ウイングガンダムゼロ

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ウイングガンダムゼロ / ウイングガンダム0(Wing Gundam ZERO) は、1995年放送のテレビアニメ新機動戦記ガンダムW』に登場する架空の兵器。有人操縦式の人型ロボット兵器モビルスーツ」(MS)のひとつ。通称は「ウイングゼロ」、または「ゼロ」。

作中の年代である「アフターコロニー」(A.C.)史上初のガンダムタイプMSで、「ウイングガンダム」に次ぐ番組後半の主役機。作中最強のMSのひとつであり、パイロットを廃人に追い込む危険のあるインターフェイスシステムと、強大な兵器を装備している。作中では「カトル・ラバーバ・ウィナー」を初め多くの主要人物たちによって乗り継がれるが、最終的に主人公「ヒイロ・ユイ」の搭乗機となる。

メカニックデザイン大河原邦男が担当。テレビ放送終了後に発表されたOVAおよび劇場用アニメ新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』(以下『EW』)では、カトキハジメによって大幅にデザインが変更された。この二つのウイングゼロはそれぞれ「テレビ版」「EW版」として区別されているが、設定上は同一機体とされている。カトキいわく、「こうしたデザイン違いは『EW』がテレビ版のカーテンコールであるという位置付けから、ファンサービスを充実させた結果である」とし、「テレビ版に対するパラレルワールド的な要素としてのものである」と説明している[1]

『EW』をもとに一部設定の改変と追加が行われた漫画『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 敗者たちの栄光』(以下『敗栄』)、および小説『新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop』(以下『FT』)では、カトキがテレビ版をもとにデザインした「ウイングガンダムプロトゼロ」が登場する。いずれも詳細は後述。

本項では、外伝作品『新機動戦記ガンダムW〜ティエルの衝動〜』などに登場する各派生機の解説も行う。

機体解説[編集]

諸元
ウイングガンダムゼロ
Wing Gundam ZERO
型式番号 XXXG-00W0
頭頂高 16.7m
重量 8.0t
装甲材質 ガンダニュウム合金
出力 3,732kW(EW版設定)
推力 88,150kg(EW版設定)
武装 ツインバスターライフル×1
ビームサーベル×2
マシンキャノン×2
ウイングバルカン×2(テレビ版)
ウイングシールド×1(テレビ版、『敗栄』)
アビリティレベル ファイティングアビリティ:レベル150
ウエポンズアビリティ:レベル150
スピードアビリティ:レベル160
パワーアビリティ:レベル140
アーマードアビリティ:レベル140
リーオーをオールレベル100として換算)
搭乗者 ヒイロ・ユイ
デュオ・マックスウェル
トロワ・バートン
カトル・ラバーバ・ウィナー
張五飛
ゼクス・マーキス
トラント・クラーク

A.C.180年ごろ[2]トールギスを開発した6人の科学者たちが、コストと実用性を度外視し、高性能のみを追求し設計した機体[3]。のちにOZを出奔した科学者たちが開発した5機のガンダムの原型機でもある[3]

普通の人間には操縦できないというトールギスの欠点を克服するべく、新開発のインターフェイス「ゼロシステム」を搭載している[4]。機体構造も一新され、装甲材にガンダニュウム合金を採用することで[4]、圧倒的な耐衝撃性と対熱性を獲得している[5]。このガンダニュウム合金にちなみ、本機には「ガンダム」のコードネームが与えられた[3]。背部の翼型スラスターと、コロニーを破壊可能なツインバスターライフルの採用によって、単機での制圧戦や一撃離脱戦法も可能としている[6]

しかし、ゼロシステムにはパイロットの身体と精神に深刻な障害を与えるという別の問題点があり[3]、機体自体の破壊係数の高さもあって科学者たちは実機を製造することなく設計データを封印した[3][注 1]。それから15年後のA.C.195年、自身を裏切ったコロニー勢力に憤ったカトル・ラバーバ・ウィナーが、当時の開発スタッフであるH教授が残した設計図をもとに製造する[3]

ゼロシステム[編集]

人体と精神の不安定さを解決するために導入されたインターフェイスシステム[8]。正式名称の「Zoning and Emotional Range Omitted System」(直訳すると「領域化および情動域欠落化装置」)[9]から、ゼロシステム (Z.E.R.O.System)と略称される。

