原作は、行間のぎっしり詰まったタイプ原稿で101ページはあったと思う。各コマの説明の間に空行はなくて、各ページの間にさえ空行がなかった」と回想している[13]。原作を受け取ると、ギボンズはすぐに原稿にページ数を書き込んだ。「もし床に原稿を落としたりしたら、正しい順番に並べなおすのに2日はかかるだろうからね」と語った。作中のセリフとキャプションや具体的な場面描写には、マーカーで印が付けられた。「マーカーで線を引く箇所を見極めるだけでも、ちょっとした一仕事だったよ」と語った[13]。ムーアは詳細な原作を渡していたが、各コマの説明はしばしば「これは君の作画には向かないかもしれない。一番上手くいくやり方でやってくれ」という注意書きで終わっていた。それにも関わらず、ギボンズはムーアの指示を忠実に実行した[14]。ギボンズは『ウォッチメン』世界の視覚化にあたっては自ら能動的に取り組み、ムーア自身も後になるまで気付かなかったような、背景の細かい描写を多数挿入した[9]。ムーアは調査中の疑問や各話に含まれる引用文について尋ねるため、時おり漫画原作者仲間であるニール・ゲイマンと連絡を取った[12]

その意思にも関わらず、1986年11月に、ムーアは制作の遅れを認めざるを得なくなった。第5話がニューススタンドに並んでいる時に、ムーアはまだ第9話の原作を書いていた[13]。ギボンズは制作の遅れの最大の原因は、彼がムーアの原稿を受け取る時の「細切れの受け取り方」だったと述べている。ギボンズによれば制作チームのペースは第4話あたりから遅れがちになり、これ以降、徐々にギボンズはムーアから、「一度に数ページ分の原作しか渡されなくなった。3ページ分の原作をアランから受け取って作画し、それが終わりかけると、アランに電話して言う。『エサをくれ!』するとアランが次の2〜3ページ分か、ひょっとしたら1ページ分、時によっては6ページ分の原作を送ってくる」[15]。締め切りが迫ると、ムーアはタクシーで50マイルを飛ばしてギボンズに原稿を届けた。後半の各話では、ギボンズは時間の節約のために妻と息子にワク線を引くのを手伝わせた[12]。オジマンディアスがロールシャッハの奇襲を防ぐ場面では、ギボンズがセリフを1ページに収め切れなかったため、ムーアはやむなくオジマンディアスによるナレーションを削った[16]

制作が終りに近付いた頃に、ムーアはこの作品が『アウター・リミッツ』の一エピソード「ゆがめられた世界統一」(原題:The Architects of Fear)に似通った物となりつつある事に気付いた[12]。ムーアとウェインは結末の変更について論争し、ムーアが勝利を収めたものの、最終話ではこのエピソードが本作に影響を与えている事を暗に認めている[14]

あらすじ[編集]

『ウォッチメン』は1980年代の現代世界を密接に反映している。主な違いはスーパーヒーローの存在である。『ウォッチメン』ではコスチュームを着て犯罪と戦う者を「スーパーヒーロー」と呼び、Dr.マンハッタンだけが超人的な能力を持っている。

1938年に分岐点が発生し、スーパーヒーローの存在により劇的な影響を受けた出来事としてベトナム戦争リチャード・ニクソン大統領が示される。ベトナム戦争は1971年にアメリカの勝利で終わり、ニクソンは1985年10月まで大統領を務め、ソビエトのアフガニスタン侵攻が現実の約6年後に発生する。

物語の開始時では、Dr.マンハッタンの存在がアメリカ合衆国にソビエト連邦を上回る戦略的優位性を与え、両国間の緊張を高めている。スーパーヒーローは警察や民間人からの人気がなくなり、1977年にキーン条例と呼ばれる法律が制定されてヒーローによる自警団活動が非合法となった。これによりスーパーヒーローの多くは引退したが、Dr.マンハッタンとコメディアンと呼ばれるスーパーヒーローは政府が認可したエージェントとして活動している。そして、ロールシャッハは1人で非合法な自警団活動を継続している。

1985年10月、ニューヨーク市警はエドワード・ブレイクという男が殺された事件を調査していた。警察は解決をあきらめたものの、ロールシャッハ(ウォルター・コバックス)はさらに調査を継続することにした。ロールシャッハはブレイクの正体が政府に所属するスーパーヒーロー・コメディアンだと知り、「この事件はヒーロー狩りである」という仮説を立て、引退した相棒の二代目ナイトオウル(ダン・ドライバーグ)、超人的な能力を持つが人間性を失いつつあるDr.マンハッタン(ジョン・オスターマン)と彼の恋人である二代目シルクスペクター(ローレル・ジェーン・ジュスペクツィク)、成功した実業家であるオジマンディアス(エイドリアン・ヴェイト)に警告を発する。

コメディアンの葬儀の後、Dr.マンハッタンはテレビに出演して彼の身体から発せられる放射線が友人や同僚の癌の原因だと非難される。アメリカ政府がこの批判を認めると、Dr.マンハッタンは自身を火星にテレポートさせる。Dr.マンハッタンはアメリカ最大の兵器であったため、彼の失踪を好機と見たソビエトはアフガニスタンに侵攻、世界情勢は悪化の一途を辿る。さらにオジマンディアスの暗殺未遂事件がおこり、ロールシャッハの懸念が現実になる。しかし、ロールシャッハはかつてのスーパーヴィランであるモーロックを殺害した容疑で投獄される。

