イギリス鉄道345形電車
| イギリス鉄道345形電車 「Aventra / アヴェントラ」 | |
|---|---|
|
アビー・ウッド駅に停車中の345形電車 | |
| 基本情報 | |
| 所有者 | 345 レールリース |
| 運用者 |
MTR エリザベスライン クロスレール(TfLレール) →GTSレールオペレーションズリミテッド |
| 製造所 |
ボンバルディア・トランスポーテーション →アルストム (ダービー・リッチチャーチ・レーン工場) |
| 製造年 | 2015年 – 2019年、2025年 - |
| 製造数 | 720両 |
| 総数 | 9両編成80本(予定) |
| 運用開始 | 2017年6月22日 |
| 投入先 |
エリザベス線 グレート・イースタン本線 グレート・ウェスタン本線 |
| 主要諸元 | |
| 編成 |
9両編成 (DMS-PMS-MS1-MS3-TSW-MS3-MS2-PMS-DMS) |
| 軸配置 |
2'Bo'+2'Bo'+Bo'Bo'+2'Bo'+2'2' +Bo'2'+Bo'Bo'+Bo'2'+Bo'2' |
| 軌間 | 1,435 mm(標準軌) |
| 電気方式 |
交流 25,000 V (架空電車線方式) |
| 最高速度 | 145 km/h (90 mph) |
| 起動加速度 | 3.6 km/h/s (1 m/s²) |
| 編成重量 | 319 t |
| 編成定員 |
1,500名 (着席454名、立席1,046名) |
| 編成長 | 204.73 m |
| 車体長 |
23.615 m (先頭車両) 22.500 m (中間車両) |
| 全幅 | 2.772 m |
| 全高 | 3.760 m |
| 車体 | アルミニウム合金 |
| 台車 | Bombardier FLEXX Eco 5011 |
| 主電動機出力 | 20 × 250 kW (340 hp) |
| 編成出力 | 4,400 kW (5,900 hp) |
| 制御装置 | IGBT素子VVVFインバータ |
| 制動装置 |
電気指令式空気ブレーキ (ディスク式) 回生ブレーキ |
| 保安装置 |
AWS CBTC ETCS TPWS |
イギリス鉄道345形電車(イギリスてつどう345けいでんしゃ、英:British Rail Class 345、Class 345)はイギリスのエリザベス線(クロスレール)向けに製造された電車。
概要
[編集]ロンドンのエリザベス線向けにボンバルディア・トランスポーテーション(現在のアルストム)が製造した。ボンバルディアの「Aventra(アヴェントラ)シリーズ」の一形式である。クロスレール計画の一環として2014年2月に納入契約が締結された。2015年から2019年にかけて9両編成70本が製造され、総費用は10億ポンドを超えた。第一編成は2017年6月22日から運行開始した。
2024年6月に10編成を追加する発注が行われ、2026年に納入される予定である。増備後は9両編成80本(全720両)の所帯となる予定。
歴史
[編集]導入背景
[編集]イギリス政府における2008年鉄道車両計画において、クロスレール向けの約610両の車両の製造が必要であった。当形式は2007年に施行された「鉄道技術戦略(RTS)」の設計改善要件(ETCS Level 3を含む信号通信システム・回生ブレーキ・運用の低コスト・軽量化・高加速性能、高信頼性など)を満たすことが求められ、テムズリンク向け車両と同様のシステムを想定された[1][2]。
公表された仕様によれば「全長205m以下、最高速度 145km/h、全冷房車、定員 1,500名(座席数 450名)、エネルギー効率 24kWh/km」という性能であった。車両完成後の試験結果では、エネルギー効率が目標を上回る性能が確認され、345形の消費電力は14kWh/kmに留まった。エリザベス線の中間に位置するトンネル区間に設置されたホームドアに対応する[3][4]。オールド・オーク・コモン車両基地の新設を含む契約の総額は、約10億ポンドと推定された。落札者が車両の想定耐用年数である30年にわたり保守業務を担うこととなっているため最終的な総額は上振れが発生する可能性があった[5][6]。
入札と調達
[編集]2011年3月、クロスレールはアルストム、ボンバルディア、CAF、日立、シーメンスの5社を最終候補に選定したと発表。当初の計画では、2011年後半に入札を開始し、2013年に契約先を決定する予定であった[7][8]。
