アセビ
アセビ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() Pieris japonica
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Pieris japonica (Thunb.) D.Don ex G.Don subsp. japonica[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜種・変種・品種[3] | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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アセビ(馬酔木[4]、梫木、学名: Pieris japonica subsp. japonica)は、ツツジ科アセビ属に属する常緑性の低木である。本州・四国・九州に自生し、観賞用に植栽もされる場合もある。
名称[編集]
別名で、アシビ[4]、アセボ[1]とも呼ばれる。地方名でヒガンノキともよばれており、春彼岸のころにアセビが花盛りで、仏前の供花にもされることに由来する[4]。
漢字の「馬酔木」は、「馬」が葉を食べれば毒に当たり、「酔」うが如くにふらつくようになる「木」というところからついたとされる。
形態・生態[編集]
常緑広葉樹の低木で、樹高は2メートル (m) から4 mほどである[4]。樹齢100年から200年になる老木も多く見られる[4]。
常緑樹であり、葉は楕円形で深緑、表面に艶が有り、枝先に束生する。
果期は早春から晩春(3 - 5月)[4]。早春になると枝先に10 cmほどの複総状の花序を垂らし、長さ5ミリメートル (mm) ほどの白い壷状の花を多数咲かせる[4]。雄蕊は10本で、2個の角を持ち毛深い。なお、園芸品種には、ピンクの花を付けるアケボノアセビ(ベニバナアセビ)などがある[5]。
果期は秋(9 - 11月)[4]。果実は扇球状になる。実や葉は有毒である[4]。
分布[編集]
アセビは日本列島の本州(山形県以西)、四国、九州や、中国に分布する[4]。主に山地に自生する。やや乾燥した環境を好む。
有毒植物であり、葉に限らず、全体に有毒成分が含有される。このため、多くの草食動物はアセビを食べるのを避け、食べ残される。そのため、草食動物の多い地域では、この木が目立って多く生育している場合がある。このためアセビが不自然なほど多い地域は、草食獣による食害が多いことを疑うこともできる。例えば、奈良公園では、ニホンジカが他の木を食べ、この木を食べないため、アセビが相対的に多く見られる[6]。
ヒトとの関わり[編集]
アセビは、日本で庭園の樹、公園の樹として植栽される場合がある他に、花を咲かせる盆栽としても利用される。
また、アセビが有毒植物である事を利用し、その葉を煎じて殺虫剤として利用される[4]。古くは葉の煎汁がシラミ、ウジ、菜園の虫退治に用いられた[7]。そこで、アセビの殺虫効果を、自然農薬として利用する試みもなされている。
アセビの有毒成分として、グラヤノトキシンI(旧名アセボトキシン・アンドロメドトキシン)、アセボプルプリン、アセボインが挙げられる。中毒症状は、血圧低下、腹痛、下痢、嘔吐、呼吸麻痺、神経麻痺が挙げられる。
なお、ニホンジカが忌避する植物であるため、シカの生息密度が高く食害を受け易い森林では、アセビをシキミなど共に混植する試みが行われた事例も有る[8]。
文学との関わり[編集]
日本の山形県以西の本州、四国、九州の山地にふつうに見られる木で、山の枕詞である「あしびきの」がアセビ(あしび)と結びつけられて論じられている[4]。
万葉集の歌[編集]
日本人が古くから親しんできた木で、『万葉集』にはアセビを詠んだ歌が10首ある[4]。アセビの花を愛でた歌人の面影を示す歌が多く、『万葉集』が成立した奈良時代末期ごろまでには、庭園にアセビが植栽されて観賞されていたとみられている[4]。
- 磯の上に 生ふるあしびを 手折らめど 見すべき君が ありといはなくに 大伯皇女 (巻2・166番)
- 池水に 影さえ見えて 咲きにおう 馬酔木の花を 袖に
扱 き入れな (巻20・4512番)
俳句[編集]
アセビ属[編集]
アセビ属(アセビぞく、学名: Pieris)は、ツツジ科の属の1つである。世界に約十種が存在する。
- Pieris cultivars
- アメリカアセビ Pieris floribunda
- ヒマラヤアセビ Pieris formosa (Wall.) D.Don
- リュウキュウアセビまたはオキナワアセビ Pieris koidzumiana Ohwi - アセビの変種(P. j. subsp. koidzumiana)とすることもある。奄美大島と沖縄本島に分布したが、園芸用の採取により、野生では絶滅したとされている。沖縄本島の場合、国指定の天然記念物に指定された生育地において、1983年に若木が1本確認されたのが最後の発見例である。
- アセビ(狭義) Pieris japonica (Thunb.) D.Don ex G.Don
- Pieris nana
- Pieris phillyreifolia
- Pieris swinhoei
- タイワンアセビ Pieris taiwanensis
出典[編集]
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Pieris japonica (Thunb.) D.Don ex G.Don subsp. japonica” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2014年1月23日閲覧。
- ^ 清水晶子; 加藤僖重・大場秀章. “表1. 東京大学総合研究博物館にライデン大学国立植物学博物館から寄贈されたシーボルト・コレクション”. シーボルトの21世紀. 東京大学総合研究博物館. 2009年1月28日閲覧。
- ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “BG Plants簡易検索結果表示”. 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList). 千葉大学. 2014年1月23日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 田中潔 2011, p. 19.
- ^ ベニバナアセビ
- ^ 大場達之・高橋秀男「アセビ」、『週刊朝日百科植物の世界』63、6の85頁。
- ^ 倉田悟「アセビ」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p.11 日本林業技術協会 1984年出版
- ^ “シカの不嗜好植物との混植によるヒノキ苗の食害軽減効果の検証 (PDF)”. 林野庁中部森林管理局 (2013年). 2020年4月29日閲覧。
- ^ 松村 明、山口 明穂、和田 利政 編 『旺文社 国語辞典(第8版)』 p.1429(樹木の項目) 旺文社 1992年10月25日発行 ISBN 4-01-077702-8
参考文献[編集]
- 田中潔 『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、19頁。ISBN 978-4-07-278497-6。
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- 茂木透写真 『樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2001年、126-129頁。ISBN 4-635-07005-0。
- 大場達之・高橋秀男「アセビ」、『週刊朝日百科植物の世界』63、朝日新聞社、1995年7月2日発行。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- "Pieris japonica (Thunb.) D. Don ex G. Don". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2014年1月23日閲覧。 (英語)
- "Pieris japonica (Thunb.) D. Don ex G. Don" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2014年1月23日閲覧。 (英語)
- "Pieris japonica". National Center for Biotechnology Information (NCBI) (英語). (英語)
- "Pieris japonica" - Encyclopedia of Life (英語)
- 波田善夫. “アセビ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学生物地球学部. 2014年1月23日閲覧。