アイ・アム・ザ・ウォルラス
「アイ・アム・ザ・ウォルラス」 | ||||||||||||||||||||||
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ビートルズの楽曲 | ||||||||||||||||||||||
リリース |
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録音 |
アビー・ロード・スタジオ 1966年11月24日 – 1966年12月21日 | |||||||||||||||||||||
ジャンル | サイケデリック・ロック | |||||||||||||||||||||
時間 | 4分36秒 | |||||||||||||||||||||
レーベル |
パーロフォン(イギリス) キャピトル・レコード(アメリカ) オデオン(日本) | |||||||||||||||||||||
作詞者 | レノン=マッカートニー | |||||||||||||||||||||
作曲者 | レノン=マッカートニー | |||||||||||||||||||||
プロデュース | ジョージ・マーティン | |||||||||||||||||||||
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「アイ・アム・ザ・ウォルラス」(I Am the Walrus)は、1967年11月にビートルズが発表した16枚目のオリジナル・シングル(「ハロー・グッドバイ」)のB面曲である。
解説[編集]
レノン=マッカートニーの作品。実質的にはレノンの作った楽曲である。リード・ヴォーカルはジョン・レノン。ビートルズの曲の中でも特にサイケデリック色の強いナンバー。発表当時、音楽関係者に大きな影響を与えた楽曲でもある。なお、EP『マジカル・ミステリー・ツアー』のブックレットには"No you're NOT!" Said Little Nicolaというサブタイトルがつけられている[注釈 1]。
同年12月に公開されたテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』に演奏シーンが収められ、同名サウンド・トラックEP盤(英国)、LPアルバム(米国)に収録。現在ではアメリカ盤に倣った編集アルバムCDに収録されている。映画ではビートルズのメンバーがサイケデリックな格好をしたり、セイウチの着ぐるみを着て演奏するシーンで使われている。
サイレン風のイントロはジョンのエレクトリックピアノ、ジョージ・マーティン編曲のオーケストレーションやコーラス、BBCのラジオ放送音声などのSE(効果音)が加えられ、サイケデリックなアレンジが施されている。
ナンセンスな言葉遊びとも思える難解な歌詞も特徴である。タイトルのウォルラス(セイウチ)はルイス・キャロル作の物語『鏡の国のアリス』の「セイウチと大工」からとられたものである[1]。楽曲制作時、ジョンはセイウチが善人と勘違いしていたようで、後にセイウチの方が悪人だと知り「「セイウチ」じゃなくて「大工」になるべきだった。'I Am The Carpenter'(俺は大工)でもそんなに違和感はないだろう?」と語っている[2]。
歌詞の"Goo Goo Goo Joob"(または"Goo Goo g' Joob")は"Good Job"とセイウチの鳴き声をかけたものと言われている。グロテスクな"Yellow matter custard..."からのくだりは、ジョンが昔書いた詞の引用とも言われている。歌詞の中で本作と同じく1967年に発表された「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」について言及されている。また、「まったくきみはいけない娘だね。すぐにニッカーズを下ろしちゃって。」という件が問題視され、BBCでは放送禁止となった[3][4]。
後半部分のリズムについては宮城県民謡「斎太郎節」との共通点が指摘されている。ちなみにジョンはビートルズ日本公演で来日した際に東京ヒルトンホテルの10階のスイートルームに運び込まれたステレオセットで日本の民謡のアルバムを熱心に聞いており、その中でも“スゴくリズムがおもしろい”と言ってたのが「斎太郎節」だった[5]。
アルバム『ザ・ビートルズ』の収録曲「グラス・オニオン」には"The walrus was Paul"との一節があり、これは詞の内容を勝手に解釈するファンへの皮肉とも言われる[6]。またビートルズ解散直後の1970年のジョンのソロ曲「ゴッド(God)」では"I was the Walrus But now I'm John"と歌われ、ウォルラスにビートルズ時代の自分をなぞらえている。ジョンは1980年のインタビューでこの曲を再録音したいと答えていた[2]。
後年ポールは、自伝『メニー・イヤーズ・フロム・ナウ』の中で、この曲をジョンの最高傑作の一つと称賛している。
ステレオ・ヴァージョン[編集]
「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のリアル・ステレオ・ヴァージョンは1967年12月にリリースされた2枚組EP『マジカル・ミステリー・ツアー』ステレオ盤に収録された。CDでは1987年8月にリリースされたアルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』に収録された。
ただし、これらのステレオ・ヴァージョンは後述の通り後半部分は疑似ステレオであり、90年代まで完全なステレオ・ミックスは制作されなかった。
ミキシング[編集]