システムが分析・予測した戦況の推移とその対処法、起こりうる結末を搭乗者の脳に直接伝達し、勝利のために取るべき行動をパイロットに示す。コクピット内の高性能フィードバック機器によって脳内の各生体作用をスキャン後、神経伝達物質の分泌量をコントロールすることで、急加速・急旋回時の衝撃や加重などの刺激情報の伝達を緩和、あるいは欺瞞し、通常は活動できない環境下での機体制御を可能とする[10]

コクピット構造もゼロシステムに対応しており、コンソールには周囲の敵を立体的に捕捉可能な球状の3次元レーダーディスプレイ、複数の機体を判別するサブモニターとデータディスプレイが設置されている[8]

しかし、ゼロシステムが提示する戦術とは、基本的に単機での勝利を目的としたもので、目的達成のためであればたとえ搭乗者の意思や倫理に反する行為も平然と選択する。状況によっては搭乗者自身の死や機体の自爆、友軍の犠牲もいとわない攻撃など、非人間的な選択が強要されることもあり、これがパイロットの精神に多大な負担をかける。そのため、このシステムを使いこなすには、自身の感情をコントロールし、かつシステムの命令を押さえ込むだけの強靭な精神力が要求される[3]

テレビ版の1年後の戦いである『EW』まで、このシステムを用いて戦い抜くのはヒイロ・ユイのみである[注 2][注 3]。ヒイロ以外の4人のガンダムパイロットおよびゼクスもこの機体に搭乗しシステムを体験、各々の未来を垣間見る。また、カトルは一度だけガンダムサンドロックにシステムのコピーを搭載し、広域の集団戦闘に置ける状況分析と把握のサポートシステムとして利用する。

テレビアニメ版[編集]

地球上での活動を重視した5機に対し、ウイングゼロは宇宙戦闘に特化した機体として設計された[2][13]。背部には2枚の開閉式カバーを備えた2基のスラスターユニットを装備し、展開時は大気圏内での浮力も向上する[14]。肩部には開閉式のショルダーバーニアを備え、機体の姿勢制御能力を高めている[13]。胸部左右のエアダクトは、防御力の低下を避けるために、必要時のみカバーを開閉させる方式を採用している[13]

ネオバード形態[編集]

大気圏突入や長距離巡航を目的とした航空機形態。各部バーニアスラスターのベクトルを集中させることで、トールギスをしのぐ加速性能を発揮する[3]。変形方法は背部のウイングのカバーを平行に展開させ、頭部・下半身を180度回転、両膝・肩アーマーを折り畳み、足首収納と同時にゼロバーニアを露出、フロントスカートとサイドアーマーを副翼の如く立たせた後ウイングシールドとツインバスターライフルを背部ジョイントにマウントして変形を完了する。

劇中では当形態で初登場し、宇宙要塞バルジの管制官からはシャトルと誤認される。最終回では、地球に突入しつつあるリーブラの破片を大気圏突入しつつツインバスターライフルで破壊し、当形態に変形して重力圏を離脱する。

劇中での活躍[編集]

父親の死を目の当たりにしたカトルが、家族を死に追いやったコロニーの人々と、宇宙に存在する武器を憎悪し、ウィナー家の資産を投じて製造する。しかし、カトルはゼロシステムに精神を侵され、友であるトロワ・バートンが搭乗するヴァイエイトを撃墜寸前に追いやる。その結果ようやくゼロから解放されたカトルは月面基地においてメリクリウスの自爆装置を作動させ、この機体を消滅させようとするが結果的に失敗に終わる。

その後、機体を回収したOZ(オズ)の技術士官であるトラント・クラークによって稼働実験が行われるが、やがてゼロシステムで暴走したトラントはデュオ・マックスウェルが搭乗するガンダムデスサイズヘルとの戦いで自滅し、機体はそのまま宇宙を漂流する。

のちに機体を発見したOZ部隊によって爆破処理されようとするが、そこを襲撃してきたゼクスが自身の乗機とし、サンクキングダムでのヒイロのエピオンとの対決後に互いの機体を交換する。地球軌道上におけるエピオンとの最終決戦では激闘の末に勝利。そして地球へ落下するリーブラの破片を狙撃し、これを破壊する。なお、漫画版ではエピオンを含む6機のガンダムでリーブラを破壊する。

Endless Waltz版[編集]

