ウェストランド ワスプ

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ウェストランド ワスプ
Westland Wasp

イングランド、ケンブルでのクラシック・ジェット航空ショーにおける個人所有のウェストランドワスプHAS.1(XT781/426)(2003年6月)。 イギリス海軍塗装の上に民間登録記号G-KAWW.を記入している。

イングランド、ケンブルでのクラシック・ジェット航空ショーにおける個人所有のウェストランドワスプHAS.1(XT781/426)(2003年6月)。 イギリス海軍塗装の上に民間登録記号G-KAWW.を記入している。

ウェストランド ワスプ(Westland Wasp)はイギリスの第一世代のガスタービン推進・小型艦載対潜ヘリコプターである。生産はウェストランド・ヘリコプター社で、イギリス陸軍ウェストランド スカウトと同じく、初期のレシプロ機サンダース・ロー スキーターを基礎とするP.531プログラムから発達した。ワスプはイギリス海軍の求める有人魚雷搭載ヘリコプターの仕様「MATCH("MAnned Torpedo-Carrying Helicopter")」を満たしており、フリゲートの甲板に着艦できるほど小型で、ホーミング魚雷2発という充分な武器搭載量を持っていた。

設計と開発[編集]

MATCHシステムは、脅威となる潜水艦の速度と攻撃範囲の増大に対抗し、その捕捉を可能にするために考えられた。当時の艦載兵器は充分な射程距離を持っていなかったため、MATCHは必然的に、魚雷その他の武器をヘリコプターによって目標まで運ぶ攻撃兵器となった。投下する場所と時期は遠隔操作で決定された。大型のウェセックスと違ってワスプはソナーを持たないため、母艦やその他の艦船ないし対潜戦闘単位との連携作戦のみに行動が制限されていた。

最初の原型であるサンダース・ロー P.531は1958年7月20日に初飛行したが、その後海軍により、特に下部構造の配置について、最終決定に至る前に、試作機を使った詳細な試験が行われた。1961年には「シー・スカウト」の名で先行生産型2機が発注された。その2機の先行生産型ワスプが初飛行したのは1962年10月28日であった[1]。ただちに量産が開始され、98機がイギリス海軍に供給された。またブラジルオランダインドネシアマレーシアニュージーランド南アフリカにも輸出され、全部で133機が生産された[2]

ワスプは当初「シースカウト」と呼ばれていたように基本的にスカウトの海軍型であり、設計の細かい部分が異なっていたのみである。まず降着装置は独特の車輪の付いた4脚式のものとされ、狭く、かつ揺れ続けるフリゲートの甲板上で機体を扱うことができるようになっていた。ワスプはまた、拘束器具が取り付けられるまでの間、機体を甲板に「押し付けて」置けるよう、ローターブレードに「ネガティブ・ピッチ」を取らせることができた。機体のドア部分には追加の燃料タンクが取り付けられ、テールローターとメインローターは、第一世代のヘリコプター搭載護衛艦の小さな格納庫に納まるよう、折り畳み可能になっていた。右舷後部ドアの上にはウインチを備え、また、胴体下の半自動貨物切り離し装置で吊り下げ式に貨物を運ぶこともできた。乗客3名分の座席も備えていたため短距離輸送任務も可能で、死傷者運搬のためには後部機内空間に担架を1台収容できた。

後日の改良によりシュドSS.11有線誘導ミサイルの搭載も可能となり、機内の天井に照準手の観測窓が設けられた。また機体両側の舷側スポンソンには、着水の際には機首部分が重い本機が転覆しないように、膨張式の大きな非常用フロートが装着された。SS.11は巡視艇または海岸の拠点のような小さな地上目標を攻撃する能力しか持っていなかったため、後にAS.12に更新された。

運用歴[編集]

イギリス海軍[編集]

ワスプ HAS Mk.1 は1963年6月から1964年3月に掛けて第700海軍飛行隊で試験運用を行い、その後1964年に小型艦での任務に投入された。主たる実戦配属部隊は第829海軍飛行隊であったが、そのほか、第一線の乗員を供給する訓練部隊として1965年から1967年までは706飛行隊、1972年から1981年には703飛行隊が活動した。コマンドー突撃飛行隊(845および848海軍飛行隊)には1973年まで1機のワスプが連絡用に配置されていた。同機は潜水艦キラーとして有能だったが、最も威力を発揮したのはウェセックスHAS.3対潜ヘリコプターとペアで行動する場合だった。1970年代後期には、ウェストランド リンクスが徐々に本機の後継として配備され始めた。

