アーケゾア

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アーケゾア
Fibrillanosema spore.jpg
分類
ドメ
イン
: 真核生物 Eukaryota
上界 : アーケゾア上界 Archezoa
: アーケゾア界 Archezoa
学名
Archezoa
Haeckel1894 emend. Cavalier-Smith, 1983[1]

アーケゾア (Archezoa) は、真核生物のうちミトコンドリアを持たないグループである。トーマス・キャバリエ=スミスが、原始的な真核生物であるとして、「古い動物」を意味するアーケゾアと命名した(厳密には、以前からあったアーケゾアという言葉を転用した)。

原核生物は進化の上で、まずを獲得し、その後、ミトコンドリアを獲得したと主張された。この仮説を「アーケゾア仮説」と呼ぶ。

現在では、分子系統学により、アーケゾアのいずれも、ミトコンドリアを持つ生物を祖先に持つ2次的にミトコンドリアを失った生物で、しかも別々の系統から進化(退化)したことがわかっている。そのためアーケゾア仮説は否定され、アーケゾアという言葉自体ほとんど使われない。

構成と変遷[編集]

1983年に提唱した際には原生動物界に属する亜界としており、そこにはミトコンドリアを欠く生物群としてパラバサリアメタモナス微胞子虫アーケアメーバの4を含めていた[1]。このうちアーケアメーバは新設の分類群であるが、その構成要素が明確にされたのは1987年である[2]。同年、アーケゾアはならびに上界に昇格させられ、他の全ての真核生物(Metakaryota上界に所属させる)とは根本的に異なる位置付けを与えられた[3]。しかしこの同じ論文を端緒に、ミトコンドリアを二次的に喪失したと判断された生物群が取り除かれていき、最終的に全てが二次的にミトコンドリアを失ったことが判明した。真核生物をアーケゾア上界とMetakaryota上界とに二分する枠組みは1998年に破棄された[4]。なおその後も提唱当初と同じ原生動物界アーケゾア亜界という分類群は残されたが、もはやミトコンドリアの起源とは関係がなくなり、2003年にはそれも放棄された[5]

パラバサリア[編集]

最初に取り除かれたのはパラバサリア門で、これは超鞭毛虫類とトリコモナス類からなっていた。そもそもアーケゾア仮説の提唱より以前に、トリコモナスにヒドロゲノソームが発見されており、それがミトコンドリアに由来している可能性は議論されていた[6]。これに加えて、パラバサリア類には明瞭なゴルジ体や核外紡錘糸が存在していることも「原始的真核生物」としては似つかわしくないとされた[7]。そこで1987年にアーケゾアをに昇格させた際にパラバサリアは取り除かれた[3][注釈 1]。なおトリコモナスのヒドロゲノソームがミトコンドリア由来であることが確実となったのは1996年である[8]

アーケアメーバ[編集]

次に検討の対象になったのはアーケアメーバ門で、その構成要素はエントアメーバ科ペロミクサ科マスチゴアメーバ科の3群である[注釈 2]。まずエントアメーバ科は動物の腸管に寄生(または片利共生)しており、パラバサリアと同様に嫌気的環境への適応として二次的にミトコンドリアを喪失した可能性が問題となった。しかも1989年のリボソームRNA遺伝子を用いたごく初期の分子系統解析で、エントアメーバ科の赤痢アメーバが真核生物の基部に位置していないという結果が得られた[9]。そこで1991年にエントアメーバ科が取り除かれた[10]。続いて残る2群についても分子系統解析が行われ、いずれも真核生物の基部に位置しないことから1996年に取り除かれた[11][12]。なお赤痢アメーバがかつてミトコンドリアを持っていたことは1995年に[13]、ミトコンドリア由来のマイトソームを持っていることは1999年に示されている[14][15]

微胞子虫[編集]

微胞子虫門は全てが寄生性であることから、同様に二次的にミトコンドリアを喪失した可能性が考えられた。パラバサリアとは違って、微胞子虫はヒドロゲノソームや発達したゴルジ体を持っていない上、リソソーム鞭毛中心小体をも欠いていて、微細構造の観点からはかなり単純だといえるが、これも寄生適応で失ったと考える事が可能である。1993年頃よりイントロンスプライシング装置が存在することが知られるようになり、これもより派生的な生物が寄生適応により縮退した可能性を示唆した[16]。1997年にはミトコンドリア型シャペロンの存在が明らかとなった[17]。タンパク質のアミノ酸配列を用いた系統解析によって真菌との近縁性が強固に示され、これはキチン質の細胞壁を持つ事など様々な共通性によって支持されることから、1998年に微胞子虫はアーケゾアから取り除かれた[4]。その後、微胞子虫もマイトソームを持つ事が2002年に示されている[18]

メタモナス[編集]

最後に残ったのがメタモナス門であるが、しかしランブル鞭毛虫がかつてミトコンドリアを持っていた可能性は1994年にすでに示唆されており[19]、他の生物群と同様により強固な証拠が出揃うのは時間の問題と考えられるようになった。キャバリエ=スミスは1998年に微胞子虫をアーケゾアから取り除くと同時に、かつて取り除いたパラバサリア門を復帰させた。この意味でのアーケゾア亜界は、ミトコンドリアを獲得する以前の祖先的な真核生物ではなく、ペルオキシソームとイントロンを持たない真核生物という全く定義の異なる生物群である[4]。これも2003年にパラバサリア類をメタモナス門に含めるとともに、アーケゾアは放棄された[5]。なおランブル鞭毛虫には2002年にイントロンの存在が[20]、2003年にはマイトソームの存在が[21]、2018年にはペルオキシソームの存在が示されている[22]。一方この群に含まれるMonocercomonoides exilisは2016年にミトコンドリアを(マイトソームなど縮退したものを含めて)完全に欠いていることが示されているが、これも二次的喪失である[23]

注釈[編集]

  1. ^ その後1998年に再びアーケゾアに含められたことがある[4]
  2. ^ さらにPhreatamoebidae科が知られていたが、これは後にマスチゴアメーバ科に組み入れられたのでここでは同一視する。

参考文献[編集]

  1. ^ a b Cavalier-Smith, T. (1983). “A six-kingdom classification and a unified phylogeny”. In Schenk & Schwemmler (eds.). Intracellular space as oligogenetic ecosystem. Endocytobiology. 2. de Gruyter. pp. 1027–1034. doi:10.1515/9783110841237-104. ISBN 978-3-11-084123-7 
  2. ^ Cavalier-Smith, T. (1987). “The origin of eukaryote and archaebacterial cells”. Ann. NY Acad. Sci. 503 (1): 17-54. doi:10.1111/j.1749-6632.1987.tb40596.x. 
  3. ^ a b Cavalier-Smith, T. (1987). “The Origin of Cells: A Symbiosis between Genes, Catalysts, and Membranes”. Evolution of Catalytic Function. Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology. 52. Cold Spring Harbor Laboratory. pp. 805-824. doi:10.1101/SQB.1987.052.01.089. ISBN 0879690542 
  4. ^ a b c d Cavalier-Smith, T. (1998). “A revised six-kingdom system of life”. Biol. Rev. Camb. Philos. Soc. 73: 203-266. doi:10.1111/j.1469-185X.1998.tb00030.x. 
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