アンコール

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アンコール (encore) とは、コンサートやリサイタルにおいて追加演奏を要望するかけ声のことであり、またその再演奏や、時にはアンコールで演奏された曲目のことも指す。転じて、一度済ませたことを再び行うこと(例えば、「アンコール放映」といった使われ方)。

クラシック音楽におけるアンコール[編集]

コンサート[編集]

クラシック音楽のコンサート、リサイタルにおけるアンコールはほとんどの場合、プログラムに載った正規の演目がすべて終了した後に行われる。ただし、オーケストラのコンサートの前半で独奏者を招いての協奏曲を組んだ場合、途中休憩前に独奏者単独でのアンコール曲が演奏されることもよくある。

ヨーロッパの一流オーケストラは定期演奏会において基本的にアンコールを演奏しない。これは日本のプロのオーケストラにも順ずる。しかしながら協奏曲独奏者がオーケストラの定期でもアンコールする習慣は次第に多くなってきているが、演奏時間に左右され、20分程度が多く、50分ほどの協奏曲の後ではやらない方が多い。ウィーン・フィルを例にすると、ウィーンでの通常演奏会(定期演奏会、特別演奏会など)ではアンコールを演奏せず、拍手が続いていたとしても楽団員は舞台から帰ってしまうが、ニューイヤー・コンサートのみは《美しく青きドナウ》と《ラデツキー行進曲》をアンコールとして演奏する事になっている。しかし、来日公演など、ツアーではアンコールを演奏することが良くある。

演奏家や声楽家が通常アンコールを行う場合、再登場をねだる聴衆のスタンディング・オベーション拍手喝采(時には拍手が揃うこともあり、それが習慣となっている都市や演奏会場もある)を合図とし、聴衆の好意的な反応に感謝して、アンコールの曲目を披露する。拍手がいつまでも続くような場合に、思いがけずアンコールの曲目が増えて、演奏時間が長引くというケースも起こりうる。

アンコールは、レパートリーの中から、人口に膾炙した小曲(いわゆる通俗名曲で長くとも数分程度)になることが普通だが、準備して持ってこない場合は当日のプログラムを繰り返したり、あまり有名ではないが印象深い作品がとり上げられることもある。ピアニストやヴァイオリニストは、自分や他人が編曲した作品(原曲が歌曲だったりポピュラー音楽だったりすることも間々ある)を好む。

アンコールの前に、演奏する曲目を聴衆に向かって語りかける演奏家もいるが、演奏会場の空間やエコー、マイク、空調などの理由で、演奏家の声が聴衆に広く行き渡らない場合もしばしばである。このため、演奏会場によっては気を利かせ、演奏終了後にアンコール曲目を掲示することも行われる。

独奏者・独唱者やオーケストラなどのアンサンブルは、アンコール曲目を早く大きく正確に演奏することで、技術的な能力を誇示することがあったり、あるいは拍手の波が引くように、ゆっくりと静かに、余韻を残して演奏することもあるがその曲の前後の関係で速い終曲の後にはゆっくりな小曲を持ってきたりその逆であったりもする。。決まりきった行事に定番のアンコール曲目が習慣づいている場合もある(たとえば、ウィーンのニューイヤー・コンサートにおける《ラデツキー行進曲》や《美しく青きドナウ》。両曲ともプログラムには記載されないが、伝統的に毎年演奏されている)。演奏家が同時に偉大な作曲家でもある場合、自作自演をするまでアンコールを求める拍手が繰り返されることもある(たとえばラフマニノフの《前奏曲 嬰ハ短調》作品3-2)。

オペラ[編集]

オペラにおけるアンコールは上記のコンサート、リサイタルのそれとは大きく異なり、独唱者に対してアリアを再唱してほしいとの要求となって現れる。17世紀ヴェネツィアでは既にそれが習慣として確立していたことが知られている。なおジャンルとしてはドイツオペラよりもアリアが完全に切れて番号付けされているイタリアオペラのこの傾向が強い。

この習慣は音楽上そしてドラマ進行上の流れを損ねるという点で指揮者に嫌悪されていた。トスカニーニは1910年代頃よりミラノスカラ座やその他の大劇場で一切のアンコールを拒絶する態度に出て、物議を醸した。1950年代以降、オペラ公演における指揮者の、そして演出家の地位が相対的に向上するに及んで、元々オペラ自体の上演時間がコンサートよりも長く、歌手の声も守る必要があって、このようなアリアのみのアンコールは次第に減少の傾向にある。

ポピュラー系音楽におけるアンコール[編集]

ロックポップスの場合、ミュージシャンがアンコールをいわば第2部のように扱うケースも見受けられる(例えばボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズによる、1979年1980年のコンサートにおけるものなど)。もっとも、事前に発表されたプログラムに基づいてコンサートを行うという習慣はクラシック音楽におけるほどは確立していないので、「アンコール曲」と「第2部」の区別は必ずしも明確ではないこともある。コンセプト・アルバムに「アンコール」に相当する楽曲を好んで配置するアーティストも見受けられる。

語源について[編集]

フランス語encore (もう一度、といった意)に由来する言葉であるが、現在これを再演の要求に用いるのは英語圏の住人がほとんどで、フランスではもっぱらbis (ビス)[1]が用いられている。

英語圏にあってもいつからこの言葉が再演の要求に用いられたのは定かではないが、1711年 - 12年にイングランドで発行されていた日刊紙「スペクテイター」(The Spectator )の1712年2月のある号に

「聴衆がある歌に特に喜んだ場合、彼らはいつでもencore またはaltro volto [2]と叫び、演奏者は親切にもそれを最初から繰り返すことが習慣となっていると記者は発見した」

とあるので、18世紀初めのこの頃の流行ではないかとされている。

なおドイツ語ではツーガーベ(Zugabe)として使われている。イタリア語ではアンコーラ(Ancora)だが、ダ・カーポ(Da capo)「頭から」とねだる聴衆もいる。

脚注[編集]

  1. ^ これはラテン語の「2回、もう一回」に由来する。イタリアなど他の大陸ヨーロッパ諸国でも同様。
  2. ^ 伊語altra volta (もう一回)のイギリス人による誤用、あるいは記者の誤記かと考えられる