Dr.マンハッタンの失踪により政府の給料を受け取る事が出来なくなったシルクスペクターは、ナイトオウルの家に身を寄せる。彼らは恋に落ち、コスチュームを身につけて自警団活動を再開する。ナイトオウルはロールシャッハの陰謀説を信じ始め、彼らはロールシャッハを救うために刑務所に向かう。

Dr.マンハッタンは自分の人生を振り返った後、シルクスペクターに会いに行き、彼女が人類の運命を握っていると詰め寄る。Dr.マンハッタンは人間の価値について議論するためシルクスペクターを火星にテレポートさせる。議論の過程で、コメディアンがシルクスペクターの母親であるサリー(初代シルクスペクター)をレイプしようとするも失敗、だが数年後に合意の下で性行為を行い、シルクスペクターの生物学的な父親となったという事実を知る。人間の感情や人間関係の複雑さを反映したこの発見は、Dr.マンハッタンに人間への関心を再燃させる。

地球に残ったナイトオウルとロールシャッハは、コメディアンの死とDr.マンハッタンを失踪させた批判的な世論についての陰謀を調査し続ける。彼らはオジマンディアスが黒幕かもしれないとの証拠を発見する。この時点でロールシャッハは、それまでの疑いや調査記録の全てをまとめた日記を地元の右翼系新聞『ニュー・フロンティアーズマン』誌に郵送する。

その後、ナイトオウルとロールシャッハは南極の秘密基地に潜むオジマンディアスと対峙する。オジマンディアスは「エイリアンの侵略によりニューヨーク市民の半分が殺された」と偽装する事で、アメリカとソビエトによる核戦争から人類を守る計画を説明する。オジマンディアスは、共通の敵を作る事で敵対する国家同士を結びつけることを企んでいた。オジマンディアスの計画はまず、キーン条例の成立する前に引退して財産を築き、強大かつ予測不能なDr.マンハッタンを「放射線による癌」のうわさを流布させて排除した。また、ロールシャッハによる計画の妨害を警戒して、自らの暗殺未遂を偽装して「ヒーロー狩り」の誤った仮説を補強し、モーロック殺害の罪を着せて逮捕させた。コメディアンは彼の計画に近づき過ぎたため、オジマンディアスによって殺害されたのだった。真実を知ったナイトオウルとロールシャッハは、彼の論理を冷淡で忌まわしいものだと感じていたが、オジマンディアスはすでに計画を実行していた。

Dr.マンハッタンとシルクスペクターが地球に戻ると、ニューヨークでは大量破壊と大量殺戮が起こっていた。街の真ん中には遺伝子操作によって生み出されたクトゥルフのような巨大な怪物が死んでいた。Dr.マンハッタンは自身の能力が制限されている事に気付き、南極から発せられるタキオンを辿って二人はテレポートする。

オジマンディアスは南極に集まった一同に「宇宙から侵略の脅威に直面したアメリカとソビエトは戦争を中止し、共通の脅威に対抗するために電撃的な和解を行った」とのニュース放送を見せる。ほとんどの者が世界の平和を守るためにオジマンディアスの陰謀を国民から隠蔽することに同意したが、ロールシャッハは「世界が滅んでも絶対に妥協はしない」と言い、同意を拒絶する。 南極から帰る途中にロールシャッハはDr.マンハッタンに止められる。ロールシャッハは止めたいなら自分を殺すしかないと言い、Dr.マンハッタンは彼を気化させて殺害する。

オジマンディアスはDr.マンハッタンに「最後には私のしたことは正しかったんだよな?」と聞くが、Dr.マンハッタンは「最後など存在しない」と言い残し、新たに価値を見出した生命を創造するために永久に地球を去る。ナイトオウルとシルクスペクターは新たな身分を手に入れ、恋愛を続ける。

ニューヨークでは『ニュー・フロンティアーズマン』誌の編集長が、新しい政治情勢のためソビエトに批判的な記事が書けず、記事に2ページ分の穴が開いてしまった事について文句を言う。彼は助手に適当な記事を作るよう命令し、助手はクランク・ファイルから記事を見つくろい始める。編集者は「悲惨な人生の中で、せめて一度ぐらい責任を持って意味のある仕事をしてみろ!好きなのを選べばいいだろうが」「後はお前に任せたからな」と言い、助手の手が山積みになったクランク・ファイルの頂上にあるロールシャッハの日誌に近づいて物語は終わる。

そして、次のページでは十二時を示した核戦争までの『残り時間』がゼロになった、あるいは核戦争の『可能性』がゼロになった世界終末時計が象徴的に描かれる。

登場人物[編集]

ウォッチメンの主要登場人物は、1980年代初頭にDCがチャールトン・コミックから取得した一連のスーパーヒーローが原型となっている。原作者アラン・ムーアは主要人物を6通りの「反社会性」を表現するキャラクターとして創造し、そのいずれが最も道徳的に理解可能であるかの決定は読者に委ねている[9]

クライムバスターズ[編集]