2011年8月、入札の実施は1年延期されて2012年となり、契約決定も2014年へと先送りされた。これに伴い、グレート・イースタン本線への車両投入時期は2017年5月(当初は2016年12月)に変更され、製造スケジュールも短縮された。クロスレールのトンネル掘削工事が完了するまでの間、新造車両が留置される事態を避けるためのコスト削減策であり[9]、政府の調達プロセスに関する見直しが完了するまで入札を待つという側面でもあった[10][11][12]。アルストムは、当路線にあった適切な車両がないことを理由に8月に入札を辞退した。当計画のPFI事業において、納税者の費用対効果に対する懸念から、ロンドン交通局(TfL)は鉄道車両を直接購入する方針を検討した[13][14]。2011年12月、公的資金による車両購入を可能にするために負債上限を引き上げる要請は、運輸省によって却下された[15]。
2012年2月、イギリスのサプライチェーン産業における調達・人材育成に関する「責任ある調達」条項を盛り込んだ入札要請が発出された[16][17]。その後ボンバルディアがテムズリンク向けの鉄道車両契約を獲得出来なかったことを受けて、この調達案件が政治における問題となった。同社は、クロスレールの契約を獲得出来ず、イギリスで唯一の鉄道車両製造の拠点であったダービー・リッチチャーチ・レーン工場の閉鎖を示唆したためであった[18][19][20][21][22]。
正式な入札は2012年半ばで行われ、設計要件や費用対効果などに基づき、2014年初頭に契約先を決定する見通しであった。調達は公的資金と民間資金を併用して実施される予定でした[23]。2012年9月に政府は、プロジェクト費用30%を公的資金に賄い、インフラ向け信用融資制度「UKギャランティーズ」に基づいて2億4000万ポンドの費用保証を発表[24][25]。2013年7月、シーメンスは所定期間内に十分な製造能力を確保できないと判断したため、入札から撤退した[26]。
契約の締結及び製造
[編集]2013年12月、欧州投資銀行はロンドン交通局(TfL)に対し、鉄道車両導入のために最大5億ポンドの融資を行うことで合意した。2014年2月6日には、ボンバルディア・トランスポーテーションが9両編成65本の車両を供給する10億ポンドの契約[27](9両編成18本の追加増備オプション付き)を獲得したことが発表[28][29]。当形式は、ボンバルディアのダービー・リッチチャーチ・レーン工場で製造され、2016年5月から試運転が開始される予定である。2016年7月29日、初めて落成した編成がダービー・リッチチャーチ・レーン工場にてボンバルディアとTfLによって公開された[30]。
2018年3月、さらに5本を増備するオプションが行使され、発注数は計70本となった[31]。
二次車
[編集]エリザベス線の開業後、ロンドン交通局(TfL)は同路線での利用者数が大幅に増加したことで輸送力不足を懸念し[32]、2030年代に高速鉄道路線「HS2」の開業に合わせてオールド・オーク・コモン駅の開業の際に、輸送力の更なる増強が求められると指摘した[33]。そのためTfLは、ボンバルディア買収後のアルストムや労働組合「ユナイト」にも追加発注を求めて働きかけを実施した。当時イギリス国内では、鉄道車両の製造数が不足しており、ダービー・リッチチャーチ・レーン工場の閉鎖の危機に瀕していたためであった。2024年6月、9両編成10本を追加増備し、2046年までの保守契約を3億7000万ポンドで締結され、運輸省が2億2050万ポンドを拠出した。2025年10月には二次車の製造が開始され、全編成が2027年までに運用開始される予定である。2026年6月までに二次車として初めて落成した編成の試運転が行われた。
リースバック
[編集]2018年1月、ロンドン地下鉄2024形電車の導入資金を確保するため、TfLが保有する車両を売却しリースバックする案が提示された[34]。総額10億ポンド、期間20年に及ぶこのセール・アンド・リースバック契約は、2019年3月にナットウエスト、SMBCリース、およびエクイティックスとの間で合意に至った[35]。
運用
[編集]第一編成は2017年6月22日、TfLレール(現在のエリザベス線)の東側区間のロンドン・リバプール・ストリート駅~シェンフィールド駅間にて、7両編成で営業運転を開始した[36][37]。2021年のリバプール・ストリート駅のホーム延伸工事が完了するまでは、9両編成の車両には対応できなかったためである[38]。
2018年5月には、ロンドン・パディントン駅~ヘイズ・アンド・ハーリントン駅を結ぶTfLレールの西側区間で営業運転を開始し、2019年12月までにはレディング駅まで運用が延伸された[39]。西側区間に投入された編成は当初7両編成で落成したが、その後順次、9両編成への増結が行われた[40]。
これによりシェンフィールド方面のTfLレールで使用されていた315形を全面的に置き換えた。レディング方面ではグレート・ウェスタン・レイルウェイの387形を主に置き換え、ヒースロー方面では旧ヒースロー・コネクトの360形を全面的に置き換えた。車内では無料Wi-Fiや4G通信が利用できるほか、車椅子利用者にも完全に対応したバリアフリー設計となっている[41]。