OVA公開当時は「ウイングガンダムゼロカスタム」とも呼称されたが、徐々に「ウイングガンダムゼロ(EW版)」という名称表記へと移行していった(詳細は「#名称・あつかいについて」を参照)。

機体色は、テレビ版よりも赤を減らした白青のツートンに近い配色。兵器的な無骨さをもつテレビ版とは対照的に、天使を髣髴とさせる[15]4枚の翼、甲冑的な意匠を取り入れた本体部と、よりキャラクター性を重視したスマートなデザインとなっている。カトキによれば、テレビ版のデザインはあまり羽根らしいシルエットではなく、一部の女性視聴者から「虫みたい」などと評されるものであったことから、「ウイング」という名に決着をつけることも意図されたという[1]。テレビ版のネオバード形態への変形機構は廃止され、武装も一部省略されている。また、惑星間航行用ブースターを装着することも可能。

ほかの4機は頭部のみ石垣純哉のデザインであり、顔面の形状はテレビ版に準じているが、本機のみすべてがカトキのデザインのため、1機だけテレビ版と顔面の形状が変わっている。ただし『EW』の1話ではテレビ版のゼロと同じ形状で描かれた場面がある。

『敗栄』『FT』では、後述の「プロトゼロ」を改修して完成した機体と設定され、映像版にはない機構として、ゼロシステム起動時に、頭部の耳部分が開き羽状のセンサーユニットらしきものが展開し胸部サーチアイ下部の装甲が下にスライドして開くギミックが追加されている。プロトゼロが、ゼロシステムで暴走したトラントによって自爆大破したのち、デュオの協力を得たハワードが、同じく大破したゼクスのトールギスF(フリューゲル)とともに回収。ゼロシステムが提示した改修案をもとに、トールギスFに装着されていたウイングバインダーとウイングガンダム(EW版)に酷似した外装を組み合わせた当機体へと変貌する。下記のネオバード形態の設定が追加された際に、胸部のデザインがプロトゼロの形状とラインを取り入れたものへと変更されている。

ウイングバインダー[編集]

背部フレームを介して接続された、2枚2対のガンダニュウム合金製ウイングユニット。「ウイングバインダー」の呼称は「新機動戦記ガンダムW MSエンサイクロペディア」によるもの[16]。1対は自在に開閉・移動ができる可動式の主翼2枚、もう1対は翼自体の面積が可変する副翼2枚で構成されており、機能的には推進器として特化している。この主翼は地上では文字どおり翼として、宇宙空間ではAMBAC作動肢として機能し、機体にトールギスをしのぐ大推力と機動性、運動性を与える。大気圏突入時は主翼全体で機体を覆い、摩擦熱から機体を保護する。主翼を2枚喪失したとしても、飛行能力が損なわれることはない。この翼はフラクタルフェザーレイヤーストラクチャー(自己相似形状羽根積層構造)と呼ばれるナノサイズの部材の集合体となっており、放熱・衝撃発生時に部材を羽毛のように剥離させ、再編成する機能を持つ[17]。さらには砲発射時の反動相殺にも寄与する[16]。劇中ではカトキの提案により、荒唐無稽に見えてもあまり機械らしい動きはさせず、しなやかに羽ばたき羽毛を散らしながら飛ぶ演出がなされた[1]

2017年9月発売予定の半完成品プラモデル『ハイレゾリューションモデル』では、よりしなやかな動き表現するために主翼上部が別の翼として分割されており、3対6枚の翼を有している。

ゼロフレーム[編集]

武器と最終装甲・プロペラント以外の全機能を完備しており、短時間であればこの状態での稼動も可能である。同時に、装甲などの外殻にも依存していたMSの構造応力をフレームそのものだけでまかなうことに成功した。これは、装甲と内部構造の完璧な分離に成功したということでもある。つまり、既存のOZ製のMSのように、外装の損壊によって稼動不良に陥ることがなく、全装甲の90パーセントを喪失しても戦闘を継続でき、このフレームにより人間と同等の可動範囲を持つ。このゼロフレームの時点で、ウイングゼロはすでにトールギスの性能を凌駕していたと言えるが、これはさらにトールギス1機分(以上)の武装や装甲追加を前提としたものであった[9]。このゼロフレームによって培われた機構のノウハウはのちにシェンロンガンダムやアルトロンガンダムに装備される「ドラゴンハング」の技術的な礎となっている[18]。なお、この機構は宇宙世紀シリーズに登場した「ムーバブルフレーム」と性質が酷似している。