ロールシャッハ/ウォルター・ジョゼフ・コバックス(Rorschach, Walter Joseph Kovacs)
本作の狂言回し。違法に活動を続けている唯一のヒーロー。その行動は暴力的であり、少なくとも2件の殺人容疑が掛けられており、正当防衛の殺人が5件はある。1977年にキーン条例が制定された時は、連続強姦魔の死体に「断る!」というメッセージを添えて警察署の前に放置した。
身長167cm、体重64kgの赤毛で無表情な男性として示される[17]。無職であり、普段は"The End is Nigh(終末は近い)"と書かれた看板を持って街中を徘徊している。彼は自身の醜い顔の代わりに、覆面を「本当の顔」だと思っている[18]。風呂に入らず、洗濯もせず、部屋も掃除しないため、非常に不潔。ロールシャッハは激しい右翼主義的であり、幼少期の経験から女性や性行為に嫌悪感を抱いている。己の正義感に異常なまでに忠実で、その在り方はニーチェの提唱した精神的「超人」であるという。
ロールシャッハの衣装はフェドーラの帽子、灰色のスカーフ、茶色のトレンチコート、同様の色の革手袋、紫色のストライプ、全く磨かれていないエレベーターシューズ、そしてロールシャッハ・テストのような白地に黒い液体が流動しているインクブロットマスクである。ガス圧でフックを発射するワイヤーガン[19]と日記を携帯しており、捜査状況や自警活動の内容を記録している[20]
母親のシルビア・コバックスは夫のピーター・ジョセフ・コバックスと共に1935年にオハイオ州からニューヨークに出た。しかし、1937年にお互いを姦通と精神的苦痛で訴えて離婚する。離婚後、夫とは連絡をとらず、次の3年間は賃金の安いアパートを転々としながら生活していた。厳密にいつの時点から売春で生計を立てるようになったかは不明だが、連続して関係を持った最後の男がウォルター・コバックスの父親になったとされる。彼は子供が生まれる2ヶ月前に、彼女の下を去った。シルビアはこの男性について詳細を述べていないが、名前はチャーリーだったとだけ主張している。息子の誕生後、すぐに売春で逮捕されたことから、家賃に加えて乳児を養うための出費の増加が売春につながり、それが子供への怒りや虐待の原因になったと推測されている。1951年7月にウォルターは路上で自身を苛めた年上の少年たちを暴行し、うち1人を失明させた。ウォルターは黙秘を続けたため、理由のない暴行と判断された。だが、ウォルターの身辺を調査した結果、彼が母親の売春を目撃し、そのために虐待されていたことが明らかになり、ニュージャージー州のリリアン・チャールントン児童強制施設に引き取られた。彼はそこに1956年まで在籍し、社会に出られるだけの知性と安定度を備えていると判断されて出所した。施設において、母親の悪影響から切り離されたウォルターはいい成績を収め、なかでも文学、宗教、そして、体操、アマチュア・ボクシングに才能を示した。また、ウォルターはクラスメートや教師と長く論理的な会話を交わすことができ、一方で女性に対しては寡黙で内気な態度を見せていたが、大方の目からは内向的だが可愛げのある生徒と思われていた。出所後は縫製工場に勤務しており、1962年にDr.マンハッタンの発明を発明を応用した2枚のゴムに挟まれた液が圧力や熱に反応して流動する生地を使ったドレスの特注が入る。しかし、発注者のイタリア系女性は不気味だと言って受け取らなかった。だが、白と黒が動いて形を変えていき、決して灰色には混ざらない生地をウォルターはとてつもなく美しいと感じた。その生地は誰も欲しがらなかったため、自分の家に持って帰った。熱した器具で裁断すれば、ゴムが再接着されて液が漏れないことを発見するが、すぐに飽きてトランクに放り込んだ。1964年3月に出勤途中で新聞を買い、服を注文したキティ・ジェノヴィーズが殺されたことを知る。同じアパートに住む40人が悲鳴を聞いたが何もしなかったことから、人間の本性は無関心で破兼恥なクズだと感じ、死んだ女性が受け取らなかった服の残骸から「鏡を見ても耐えられる新しい顔」としてマスクを作り、ヒーローとして活動を開始する。
当初は理性を保っており、模範的なヒーローだった。1975年以前に犯罪者に重傷を負わせた記録は無く、殺さず警察に引き渡し、犯行現場にロールシャッハテストの模様を書いたカードを残していた。本人は「ただのコバックスだった。ロールシャッハになったフリをしているコバックスだ」と語る。1960年代はナイトオウルと協力してギャングと戦っていた。1975年のブレア・ロッシュ少女誘拐事件は情け容赦なく妥協を許さないロールシャッハへの転換に繋がった。彼はジェラルド・グライスという男性を追跡し、グライスの小屋で彼が少女を殺して死体を犬に喰わせた証拠を見つけた。グライスが帰ってくるとロールシャッハは犬の死体を窓から投げ捨て、手錠をかけてストーブの灯油を撒いた。ロールシャッハは火をつけて放置したが、小屋からは誰も出てこなかった。そして、彼は正気を失ってコバックスから「ロールシャッハ」になった。
ムーアはスティーブ・ディッコの創造したミスターA(Mr. A)をロールシャッハの原型にした。鋼鉄のマスクに背広とフェドーラ帽を身に付けたミスターAは、自分の倫理観に過酷なまでに忠実なクライムファイターであり、彼が現場に残していく「善」の白と「悪」の黒に二分されたカードは、いかなる倫理的に灰色の領域も許さないというその信念を象徴している。「このスティーブ・ディッコの典型的なキャラクター――変な名前を持ち、「K」で始まる名字を持ち、奇妙なデザインのマスクを被っている――を再現しよう」と試みたとムーアは語っている[21]。ディッコがチャールトンで創造したキャラクターのクエスチョン(Question)も、ロールシャッハのモデルとして使われている。[3]コミック史研究家のブラッドフォード・W・ライトは、ロールシャッハの世界観とは「彼の名の由来となったインクの染みを用いた心理学テストの様に、黒と白は様々な形を取っても、決して灰色に交じり合う事がない」物だと述べている。ロールシャッハにとって世界は偶然に支配された場所であり、ライトによればこの世界観がロールシャッハに「『モラルの欠落した世界』へ思うがままに『自らデザインした模様を書き殴らせて』いる」理由だという[22]
