アプガー指数
アプガー指数( - しすう、Apgar score)、またはアプガーテスト、アプガースコアとは、出産直後の新生児の健康状態を表す指数、および判定方法[1]。
1952年に、アメリカ合衆国医学者ヴァージニア・アプガーが導入した評価方法である[2]。日本では、昭和30年代後半(1960年代)から広く用いられるようになった。
評価手法[編集]
発案者の名前になぞらえた、以下の5つの評価基準について0点から2点の3段階で点数付けをし、合計点で判定する[1]。
- Appearance - 皮膚の色
- Pulse - 心拍数
- Grimace - 刺激に対する反応
- Activity - 活動性
- Respiration - 呼吸数
0点 | 1点 | 2点 | |
---|---|---|---|
皮膚の色 | 全身が蒼白 全身が青紫色 |
身体が淡紅色 四肢にチアノーゼがみられる 先端チアノーゼ |
全身が淡紅色 チアノーゼがみられない |
心拍数 | 60未満[3] | 60以上、100未満 | 100以上 |
反応性 | 反応しない | 顔をしかめる 弱く泣き出す |
強く泣く くしゃみやセキがでる |
活動性 | 弛緩している | 少しだけ四肢を動かす | 活発に四肢を動かす |
呼吸数 | 呼吸しない | 弱い、または、不定期 | 強く呼吸する |
生後1分と5分に、上記の5項目について評価を行い、その合計点によって下記のように判定する[4]。5分値が7点未満の場合には、7点になるまで5分ごとに20分まで記録するのが望ましい。
- 0-3点 - 第2度仮死(重症新生児仮死)
- 4-6点 - 第1度仮死(軽度新生児仮死)
- 7点以上 - 正常
ヴァージニア・アプガーによる当初の報告では、下記のように分類されていた[2]。
- 0-2点 - poor condition
- 3-7点 - fair condition
- 8-10点 - good condition
いずれにせよ、点数が低い場合には、蘇生処置など、何らかの対処が必要となる。 ただし、現在の新生児蘇生法では重症例(自発呼吸なし または 心拍 100/分未満)に対して出生後60秒以内に人工呼吸を開始することの必要性を強調しており、アプガースコアの評価を待つことなく蘇生を開始する。
評価[編集]
アメリカ合衆国テキサス州ダラスのテキサス・サウスウエスタン大学医療センターでは、ダラス市のパークランド病院で1988年1月から1998年12月の期間に妊娠26週以降に産まれた新生児145627人のデータを集め解析することで、、アプガー指数の適切性の検証を行っている[5]。
その結果、早産児と満期産児両方でアプガー指数が増加するにつれて生存率が増加することが明らかになった。 例えば、13399人の早産児の新生児死亡率はアプガー指数が3点以下で1000人中、315人であったが、これに対してアプガー指数が7点以上の早産児の新生児死亡率は1000人中5人であった。
また、非常に低いアプガー指数は新生児が死亡した時間と関係があることが同じく発見された。非常に低いアプガー指数を示した新生児は出生24時間以内に死亡していた。
以上から、アプガー指数は、今日でも適切なものであるという結論を下している。
活用例[編集]
新生児低酸素性虚血性脳症における低体温療法の適応のうち、重度の全身低酸素負荷の指標である基準Aの一つに、「出生後10分におけるアプガースコアが5点以下」という項目がある。
脚注[編集]
- ^ a b 荒木勤、鈴木俊治「研修医のための必修知識:C.産科疾患の診断・治療・管理:14.新生児の管理と治療」、『日産婦誌』第54巻第11号、2002年、 517-518頁。
- ^ a b Apgar, Virginia (1953). “A proposal for a new method of evaluation of the newborn infant”. Curr. Res. Anesth. Analg. 32 (4): 260-267. PMID 13083014 .
- ^ 新生児の場合、心拍数60未満は心静止と判断される。
- ^ 公益社団法人 日本産科婦人科学会 産婦人科診療ガイドライン―産科編2017
- ^ Casey, Brian (2001). “The continuing value of the Apgar score for the assessment of newborn infants”. N Engl J Med 344 (7): 467-71. PMID 11172187.