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アニルッダ (インド神話)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アニルッダとウーシャー。1895年頃。

アニルッダ: अनिरुद्ध, Aniruddha)は、インド神話の人物である。「妨害されない者」の意。ヴリシュニ族のプラデュムナルクミンの娘ルクマヴァティーの子で[1]クリシュナの孫にあたる。アスラ族の王バーナの娘ウーシャーと結婚し[1][2][3]、ヴァジュラをもうけた[1]

バララーマヴァスデーヴァプラデュムナ、シャームバとともに、ヴリシュニ族の5人の英雄の1人とされ[1]、またクリシュナ、バララーマ、プラデュムナとともに、ヴィシュヌ神のアヴァターラの1つと説かれている[4]

神話

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 アニルッダの系図(『バーガヴァタ・プラーナ』より)
 
 
 
 
 
ヴァスデーヴァ
 
 
 
ビーシュマカ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
バリ
 
クリシュナ
 
ルクミニー
 
ルクミン
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
バーナ
 
 
 
プラデュムナ
 
ルクマヴァティー
 
欠名
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ウーシャー
 
 
 
アニルッダ
 
 
 
ローチャナー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最初の結婚

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ルクミンはクリシュナを憎んでいたが、ルクミニーを喜ばせるために娘ルクマヴァティーとプラデュムナの結婚を認めた。2人の間にアニルッダが生まれると[5]、さらにルクミンは孫娘のローチャナーをアニルッダの妻として与えた[6]

アニルッダとローチャナーの結婚式はルクミンが建設した都市ボージャカタで行われ、クリシュナやバララーマをはじめとするヴリシュニ族や各地の諸王が集まった。しかしこの結婚式では、アニルッダの義理の祖父となったルクミンがバララーマに殺されるという悲劇が起きた。結婚式の後に両者は賭博勝負をしたが、ルクミンが勝利するたびにルクミンやカリンガ王、諸王たちはバララーマを嘲笑した。そのためバララーマは怒りが頂点に達したとき彼らを殺戮した[7]

第2の結婚

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その後、アニルッダはアスラの王バーナの娘ウーシャーとも結婚することになった。『バーガヴァタ・プラーナ』によるとウーシャーは夢の中でアニルッダと出会い、恋をした。ウーシャーは思い悩んで、友人のチトラレーカーに相談した。そこでチトラレーカーは神々ガンダルヴァシッダ、チャーラナ、ナーガダイティヤ、ヴィディヤーダラ、ヤクシャ、人間の主要な人物の似顔絵を描いて、ウーシャーに見せた。するとウーシャーはプラデュムナの似顔絵を見て頬を少し赤らめ、さらにアニルッダの似顔絵を見て確信して「この人です」と叫んだ。チトラレーカーは友人の思い人がアニルッダであると知るとドゥヴァーラカーまで飛んでいき、ヨーガの力で眠っているアニルッダをバーナの王宮に連れ去った[8]

アニルッダはチトラレーカーの手引きで、王宮内にある男子禁制の部屋でウーシャーに引き合わされた。そして彼女の魅力にすっかり心を奪われた。しかしウーシャーがアニルッダの子を身ごもったことが明らかになると、バーナは激怒してアニルッダを捕らえた[9]

一方、聖仙ナーラダからアニルッダの行方を聞かされたクリシュナは、アニルッダを救出するため軍を率いてバーナの都ショーニタプラを包囲した[10][1][3]。これに対してバーナも出撃し、さらにシヴァ神とカールッティケーヤがバーナに味方した。しかしサーティヤキがバーナと戦っている間に、クリシュナはシヴァ神と互角の戦いを繰り広げただけでなく、バーナの軍勢をも攻撃した。さらにプラデュムナはカールッティケーヤを退却させ、バララーマはバーナ軍の武将をことごとく倒したため、バーナの軍勢は総崩れとなった。バーナは怒り狂ってクリシュナと戦ったが、クリシュナはバーナを圧倒し、母コータラーが助けに入らなければ殺されるところであった[11]。最終的にバーナは助けられ、アニルッダとウーシャーを解放してドゥヴァーラカーに帰した[12][1]

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後にヤドゥ族の優れた戦士たちは聖地巡礼をした際に、ひどく酩酊し、たがいに殺し合って破滅したとされる。『バーガヴァタ・プラーナ』は酩酊したアニルッダはサーティヤキと戦ったとしている[13]。ヤドゥ族の悲劇後、アニルッダの子のヴァジュラがヤドゥ族の王として即位した[14]

脚注

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  1. ^ a b c d e f 『インド神話伝説辞典』p.26-27「アニルッダ」の項。
  2. ^ 『インド神話伝説辞典』p.91「ウーシャー」の項。
  3. ^ a b 『インド神話伝説辞典』p.256「バーナ」の項。
  4. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻40・21。
  5. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻61章22-23。
  6. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻61章25。
  7. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻61章26-39。
  8. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻62章12-22。
  9. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻62章23-35。
  10. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻63章2-3。
  11. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻63章1-21。
  12. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻63章50-52。
  13. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』11巻30・16。
  14. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』11巻31・25。

参考文献

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  • 『バーガヴァタ・プラーナ 全訳 下 クリシュナ神の物語』美莉亜訳、星雲社・ブイツーソリューション、2009年5月。ISBN 978-4434131431 
  • 菅沼晃編 編『インド神話伝説辞典』東京堂出版、1985年。ISBN 978-4490101911 

関連項目

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