ネオバード形態(EW版)[編集]

『敗栄』では、プロトゼロからの改修時に一度変形機能が失われるが、作中終盤に新造されたシールドが追加されたことで復活するという流れになっている[19]。本体の変形機構はウイングガンダム(EW版)を踏襲しつつ[19]、主翼を大気圏内突入形態と同位置とした宇宙戦形態と、主翼を水平に展開した大気圏内形態の二つの形態をもつ。

劇中での活躍[編集]

Endless Waltz
マリーメイア軍の蜂起に対抗するため、太陽に向けて廃棄されつつあった本機を金星付近の宇宙空間で受け取ったヒイロは、アルトロンガンダムと交戦中に地球に降下。交戦の末ヒイロは戦闘を放棄し一度海中に沈むも、マリーメイア軍の本拠地ブリュッセル大統領府上空に現れ、大統領府を覆う対核シェルターをツインバスターライフルによる3連続同地点射撃により崩壊させる。しかし、アルトロンガンダムとの戦闘によるダメージや、シェルターへの精密射撃間に回避行動を取れずサーペント部隊の集中砲火を浴び続け、最終的にはアルトロンガンダム戦で蓄積したダメージと、ツインバスターライフルの最大出力による連射反動に耐え切れず大破する[16]
その他
新機動戦記ガンダムW BATTLEFIELD OF PACIFIST』にも登場し、ビクター・ゲインツの搭乗するスコーピオを撃墜する。
『新機動戦記ガンダムW EPISODE ZERO』収録の後日談『PREVENTER・5』では、作業用MSをハリボテで見かけだけはそっくりに似せたウイングゼロが登場する。
また3DCGによる短編集『GUNDAM EVOLVE../7』では、地球軌道上に建造されたコロニーキャノンを破壊するために潜入したヒイロの前に極秘裏に修復されたウイングガンダムゼロが現れる。デザインはEW版を踏襲しているが、CGモデルにはガンプラマスターグレード版の製作に用いられたCADデータが流用された。なおこの作品ではツインバスターライフルのほかにビルゴIIのビームライフルを使用する。
∀ガンダム』49話において、月光蝶の災厄を目にしたコレン・ナンダーの脳裏にウイングゼロの顔が浮かぶシーンがあるが、これは「何でもいいからガンダムの顔を描いて欲しい」と指示されたスタッフがたまたまゼロの顔を描いたもので、監督の富野由悠季の意図したものではない(ただし結果的には∀制作の元来の狙い通り、「すべてのガンダムを包括する」ことの補強となった)。実際にコレンが過去にどの「ガンダム」を目撃したのかは不明とされている。

名称・あつかいについて[編集]

OVA発売と同時期に販売されたEW版デザインの1/100HGのプラモデル、2000年発売のパーフェクトグレード版では「ウイングガンダムゼロカスタム」という名称で販売されている。これは商品名を変えることによって混乱を避けるため、および商品登録にてテレビ版との混同を避けるための策である。しかしリデザインされた同一機ではなく改良機と誤解を招くことから、2004年に発売されたマスターグレード版と、2007年に発売されたパーフェクトグレード版「パールミラーコーティングVer.」での商品名は「ウイングガンダムゼロ(エンドレスワルツ版)」となり、2014年発売のリアルグレード版では「ウイングガンダムゼロ EW」となっている。

同様に、劇場版のパンフレットなどにおいて初期の5機のガンダムのリファインデザインがカトキハジメによって描かれ「アーリータイプ」と呼ばれたが、のちに商品化された際に「Ver.Ka」とも呼ばれるようになっている。これは本来ウイングガンダムとウイングガンダムゼロが別機体であるためで、ウイングガンダムのみ改修された「レイトモデル」が存在しない。

