イタリア共和国憲法
イタリア共和国憲法 | |
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Costituzione della Repubblica Italiana | |
イタリア共和国憲法 | |
施行区域 | イタリア |
効力 | 現行法 |
公布 | 1947年12月27日 |
施行 | 1948年1月1日 |
政体 | 単一国家、共和制、議院内閣制、 |
権力分立 | 三権分立 |
元首 | 大統領 |
立法 | 議会 |
行政 | 閣僚評議会 |
保護条項 | 1 |
改正 | 15 |
最終改正 | 2020年 |
作成 | 制憲議会 |
署名 | エンリコ・デ・ニコラ |
条文リンク | https://www.senato.it/sites/default/files/media-documents/Costituzione_lingua_giapponese_0.pdf |
ウィキソース原文 |
イタリア共和国憲法(イタリアきょうわこくけんぽう、Costituzione della Repubblica Italiana)は、イタリア共和国の憲法典である。1947年12月27日に公布、1948年1月1日に施行された。
概要
[編集]第二次世界大戦後の1946年に、ファシスト政権崩壊後初の国政選挙が行われ、そこで選挙された議員らで制憲議会を組織した。同時に実施された王政存廃を問う国民投票で共和制派が勝利し、これによって共和政体の憲法を制定することが確定した[1]。欽定憲法であるアルベルト憲章(イタリア王国憲法)に対しては、イタリア共和国憲法は民定憲法に分類される。
特色
[編集]- 敗戦後の連合軍占領下において、イタリア国民を主体として自主的に作成された。[2]
- 基本原則に「労働」「カトリック教会」「平和」条項が置かれていることにも表れているように、カトリックの社会教説とマルクス主義の理論が根底にある[2]。これは憲法制定議会選挙で、キリスト教民主主義とイタリア社会党が多勢を占めたからである。
- 単なる「非ファシズム」的な性格ではなく、「反ファシズム」的な性格を持つ。よって、思想の自由はあるが、ファシスト党は再結成は禁止されている[2]。また国王がファシスト党に手を貸した経緯から、君主制の復活を目的とする改憲を禁止するばかりか、2002年までは旧サルデーニャ・イタリア王家であるサヴォイア家の権利に厳しい制限を加えていた(選挙権・被選挙権の否認、ウンベルト2世の嫡男系のイタリア領内への入国禁止など)[3]。
- 第27条第3項は、刑罰は人道的取扱いに反するものであってはならず、受刑者の再教育をめざすものでなければならない、と規定し、第4項で「死刑は許されない」と、規定している。
構成
[編集]この節では、イタリア共和国憲法の構成と条文について記述する[4]。
基本原則
[編集]第1条
1 イタリアは、労働に基礎を置く民主共和国である。
2 主権は国民に存し、憲法の定める形式及び制限の中でこれを行使する。
第2条(人権および基本的人権の保障)
1 共和国は、個人としてまた人格がその中で形成される社会集団の一員として、不可侵である人間の権利を認め、保障する。又、政治的、経済的、社会的連帯に必要な義務の履行を求める。
第3条(市民の平等)
1 すべての市民は同等の社会的尊厳を有し、性別、人種、言語、宗教、政治的見解、個人的および社会的状況により区別されることなく、法の前に平等である。
2 市民の自由、平等を事実上制限し、人間の完全な形成およびすべての労働者の政治的、経済的、社会的組織への実質的参画を阻止する経済的および社会的秩序への障害を除去することは、共和国の務めである。
第4条(労働の権利・社会に対する寄与の義務)
1 共和国は、すべての市民に労働の権利を認め、この権利を実行あらしめる諸条件を推進する。
2 各市民は、その能力と選択に応じて、社会の物質的または精神的発展に寄与する活動または機能を遂行する義務を有する。
第5条(地方自治・分権の原則)
1 単一かつ不可分である共和国は、地方自治を認めそれを促進する。国家の権限である役務において、できる限り広範な行政の分権を実現する。立法行為の原則および手法を、地方自治および分権の必要性に適合させる。
第6条(言語少数者の保護)
1 共和国は、特別規定により、少数言語民族を保護する。
第8条(宗派の自由およびカトリック以外の宗教)
1 信仰は、法の前ですべて平等である。
3 国家と宗教との関係は、各宗教代表者との合意に基づき、法律により規定する。
2 カトリック教と異なる各宗教は、イタリアの法制度に 違反しない限り、それぞれの規則において組織を形成す る権利を持つ。
