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アカハラ

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アカハラ
アカハラ
アカハラ Turdus chrysolaus
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
Status iucn3.1 LC.svg
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
亜目 : スズメ亜目 Oscines
: ツグミ科 Turdidae
: ツグミ属 Turdus
: アカハラ T. chrysolaus
学名
Turdus chrysolaus Temminck, 1831
和名
アカハラ
英名
Brown-headed thrush

アカハラ(赤腹、Turdus chrysolaus)は、スズメ目ツグミ科ツグミ属に分類される鳥。

形態

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以下は清棲(1978)による[2]

額から後頸にかけては赤錆色を帯びたオリーブ褐色である。眼先、眼の下は黒褐色、耳羽はオリーブ褐色で腮(あご)と喉も同色。頬と腮および嘴の両側は暗褐色、個々の羽根の縁は赤錆色が出る。背、肩羽、上胸、腰、上尾筒は赤錆色を帯びたオリーブ褐色、下胸、脇、腹の側面はキツネ色になる。腹は白色[2]

上嘴の色彩は黒く、下嘴の色彩は黄色みを帯びたオレンジ色。後肢の色彩は黄色みを帯びたオレンジ色。

頭部が黒く、翼長が長く、嘴も大きいものをオオアカハラと呼ぶ。本種の亜種とする見解が一般的である(後述)

ツグミ類の中ではアカハラの翼式はシロハラのものに近く、これは飛行距離が関係しているのではと推測されている[3]

類似種

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腹や腋が赤いツグミ類は幾つか知られている。上述のオオアカハラのほか、アカコッコカラアカハラマミチャジナイなどに似る。

生態

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平地から山地にかけての森林に生息する。やや開けた森林や草原を好む。ニホンジカの生息数が増え、森林の下層植生や低木層が劣化すると減少する鳥もいるが、アカハラなどのツグミ類は増えるようである[4][5]

食性は動物食傾向の強い雑食で、主に昆虫類を食べるが果実も食べる。

ツグミ類は植物の種子散布者としては、メジロヒヨドリと並び比較的貢献がある種と見られている[6][7]

繁殖期間中には2度営巣し富士山での観察では一度目は5月、二度目は7月から抱卵する。抱卵数は幾らかばらつきがあるが4つが多い[8]。営巣場所は基本的に樹上であるが、地上営巣した例も観察されている[9]

分布

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東アジアから東南アジア北東部にかけての地域。樺太千島列島朝鮮半島の南部、日本列島を経て西端は海南島、南端はフィリピン程度まで分布する。日本ではほぼ一年中見られるが、後述のように南方系の亜種と北方系の亜種がおり、場所にもよるが夏に見られるのは前者が多く、冬に見られるのは後者が結構混じると言われる。

分類

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南方系のやや小型のものを基亜種アカハラ、北方系のやや大型のものを亜種オオアカハラとする。両者は別種扱いすることも逆に同種の個体変異程度の差とすることもあるが、1960年代から80年代の一時期に同種説が優勢になったほかは亜種程度に分ける説が有力である[10]。『日本鳥類目録 改訂第7版』(2012)[11]でも両者は亜種扱いとなっており、本項ではこれに従った。

  • Turdus chrysolaus chrysolaus Temminck, 1831 アカハラ[11]
  • Turdus chrysolaus orii Yamashina, 1929[12] オオアカハラ[11]

人間との関わり

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食用・狩猟

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肉は食用。江戸時代の博物図鑑『大和本草』には冬から春に多く見られる胸の赤いツグミは美味であると書かれている[13]。形態節の通り、胸の赤いツグミは複数あり特定できないが、本種や類似種を指していたとみられる。ツグミ類の江戸時代の調理法としては焼物や煮物が記録に残っているという。鳥の種類によっては生食に近い食べ方も行われたというが、ツグミ類は出てこない[14]。魚谷(1936)によればツグミ類は焼物が一番だが、生食に近い塩辛などでも食べており、作り方にはいくつか種類があった[15]

大正、昭和の頃の千葉県房総半島南部の台地で、冬に本種を捕まえて食べる習慣があった。農村部の子供の仕事として、簡単な被せ罠を使いヒヨドリなどとも混獲され、捕まえた鳥は炒めて飯に混ぜて食べていたとされる[16]

人里近くで営巣する習性からか、昭和中期くらいまではヒトによる盗卵は多かったようである。1950年代の山梨県における観察では期間中に発見したアカハラの巣30か所のうち、4か所で子供によるとみられる卵の採取が見られた[17]