スーパーロボット大戦シリーズでは、『第2次スーパーロボット大戦α』までは「カスタム」と付いていたが、『第3次スーパーロボット大戦α』からは「ウイングガンダムゼロ」と表記されている。SDガンダム GGENERATIONシリーズでは、2005年5月に発売された『DS』ではゲーム中では「Wゼロ (EW)」となっていたが、公式サイトでは「カスタム」のまま[1]、2006年8月に発売された『PORTABLE』ではゲーム中でも「カスタム」のままである[2]。2009年8月6日に発売された『WARS』以降の作品では「Wガンダムゼロ(EW)」と再び変更されている。2009年12月3日に発売された『機動戦士ガンダム ガンダムVS.ガンダムNEXT PLUS』では「ウイングガンダムゼロカスタム」の名称であるが、こちらはプレイ中機体の名称が略される上、テレビ版デザインの機体も存在するので区別しやすくするためにカスタムの名称が使われている(ゲーム内でテレビ版はウイングゼロ、EW版はゼロカスタムと略される)。しかし2012年4月5日に稼動した同じくテレビ版とEW版が揃って登場する次々回作のEXVS.FBでは「ウイングガンダムゼロ(EW版)」の名称が使用されている(略称は共にウイングゼロだがEW版には(EW版)と付いている)。

これまで3Dアクションゲームでテレビ版デザイン機とEW版デザイン機がそろうことはなかったが、先述のVS.シリーズのNEXT PLUSで初めて2機の登場が実現し、W系のキャラクターからは2機とも同じ機体としてあつかわれている(ヒイロを含むテレビ版の機体に搭乗するキャラクターがEW版デザインのウイングゼロを見てもウイングゼロと認識する、また逆も同じである。しかし他作品のキャラクターからは2機共若干違うあつかいを受ける)。

GUNDAM PERFECT MISSION」においては、テレビ版とEW版が同時に登場し、ガンダムXと共に、落下するコロニーに向かってツインバスターライフルを発射する。ラストカットにおいても双方が登場する。

現在の各メディアにおける表記はEW版のみ機体名の後ろに(EW版)などの表記を付けるというかたちで、無表記の場合はテレビ版を指すということで統一されている。

ウイングガンダムプロトゼロ[編集]

『敗栄』『FT』に登場。上述のようにEW版の改修前の姿と設定されている。テレビ版準拠のデザインのため、ネオバード形態への変形機構やシールドなどの武装を有しているが、カトキの手によってウイング内部にネオバード形態用の副翼が追加されるなどのアレンジが施されている。このプロトゼロも広義には「EW版」だが、当記事では便宜上、改修後の姿を「EW版」と呼び区別する。

『FT』では、先行開発された試作零号機の設計をもとに2機が製造されたとされる。試作1号機は、A.C.186年ごろに6人の科学者のひとりドクターJが製造し、ヒイロの実父であるアディン・ロウがある任務で搭乗する。当時の技術では狙撃シークエンスやツインバスターライフルはまだ未完成であり、ゼロシステムも実用可能な段階ではなかった。2号機は、カトルがウィナー家に秘匿されていた零号機のデータをもとに製造され、未完成だった武装やシステムを実用レベルに引き上げた上で搭載している。カトキがデザインしたプロトゼロはこの2号機にあたる。

『敗栄』では、テレビ版と同じくH教授の設計図をもとに製造される。トラントがゼロシステムに取り込まれて暴走する経緯もテレビ版と同じだが、デュオとの戦いではヒルデ・シュバイカーの宇宙用リーオーがデスサイズヘルに加勢する場面に変更され、最終的にトラントが機体を自爆させたことをきっかけに、上述のように改修される。

武装[編集]