Dr.マンハッタン/ジョナサン(ジョン)・オスターマン(Doctor Manhattan, Jonathan "Jon" Osterman)
核実験に巻き込まれて全身を分解された後、自力で再構成して復活した唯一の超人。あらゆる原子を操作できる能力を持ち、自分の体験した過去・現在・未来の事象を同時に認識している。キーン条例の制定後もベトナム戦争を勝利に導いた功績に加え、ソビエトに対する抑止力、国防の要として活動が許可された。その技術によってアメリカの文明は大きく発展しており、現代を凌ぐほどの数々の新技術が存在する。これは他のスーパーヒーローの装備品にも影響を及ぼしている[23]
超人的な能力の影響を受けて徐々に人間性を喪失している。その事を周りの人間に理解されていないため、以前の恋人と別れ、現在の恋人であるローリー(2代目シルクスペクター)との仲も悪化しつつあり、孤立を深めている。
全身が水色で、体毛は一本もない。額に水素原子をモチーフにしたマークを描いている。デビュー当初は黒いボディスーツを着用していたが、年月を経るにつれて面積が減少し、レオタード状、パンツ、ビキニパンツとなり、最終的には全裸となる。これは彼の人間性の喪失を示唆しているのだという。
Dr.マンハッタンの原型はチャールトンのキャプテン・アトム(Captain Atom)である。キャプテン・アトムはロケットの爆発事故で原子分解された事からスーパーパワーを手に入れたヒーローで、自分の持つ核エネルギーを周囲の人間に警告する原子マークのコスチュームを着用している。ムーアの原案では、キャプテン・アトムは核戦争の恐怖を体現するキャラクターであった[3]。しかし、ムーアはDr.マンハッタンに対しては、彼がキャプテン・アトムで考えていた時以上の、「量子力学的スーパーヒーロー」の要素を付け加えた。当時の他のスーパーヒーローが彼らのオリジンに対する科学考証を欠いていたのに対し、ムーアはDr.マンハッタンの構築に当たって原子核物理学量子力学に関する考証を試みた。ムーアは量子力学的宇宙に生きる登場人物は、遠近法的な視点で時間を知覚しないし、それは彼の人間関係の受け取り方に影響を及ぼすであろうと考えた。また、ムーアは『スタートレック』のスポックの様な無感情なキャラクターを創造するのは避けたいと望み、Dr,マンハッタンは「人間的な習慣」を残しており、そこから徐々に人間性を失っていくキャラクターにしようとした[9]。かつてギボンズは全身青色のキャラター、ローグ・トルーパー(Rogue Trooper)を創造した事があり、Dr.マンハッタンの皮膚の色調にはそのモチーフを色合いを違えて再利用しようと提案した。ムーアはその提案を採用し、ギボンズはコミックの色彩設計の中でDr.マンハッタンが取り分けユニークなキャラクターになったと語っている[24]。ムーアはDCが全裸の登場人物を許可するかどうか確信が持てず、Dr.マンハッタンの描写には苦心した事を回想している[25]。ギボンズはマンハッタンの全裸を上品に作画する事を試み、正面を描くタイミングを慎重に選択し、読者がすぐにはそれと気付かないような、ギリシャ彫刻風の、「慎み深い」男性器を彼に与えた[26]
1989年にサム・ハムが執筆した未採用の映画脚本では、ヴェイトの最終目的は、過去のオスターマンを殺害しDr.マンハッタンの出現を防ぐことにあった。Dr.マンハッタンがヴェイトを殺害した時に歴史は変更され、オスターマンはDr.マンハッタンに変貌しない事になる[27][28]
コメディアン/エドワード・モーガン・ブレイク(The Comedian, Edward Morgan Blake)
キーン条約の制定後に活動している政府公認のヒーロー。第一章が始まる直前に発生した彼の殺人事件は、『ウォッチメン』の物語の始まりである。当初はギャングと戦っていたが、太平洋戦争ベトナム戦争に従軍して政府にコネを作り、イランアメリカ大使館人質事件を解決するなど工作員として活動していた。ウォーターゲート事件を追跡していた記者を殺害し、ジョン・F・ケネディを暗殺したのはコメディアンだと示唆されている。
自らの暴力衝動を満たす為にヒーローとなるような過激で粗暴な人物だが、それ故に20世紀という時代のパロディとなることを選んだ。かつてサリー(初代シルクスペクター)をレイプしようとした事があり、ローリー(2代目シルクスペクター)から敵視されている。
当初のコスチュームは顔をドミノマスクで隠した薄い布の黄色いコスチュームだった。任務中に負傷してから、革製のフルフェイスマスクと星条旗をアレンジした革製のボディアーマーに変更した。
また、スマイリーマークのバッジを愛用しており、コメディアンの血に汚れたスマイリーは『ウォッチメン』のシンボルである。
コメディアンの原型となっているのは、チャールトン・コミックに登場する平和の為なら暴力も厭わないという主義を持つスーパーヒーロー、ピースメーカー(Peacemaker)であり、更にマーベル・コミックのCIA諜報員ヒーローのニック・フューリーNick Fury)の要素が加えられている。ムーアとギボンズは、コメディアンを「巨体と怪力を与えられたジョージ・ゴードン・リディ的なキャラクター」と考えていた[3]
