アルミラージ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

アルミラージアラビア語: المعراج al-mi'raj)は、角の生えたウサギに似た動物。インド洋に浮かぶとされる島、ジャジラト・アル=ティニン島(Jazirat al-Tinnin)に棲息すると言われる。その名前は、ムハンマドが昇天する際に通った天への道と同じ名前である。

概要[編集]

アルミラージは13世紀のアラブペルシア世界の学者、ザカリーヤ・イブン・ムハンマド・アルカズヴィーニー英語版(1203–1283)の記した宇宙誌『被造物の驚異』にてイスカンダル(アレクサンドロス3世)がジャジラト・アル=ティニン島(の島の意)を訪れたときのエピソードとともに紹介されている[1][2]

島に恐ろしい竜が住み着いて以来、竜は島民に対して日に2頭の牛を要求した。イスカンダルが島を訪れると、島民は竜を退治してくれるようにと懇願する。イスカンダルは牛を2頭用意させ、その牛の毛皮をはいで硫黄かぎ針を詰め込んだ。いざ竜が牛を飲み込もうとする瞬間になると火がつけられ、竜はそのまま硫黄とかぎ針の詰め込まれた牛を飲み込んだ。後に島民たちが竜が死んでいることを確認し、感謝の印としてイスカンダルに贈り物をした。それが黒い角をもった黄色い野うさぎであった。[1]

概ね上記のように描写されるが『被造物の驚異』は当時人気を博し、数多くの写本が作られたためにアルミラージの描写、イラストともに様々なバリエーションが存在する[1][3][4]。以下に一部を紹介する。

体格は普通のウサギよりやや大きめで、黄色[2]または金色[5]の体毛に覆われている。最大の特徴は、額から隆起する黒い[2]螺旋状の角であり、その長さは2フィートにも及ぶ。かわいらしい外見とは裏腹に非常に獰猛な肉食獣であり、自分より体格の大きい獣や人間までも、額の鋭い角で刺し殺して食べてしまう。食欲も旺盛で、自分の何倍もの大きさのある獲物を軽々と平らげる。そのため島の動物達はアルミラージを恐れ、常にその存在に怯え逃げ回っている[2]
島に住む人間達にとっても、アルミラージは、人間達自身や、彼らが飼育している家畜を襲うので恐怖の対象であった。そのため、アルミラージが出現したという風聞が発せられるやいなや、島の住民たちはアルミラージを駆逐するために魔女に依頼をすることになる。真に魔術の心得のある魔女は獰猛なアルミラージを手懐けて無力化することが出来るので、普通の人間でも危険を犯さずアルミラージを追い払えるようになる。

起源[編集]

アルミラージの由来となったのは皮膚病に感染したウサギだという。皮膚病を伝染させるウイルスに感染したウサギは額に腫瘍が発生し、赤く膨れて隆起する。隆起、膨張した額の腫瘍はまるで角が生えているような錯覚を見せ、またおどろおどろしさを醸成する。そこから猛獣アルミラージの伝説が生まれていったと言われる。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b c Melville 2012, p. 269.
  2. ^ a b c d Ettinghausen 1950, p. 66.
  3. ^ Ettinghausen 1950, p. 67.
  4. ^ Ettinghausen 1950, p. 271.
  5. ^ Melville 2012, p. 270.

参考文献[編集]

  • Ettinghausen, Richard (1950), Studies in Muslim Iconography I. THE UNICORN, Smithsonian Institution 
  • Melville, Charles (2012), Shahnama Studies II: The Reception of Firdausi’s Shahnama, Gabrielle van den Berg, BRILL, ISBN 9789004211278 

関連項目[編集]