現在の「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成十四年法律第八十八号、通称:鳥獣保護法)の施行規則第十条に定める狩猟鳥獣の一覧にも入っておらず[18]、日本では狩猟鳥獣ではない。違反すると同法八十三条などにより罰則がある[19]

感染症媒介

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ライム病はダニによって媒介される人獣共通感染症であるが、アカハラやアカコッコなどのツグミ類やホオジロ類は保毒ダニを持っている場合があるという[20][21]

前述のように昔は食用にする習慣もあった。アカハラの内臓内には寄生虫がいる場合もあり[22]、生食に近い食べ方は感染リスクがある。

種の保全状況評価

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国際自然保護連合(IUCN)が作成するレッドリストでは、2024年現在で絶滅の可能性は低い低危険種(Least Concern, LC)と評価されている[1]。日本の環境省が作成する環境省レッドリストでは2015年発表2020年最終改訂の第四次レッドリストには掲載されていない[23]

都道府県が作成するレッドリストでは愛知県で絶滅危惧ⅠA類(繁殖期)、福島県山形県群馬県埼玉県で準絶滅危惧種、神奈川県奈良県徳島県で県独自のランクに指定されている。愛知県の例に見られるように千島繁殖日本越冬の冬鳥型のオオアカハラよりも、夏鳥型の狭義のアカハラを指名して絶滅危惧種にしている自治体が幾つか知られる[24]

名前

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標準和名は「アカハラ」とされ、『日本鳥類目録』(1974)[25]、『世界鳥類和名辞典』(1986)[26]などではこの名前で掲載されている。和名の由来は腹部が赤茶色になるという形態的なものである。

地方名は非常に多く『鳥類ノ方言』(1925)には多数収録されている[27]。標準和名と同じく腹が赤いという形態的な命名が多く「アカ」「アカツグメ」「アカッパラ」「アカテウマ」「アカジナイ」「アカバラツグシ」などが北海道から四国九州に至るまで全国的に知られる。ツグミ類を表す「ツグメ」「ジナイ」「シンナイ」「チョウマ」などを含む分類的な名前も多く、分類的に近いことは経験的にも知られていたようである。「シナイ」「シンナイ」が付く名前は大阪や瀬戸内海沿岸に多く、この地域では単に「ツグミ」呼びも多い。四国南部と九州南部には鳴き声に由来した「クワクワドリ」「クワクワッチョ」などのクワ系の名前が知られる。これらの地域では「クソタレツグミ」という名称も共通する。変わった名前として「コノハツカヘシ」(埼玉県)、「カッチョウ」(福岡県)、「ヒンカツ」「ヒンコチ」(広島県)などがある[27]

種小名 chrysolausは「金のツグミ」の意味で、ギリシア語で金を表すchrysosと、ツグミの一種laiosを合わせたものだという。属名 Turdusラテン語でツグミ類を示す単語である[28]