ナイトオウル2世/ダニエル(ダン)・ドライバーグ(Nite Owl II, Daniel "Dan" Dreiberg)
銀行家であった父の遺産で装備を整え、初代が引退すると許可を取り名前を襲名してデビューした。子供の頃から騎士物語やヒーローに憧れていた。ステルス機能に加えて火炎放射器やミサイル、機関砲を搭載した飛行船オウルシップ・アーチー[29]、小型レーザー、ホバーバイク、各種防護服などを有している。キーン条例の制定と共に引退したが、未だ情熱を抱き押さえ込んでいたためインポテンツだった。現在でも、コバックス(ロールシャッハ)との間には友人関係が続いている。
フクロウをモチーフにしたコスチュームとケープ、暗視ゴーグルを着用している。ベルトには様々な装備品が収納されたポーチが備わっており、またリモコンを使ってアーチーを遠隔操作することなども可能。
ギボンズはドライバーグを「自分の趣味に過度に没頭する、漫画マニアの少年」だと考えていた[30]。ナイトオウル2世はチャールトンのブルービートル(Blue_Beetle_(Ted_Kord))ことテッド・コードを元にしたキャラクターである。コードは先代ブルービートルであるダン・ギャレットの遺志を受け継ぎ、二代目ブルービートルとして、昆虫型の飛行船を乗り回し、自ら発明した武器を手に戦うヒーローだった。正体が新人警官である先代のダン・ギャレットは、初代ナイトオウルであるホリス・メイソンのモデルにもなっている[3]。リチャード・レイノルズは自著『Super Heroes: A Modern Mythology』において、チャールトンへの由来にも関わらず、ナイトオウルの行動様式にはDCキャラクターのバットマンとより大きな共通点が見られると述べている[31]。ジェフ・クロックによれば、ドライバーグの普段の姿は「中年に達した性的不能のクラーク・ケントを連想させる」[32]
オジマンディアス/エイドリアン・ヴェイト(Ozymandias, Adrian Veidt)
スーパーヒーローを引退してヴェイド社を大企業に成長させた。卓越した頭脳を持ち、世界で最も賢い男と呼ばれる。優れたアスリートでもあり、その身体能力は至近距離で発射された銃弾を素手で受け止められるほど高い。
かつてはアレキサンダー大王に憧れてユーラシア大陸を放浪したが、彼が失敗した事を悟ると今度はラムセス2世に学んだ。名前の「オジマンディアス」は、ラムセス2世のギリシャ語名にちなんだものである。キーン条約の制定以前に人気を保ったまま引退したため市民から賞賛されている人物でもあり、その知名度を活かしてヴェイト社を世界的企業にまで成長させた。
南極に巨大な秘密基地「カルバック」を保有しており、Dr.マンハッタンの発明品を実用化して様々な研究へと投資することでアメリカを発展させている。この成果でもある遺伝子操作で生み出された猫科の動物ブバスティスを伴っており、これは現役時代には存在していなかったが、オジマンディアスのアニメなどでは共に活躍しているなど、彼のトレードマークとして認識されている。
金色のヘッドバンド、マント、胸飾りのついたチュニックというコスチュームを着用。現役時代はドミノマスクで顔を隠していたが、引退後にコスチュームを着る際には素顔のままである。
オジマンディアスはチャールトンのサンダーボルトことピーター・キャノン(Peter Cannon)を直接のモデルにしている。ヒマラヤのラマ僧院で育てられたピーター・キャノンは古代の賢者の秘術を授けられたキャラクターであり、脳の全領域を使用することで肉体と精神を完全に活用できるようになったというその設定に、ムーアは感銘を受けていた[3]。「ヴェイトの最悪の罪の一つは、ある意味で残りの人類を見下し嘲笑していることなんだ」とギボンズは述べる[33]。2008年にヴェイトは『フォーブス』誌が選ぶ「架空の大富豪ベスト15」の第10位にランクインした[34]
二代目シルクスペクター/ローレル・ジェーン(ローリー)・ジュスペクツィク(Silk Spectre II, Laurel Jane "Laurie" Juspeczyk)
初代シルクスペクターことサリーの娘であり、彼女によってスーパーヒーローとしての英才教育を施されて成長するとシルクスペクターの名を継いだ。しかし、ローリーは「親に押し付けられた」と反発している。また、母親がブレイクを憎んでいない事に対して怒りを抱き続けている。現在は引退してオスターマン(Dr.マンハッタン)の恋人として同棲しているが、彼の価値観を受け入れる事ができず、関係は悪化している。
黒色のボンデージのようなコスチュームに、透き通った黄色の上着、ハイヒールを着用する。
映画版においてはコスチュームが大きく異なり、黄色と黒のボンデージ風スーツに、長手袋、ロングブーツ。現役時代は、髪型もポニーテールに変えている。
彼女とDr.マンハッタンの関係は、キャプテン・アトムとその恋人ナイトシェイド(Nightshade)の関係に似ているが、他の主要人物とは異なり、シルクスペクターはチャールトンに特定のモデルキャラクターを持っていない。登場人物の中に女性ヒーローの必要性を感じたムーアは、ブラックカナリアBlack Canary)やファントムレディ(Phantom Lady)の様なアメリカンコミックのヒロインから着想を得てシルクスペクターを描いた[3]IGNで紹介されている2003年に書かれたデビッド・ヘイターによる映画『ウォッチメン』草稿では、ローリーの姓はジュピターであり、コードネームはスリングショットであった[35]

