エルティシ川

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エルティシ川
エルティシ川 2006年7月2日撮影
カザフスタン パヴロダル付近
延長 4,248 km
平均流量 2,150 m³/s
流域面積 1,643,000 km²
水源 アルタイ山脈
水源の標高 -- m
河口・合流先 オビ川
流域 ロシアの旗 ロシア
カザフスタンの旗 カザフスタン
モンゴルの旗 モンゴル
中華人民共和国の旗 中国
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エルティシ川(エルティシがわ、英語: Irtysh River, ロシア語: Иртыш, カザフ語: Ertis/Ертiс, タタール語: İrteş/Иртеш, モンゴル語: Эрчис мөрөн, 中国語: 额尔齐斯河/額爾齊斯河日本語でイルティシュ川、イルティッシュ川、イルティシ川、イルチシ川、イルトィシュ川、イルトィシ川とも表記)は、アジアで、オビ川の主要な支流のひとつ。主な支流にトボル川エシム川オミ川がある。長さは4,248km。流域面積は1,643,000km2

地理[編集]

オビ川とエルティシ川の流域

源流は中国アルタイ山脈南西斜面で、ウルングル湖(烏倫古湖)をかすめてジュンガル盆地北部を北西に流れ、盆地北端を出てカザフスタンザイサン湖を通り、シベリア西部のハンティ・マンシースク付近でオビ川に合流する(北緯61度04分09秒 東経68度55分30秒 / 北緯61.0691度 東経68.9251度 / 61.0691; 68.9251座標: 北緯61度04分09秒 東経68度55分30秒 / 北緯61.0691度 東経68.9251度 / 61.0691; 68.9251 )。

通過する主要な都市は、カザフスタンのオスケメンセメイ(セミパラチンスク)、パヴロダルロシア連邦オムスクタラ_(ロシア)英語版トボリスクハンティ・マンシースクなどがある。

現在建設中のオムスク地下鉄はエルティシ川の地下を走る予定である。

11月から4月まで凍結するが、それ以外の時期は河川交通に用いられている。

歴史[編集]

ロシア人が到達する以前、16世紀まで流域は中国、モンゴルカルムイクが支配し、特にジョチ・ウルスの末裔シビル・ハン国がオビ川からエルティシ川水系の広い範囲を統治していた。シビル・ハン国は16世紀にはロシアに征服され、19世紀初頭までに流域のほとんどがロシア領となった。

1945年8月9日、ソ連軍の朝鮮半島北部への侵攻により、日本窒素が建設した水豊ダム発電所の7基の発電機のうち5基が略奪された。略奪された発電機は、イリティッシュ川(エルティシ川)上流のダムで確認されている。

利水[編集]

国営のエルティシ河運会社の本部が、西シベリアで最大の河港を持つオムスクに置かれている。

カザフスタンと中国との国境付近のウスチ・カメノゴルスクバフタルミンスクに大規模な水力発電所がある(en:Ust-Kamenogorsk Hydroelectric Power Planten:Bukhtarma Hydroelectric Power Plant)。エルティシ・カラガンダ運河がカザフスタンのステップ地域に水を供給している。ソ連時代にオビ川やエルティシ川の水を南へ導いてアラル海を潤し、中央アジアのステップを農場へと変える大規模な自然改造計画の一環でシベリア河川流転計画英語版を発表していた。しかし、この計画は計画の域を出ることなく、エルティシ・カラガンダ運河のみが完成した。

中国も、1997年7月にエルティシ川上流に運河を築いて新疆ウイグル自治区カラマイ油田周辺地域を灌漑する635工程を発表して2000年8月18日にエルティシ・カラマイ運河を完成させたが、下流の国々、特にエルティシ川に水資源の多くを依存するカザフスタンへの影響が懸念された[1]

脚注[編集]

  1. ^ Transboundary Jurisdiction and Watercourse Law: China, Kazakhstan and the Irtysh - ウェイバックマシン(2013年9月21日アーカイブ分)