アマドコロ

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アマドコロ
Polygonatum odoratum
Polygonatum odoratum
(2005年5月11日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: キジカクシ目 Asparagales
: キジカクシ科 Asparagaceae
: アマドコロ連 Polygonatae
: アマドコロ属 Polygonatum
: アマドコロ P. odoratum
学名
Polygonatum odoratum (Mill.) Druce[1]
英名
Solomon's Seal
変種
  • オオアマドコロ P. o. var. maximowiczii
  • ウスバアマドコロ P. o. var. odoratum
  • アマドコロ P. o. var. pluriflorum
  • ヤマアマドコロ P. o. var. thunbergii

アマドコロ(甘野老[2]学名: Polygonatum odoratum)は、キジカクシ科アマドコロ属多年草。狭義にはその一変種 P. o. var. pluriflorum[3]。日当たりのよい山野に生え、草丈50センチメートル前後で、長楕円形の葉を左右に互生する。春に、葉の付け根からつぼ形の白い花を垂れ下げて咲かせる。食用や薬用にもされる。変種に大型のヤマアマドコロオオアマドコロがある[4]

名称[編集]

和名アマドコロは、根茎の見た目がヤマノイモ科のトコロに似ており、甘みがあることが由来になっている[5][6]。「トコロ」の語源についてはよくわかっていないが、ヤマノイモの仲間のオニドコロハシリドコロのように、多肉の地下茎をもつ植物を指す名に使われている[2]

地方により、別名でキツネノチョウチン[7][8]チョウチンバナ[7]、イズイ[6]、アマナ(甘菜)[6]、エミグサ[8]、カラスユリ[8]、ヘビスズラン[8]などともよばれる。中国植物名は玉竹(ぎょくちく)[9]

花言葉は、「元気を出して」[6]「心の痛みがわかる人」[6]である。

分布・生育地[編集]

ヨーロッパ東アジアに分布する[10]。日本では、北海道本州四国九州にかけて分布する[11][6]。原野、丘陵、山麓、尾根筋などに群生して見られ、日当たりのよい山野などの草原や、林縁に自生する[12][11][13]

栽培されることも多く、庭先や鉢植えなどで葉に斑入りの園芸種を見かける[5]。栽培では、夏季は冷涼なところを好むことから、腐葉土で水はけをよくして半日陰の場所で育て、秋に根分けさせる[14]

特徴[編集]

多年草。地下には横走する多肉質の地下茎があり、浅く横に長く這い、伸びた先に花茎を立てる[8][6][2]。地下茎のところどころには節があり、ひげ根が生える[11]。草丈は30 - 80センチメートル[6]、変種のオオアマドコロでは草丈1メートル、茎径1センチメートルにもなる[15]は地下茎の先端から毎年1本の芽が出て少し斜めに立ち[4]、4 - 6本の稜角(縦筋)があり[6][2]、触ると少し角張った感じがする[8]。茎から枝を出すことはない[2]互生し、葉身はササに似た楕円形から幅広い長楕円形で両端がやや尖り[12][11][2]、普通の緑のものと斑入りの園芸種がある[8][6]

期はから初夏(4 - 5月)ころ[6]。各葉の付け根から単一または基部で2分した細い花柄を伸ばして、細長いつぼ型(形)をした白色の花を垂れ下げてつける[11][6]。花は長さは2センチメートル (cm) 、6花被片が合体した筒状形で、合弁花被の先に緑色の点がある[5][14][2]

果実液果で、径1センチメートルほどの球形をしていて、花と同様に茎に下向きに垂れ下がる[13]。果実の色は、夏から秋に暗緑色から青黒く熟す[14][11][13]種子は、楕円形や卵球形で大きめのへそが目立ち、色は茶褐色をしている[16]。種子は低温にあたることで休眠状態が打破されるため、一冬越すと翌春に芽生える[13]。さらに、もう一冬を越さなければ、地上で葉を開いて生長することができない[13]

根茎は円柱形で節があり、節間は長く横に伸びて細いひげ根を出す[5][14]

同属のナルコユリ (Polygonatum falcatum) とよく似ているが、ナルコユリは花のつけ根に緑色の突起があるのに対し、アマドコロでは花と花柄のつなぎ目が突起状にならないことで区別がつく[17]。また、ナルコユリの茎は円柱形であるが、アマドコロの茎では角張っている[6]

利用[編集]

初夏に花を下垂させて美しいことから、庭に植えて観賞用に栽培される[8]。班入り葉の園芸種も作出されている[8]。地方によってオオアマドコロヤマアマドコロなどさまざまな種類があり、若い茎葉や花は食用に、根茎は食用と薬用に利用される。

食用[編集]

