ウィザードリィIV ワードナの逆襲

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ウィザードリィIV ワードナの逆襲
ジャンル ロールプレイングゲーム
対応機種 Apple IIDOS(IBM-PC)
日本の旗 NEC PC-88PC-98
開発元 Sir-Tech Software, Inc.
日本の旗 フォア・チューン
発売元 Sir-Tech Software, Inc.
日本の旗 アスキー
デザイナー アンドリュー・グリーンバーグ
ロバート・ウッドヘッド
ロー・アダムス3世
Sir-Tech Software, Inc.
シリーズ ウィザードリィ
人数 1人
メディア フロッピーディスク
発売日 アメリカ合衆国 198711011987年11月1日
日本 198812151988年12月15日
デバイス キーボード
その他 PCエンジン・PlayStationでのリメイク版は別記
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ウィザードリィIV ワードナの逆襲』(ウィザードリィ フォー ワードナのぎゃくしゅう)または『ウィザードリィ シナリオ#4 リターン・オブ・ワードナ』(原題:Wizardry: The Return of Werdna - The Fourth Scenario)は、ロールプレイングゲームウィザードリィ』シリーズの4作目である。1987年にSir-Tech社より発売された。翌1988年には日本向けにNEC PC-88PC-98対応ソフトとして日本語翻訳版がリリースされている。

本作は先に発売されたシリーズ3作とは内容が大幅に異なっている。前3作までの冒険パーティーによる続編ではなく、本作の主人公はシリーズ1作目『狂王の試練場』(Proving Grounds of the Mad Overlord)の最後で倒されダンジョンに封じられた悪の魔術師ワードナである。

邦題[編集]

ウィザードリィ』シリーズの各シナリオ邦題は1作目『狂王の試練場』をはじめとして多くがゲームスタジオ制作のファミリーコンピュータ版を初出としているが、本作『ワードナの逆襲』についてはファミリーコンピュータ版が制作されなかったため、しばらくの間邦題が存在しなかった。1988年発売の日本版移植NEC PC-88PC-98版のゲーム中では英題をそのまま仮名書きした「リターン・オブ・ワードナ」とされていた。1994年はPCエンジン『ウィザードリィIII&IV』でも和訳されたサブタイトルは使用されていない。

『ワードナの逆襲』の初出は1990年発売の手塚一郎のノベライズ作品のタイトルである。このタイトルは2001年発売の『ウィザードリィ ニューエイジオブリルガミン』で初めてゲーム版の日本語タイトルとして正式に採用された。

世界観[編集]

『ワードナの逆襲』はナンバリングとしては4作目だが世界観はシナリオ1『狂王の試練場』を継承しており、呪文や武器・防具は多くが『狂王の試練場』より引き続き登場するものである。

『狂王の試練場』の最後で冒険者に命を絶たれ、アミュレット(護符)を奪い返されてダンジョン最深部の墓に封印されていたワードナが長い時を経て生き返り、ダンジョンを脱出してかつて冒険者に奪い返されたアミュレットを取り戻すというのが大筋のストーリーである。『ワードナの逆襲』の時代においてはすでに生存していない狂王トレボーの命によって、かつてワードナ自身が作り上げたダンジョンは『狂王の試練場』時代とは全く異なるものに作り替えられており、ダンジョン内は復活したワードナを再び棺の中に戻さんとする冒険者たちであふれ、各フロアには以前の比ではない凶悪な数の罠も設置され、地上への脱出は困難を極めることになる。

本作においては『狂王の試練場』にてワードナを倒しアミュレットを奪い返したのは「ソフトークオールスターズ」と名乗る冒険者たちという設定であり、彼らは最終盤に最強の敵パーティーとしてワードナの前に立ちはだかることになる。この設定は同封のマニュアルにも説明されている。

シリーズ中でも冗談の要素が特に顕著であり、その好例としてダンジョン内に彷徨うトレボーの亡霊を鎮めるキーアイテム・「聖なるトレボーのケツ」が挙がる。これはダンジョン内の自動販売機で100Gの価格にて購入できるシロモノであり、要はトレボーの骨盤である。他にも使用効果無しのコレクションアイテムや異様に防御性能の高い「ハゲのかつら」などのふざけた印象のアイテムが多数存在する。

ゲーム内容[編集]

ゲームはダンジョンの地下10階から始まる。ワードナは往年の力のほとんどを失っており、ゲームを通してその力を徐々に回復していくことになる。当面の目標は自身の全ての力を取り戻してダンジョンを抜け地上に出ることである。