ミニッツメン[編集]

ナイトオウル1世/ホリス・メイソン(Nite Owl I, Hollis Mason)
1930年代に登場した最初期のヒーロー。正義感から警察官となり、コミックブック『スーパーマン』の影響を受けてヒーローとなった。後にフーデッド・ジャスティス、初代シルクスペクター、コメディアン、キャプテン・メトロポリス、ダラー・ビル、モスマン、シルエットらと共にチーム「ミニッツメン」の創立メンバーとなる。1960年代に自身を時代遅れだと悟って引退し、現在は自動車修理工場を経営している。彼の自伝『仮面の下で』は作中世界におけるヒーローについての重要な資料となっている。
現役時代は手足を自由にした革鎧と鎖帷子のコスチュームを着用。顔はドミノマスクで隠していた。コスチュームを作成する過程で様々な試行錯誤を繰り返しており、端的にウォッチメンのヒーローが如何に現実的で滑稽な存在かを象徴する人物でもある。
初代シルクスペクター/サリー・ジュピター(Silk Spectre, Sally Jupiter)
マネージャーのローレンス・シュクスナイダーと共にスーパーヒーローの商業的価値を初めて見出した。彼女は往年の名女優などと並ぶ、かつてのセックスシンボルだった。「ミニッツメン」の一員。ブレイク(コメディアン)によるレイプ未遂やシュクスナイダーとの結婚を機に引退した。娘にヒーローとしての英才教育を施して二代目としてデビューさせた。現在はシュクスナイダーと離婚し、カリフォルニアに移住して静養中である。
当初はローリーと同じ黄色と黒を基調としたコスチュームを着用していた。当初は化学知識によって作った爆弾を使っていたが、誤って火傷を負って以来、素手で戦うようになる。この火傷を隠すために片腕だけの長手袋を装着するようになると、事情を知らない市民からはよりエロティックだと評判になった。
フーデッド・ジャスティス(The Hooded Justice
1930年代、コミックブック『スーパーマン』の第一号発売とほぼ同時期に登場した世界最初のヒーロー。「ミニッツメン」の一員。カップルを襲った暴漢を撃退する事でデビューし、更にスーパーマーケットを襲った強盗団をたった一人で鎮圧した事で「フードを被った正義」として一躍有名人なり、ヒーローブームを生み出す事になる。1950年代の共産主義者狩りの際、政府からの身分開示要請を拒否して失踪した。その正体は、フーデッド・ジャスティスの失踪と同時期に殺害されたサーカスの怪力男ロルフ・ミュラー。ただし、偽名であり本名は不明。彼は移民系ドイツ人であり、反共産主義者。第二次世界大戦以前にはナチスを賞賛する発言もしていたという。コメディアンのレイプ未遂を阻止した事から、恨みを抱いていた彼に射殺された。ゲイで極度のサディストでもあり、キャプテン・メトロポリスとは恋人同士だった。しかし、彼の暴力的傾向から倦怠期に陥り破局した。
黒いフルフェイスフードを被り、首にロープを巻いて赤いケープを纏っていた。
キャプテン・メトロポリス/ネルソン・ガードナー(Captain Metropolis, Nelson Gardner)
「ミニッツメン」の一員で発起人。アメリカ軍海兵隊に所属していた経験から、より戦術的、戦略的な方法で犯罪と戦うべきだと考えてヒーローの組織化を模索していた。「ミニッツメン」以降も1966年には新世代のヒーローを集め「クライムバスターズ」というチームを結成する。カナダ空軍の訓練を受けつつ長年に渡ってヒーロー活動を継続するも、1974年に交通事故で死亡した。
頭髪と口元の露出するマスクを着用していた。赤い航空服のようなコスチュームと青いマントを纏っていた。
ダラー・ビル(The Dollar Bill
1940年に25才でデビューしたヒーロー。「ミニッツメン」の一員。カンザスの花形運動選手であり、極めて純粋な善人だった。大手銀行のお抱えヒーローとして雇われる。しかし、デザインを重視した実用性の無いコスチュームだったため、1946年に銀行強盗と戦った際、マントが回転ドアに挟まって動けなくなり至近距離で射殺された。
口元の露出するフルフェイスマスクを着用していた。星条旗を思わせる青いスーツ、赤いマント。胸には大きくドルマークが描かれている。
モスマン/バイロン・ルイス(The Mothman, Byron Lewis)
蛾のような格好をし、大口径の拳銃を駆使して戦うクライムファイター。「ミニッツメン」の一員。大富豪の御曹司であり、ヒーローブームを知って暇潰しにスーパーヒーローとなった。精神的に不安定な所があり、1950年代の共産主義者狩りの際に行われた厳しい取調べでアルコール中毒へと陥る。その後、メイン州の精神病院に入院した。
蛾をモチーフにした派手な色彩のコスチュームを着用。背中には巨大な羽が備わっており、これで短距離ならば滑空することが可能だった。
シルエット/ウルスラ・ザント(The Silhouette, Ursula Zandt)
「ミニッツメン」の一員。オーストリアの上流階級の出身で、ナチスの迫害から逃れてアメリカに移住した。その出自から、フーデッド・ジャスティスとは仲が悪かった。チャイルドポルノの製作者を摘発するなどの活躍をしていたが、1946年にレズビアンであった事が発覚して「ミニッツメン」のイメージを守る為にチームから追放されて引退する。しかし、6週間後にかつての宿敵リクイデイターに自宅を襲撃され、恋人もろとも殺害された。
胸元のあいた、黒いスーツのようなコスチュームを着用。腰には赤い帯を巻いていた。

