アメイジング・グレイス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

アメイジング・グレイス英語:Amazing Grace、和訳例:すばらしき恩寵)は、イギリスの牧師ジョン・ニュートン (John Newton,1725–1807)の作詞による賛美歌である。特にアメリカ合衆国で最も慕われ愛唱されている曲の一つであり[1]、またバグパイプでも演奏される。"grace"とは「神の恵み」「恩寵」の意。

成立[編集]

作詞者はジョン・ニュートン (John Newton,1725–1807)。作曲者は不詳。アイルランドスコットランド民謡を掛け合わせて作られたとしたり、19世紀に南部アメリカで作られたとするなど、諸説がある。

ジョン・ニュートンは1725年イギリスに生まれた。母親は幼いニュートンに聖書を読んで聞かせるなど敬虔なクリスチャンだったが、ニュートンが7歳の時に亡くなった。成長したニュートンは、商船の指揮官であった父に付いて船乗りとなったが、さまざまな船を渡り歩くうちに黒人奴隷を輸送するいわゆる「奴隷貿易」に携わり富を得るようになった。

当時奴隷として拉致された黒人への扱いは家畜以下であり、輸送に用いられる船内の衛生環境は劣悪であった。このため多くの者が輸送先に到着する前に感染症脱水症状栄養失調などの原因で死亡したといわれる。

ニュートンもまたこのような扱いを拉致してきた黒人に対して当然のように行っていたが、1748年5月10日、彼が22歳の時に転機は訪れた。イングランドへ蜜蠟を輸送中、船が嵐に遭い浸水、転覆の危険に陥ったのである。今にも海に呑まれそうな船の中で、彼は必死に神に祈った。敬虔なクリスチャンの母を持ちながら、彼が心の底から神に祈ったのはこの時が初めてだったという。すると流出していた貨物が船倉の穴を塞いで浸水が弱まり、船は運よく難を逃れたのである。ニュートンはこの日を精神的転機とし、それ以降、酒や賭け事、不謹慎な行いを控え、聖書や宗教的書物を読むようになった。また、彼は奴隷に対しそれまでになかった同情を感じるようにもなったが、その後の6年間も依然として奴隷貿易に従事し続けた。のちに、真の改悛を迎えるにはさらに多くの時間と出来事が必要だったと彼は語っている。

1755年、ニュートンは病気を理由に船を降り、勉学と多額の献金を重ねて牧師となった。そして1772年、「アメイジング・グレイス」が作詞された。歌詞中では、黒人奴隷貿易に関わったことに対する悔恨と、それにも拘らず赦しを与えた神の愛に対する感謝が歌われている。

この曲のほかにも、彼はいくつかの賛美歌を遺している。

英語の一般的な歌詞[編集]

英語の歌詞[編集]

曲のデータ[編集]

  • 原詞詞名(初行): Amazing grace! how sweet the sound
  • 曲名(チューンネーム): NEW BRITAIN または AMAZING GRACE
  • ミーター:86 86 (CM)

初出[編集]

  • "Faith's Review and Expectation"(信仰の反省と期待)という原題で、「オウルニィの讃美歌集」(1779年)の第1巻の41番目の曲として収録

所収[編集]

  • 讃美歌第二編』第167番「われをもすくいし」
  • 聖歌』第229番「おどろくばかりの」
  • 聖歌 (総合版)』第196番「おどろくばかりの」
  • 『日本聖公会聖歌集」第540番「やさしき息吹の」

サンプル[編集]

有名な歌唱など[編集]

CD・レコード音源[編集]

ライブでのみ披露[編集]

  • ジョーン・バエズ - 1985年7月13日に開催されたライヴエイドのフィラデルフィア会場でのオープニングで歌唱。
  • 藤本美貴 - 2006年のディナーショーにて披露。この模様はテレビ番組『娘DOKYU!』にて、歌唱練習シーンも含めて放送された。
  • 古謝美佐子夏川りみ - コンサートにて沖縄方言ヴァージョンをデュエットで歌った。
  • バラク・オバマ ‐ 2015年6月26日サウスカロライナ州チャールストンの教会で起きた銃乱射事件死亡したクレメンタ・ピンクニー牧師の葬儀の席上で演壇に立ち歌唱。葬儀の様子は生放送されていた[5]
  • 神園さやか - 2017年11月2日、東京渋谷 JZ Brat SOUND OF TOKYOでのライブで歌唱。

劇中歌など[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 1999年12月号の『USAトゥディ』誌で、「タイムカプセルに残しておきたい20世紀の特質を現している物100」の中にこの曲が挙げられた。ジョン・ニュートン著・中澤幸夫訳、『増補版「アメージング・グレース」物語』彩流社(2012)、16頁
  2. ^ ジョン・ニュートンの作詞は3番までで、4番はハリエット・ビーチャー・ストウ『アンクル・トムの小屋』(1852年)に掲載されている。当時の黒人奴隷がこのような歌詞で歌っていたと言われている。『「アメージング・グイレス」物語』31-33頁
  3. ^ Acadie - Daniel Lanois | AllMusic
  4. ^ May J.エイベックスによる公式サイトより
  5. ^ オバマ氏が「アメージング・グレース」 黒人牧師の葬儀でCNN 2015.06.28

参考文献[編集]

  • 『賛美歌略解』日本基督教団出版局、1954年
  • ジョン・ニュートン著・中澤幸夫訳、『増補版「アメージング・グレース」物語』彩流社、2012年

関連項目[編集]