コンテンツにスキップ

アセト酢酸エチル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アセト酢酸エチル
Skeletal formula of ethyl acetoacetate
Space-filling model of the ethyl acetoacetate molecule
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.005.015 ウィキデータを編集
EC番号
  • 205-516-1
KEGG
RTECS number
  • AK5250000
UNII
国連/北米番号 1993
性質
C6H10O3
モル質量 130.14 g/mol
外観 無色の液体
匂い フルーツまたはラム酒
密度 1.030 g/cm3, 液体
融点 −45 °C (−49 °F; 228 K)
沸点 180.8 °C (357.4 °F; 453.9 K)
2.86 g/100 ml (20 °C)
酸解離定数 pKa
  • 10.68 (H2O中)
  • 14.2 (DMSO中)
磁化率 −71.67×10−6cm3/mol
屈折率 (nD) 1.420
危険性
GHS表示:[1]
急性毒性(低毒性)
Warning
H319
P305+P351+P338
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
NFPA 704 four-colored diamondHealth 2: Intense or continued but not chronic exposure could cause temporary incapacitation or possible residual injury. E.g. chloroformFlammability 2: Must be moderately heated or exposed to relatively high ambient temperature before ignition can occur. Flash point between 38 and 93 °C (100 and 200 °F). E.g. diesel fuelInstability (yellow): no hazard codeSpecial hazards (white): no code
2
2
引火点 70 °C (158 °F; 343 K)
関連する物質
関連するエステル
関連物質
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
 verify (what is  ☒N ?)

アセト酢酸エチル (ethyl acetoacetate) は、エステルの一種で、アセト酢酸エタノール脱水縮合した構造を持つ有機化合物である。消防法による第4類危険物 第3石油類に該当する[2]

性質

[編集]

無色で果実のような芳香を持つ液体にもかなり溶解する (2.86 g/100 mL (20 ℃))ほか、多くの有機溶媒とは任意の割合で混ざり合う。

活性メチレン

[編集]

アセト酢酸エチルの2位のメチレン部位上の水素 (CH3C(=O)CH2COOC2H5) は、炭素上にあるにもかかわらず、比較的高い酸性 (pKa= 10.7 (25 ℃、水中)) を示す。それは、アセト酢酸エチルの共役塩基にあたるカルバニオンが2種類のエノラート構造と共鳴の関係にあることで、負電荷が非局在化し、安定化されているためである。

アセト酢酸エチルの共役塩基の共鳴

このように 2つの電子求引基(例:カルボニル基、シアノ基など)にはさまれることでその場所のプロトンの酸性が強められている状態のメチレン基を、活性メチレン (activated methylene) と呼ぶ。同様の化合物としては、マロン酸エステル、アセチルアセトンシアノ酢酸エステルなどが挙げられる。アセト酢酸エステル合成や、マロン酸エステル合成では、このカルバニオンの安定性を C-C 結合生成のために利用している。

合成

[編集]

ジケテンとエタノールの反応によって工業的に大量生産されている。

実験室では、酢酸エチルに、金属ナトリウムあるいはナトリウムエトキシド (C2H5ONa) を加え縮合させて合成する。この反応はクライゼン縮合の一例である。

クライゼン縮合によるアセト酢酸エチル合成
クライゼン縮合によるアセト酢酸エチル合成

反応

[編集]

アセト酢酸エチルは上記で述べたように活性メチレン部位を持ち、塩基を作用させて発生するカルバニオンが比較的安定である。そのカルバニオンを利用したアセト酢酸エステル合成 (acetoacetic ester synthesis) は、有力な C-C 結合生成反応である。活性メチレン化合物はまた、マイケル付加クロスカップリング反応における求核種としても利用される。

または希アルカリの存在で加水分解を行うと、同時に二酸化炭素が脱離してアセトンを生成するが、強アルカリを作用させると酢酸になる。

用途

[編集]

各種有機化合物の原料として重要な物質であり、アンチピリンアタブリンなどの医薬の原料としても用いられる。頻度は高くないが、アンズなどの果実やウイスキーラム酒香料としても使用されることがある[3]

出典

[編集]
  1. ^ Record 労働安全衛生研究所(IFA)英語版発行のGESTIS物質データベース, accessed on 2021-12-19
  2. ^ 法規情報 (東京化成工業株式会社)
  3. ^ 『合成香料 化学と商品知識』印藤元一著 2005年増補改訂 化学工業日報社 ISBN 4-87326-460-X