スーパーヴィラン[編集]

モーロック・ザ・ミスティック/エドガー・ジャコビ(Moloch The Mystic, Edgar William Jacobi)
かつての有名なヴィラン。
17歳でステージ・マジシャンとしてデビューした後、瞬く間に暗黒街の顔役にまでのし上がった。様々な悪事を働き、ヒーロー達とも幾度と無く対決したが、やがてドラッグや詐欺、売春クラブ経営などの"平凡な"犯罪者に落ちぶれていった。Dr.マンハッタンとも対決したが、最終的にはコメディアンによって逮捕され、懲役刑となる。出所後は犯罪から手を引き、「次元開発社」に勤務。定年退職した今は、小さなアパートでひっそりと暮らしているが、末期ガンを患っている。
ステージの衣装のようなタキシードを着ていた。通常の人間に比べて、若干ながら耳が尖っている。
スクリーミング・スカル
40年代に暗躍したヴィラン。
初代ナイトオウルらと対決したが、最終的に逮捕され、刑務所で服役中に改心した。宗教の道へと進み、結婚して子供を二人もうけた。現在はホリス・メイソンの近所に暮らしており、彼とは住所と電話番号を交換している。
骸骨の覆面とフードを着用していた。
キャプテン・アクシス
40年代に暗躍したヴィラン。
胸に大きく鉤十字の入ったドイツの軍服を着用。原作では片眼鏡、映画版ではガスマスクを装備している。
スペースマン
40年代に登場したヴィラン。
詳細は不明。宇宙服のようなコスチュームを着込み、光線銃(本物かは不明)を使いミニッツメンと対決した。
モブスター
40年代に登場したヴィラン。
詳細は不明。様々なマスクを被った部下を多数引き連れていた。
往年のギャングスターのようなコスチュームであり、ドミノマスクを被っている。
キャプテン・カーネイジ
60年代に登場したヴィラン。
マゾヒストであり、ヒーローに殴ってもらうために宝石店強盗などの犯罪を繰り返していた。最終的にはロールシャッハによってエレベーター・シャフトに投げ落とされたが、その生死は不明。
トワイライト・レディ
60年代に登場した犯罪女王。
違法な売春やポルノなど性風俗関係の犯罪を繰り返しており、ナイトオウルII世との間にはロマンスもあったが、最終的に逮捕された。
SMのコスチュームとバタフライマスクを着けている。武器として鞭を装備していた。
アンダー・ボス
60年代に登場した有名なギャング。ロールシャッハの宿敵。
下水道に拠点を構えていたが、ロールシャッハによって逮捕された。
ジミー・ザ・ギミック
60年代に登場したヴィラン。ロールシャッハの宿敵。
キング・オブ・スキン
60年代に登場したヴィラン。ロールシャッハの宿敵。
ビッグフィギュア(Big figure, Big figure)
60年代に活動していた有名な大物ギャング。
ロールシャッハおよびナイトオウルの活躍によって組織は壊滅して逮捕された。現在は終身刑となってシンシン刑務所に服役中だが、囚人達を配下として自由に振舞っている。
ロールシャッハへの復讐を計画しており、ロールシャッハがシンシン刑務所に収監されたため、囚人の暴動を起こすことで復讐を実行に移した。小人症を患っており、通常の人間の半分ほどの背丈しかない。

ニューヨーク市警[編集]

スティーブ・ファイン
刑事。
ジョー・ボークン
刑事。スティーブの同僚。

ジーラ・フラット実験場[編集]

ジェイニー・スレーター
DR.マンハッタンの元恋人。
ミルトン・グラス
DR.マンハッタンの元上司
ウォリー・ウィーバー
DR.マンハッタンの元同僚。

ノヴァ・エクスプレス[編集]

ダグ・ロス
記者。

ニュー・フロンティアズマン[編集]

ヘクター・ゴッドフリー
編集長。
シーモア
編集者。

失踪者[編集]

マックス・ジュア
劇作家。
ハイラ・マニシュ
シュールリアリズム画家。
ロバート・デズテェインズ
超能力者。

アメリカ合衆国政府[編集]

リチャード・ニクソン
弟37代合衆国大統領。
ジェラルド・フォード
合衆国副大統領。
ヘンリー・キッシンジャー
合衆国国務長官。
ゴードン・リディ
大統領側近。

街の人々[編集]

バーナード
ニューススタンドの店主。
バーニィ
コミック『黒の船』を読む少年。
マルコム・ロング
ロールシャッハ担当の精神科医。
グロリア・ロング
マルコム医師の妻。
ハッピー・ハリー
場末の酒場のオーナー。
ジョーイ
プロメシアン・タクシーの運転手。
アライン
ジョーイの恋人。
マイロ
プロメシアン・タクシーのマネージャー。
ゴルディアン・ノット社の作業員
マイロの兄。
ダーフ
ストリートギャングのリーダー。
ローレンス・シュクスナイダー
初代シルク・スペクターのマネージャー。彼女と結婚したが離婚した。

評価[編集]

フランク・ミラーの『バットマン: ダークナイト・リターンズ』やアート・スピーゲルマンの『マウス』と共に、『ウォッチメン』はアメリカン・コミックの分野における道標的作品であり、1950年代以降はアメリカン・コミックから失われていた成人読者を、再びこのジャンルに呼び戻した作品であると見なされている。