フォークランド紛争1982年4月25日、イギリス駆逐艦アントリム搭載のウェセックスHAS Mk 3ヘリコプターがアルゼンチンの潜水艦「サンタフェ」を捕捉し、爆雷攻撃を行った。イギリスのフリゲートプリマスはウェストランド ワスプHAS.Mk.1ヘリコプターを、同じくブリリアントはウェストランド リンクスHAS Mk 2を発進させた。リンクスは潜水艦をMK46短魚雷で攻撃して、そのうえ棒状銃架(ピントルマウント)に搭載されたGPMGで掃射した。ウェセックスもまたGPMGでサンタフェを銃撃した。プリマス搭載のワスプは、砕氷艦エンデュアランスから発進したもう2機のワスプと一緒に潜水艦に対してAS.12対艦ミサイルを発射し、セイルに命中させた。サンタフェは大きな損傷を受け、潜航不能となった。同艦の乗員はサウスジョージア島のキングエドワードポイントの埠頭の桟橋付近に座礁させ艦を放棄、全員陸上に脱出してイギリス軍に降伏した。これはフォークランド紛争の海の戦いにおけるイギリス海軍任務部隊最初の直接戦闘であるとともに、両軍を通じて最初の損失となった。

本機は、1988年、ロスシー級フリゲート(12M型)の最終艦の退役とともに引退した。

マレーシア海軍[編集]

同機をマレーシア海軍が導入したのは、他の導入国に比べて著しく遅く、1990年5月11日になってからである。同機のマレーシア海軍在籍期間は比較的短く、ちょうど10年後、ユーロコプター フェニックと交替して退役した。

ニュージーランド海軍[編集]

最終的には19機となったニュージーランドのワスプの最初の4機は、1966年に取得され、直ちにニュージーランド海軍の新しいリアンダー級フリゲートワイカト(HMNZS Waikato)」に配属された。そして1980年代を通じてペルシャ湾での警戒飛行への参加を含む多くの任務に従事した。同機の運用はニュージーランド海軍の操縦士によって行われたが、保守はニュージーランド空軍第3飛行隊の地上整備員が行った。

1997年には、新しいアンザック級フリゲート(HMNZSテカハ(Te Kaha))の到着を祝って4機の同機による展示飛行が行われた。

同機はニュージーランド海軍に32年にわたって勤務し、最初の同機搭載艦であるフリゲート「ワイカト」の退役と同じ年に引退した。後継はSH-2シースプライトであった。

ニュージーランド海軍の同機は、クライストチャーチのニュージーランド空軍博物館と、オークランドの運輸技術博物館に保存されている。その他数機が個人に売却され、そのうち少なくとも1機は飛行可能である。

オランダ海軍[編集]

オランダ海軍においては、ワスプ・ヘリコプターの使用は1960年代終わりの航空母艦カレル・ドールマンの船上火災を契機に始まり、NATOでの対潜コミットメントはその時からワスプ飛行隊によって担われることとなった。ワスプはファン・スペイク級フリゲート6隻を母艦として行動した。AH-12Aとよばれたワスプの後継はウェストランド リンクスであった。

その他の使用国[編集]

同機はその他、ブラジル海軍インドネシア海軍南アフリカ海軍でも使用された。インドネシア海軍のワスプはすべてオランダ海軍機の転用で、最後の現役機となった。

各型[編集]

  • P.531 - 試作機
  • シースカウト HAS.1 - イギリス海軍最初の呼称
  • ワスプ HAS.1 - 生産型

使用国[編集]

要目 (Wasp HAS.1)[編集]

  • 乗員: 操縦士1、他1
  • 乗客: 4
  • 全長: 40 ft 4 in(12.30 m)[3]
  • 全幅: 32 ft 3 in(9.83 m)
  • 全高: 8 ft 11 in(2.72 m)
  • 円板面積: 816.9 ft²(75.9 m²)
  • 空虚重量: 3,452 lb(1.569 t)
  • 最大離陸重量: 5,500 lb(2.5 t)
  • 発動機: ロールス・ロイス ニンバス103ターボシャフト1基(1,050shpを710shpにレートダウンして使用)
  • 超過禁止速度: 120 mph(104 knots, 193 km/h)
  • 巡航速度: 110 mph(96 knots, 177 km/h)
  • 航続距離: 303 miles(263 nm, 488 km)
  • 実用上昇限度: 12,200 ft(3,720 m)
  • 上昇率: 1,440 ft/min(7.3 m/s)
  • 円板荷重: 6.75 lb/ft²(33 kg/m²)
  • 出力重量比: 0.19 hp/lb(0.31 kW/kg)
  • 武装:
    • 対潜兵器: Mk 44魚雷 ×2 または Mk 46魚雷 ×1 または Mk 44爆雷 ×2
    • ミサイル: SS.11ミサイル ×4 (後にAS.12ミサイル ×2 に更新)
    • その他: GPMG、4.5 Flares、Smoke/flame floats.

関連項目[編集]

(同等機)

脚注[編集]

  1. ^ James 1991, pp.371—372.
  2. ^ Donald and Lake 1996, p.439.
  3. ^ 胴体長9.24 m: Donald and James 1996, p.439.

参考図書[編集]

  • Donald, David and Lake, Jon. (eds.) Encyclopedia of World Military Aircraft. London:Aerospace Publishing, Single volume edition, 1996. ISBN 1 874023 95 6.
  • James, Derek N. Westland Aircraft since 1915. London:Putnam, 1991, ISBN 0 85177 847 X.

外部リンク[編集]