アウトサイダー・アート

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アドルフ・ヴェルフリ 『Irren-Anstalt Band-Hain』 1910年

アウトサイダー・アート: outsider art)とは、西洋の芸術の伝統的な訓練を受けていない人が制作した作品であるが、アートとして扱われているものを指す。フランス語の概念アール・ブリュットとして提唱された当初は精神障害者や受刑者の作品を対象としたものであったが、概念が英訳されて広まる過程で、民俗芸術や独学の作家による作品も含むようになった[1]

概要[編集]

フランス人画家ジャン・デュビュッフェがつくったフランス語アール・ブリュット(Art Bru、生(なま、き)の芸術)」を、イギリス人著述家ロジャー・カーディナルアウトサイダー・アート: outsider art)と英訳したものが、概念としての起源である。

デュビュッフェは前述のように精神障害者や受刑者の作品を見てアール・ブリュットを提唱したが、現在では子どもや、正式な美術教育を受けずに発表する当てもないまま独自に作品を制作しつづけている者などの芸術も含む概念である。

障害者アートとの関係[編集]

シュヴァルの理想宮、ヴィジョナリー・エンヴァイアランメントの例

日本ではアウトサイダーアートというと知的障害者精神障害者あるいは精神病患者が精神病院内におけるアートセラピー芸術療法クリエイティヴ・セラピーの一種)などで描いた絵画と思われることが多い。しかしヨーロッパでは障害者アートがアウトサイダー・アートの市場に占める割合は全体の半分程度と見られている。[2]芸術作品で生計を立てたり、既存の団体に発表することなく、独学で孤独に作品を作り続けた人達、刑務所などで初めて絵画に取り組んだ人達などの作品も含む[3]

一方、日本の障害者福祉の世界ではアウトサイダー・アートという語は本来の意味(伝統的な美術業界の外部)が誤解され、障害者の社会的包摂に反するものとして根強い反発がある。[4]こうした経緯もあり、日本では障害者アートにエイブル・アートと名付けている団体もある[5]。「エイブル・アート」は商標登録もされている。[6]

各国での紹介[編集]

日本においては、1993年に世田谷美術館における「パラレル・ヴィジョン」という企画によって、本格的に紹介されている。また、デュビュッフェはこれらの作品を収集し、このコレクションは現在スイスローザンヌ市でアール・ブリュット・コレクションとして所蔵されている。

また、オーストリアウイーン郊外にあるマリア・グギング国立精神病院内のグギング芸術家の家[7]は、入院患者のうち絵画の才能のある人たちが居住して創作活動を行っており、アウトサイダー・アートの拠点となっている。

2007年には日本各地でアール・ブリュット展が行われた。 そして、2008年にはスイスローザンヌ市で日本人12人によるのアール・ブリュット展が行われた。

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『美術手帖』2017年2月号、20-21ページ
  2. ^ 『美術手帖』2017年2月号、20-21ページ
  3. ^ 服部正『アウトサイダー・アート:現代美術が忘れた「芸術」』光文社新書 2003年 p.237
  4. ^ 『美術手帖』2017年2月号、23ページ
  5. ^ 項目「エイブル・アート」『まあるい地球のボランティア・キーワード145:ボランティア学習事典』春風社、2003年。p.37
  6. ^ 『美術手帖』2017年2月号、20-21ページ
  7. ^ 長谷川祐子「病める天才たちのユートピア:グギング<芸術家の家>」新潮社『芸術新潮』1993年12月号

関連項目[編集]

外部リンク[編集]