出典

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  1. ^ a b BirdLife International. (2024) Turdus chrysolaus. The IUCN Red List of Threatened Species 2024: e.T22708800A264265846. doi:10.2305/IUCN.UK.2024-2.RLTS.T22708800A264265846.en
  2. ^ a b 清棲幸保 (1978) 『日本鳥類大図鑑増補改訂版 Ⅰ』. 講談社, 東京. doi:10.11501/12602099(国立国会図書館デジタルコレクション)
  3. ^ 今野怜, 今野美和 (2020) マミチャジナイ,シロハラ,アカハラ,アカコッコの翼式の差異. 日本鳥類標識協会誌 32(12-2), p.21-35. doi:10.14491/jbba.MS133
  4. ^ 山口喜盛 (2004) 丹沢産シ力の高密度が鳥類群集に与えている影響. 神奈川自然誌資料 2004(25), p.1-4. doi:10.32225/nkpmnh.2004.25_1
  5. ^ 奥田圭, 關義和, 小金澤正昭 (2012) 栃木県奥日光地域におけるニホンジカの高密度化による植生改変が鳥類群集に与える影響. 日本森林学会誌 94(5), p.236-242. doi:10.4005/jjfs.94.236
  6. ^ 鈴木惟司, 前田尚子 (2014) 南関東地方における有毒草本植物テンナンショウ属の果実食者. 山階鳥類学雑誌 45(2), p.77-91. doi:10.3312/jyio.45.77
  7. ^ 金子尚樹, 中田誠, 千葉晃, 伊藤泰夫 (2012) 新潟市の海岸林における鳥類による秋季の果実利用. 日本鳥学会誌 61(1), p.100-111. doi:10.3838/jjo.61.100
  8. ^ 由井正敏 (1975) 富士山麓における鳥類数種の営巣記録解析―とくに1巣卵数の変化について―. 山階鳥類研究所研究報告 7(6), p.697-711. doi:10.3312/jyio1952.7.6_697
  9. ^ 井出進 (1959) アカハラの地上営巣. 鳥 15(74), p.167. doi:10.3838/jjo1915.15.74_167
  10. ^ 森岡弘之 (1979) 日本産鳥類の分類•分布的研究―1. オオアカハラについて―. 鳥 28(4), p.125-129. doi:10.3838/jjo1915.28.125
  11. ^ a b c 日本鳥類学会目録編集委員会 (2012)『日本鳥類目録 改訂第7版』. 日本鳥類学会, 東京. ISBN 978-4-930975-00-3 日本鳥類学会のページにて全文を閲覧可能
  12. ^ 山階芳麿 (1929) 再び千島列島産鳥類に就いて―附 アカハラの新亞種の記載―. 鳥 6(28), p.145-160. doi:10.3838/jjo1915.6.28_145
  13. ^ 貝原篤信(1709)『大和本草 巻乃十五 巻乃十六』(国立国会図書館所蔵 請求記号:特1-2292イ)doi:10.11501/2557370(国立国会図書館デジタルコレクション)
  14. ^ 江間三恵子 (2013) 江戸時代における獣鳥肉類および卵類の食文化. 日本食生活学会誌 23(4), p.247-258. doi:10.2740/jisdh.23.247
  15. ^ 魚谷常吉 (1936) 『野鳥料理』. 秋豊園出版部, 東京. doi:10.11501/1223139(国立国会図書館デジタルコレクション)
  16. ^ 高橋在久ほか編 (1989) 『聞き書 千葉の食事(日本の食生活全集12)』. 農山漁村文化協会, 東京. ISBN 978-4540890024 doi:10.11501/12170267(国立国会図書館デジタルコレクション)
  17. ^ 井出進 (1957) 山梨縣に於ける巣卵の被害について. 鳥 14(68), p.45-51. doi:10.3838/jjo1915.14.68_45
  18. ^ 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則(平成十四年環境省令第二十八号) e-gov法令検索. 2025年8月15日閲覧
  19. ^ 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号) e-gov 法令検索. 2025年8月15日閲覧
  20. ^ 宮本健司, 中尾稔, 藤田博己, 佐藤文男 (1993) 日本産鳥類に寄生するマダニ類とこれらからのライム病ボレリアの検出. 衛生動物 44(4), p.315-326. doi:10.7601/mez.44.315
  21. ^ 宮本健司, 増澤俊幸, 久手堅みどり (2000) 野鳥に寄生するマダニ類とこれらよりのライム病病原体分離. 衛生動物 51(3), p.221-226. doi:10.7601/mez.51.221
  22. ^ 巖城隆, 加藤千晴, 黒瀬奈緒子 (2012) 神奈川県の野生鳥類にみられた寄生蠕虫類. 日本野生動物医学会誌 17(3), p.119-126. doi:10.5686/jjzwm.17.119
  23. ^ 生物情報収集提供システム いきものログ > レッドリスト・レッドデータブック 環境省生物多様性センター 2025年8月31日閲覧
  24. ^ ホーム > 種名検索 日本のレッドデータ検索システム. 2025年8月15日閲覧.
  25. ^ 日本鳥学会 編 (1974) 『日本鳥類目録(改訂第五版)』. 学習研究社, 東京. doi:10.11501/12638160(国立国会図書館デジタルコレクション)
  26. ^ 山階芳麿(1986)『世界鳥類和名辞典』. 大学書林, 東京. doi:10.11501/12601719(国立国会図書館デジタルコレクション)
  27. ^ a b 農林省農務局 編 (1925) 『鳥類ノ方言』. 農林省農務局, 東京. doi:10.11501/1833817(国立国会図書館デジタルコレクション)
  28. ^ 内田清一郎, 島崎三郎 (1987) 『鳥類学名辞典―世界の鳥の属名・種名の解説/和名・英名/分布―』. 東京大学出版会, 東京. ISBN 4-13-061071-6 doi:10.11501/12601700(国立国会図書館デジタルコレクション)

関連項目

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外部リンク

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