ツインバスターライフル
2挺のライフルを平行連結した2連装型バスターライフル。ネオバード形態時は、分割した状態でシールドの左右に固定される。その威力はウイングガンダムのバスターライフルの2倍以上に達し、最大出力ではスペースコロニーを一撃で破壊可能なほどの威力をもつ[2]。また、2挺に分割して別方向へ同時射撃を行ったり[注 4]、連射性能を高めることもできる[6]。バードモードでも使用可能[14]
ウイングガンダムのバスターライフルはカートリッジ方式を採用したことで最大出力で3発のみの射撃に制限されているが、ツインバスターライフルの場合は機体ジェネレーターから直接供給する方式となる[6]ただし、EW版の設定では機体本体の最大内蔵エネルギーはコロニー破壊3回分とされており、最大出力ではウイングガンダム同様3回程度の発射が限度となる。[20][16]。漫画版では、デスサイズヘル、サンドロック改、ヘビーアームズ改、アルトロン、エピオンの5機のエネルギーも上乗せした砲撃でリーブラを破壊する。
テレビアニメ劇中では、MS形態時にシールドの先端に取り付けて携行・射撃を行う場面がある。
EW版は銃身上部にサイトセンサーが追加され、より長大で無骨なデザインに変更されている。分割時はグリップ前方にあるブロック状のパーツが連結面側に折り畳まれるギミックを持つ。非使用時は分割した状態で左右のウイングに収納される。EW版のものはテレビ版よりもパワーアップしているとする資料もある[15]。EW劇中ではアルトロンガンダムとの戦闘、無理な大気圏突入と海面への着水、シェルターに向けての精密射撃時にサーペント部隊の猛攻によるダメージなどが原因で、3射以上の発射に耐えられず爆散する[21]。ネオバード形態への変形機構が追加された『敗栄』では、テレビ版と同様に機首となるシールドの両側に分割して装着される[19]
メッサーツバーク
『敗栄』『FT』で設定されたツインバスターライフルの強化ユニット。改修前(プロトゼロ)と後の両方のライフルに装着可能。通常は3基を銃身に装着した「ドライツバークバスター」として運用される。『敗栄』劇中では、ヒイロが強度の劣るレプリカをみずから製作し、ウイングガンダム(EW版)のバスターライフルに装着して使用する。
ビームサーベル
接近戦用の斬撃武装。柄の形状や大きさは一般の量産機が装備すると差はないが、ガンダムが装備するビーム兵器はガンダニュウム合金の採用によってビーム発生装置の耐久性が大幅に向上しているため、一振りで複数のMSを切断し、水中でも一切減衰しないほどの高出力を発揮する[9]。テレビ版では両肩アーマー、EW版は両副翼の懸架アームのラック内に格納される。またテレビ版の柄の色はグレー(本機をもとに造られたウイングガンダムも同様)、EW版は白である。
マシンキャノン
両肩に内蔵された4銃身式機関砲。発砲時は肩口の装甲が展開し銃身が露出する。基本的に牽制や近接防御が主用途だが[6]ビルゴクラスのガンダニュウム合金製MSであれば数秒の速射で破壊可能[要出典]。ゼロシステムが作動している場合は、パイロットの思考のみで操作することもできる[9]。装甲の脆弱化を防ぐため、肩部で回転して収納される[22][注 5]
EW版ではカバーの色が変更され、展開方法は装甲を開閉する方式となった。
ウイングシールド
対ビームコーティングが施されたガンダニュウム合金製の盾[6]。両側面のスリットにはウイングバルカンを内蔵する[6]。先端部は伸縮構造となっており、被弾面積を増やしたり[22]、敵への打撃や[13]および排熱機能も有している[23]
EW版は翼自体がシールドの役割を兼ねるうえ、変形機構が省略されたため省略された。それに合わせ、両前腕にはセンサーを内蔵した手甲が追加された。変形機構が新たに設定された『敗栄』では、テレビ版に似た形状のシールドが新たにデザインされた[19]。『ハイレゾリューションモデル』にも付属するが、垂直翼や斜めに取り付けられたカナード翼などのアレンジがなされている。
ウイングバルカン
劇中未使用の武装。装備数は2門だが、ウイングのスラスター基部先端に内蔵されているとする資料[22]と、シールドの両側に内蔵されているとする資料がある[3][6][注 6]
EW版では装備されず、テレビ版ベースのプロトゼロでも装備の有無については言及されていない。

バリエーション[編集]

ウイングガンダムセラフィム[編集]

新機動戦記ガンダムW〜ティエルの衝動〜』に登場。OZに回収されたウイングゼロのデータを元に、その量産機として開発された戦闘攻撃MS。機体名は天使の最高位階である「熾天使(セラフィム)」に由来する。ウイングが合計4枚である。サブウイングはそのまま背中に装備されているが、大気圏突入用のウイングが、サイドアーマーへの収納式となっているのが特徴。また、一般兵士が扱えるよう改良が施されたゼロシステム、通称「ゼロシステムVer.2.5」を搭載。コスト面なども考慮してバスターライフルは一丁のみとなっているが、それでも他の量産機に比べ高い攻撃力と機動性を誇る。パイロットはティエル・ノンブルー。

ガンダムルシフェル[編集]