ドン・マークスタインは以下のように記している[36]。「『マルタの鷹』が推理小説において行い、『シェーン』が西部劇において行ったことを、『ウォッチメン』はコミックで行った。ジャンル内外のすべての読者に対して豊かな読書体験を提供する読物として、本作以前にはフィクションの低級な形式と見なされていたコミックという出自を、本作は超越した。」

書籍情報[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Solypsys (2009年3月19日). “Who will watch the watchmen?”. Urban Dictionary. 2017年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月12日閲覧。
  2. ^ a b c Eury, Michael; Giordano, Dick. Dick Giordano: Changing Comics, One Day at a Time. TwoMorrows Publishing, 2003. ISBN 1893905276, p124
  3. ^ a b c d e f g h Cooke, Jon B. "Alan Moore discusses the Charlton-Watchmen Connection". Comic Book Artist. August 2000. 2008年10月参照
  4. ^ a b c "A Portal to Another Dimension". The Comics Journal. July 1987.
  5. ^ a b c Jensen, Jeff. "Watchmen: An Oral History (2 of 6)". Entertainment Weekly. Oct 21, 2005. 2006年5月28日参照.
  6. ^ "Watching the Watchmen." TitanBooks.com. 2008. 2008年10月15日参照
  7. ^ Eury, Michael; Giordano, Dick. Dick Giordano: Changing Comics, One Day at a Time. TwoMorrows Publishing, 2003. ISBN 1893905276, p110
  8. ^ Kavanagh, Barry. "The Alan Moore Interview: Watchmen characters". Blather.net. October 17, 2000. 2008年10月14日参照
  9. ^ a b c d Eno, Vincent; El Csawza. "Vincent Eno and El Csawza meet comics megastar Alan Moore". Strange Things Are Happening. May/June 1988.
  10. ^ "Illustrating Watchmen". WatchmenComicMovie.com. October 23, 2008. 2008年10月28日参照
  11. ^ Heintjes, Tom. "Alan Moore On (Just About) Everything". The Comics Journal. March 1986.
  12. ^ a b c d Jensen, Jeff. "Watchmen: An Oral History (3 of 6)". Entertainment Weekly. Oct 21, 2005. 2008年10月8日参照
  13. ^ a b c Stewart, Bhob. "Synchronicity and Symmetry". The Comics Journal. July 1987.
  14. ^ a b Amaya, Erik. "Len Wein: Watching the Watchmen". Comic Book Resources. September 30, 2008. 2008年10月3日参照
  15. ^ Stewart, Bhob. "Dave Gibbons: Pebbles in a Landscape". The Comics Journal. July 1987
  16. ^ Young, Thom. "Watching the Watchmen with Dave Gibbons: An Interview". Comics Bulletin. 2008. 2008年12月12日参照.
  17. ^ 身長が低いため、ロールシャッハの状態ではシークレットブーツを履いて誤魔化している。
  18. ^ ロールシャッハは「鏡を見ても耐えられるよう、新しい顔を作ったんだ」と述べている。
  19. ^ ナイトオウルの開発したもの。
  20. ^ この日記は下書きと本物の2つがあり、下書きを携帯して本物はアパートの床下に隠している。
  21. ^ Stewart, Bhob. "Synchronicity and Symmetry". The Comics Journal. July 1987.
  22. ^ Wright, Bradford W. Comic Book Nation: The Transformation of Youth Culture in America. Johns Hopkins, 2001. ISBN 0-8018-7450-5, p272-73
  23. ^ 完全に無公害の電気自動車をはじめ、ロールシャッハのマスク、ナイトオウルの飛行船など。
  24. ^ "Watchmen Secrets Revealed". WatchmenComicMovie.com. November 3, 2008. 2008年11月5日参照
  25. ^ "A Portal to Another Dimension". The Comics Journal. July 1987.
  26. ^ Kallies, Christy. "Under the Hood: Dave Gibbons". SequentialTart.com. July 1999. 2008年10月12日参照
  27. ^ Daniel Manu (2008-10-16). "Alan Moore endorsed Watchmen Movie... in 1987". Television Without Pity. 2008年10月25日参照
  28. ^ Hughes, David (2002-04-22). "Who Watches the Watchmen? – How The Greatest Graphic Novel of Them All Confounded Hollywood". The Greatest Sci-Fi Movies Never Made. Chicago Review Press; updated and expanded edition Titan Books (2008). ISBN 1556524498; reissue ISBN 978-1845767556.
  29. ^ 作中世界では最も一般的な飛行移動手段である。
  30. ^ Gibbons, "Watchmen Round Table: Moore & Gibbons" in David Anthony Kraft's Comics Interview (1988), p. 47
  31. ^ Reynolds, Richard. Super Heroes: A Modern Mythology. B. T. Batsford Ltd, 1992. ISBN 0-7134-6560-3, p. 32
  32. ^ Klock, Geoff. How to Read Superhero Comics and Why. Continuum, 2002. ISBN 0-8264-1419-2, p. 66
  33. ^ "Talking With Dave Gibbons". WatchmenComicMovie.com. October 16, 2008. 2008年10月28日参照
  34. ^ Ewalt, David M. "The Forbes Fictional 15 No. 10 Veidt, Adrian". Forbes.com. December 18, 2008. 2009年1月17日参照
  35. ^ Stax. "The Stax Report: Script Review of Watchmen." IGN. September 9, 2004. 2009年3月5日参照
  36. ^ http://www.toonopedia.com/watchmen.htm

外部リンク[編集]