第9条(文化の推進および記念物の保護)1 共和国は、文化の発展および科学技術研究を助成す る。
2 景観並びに国の歴史的および芸術的遺産を保護する。
第10条
1 イタリアの法制度は、一般に認知される国際法の諸規定に順ずる。
は認められない。
2 外国人の法律的立場は、国際法規範および協定に即して規律される。
3 イタリア憲法で保障される民主的自由を実質的に行使することが自国で阻止される外国人は、法律で規定する条件に於いて、共和国の領域内で庇護権を有する。
4 政治犯罪を理由として、外国人の身柄を引き渡すこと
第12条
1 共和国の国旗は、イタリア三色旗、すなわち緑、白および赤の同じ幅の垂直な三つの帯の旗である。
第1編 市民の権利および義務
[編集]第1章 市民関係
第21条
1 何人も、自己の思想を、自らの言論、書面およびその他のあらゆる普及手段により、自由に表明する権利を持つ。 2 出版は,許可取得および検閲の対象とならない。
6 法律は、良俗に反する興行、その他の催しを出版物に掲載することを禁ずる。その違反を予防し、抑制する適切な措置を定める。
3 犯罪が疑われ、出版関連法が明白に許可する場合又は出版関連法の責任者表示規定に違反する場合のみ、司法当局の令状により差押を執行できる。
4 前項の場合で、絶対的緊急性があり、司法当局が迅速に令状を発行することが不可能である場合、司法警察員が定期刊行物の差押を執行できる。但し、司法警察員は、即時に又は遅くとも24時間以内に、司法当局への通知を行うこととする。
5 司法当局が通知を受けてから24 時間以内に差押を追認しない場合、差押は撤回され、すべての効果を失する。一般法により、定期刊行物の財源を公開すべきことを定めることができる。
第27条
1 刑事責任は個人に属する。
4 死刑は認められない。
2 被告人は確定判決まで、有罪と見なされない。
3 刑罰は、人道主義に反する措置であってはならず、受刑者の再教育を目的とすべきである。
第2章 倫理・社会関係
第3章 経済関係
第4章 政治関係
第2編 共和国の機構
[編集]第1章 議会
第55条(議会の構成および合同会議)
1 国会は、下院および共和国上院から構成される。
2 国会は、憲法で規定する場合のみ、両院による合同会議が開催される。
第70条(立法機能)
1 立法機能は、両院が共同して行使する。
第74条(大統領の法律再議権)
1 共和国大統領は、法律を審査し署名する前に、理由を付した教書を両院に送付し、新たな決議を要請することができる。
2 両院が、前項の法律を再度可決する場合には、同法律は共和国大統領から審査の上署名される。
第76条(立法の委任)
1 原則および方針基準が定められ、一定の期間および一定の目的に限らなければ、立法機能を政府に委任することはできない。
第81条(予算および決算の承認)
1 国は、景気循環の後退期と拡張期を考慮し、予算の歳入歳出における財政均衡を保障する。
6 予算法の内容、公共行政全体における歳入歳出の均衡および債務の持続可能性を保障するための基本的規則および基準は、憲法改正と同様の手続きを要する法律で定める原則を順守したうえ、各議院構成員の絶対多数により可決された法律で定められる。
2 借入は、景気循環を考慮する目的で、例外的事象の発生において両院議員の絶対多数により事前に承認された場合のみ許可される。
3 新たな負担又は負担増を伴う法律は、それに対処する手段を講じる。
4 両院は毎年、政府が提出する予算案および決算を法律により承認する。
5 暫定予算は、4か月を超過しない期間のみ、法律によりその行使を許可される。
第2章 共和国大統領
第88条(予算および決算の承認)
1 共和国大統領は、両院議長との協議の上、両院又はその一方を解散することができる。
2 任期満了前6か月である場合には、前項の権限は行使できない。但し、その期間が国会任期満了前6か月と、すべて又は一部が重なる場合は、その限りではない。
第3章 政府
第93条(大臣の宣誓)
1 内閣総理大臣および国務大臣はその就任に先立ち共和国大統領に対して宣誓する。
第94条(政府に対する信任、不信任)
1 政府は、両院からの信任を得なければならない。各議院は、理由を付した動議により、記名投票にて内閣信任を是認又は撤回する。
4 不信任動議は、少なくとも一方の議院の10分の一の議員による署名を必要とし、動議提出から3日間を経なければ、審議されない。
2 組閣から10日以内に、両院の信任を問わなければならない。
3 政府提議に対する、一方の議院又は両院の反対投票は、政府の辞任を義務付けるものではない。
第4章 司法
第101条(裁判、裁判官の独立)
1 裁判は国民の名の下に行われる。
2 裁判官は、法律にのみ従う。
第5章 州、県、市町村
第115条
廃止
第117条