『新機動戦記ガンダムW〜ティエルの衝動〜』に登場。セラフィム量産直前に、ゼロシステムの試験機として製造されたMSで、いわば「セラフィムの量産試作機」を前提とした機体。名称は神に反逆した熾天使「ルシファー」に由来する。ウイングが合計4枚である。外見上はゼロ(EW版)のサブウイングがメインウイングと同形状になったもので、戦闘を目的としたものではないため、一切の武装を持たない。しかし、この試験機に搭載されているゼロシステムver2.0はパイロットの目的に対して出した解答を、強制的に精神へフィードバックする危険な欠陥プログラムで、また回答自体も極端なものであるがゆえに、これによってテストパイロットであるティエルの兄カール・ノンブルーは、自らが発した「地球に平和をもたらすには?」という疑問に対して「人類の殲滅」という解答を導き出されたため、暴走を引き起こす。グレー基調のカラーに塗装されている。

ニケア専用ウイングガンダムゼロ[編集]

ニンテンドーDS用ソフト『SDガンダム GGENERATION CROSS DRIVE』に登場する機体。女主人公であるニケアが終盤に乗り換えることになる機体。アイゼンラートが一時入手したオリジナルのウイングゼロを解析し、レプリカ機として開発された。外観(EW版)だけでなく武装や性能もほとんどオリジナルと変わらず、ゼロシステムをも忠実に再現している。また、ニケア自身に備わっている生体型戦術支援システム『ZEROドライブ』と、本機のゼロシステムとの併用により、さらに高度な未来予測が可能となる。

森林迷彩型ウイングガンダムゼロ[編集]

カードダス『ガンダムコンバット』に登場。緑を基調とした機体色に塗装されている他、バックパックに2門のガトリングを装備しているなど通常のウイングガンダムゼロと差違がある。

注釈[編集]

  1. ^ ウイングゼロの開発状況には資料によって差異があり、完成直前で処分されたとするもの[7]と、当時の技術水準では製造自体が不可能であったとするもの[3]が存在する。
  2. ^ ゼクス・マーキスの搭乗機ガンダムエピオンに類似のシステムが搭載されているが、『EW』には未登場
  3. ^ 小説版『EW』では、アルトロンガンダムとの戦闘時、ヒイロはゼロシステムからの命令を一切無視して戦闘を行っていることが明記されている[11][12]
  4. ^ 分割したライフルを左右に向けつつ、機体ごと旋回させて360度攻撃することをゲームではローリングバスターライフルやローリングツインバスターライフルなどと表記されている。なお、正パイロットになったヒイロは一度もその撃ち方を使用することはない。
  5. ^ 劇中では蓋状の装甲を開いて使用するシーンもある。
  6. ^ テレビ版本放送時に発売された旧プラモデルキット3種ではウイング側の砲身が再現されているが(正確には1/144のみ再現されていないが、解説書のネオバード形態裏面のイラストで確認できる)、シールド側にあるとするHGAC版では再現されていない。

出典[編集]

  1. ^ a b c アニメVスペシャル 新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 1997, p. 70.
  2. ^ a b c XXXG-00W0 ウイングガンダム0(ゼロ)”. 『新機動戦記ガンダムW』公式ホームページ. サンライズ. 2010年12月6日閲覧。
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  4. ^ a b 新機動戦記ガンダムW MSエンサイクロペディア 2007, p. 28.
  5. ^ 電撃データコレクション 新機動戦記ガンダムW 増補改訂版 2012, p. 68-71.
  6. ^ a b c d e f g 新機動戦記ガンダムW MSエンサイクロペディア 2007, p. 30.
  7. ^ 新機動戦記ガンダムW MSエンサイクロペディア 2007, p. 35.
  8. ^ a b 新機動戦記ガンダムW MSエンサイクロペディア 2007, p. 34.
  9. ^ a b c d 『プラモデル「ウイングガンダムゼロ エンドレスワルツ版」組立説明書』 バンダイ〈1/100スケールモデル MG(マスターグレード)〉、2004年10月 
  10. ^ 電撃データコレクション 新機動戦記ガンダムW 増補改訂版 2012, p. 74.
  11. ^ 新機動戦記 ガンダムW―Endless Waltz 下巻 1997, p. 196-200.
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  22. ^ a b c 『1/60 ウイングガンダムゼロ』バンダイ、1995年10月、組立説明書。
  23. ^ 『1/144 ウイングガンダム0』バンダイ、1995年9月、組立説明書。

参考文献[編集]

関連項目[編集]