モノラル・ミックスと2種類のステレオ・ミックスが作られ、ミキシングによる差異がある。顕著な差異はイントロのリフがステレオは6回、モノラルは4回繰り返される[注釈 2]。1:20秒付近の"I'm crying"と歌われる個所で、モノラルではドラム、タンバリンがカットされ、英国(CD)ステレオではカットされていない。米国・西ドイツ等のステレオ版はオーヴァーダビングされたスネアドラムのみ残る。また1:35付近の"I'm crying"と"yellow matter custard"の間が1小節長いヴァージョンも存在する(米国モノラル・シングル)。後、米キャピトルにより英国ステレオ・ミックスと米国モノラル・ヴァージョンが組み合わさった新しいミックスが作られ、アメリカ編集盤『レアリティーズ vol.2』に収録された。
なお、ステレオ・ミックスの"Sitting in an English garden"という歌詞から先の部分はモノラル・ミックスを疑似ステレオ化したものである。理由として、モノラルのミキシングを行った際にその場で流れていたBBCのラジオ音声をマルチトラック・テープではなくモノラル・マスターにオーバー・ダビングしたためである[注釈 3]。ただし4分04秒あたりから定位が左に寄り、4分13秒あたりから右に移る。こうした点から単純な疑似ステレオとは言い難い。
映画『マジカル・ミステリー・ツアー』のビデオ・ソフト化では後半パートがモノラル化されている。
ビートルズのマッシュアップ作品として2006年11月に発売された『LOVE』では、後半部分も完全なステレオとしてリミックスされている[注釈 4]。
参加ミュージシャン[編集]
- ジョン・レノン - ボーカル、エレクトリックピアノ、メロトロン
- ポール・マッカートニー - ベースギター、タンブリン
- ジョージ・ハリスン - エレクトリック・ギター
- リンゴ・スター - ドラムス
- ジョージ・マーティン - 音楽プロデューサー
- セッションミュージシャン - ストリングス、ブラス、木管楽器
- マイク・サムス - バッキング・ボーカル
- レイ・トーマス - バッキング・ボーカル[8]
- マイク・ピンダー - バッキング・ボーカル[8]
- ジェフ・エメリック、ケン・スコット - レコーディング・エンジニア
カヴァー[編集]
- オアシス - シングル「シガレッツ・アンド・アルコール」、日本盤シングル「ホワットエヴァー」、B面集アルバム『ザ・マスタープラン』に収録
- レッド・ウォーリアーズ - シングル「バラとワイン」及び、ベストアルバム『RED SONGS』に収録
- フランク・ザッパ - 1988年のツアーの際演奏されたが、当時ビートルズの版権を所有していたマイケル・ジャクソンをこき下ろす歌を歌っていたことなどから、2014年現在もこのメドレーの作品化には至っていない。いわゆる海賊版などで聴くことが可能である。
- 斉藤和義 - 「Dream Power ジョン・レノン スーパー・ライヴ2006」にて演奏
- スプーキー・トゥース - 『ザ・ラスト・パフ』に収録
- スティクス - 『Big Bang Theory』に収録
収録シングル/アルバム[編集]
- 「ハロー・グッドバイ」(シングル) - B面に収録。
- 『マジカル・ミステリー・ツアー』(EP) - B面に収録。
- 『マジカル・ミステリー・ツアー』 - A面6曲目に収録。
- 『ザ・ビートルズ1967年〜1970年』
- 『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』
- 『ラヴ』 - リミックスバージョンを収録。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ ただし正式なタイトルにはこのサブタイトルはつかない
- ^ 米国盤に収録のステレオ・バージョンはこの部分が4回に編集されている
- ^ ジョン・レノンは「実のところ、ステレオだとすごくよかったんだぜ。でも、ちゃんと聴く人はいないからな。いろいろ盛り込みすぎて、ついていけなかったものな。ゴチャゴチャしすぎてたな。ひとつのトラックにはBBCラジオの生放送から聞こえてきた台詞を-シェイクスピアか何かだったな-どんどんぶちこんでいったんだよ」と話している[7]。
- ^ それ以前に『ビートルズ・アンソロジー』のDVD版で初めて完全リアル・ステレオ・ヴァージョンが収録されたことがある。
出典[編集]
- ^ MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd rev. edn). Chicago, IL: Chicago Review Press. ISBN 978-1-55652-733-3.
- ^ a b 『PLAYBOYインタビュー ジョン・レノン』、1981年 集英社
- ^ www.telegraph.co.uk.
- ^ beatlesebooks.com.
- ^ ビートルズと日本 TOKYO 5 DAYS トークイベント・レポートシンコーミュージック・エンタテイメント
- ^ Aldridge, Alan, ed (1990). The Beatles Illustrated Lyrics. Boston: Houghton Mifflin / Seymour Lawrence. ISBN 0-395-59426-X.
- ^ 『PLAYBOYインタビュー ジョン・レノン』、1981年 集英社(95頁)
- ^ a b “Discussions Magazine Music Blog: An EXCLUSIVE interview with THE MOODY BLUES' Ray Thomas!”. Discussionsmagazine.com (2015年1月15日). 2018年11月1日閲覧。
関連項目[編集]
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