春の若芽や地下茎には甘みがあり、山菜として食用にされる[6]。4 - 5月ごろに10センチメートルほどに伸びた若芽を地中部の白い部分から採取するか、10 - 20センチメートルほど伸びた芽を地上部で摘み取り、そのまま天ぷらにしたり、茹でてマヨネーズをつけて食べたり、和え物お浸し煮物などにする[5][2]。根茎は一年中利用できるが、特に晩秋(10月ごろ)が旬とされ、砂糖と醤油で甘く煮て食べたり[2]、天ぷらやフライにすると美味とされる[11][18]。花は初夏に摘み取って、軽く茹でて酢の物に利用できる[11]。若芽や花は灰汁が少なく、下ごしらえに軽く茹でて冷水に冷やして使い、塩漬けぬか漬けにして保存できる[15]

薬用[編集]

薬用部位となる根茎には配糖体コンバラリン、粘液質のマンノースなどを含んでいる[12]。マンノースには、胃や腸の粘膜を保護する作用や消炎作用があるほか、分解して体に吸収されると滋養になるといわれ、『本草綱目』(1578年)でも滋養強壮、消炎薬として紹介されている[12]

漢方では滋養強壮剤であるが、伝統的な漢方方剤ではあまり使われず、日本薬局方にも収録されていないが、かつては民間薬として利用された[15]。地上部の茎葉が黄変して枯れはじめる10 - 11月ごろに地下茎を掘り上げて、ヒゲ根や茎を取り除いて水洗いし、きざんで天日乾燥させたものを萎蕤(いずい)、漢方では玉竹(ぎょくちく)ともいう生薬である[9][15]。かつて滋養強壮に用いられていたが、現在ではあまり使われていない[12]。咳や疲労倦怠にも効果があるとされ、1日量5 - 10グラムを600 で30分ほど半量になるまで煎じ、3回に分けて服用される[9]。また、根茎を漬けた薬用酒も作られる[15]

打ち身、捻挫の薬として用いられることもあり、生の根茎をすり下ろしたものや、粉末または絞り汁は食酢と小麦粉を加えて練り合わせてペースト状にしたものをガーゼや布に伸ばして、湿布として利用した[12][15][19]

似た別の植物[編集]

若い芽生えの時期に似ている植物に、ナルコユリ(ユリ科)、オオナルコユリ(同)、ユキザサ(同)、ホウチャクソウ(イヌサフラン科)などがある[2]。ナルコユリやユキザサはアマドコロと同じように食べることができ、茎に陵がなく、草丈が60 - 100センチメートルになる点で区別できる[8][2]。ホウチャクソウは若芽に有毒成分を含んでいて食用にはならず、地下茎がないこと、芽生えの葉の先に蕾が包まれていること、茎は枝を打つことなどの外見上の違いを見ることができる[8][2]

脚注[編集]

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  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “アマドコロ(広義)Polygonatum odoratum” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2015年5月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 吉村衞 2007, p. 30.
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “アマドコロ Polygonatum odoratum var. pluriflorum” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2015年5月20日閲覧。
  4. ^ a b 馬場篤 1996.
  5. ^ a b c d e 田中孝治 1995, p. 60.
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n 主婦と生活社編 2007, p. 9.
  7. ^ a b 貝津好孝 1995, p. 82.
  8. ^ a b c d e f g h i j k 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 14.
  9. ^ a b c 貝津好孝 1995.
  10. ^ "Polygonatum odoratum (Mill.) Druce". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2012年8月15日閲覧 (英語)
  11. ^ a b c d e f g h 高橋秀男監修 学習研究社編 2003, p. 24.
  12. ^ a b c d e f 田中孝治 1995.
  13. ^ a b c d e 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018, p. 253.
  14. ^ a b c d 馬場篤 1996, p. 17.
  15. ^ a b c d e f 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 15.
  16. ^ 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018.
  17. ^ 大嶋敏昭 2005, p. 192.
  18. ^ 本山荻舟 『飲食事典』平凡社、1958年、13頁。全国書誌番号:59001337 
  19. ^ 廣部千恵子、「日本の民間薬4 : 皮膚のトラブルに対する民間薬2」 清泉女子大学紀要 50巻, 2002-12-25, 87-132頁。

参考文献[編集]

  • 永田芳男写真 著、畔上能力編・解説 編 『山に咲く花 : 写真検索』門田裕一改訂版監修(増補改訂新版)、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年、146頁。ISBN 978-4-635-07021-8 
  • 平野隆久写真 『野に咲く花 : 写真検索』林弥栄監修、門田裕一改訂版監修(増補改訂新版)、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年、80頁。ISBN 978-4-635-07019-5 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]