それぞれの階の特定の場所には1つまたは複数のペンタグラム魔法陣)が配置されている。このペンタグラムには3つの効果があり、1つ目はワードナの強化である。各階にあるペンタグラムに入ることでワードナのレベルが上がり、能力が上がる。各階層で上がるレベルは1つだけで、何回同じペンタグラムに入ってもレベルが複数上がることはない。2つ目はペンタグラムからのワードナの下僕であるモンスターの召喚である。階層が上がるほど召喚できるモンスターも強くなる。無償で何度でも召喚でき、新しいモンスターを召喚すると既存のモンスターが新しく召喚したモンスターに置き換えられる。3つ目はワードナのHP・MPの回復である。ペンタグラムに入ることでHP全快、各呪文レベルの使用回数が最大の9まで回復する。

モンスターとの戦闘に代わり今作でワードナの敵となるのは前3作のウィザードリィの冒険者たちである。前3作でSir-Tech社へキャラクターディスクを送ったプレイヤーは、本作中で自身のキャラクターを見つけられるかもしれない。

本作には経験値の概念がなく、ワードナの成長手段はより上層のペンタグラムへ入りワードナのレベルを上げることのみである。敵として現れる冒険者たちを殺害すると薬・武器・防具等のアイテムを落とし入手できるものの、ワードナは性格悪の魔法使い(E-MAG)という扱いであるために戦士や僧侶らが使う重装備はまったく装備できない。道具を売買する施設は地上を含めて一切存在しないため、ローブや杖といったわずかな魔法使い用装備品を除きこれら大半の武器・防具はワードナには全く使い道がない。その一方で、冒険者が落としていく一部の武器や道具はイベント進行に必須な重要アイテムであることがある。

製作[編集]

ウィザードリィIVは当初の予定より発売が遅れていた。Sir-Tech社による1985年の価格カタログに本作の記載があった一方で、雑誌「コンピューター・ゲーミング・ワールド英語版」では「まだ弊社に代金を送金しないように」と通知されていた。本作は『ウルティマIV』をも上回るゲーム史に残る発売延期作品であり、発売日の確定が宙に浮いた状態が長らく続いた[1]。1986年、ロバート・ウッドヘッドは「ある『名無しの』プロダクト」がUCSD p-Systemへ転送するのに必要な時間に起因していると突き止めた[2]

難易度[編集]

『ワードナの逆襲』は非常に難易度の高いゲームであり、雑誌「コンピューター・ゲーミング・ワールド」でも「ウィザードリィの熟練者のためのゲーム」と謳われていた[3]

本作の攻略にはシリーズ前三部作における知識が不可欠である。ミスや不運に平等に容赦がないのは全3作と同様であるが、本作は前三部作とは異なり敵を倒すことによって得られる経験値の概念がなく、苦労して戦いに勝利しても報酬は特にない。そのためにプレイヤーのペースで強く成長させることが困難である。唯一プレイヤーが強くなる手段は、戦闘回数を極力少なく留め、上の階層へのルートを素早く見つけ出して1段階上のペンタグラムに入ることのみである。

敵の冒険者には、ワードナをクリティカルヒットで一撃で殺す能力を持つ忍者、モンスターを一度に複数攻撃することができるメイジ、ワードナが所持するクリアに必須のアイテムまでをも盗む能力を持つシーフ、ワードナにより倒された冒険者を生き返らせることができるクレリックがいる。

前三部作のように道に迷わぬよう各階層のマッピングを行うことが重要である。しかし本作はマッピングを行うこと自体の難易度が飛躍的に上昇している。前作まではダークゾーン、テレポーター、ピット、シュート、そして回転床といった罠が時折登場する程度だったが、本作ではこれらの罠が大量に設置されている。

初期の階層では地雷原が敷き詰められたフロアがあり、安全なルートを見つけ出すには徹底的な試行錯誤による地雷の位置の確認作業が必須である。また、別の階層では、そのポイントからは同一の風景に見える交差点に回転床を設置させることで向いている方向をわからなくさせる罠がある。ダンジョンの最上部には独特のトリックを備えた「コズミックキューブ」なる3Dの迷路があり、多数の部屋、シュート、はしご、テレポーターからなる。敵の冒険者たちも強敵揃いであり、最後のペンタグラムをもってワードナの強化を図らなければならない。

