アブラカダブラ

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6-7世紀の銀のお守り、アブラカダブラ(abracadabra)に類する文字が刻まれている。

アブラカダブラ (Abracadabra、またはAbrakadabra) は、世界中で広く用いられている手品ショー等での呪文である。歴史的には、お守りに刻印された際に治癒力を持つと信じられていた。

語源[編集]

ポーランド男性によるアブラカダブラの発音。

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オックスフォード英語辞典によると、アブラカダブラは2世紀のセレヌス・サンモニクス英語版作品に最初の表記があり 、その語源は不明である[1]

ある民族の言語が由来だという仮説がいくつかあり[2]、次のようなものである。

  • 私は言葉のごとく物事をなせる
アラム語のאברא כדברא (avra kedabra または avra K'Davarah) を語源とする仮説。これを英訳すると「I will create like the word(私は言葉のごとく物事をなせる)」[3]
  • この言葉のようにいなくなれ
アラム語のאבדא כדברא (abhadda kedhabhra) を語源とする説。これを英訳すると「Disappear like this word(この言葉のようにいなくなれ)」。この文章は、病気の治療に用いられたと考えられている。
  • 私が話すように物事が創造する
ヘブライ語の言葉で、「I will create as I speak(私が話すように物事が創造する)」という意味のフレーズ[4]
  • 祝福と疫病
ヘブライ語のha-brachahと、dever(をアラム語化させたdabra)を語源とする説。ha-brachahは「祝福」を意味する(呪いの婉曲表現でもある)。一方、deverは「疫病」を意味する。
  • アブラクサスとアブラカラン
ラテン語ギリシア語の類似した言葉アブラクサス(abraxas)を語源とする説[5]。また、シリア人の神・アブラカラン (Abracalan または Aracalan) を語源とする説もある。

しかしながら、オックスフォード辞典オンライン版(2017年)によると「様々な予想を裏付ける証拠は見つかっていない」とあり、依然として語源は不明である[5]

歴史[編集]

アブラカダブラは文字が徐々に減る三角形の形で記述される。

この呪文に言及した最古の書物はサンモニクスの詩集『De Medicina Praecepta』(もしくLiber Medicinalis)である[6]。サンモニクスはカラカラ内科医であり、病苦に悩まされるカラカラに対して、この三角形の形に書かれた言葉(横、下図参照)のお守りを身に着けるよう求め、このお守りの力が致命的な病気を消滅させると説明した。

A B R A C A D A B R A
A B R A C A D A B R
A B R A C A D A B
A B R A C A D A
A B R A C A D
A B R A C A
A B R A C
A B R A
A B R
A B
A

下記のように両端を一字ずつ減らして、三角形をV字に読んでもABRACADABRA、という説もある。

A B R A C A D A B R A
B R A C A D A B R
R A C A D A B
A C A D A
C A D
A

実弟のゲタアレクサンデル・セウェルスを含む他のローマ帝国の皇帝は、サンモニクスの医学的教え(呪術も行なっていた可能性あり)を信奉していた[6]

アブラカダブラはバシレイデース分派のグノーシス派によって、病気や災難に対して有益な精神的救済を発動する魔法の呪文として使われた[7] 。お守りとして身につけたアブラクサスの石が発見されている。やがて、その使用はグノーシス派を超えて広がった。

清教徒大臣インクリース・マザー英語版は、権力を奪うとしてその言葉をやめさせた。 ダニエル・デフォーはまた、ロンドンのペスト大流行(Great Plague of London)時にに病気を予防するためにその言葉を出入口に貼ったロンドン住民を軽蔑的に記述した[8]

しかし、アレイスター・クロウリーはそれを偉大な力を持つものだと見なした。 彼はその本当の形はアブラハダブラ英語版だと言い[9]、この言葉を真理のひとつとする宗教を創設した(後述)。

この言葉は現在、魔法の演技の呪文として、様々な作品で一般的に使用されている。

テレマ[編集]

宗教団体のテレマでは、「アブラハダブラ(Abrahadabra)」という言葉が世界の神秘的な公式であるとみなされている。

創立者アレイスター・クロウリーは自著のゲマトリアの中で、この言葉をカバラ的手法で発見し、スペルを綴ったと説明している。クロウリー曰く、この言葉を発見したのは1901年にオスカー・エッケンシュタインと会う前であり、同年クロウリーは「The Equinox」でこの言葉を発表した。更にこの言葉が1904年にホルスの呪文として繰り返し現れたことから、テレマの設立に至ったとされている。

ハリー・ポッター[編集]

J・K・ローリングの小説『ハリー・ポッター』シリーズでは、「死の呪い」として「アバダ・ケダブラ(Avada Kedavra)」が登場する。主人公ハリーの宿敵ヴォルデモートと、その部下の死喰い人たちが多用している。作中では、ハリーの両親であるジェームズ・ポッターリリー・ポッター、ハリーの後見人であるシリウス・ブラックがこの呪文で死亡している。

これはアラム語のavada kedavraから引用されたと考えられ、ラテン語由来の呪文が多い同シリーズには珍しく、ラテン語由来ではない呪文である。ちなみにavada kedavraを日本語に訳すと「私が言ったものは破壊される」となる。映画版では「息絶えよ」と訳されている。

その他[編集]

関連項目[編集]

出典[編集]

外部リンク[編集]