1 国および州は、憲法、欧州連合基本条約に従う拘束要因および国際条約に基づく義務を遵守した上、立法権を行使する。
9 州は、権限が与えられる分野において、国法で規定する場合および形式に従い、外国との協定や、外国に所属する地方団体との合意を締結することができる。
2国の独占的立法権限は、以下の事項に関するものである。
a 外交、国と欧州連盟との国際関係、庇護権、欧州連合に帰属しない国の国民の法的立場
b 移民問題
c 共和国と宗教信仰の問題
d 国防、軍隊、国の安全保障、兵器・軍需品・爆薬貨幣、貯蓄および金融市場保護、競争保護、通貨制度、税制および国家会計、公的財政均衡、財政資源平準化
f 国家組織および関連選挙法、国の国民投票、欧州議会選挙
g 国および全国公共団体の制度および行政組織
h 公共秩序および安全保障、但し、地方行政警察は例外とする
i 国籍、戸籍上の身分、戸籍簿
l 司法権および各訴訟手続き、民事および刑事制度、行政裁判
m 国土全体で保障されるべき、市民権および社会権に関わる給付の基本的水準の決定
n 教育一般規則
o 社会保障
p 市、県、大都市に関わる選挙法、統治組織、基本的権能
q 税関、国境防備、国際的予防措置
r 質量、長さ、時間定義、国、州、地方行政データの統計および情報処理調整、優れた創造産物
s 環境、生態系、文化財保護。国と州が共同で権限を持つ分野は、州の国際関係および欧州連合との関係、対外貿易、労働の保護、安全保障、学校自治を保障したうえでの職業。教育および訓練を除く教育、職業、科学技術研究、産業界における革新化支援、健康保護、食糧、スポーツ制度、市民防災、地域領域の統治、民間港湾、空港、大規模輸送網、航行網、通信制度、エネルギー生産、全国への送配、補完的および補充的社会保障、公共財政均衡および税務制度調整、文化財および環境財の評価、文化活動の促進および組織、貯蓄銀行、農業金融機関、地域的特色を持つ金融機関、地域的特色を持つ不動産および農業信用金庫。
3 国と州が共同権限を持つ分野においては、州に立法権が認められる。但し、基本原則の定義は、国に独占的立法権が留保される。
4 立法権が明白に国に保持されていない分野においては、州が立法権を持つ。 州、トレンティーノおよびボルツァーノ自治県は、それぞれが権限を有する分野に於いて欧州連合の二次法形成に直接参加し又不履行の場合の代行権限行使に関する条項を規定する国家法に定められる手続規則を遵守したうえ、国際条約ならびに欧州連合の規範的行為施行および執行を講ずる。
5 国が独占的立法権を有する分野における規則制定権限は国にある。但し、州に委任する場合は別とする。その他の分野における規則制定権限は州にある。
6 市、県、大都市は、組織規律およびそれらの権能遂行に関する規則制定権限を持つ。
7 州法は、社会、文化、経済生活に於ける男女均等化への障害を除去し、選挙による職務従事の男女均等化を促進する。
8 州法は、特定される他州との共同組織をも介した権能遂行の向上を目的とし、州とその他の州とで締結された合意を批准する。
第6章 憲法の保障
第134条(憲法裁判所の権限)
1 憲法裁判所は以下の事項に関して審査する。
憲法の規定に従ってなされた共和国大統領への告訴。
国および州の法律および法律と同等の効力を持つ諸行為の合憲性に関する訴訟 国の諸権限、国と州の間の権限又は州相互間の権限争議
第139条(憲法改正の限界)
1 共和制は,憲法改正の対象となりえない。
暫定規定および最終規定
[編集](13)
1 サヴォイア家の家族および末裔は、選挙民ではなく、公的職務および選挙による職務に就くことはできない。
(18)
1 憲法は、憲法制定議会の承認から5日以内に、暫定国家元首より審査の上署名され、1948年1月1日以内に施行される。
4 憲法は、共和国の基本法として、すべての市民および国の各組織から忠実に遵守されなければならない。
2 憲法本文は、共和国の各市公会堂に寄託され、各市民がこれを認識できるよう、1948年の1年間掲示される。
3 国璽を配した憲法は、共和国の公式法令集に挿入される。
暫定国家元首 エンリコ・デ・ニコラ
関連項目
[編集]脚注
[編集]出典
[編集]- ^ 百科事典マイペディア. “イタリア共和国憲法とは”. コトバンク. 2022年9月8日閲覧。
- ^ a b c 『Ⅱ イタリア共和国憲法の特徴』「参憲資料第5号 イタリア共和国憲法概要」、3頁、参議院憲法調査会事務局、平成13年(2001年)6月
- ^ 旧経過規定第13条。
- ^ “イタリア共和国憲法”. イタリア議会上院. 2022年8月20日閲覧。
参考文献
[編集]- 井口文男・編「参憲資料第5号 イタリア共和国憲法概要」、参議院憲法調査会事務局、平成13年(2001年)6月