2020年5月、鉄道道路局は、ヒースロー空港のターミナル2・3、ターミナル4、およびターミナル5への345形の乗り入れを承認。これを受けて、2020年7月30日に運行を開始した。2022年5月24日には、エリザベス線として中央区間での運行が開始された。運行開始に合わせて、列車はTfLレールからエリザベス線へと路線名が改称された[42]。
エリザベス線の中央区間では、CBTC(シーメンス トレインガード)を用いて自動運転が行われるが、ドアの操作や発車操作は運転士が行う[43]。エリザベス線郊外での地上区間では、ネットワーク・レール(線路保有・管理会社)の既存の信号システムが使用される。パディントン駅とアビー・ウッド駅では、乗客を降ろした状態で自動的に折り返し運転を行うことが可能。その間、運転士は車内を移動して反対側の運転台へ向かい、逆方向への運転に備える[44]。
編成
[編集]製造された9両編成70本は、計630両の車両で構成される[45][46]。同世代の通勤用車両と同様に、車両間通路が設けられている。車内にトイレは設置されていない。座席はロングシートとクロスシートが混在しており、すべて普通車仕様である。
| 形式 | 鉄道運行会社 | 製造年 | 編成数 | 編成番号 |
|---|---|---|---|---|
| 345 | GTSレールオペレーションズリミテッド | 2015–2019 | 9両編成70本 | 345001–345070 |
| 2025– | 9両編成10本 | 345071–345081[47] |
塗装
[編集]編成愛称
[編集]以下の編成には愛称が付けられている[48]。
| 編成名 | 愛称 | 備考 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 愛称がついた編成 | ||||||
| 345004 | アンディ・バイフォード | ロンドン交通局元長官のアンディ・バイフォードに因む[49] | ||||
| 345024 | ハイディ・アレクサンダー | クロスレールの理事を務めたロンドン副市長ハイディ・アレクサンダーに因む[50] | ||||
| 345062 | ホルヘ・オルテガ | イルフォード駅で襲撃され亡くなったMTRエリザベス・ラインの従業員、ホルヘ・オルテガに因む。[51][52] | ||||
| 特別ラッピング車 | ||||||
| 345055 | エブリー・ストーリー・マーター | 2023年に開催されたロンドン・プライド仕様の塗装[53][54] | ||||
関連項目
[編集]- イギリス鉄道700形電車 - テムズリンク計画向けに概ね同様の仕様でシーメンスから製造された車両
- イギリス鉄道710形電車 - ロンドン・オーバーグラウンドに運用されているアヴェントラシリーズの車両
参考文献
[編集]- ↑ Department for Transport (23 July 2007) (PDF). Rail Technical Strategy. Norwich: The Stationery Office. pp. 5–6, 46, 56. ISBN 978-0-11-552890-3. オリジナルの30 April 2010時点におけるアーカイブ。 2022年10月12日閲覧。
- ↑ “Rolling Stock Plan”. Department for Transport (2008年1月30日). 2008年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年8月2日閲覧。
- ↑ “Crossrail rolling stock contract invitations to negotiate issued”. Railway Gazette International. DVV Media International. 28 February 2012. 2022年8月10日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2022年10月12日閲覧.
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外部リンク
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- Layout Drawing: Unit Diagram (Full Length Unit, Class 345). Bombardier Transportation. (15 February 2018). Document 3EER400017-0764, Revision F
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