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アパシー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
不安アウェアネスフローコントロールリラクゼーション (心理学)退屈アパシー心配
ミハイ・チクセントミハイフローモデルによるメンタルステート図。チャレンジレベルとスキルレベルの二軸で表される[1]

アパシー(Apathy)とは感情 (pathy)が無くなった状態(接頭辞a)を指す。

医学におけるアパシー

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アパシー
概要
分類および外部参照情報
ICD-10 R45.3
ICD-9-CM 799.25

通常の人間であれば、何らかの感情が湧く対象に対して、感情が湧かなくなった状態を指す。うつ病の主要な症状ではあるが、アルツハイマー病脳血管性認知症パーキンソン病などでも生じる。

治療には原病の治療に加え、L-ドーパロチゴチン などのドーパミン神経系賦活薬、ドネペジルガランタミンなどのアセチルコリン神経系賦活薬、メチルフェニデートが有効であるという報告がされている。

うつ病

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アパシーはうつ病に伴ってみられることがあるが、抑うつ気分そのものとは同義ではない。アパシーは主として意欲、関心、自発性の低下として捉えられ、うつ病の診断基準にみられる興味や喜びの減退、気力の低下といった症状と重なりうる[2][3]

一方で、アパシーとうつ病は区別される概念でもある。うつ病では抑うつ気分、罪責感、希死念慮などの気分症状が中心となることがあるのに対し、アパシーでは目的志向的な行動、思考、情動反応の低下が中心となる[4]

高齢期うつ病を対象とした研究では、アパシーはよくみられ、他の抑うつ症状とは独立して生活機能の低下と関連することが報告されている[5]

アルツハイマー病

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アルツハイマー病においては、患者の50-70%ほどに確認される。アパシーはアルツハイマー病の機能障害に関連する精神神経症状である。その原因は2つが解明されている。一つは、脳の前頭前野系の機能不全が、アパシー発症のための重要な神経生物学的基礎であるということである。 もう一つは、認知症による神経病理学的変化もまたアパシーを引き起こすと考えられている。

コリンエステラーゼ阻害剤は、認知症に起因する認知症状の治療に第一選択として使用されており、アパシーを含む行動障害に対してある程度の効果を示している[6]

メチルフェニデートもまた、認知症によるアパシー治療のために最も広く研究されている薬物である。メチルフェニデートを用いた催眠症状の管理は、アルツハイマー病患者のプラセボ対照RCTにおいて有望であることが示されている[7][8][9]。アパシー治療のためのメチルフェニデートのフェーズⅢ多中心プラセボ対照RCTが現在進行中であり、2020年8月に完了する予定[10]

不安

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アパシーと不安は、パーキンソン病などの神経疾患において、抑うつ症状とともに併存しやすい神経精神症状として扱われる。これらは臨床的に重なり合う一方で、安静時fMRIを用いた研究では、抑うつ・不安・アパシーがそれぞれ異なる機能的結合パターンと関連することが報告されており、アパシーは不安とは区別して評価されるべき症状とされる[11]

その他

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しばしばアパシーは、戦争において死亡または傷害といった恐ろしい出来事を目撃した人々において起こり得、それにはPTSDなどが挙げられる。それ以外にも、多々の精神医学的症候群であることが知られており、たとえばCADASIL症候群うつ病アルツハイマー病シャーガス病クロイツフェルト・ヤコブ病認知症(アルツハイマー型、血管性認知症、前頭側頭型認知症)、コルサコフ症候群、過度のビタミンD甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症全身倦怠感ハンチントン病ピック病進行性核上性麻痺(PSP)、脳損傷統合失調症統合失調型パーソナリティ障害双極性障害自閉症ADHDアスペルガー症候群などがある。

政治学におけるアパシー

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国民の政治への無関心や、消極的志向、ときには否定的態度をも意味する現代社会用語。医学におけるアパシーとは異なり、病的な状態を指す訳ではない。

脚注

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  1. Csikszentmihalyi, M., Finding Flow, 1997.
  2. 山下英尚 (2014年2月21日). アパシー”. 脳科学辞典. doi:10.14931/bsd.1978. 2026年6月30日閲覧。
  3. American Psychiatric Association 著、日本精神神経学会 編『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』髙橋三郎・大野裕 監訳、医学書院、2014年、90-91頁。ISBN 978-4-260-01908-8
  4. Steffens, David C.; Fahed, Mario; Manning, Kevin J.; Wang, Lihong (2022). “The neurobiology of apathy in depression and neurocognitive impairment in older adults: a review of epidemiological, clinical, neuropsychological and biological research”. Translational Psychiatry 12 (1). doi:10.1038/s41398-022-02292-3. PMID 36572691.
  5. Yuen, Genevieve S. (2015). “Apathy in late-life depression: common, persistent, and disabling”. The American Journal of Geriatric Psychiatry 23 (5): 488-494. doi:10.1016/j.jagp.2014.06.005. PMID 25047306.
  6. Malloy, Paul F. (2005年11月1日). Apathy and Its Treatment in Alzheimer's Disease and Other Dementias”. Psychiatric Times. 2014年2月25日閲覧。
  7. Herrmann, N; Rothenburg, L; Black, SE; Ryan, M; Liu, BA; Busto, UE; Lanctôt, KL (2008). “Methylphenidate for the treatment of apathy in Alzheimer's disease: prediction of response using dextroamphetamine challenge”. J Clin Psychopharmacol 28: 269–301.
  8. Rosenberg, PB; Lanctôt, KL; Drye, LT; Herrmann, N; Scherer, RW; Bachman, D; Mintzer, JE (2013). “Safety and efficacy of methylphenidate for apathy in Alzheimer's disease: a randomized, placebo-controlled trial”. J Clin Psychiatry 74 (8): 810–6. doi:10.4088/JCP.12m08099. PMID 24021498.
  9. Lanctôt, KL; Chau, SA; Herrmann, N; Drye, LT; Rosenburg, PB; Scherer, RW; Black, SE; Vaidya, V et al. (2014). “Effect of methylphenidate on attention in apathetic AD patients in a randomized, placebo-controlled trial”. Int Psychogeriatr 26 (2): 239–46. doi:10.1017/S1041610213001762. PMID 24169147.
  10. Apathy in Dementia Methylphenidate Trial 2 (ADMET2)”. 2017年2月26日閲覧。
  11. Dan, Rotem; Růžička, Filip; Bezdicek, Ondrej; Růžička, Evžen; Roth, Jan; Vymazal, Josef; Goelman, Gadi; Jech, Robert (2017). “Separate neural representations of depression, anxiety and apathy in Parkinson's disease”. Scientific Reports 7. doi:10.1038/s41598-017-12457-6. PMID 28939804.

関連項目

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外部リンク

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