不慣れなプレイヤーを妨げるのは、まさに最初の部屋を脱出するという一見では不可能な行動である。この部屋には出口がなく、外に出る唯一の方法はMILWA(ミルワ)という明かりの呪文を唱えて隠し扉を出現させることのみである。そしてこれを行うためにはプリーストの力を借りなければならない。戦力になりそうな他の魔物たちを差し置いてあえてプリーストを召喚しなければならず、そのプリーストが戦闘中にMILWAを唱えるまで戦闘を繰り返さなければならない。そしてMILWAという呪文がどんな効果を持つのかゲーム中に説明がない。前3作をプレイしていたユーザーのみがこれらを理解できる。不慣れなプレイヤーにとってはプリーストは戦闘には役に立たない存在に見えるであろう。さらに、MILWAの呪文には時間制限が存在し、期限が切れれば扉はまた見えなくなる。

Sir-Tech社はこの最初の謎解きの難しさを認めており、本作のパッケージにはこの謎をプレイヤーが解くことができなかった場合にのみ開けるようにと書かれた、最初の部屋からの脱出法が書かれた封筒が入れられていた。

コピープロテクト[編集]

本作には変わった形のコピープロテクトが採用されている。ゲームディスクの複製行為自体はブロックされていないが、その代わりにパッケージにクレジットカードのデザインに似せて16桁の番号を記載した「モルドールチャージカード」という本が入っていた。この本は複写しにくくするために暗い赤い紙に印字されていた。ゲームで最初の階層(地下10階)を攻略後、プレイヤーはランダムで表示される12桁の番号に対応する残りの4桁の入力を求められ、本から対応する番号を探して入力する必要がある。

この手法は、ユーザーの購入証明のみならず、コピー品をプレイした人間に対しても1層分のみはわざとプレイ可能にしデモとして提供するという形を取っていたことで購入意欲を刺激した。しかしながら、この「モルドールチャージ」番号を算出する仕組みはそれほど複雑ではなく、数学の知識があれば小規模なルックアップテーブルと比較的単純な算術演算を使って正しい値を計算することができてしまう。

このいわゆる「マニュアルプロテクト」によって不正コピーを止めさせようとする試みは今日であればユーザーに少々不便を強いるものにしかならないが、オンライン通信がほとんど使用されない時期においては有効なシステムであった。次作『ウィザードリィV』では同様のプロテクトがさらに精巧なコードで採用されている。

評価[編集]

雑誌「コンピューター・ゲーミング・ワールド」のライターであり本作ベータ版のテストを行っていたScorpiaは、1987年のレビューで本作の長い発売延期を好意的に捉え、長い間待つ価値があったと述べている。彼女はこの作品が非常に難しく、自分を含めゲーム進行中にミスをし、『ウィザードリィI』の知識が必要であることを認めたが、その上で極めて公平であり、また恐らく自分がかつてプレイした中で素晴らしく最もバランスのとれたゲームのうちの1つであり、すべてのパズル・エンカウント・謎が正確に働いていると述べた。ゲームのセーブ後に敵が復活してしまう点と相変わらずもの寂しいウィザードリィのグラフィックについては批判しており、締めとして「最終評価、独特であり見過ごされてはならない作品」とした。[4]

1988年には雑誌「ドラゴン」#130でHartley、Patricia、Kirk Lesserにレビューされ、"The Role of Computers"のコラムで扱われた[5]同雑誌#142における1989年のLessersによるMS-DOS版のレビューでは3½/5の星を獲得した。[6]

リメイク版[編集]

本作には難度の非常に高いゲーム進行を少しでも易しくするための要素が加えられたリメイク版が存在する。1994年はPCエンジン『ウィザードリィIII&IV』に、2001年から2002年にかけてはPlayStationWindowsで展開された『ウィザードリィ ニューエイジオブリルガミン』にそれぞれ本作のリメイクが収録されている。

脚注[編集]

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  1. ^ Scorpia (January-February 1986). “The Year in Review”. Computer Gaming World: pp. 16 
  2. ^ Fitzgibbons, Patricia (Jan-Feb 1982). “News and Views from the Gamers' Forum On-line Conference”. Computer Gaming World: pp. 46 
  3. ^ Scorpia (1987年11月). “Wizardry IV: The Return of Werdna”. Computer Gaming World: pp. 10–11, 62–63 
  4. ^ Scorpia (1987年11月). “Wizardry IV - The Return of Werdna”. Computer Gaming World: pp. 10 
  5. ^ Lesser, Hartley, Patricia, and Kirk (February 1988). "The Role of Computers". Dragon (130): 86–91. 
  6. ^ Lesser, Hartley, Patricia, and Kirk (February 1989). "The Role of Computers". Dragon (142): 42–51. 

外部リンク[編集]