アイスランドガイ

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アイスランドガイ
Arctica islandica valves.jpg
アイスランドガイの貝殻。
分類
ドメ
イン
: 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animarlia
階級なし : 旧口動物枝 Protostomia
上門 : 冠輪動物上門 Lophotrochozoa
: 軟体動物門 Mollusca
亜門 : 貝殻亜門 Conchifera
: 二枚貝綱 Bivalvia
階級なし : 固有弁鰓類
Autolamellibranchiata
異殻類
Heteroconchia
亜綱 : 異歯亜綱 Heterodonta
階級なし : 新異歯類 Euheterodonta
: マルスダレガイ目 Veneroida
上科 : アイスランドガイ上科 Arcticoidea
: アイスランドガイ科 Arcticidae
: アイスランドガイ属 Arctica
: アイスランドガイ
A. islandica
学名
Arctica islandica
Linnaeus1767
和名
アイスランドガイ
英名
Ocean quahog

アイスランドガイ (Arctica islandica) は、マルスダレガイ目に属する二枚貝の1

概要[編集]

アイスランドガイは北大西洋沿岸地域では一般的な食用二枚貝であり、商業的に捕獲されている[1]。このため「海ホンビノスガイ (Ocean quahog)」の他、「黒ハマグリ (Black clam)」、「黒ホンビノスガイ (Black quahog)」、「マホガニーハマグリ (Mahogany clam)」、「マホガニーホンビノスガイ (Mahogany quahog)」など様々な異称が存在する[2]

しかし、異称の由来で形態の似るハマグリ (Meretrix lusoria) やホンビノスガイ (Mercenaria mercenaria) はマルスレダレガイ上科マルスダレガイ科に属するが、本種はアイスランドガイ上科アイスランドガイ科に属する全くの別種である。形態もよく見ると異なり、アイスランドガイはより丸っこく、貝殻の外側の色は通常黒い。また、貝殻の内側に外套膜を持っていない。貝殻は5cm以上に成長する。また、ハマグリやホンビノスガイが潮間帯に生息するが、アイスランドガイは潮下帯に生息する[3]

また、アイスランドガイはアイスランドガイ属に属する唯一の現生種である[4]

寿命と研究[編集]

アイスランドガイは非常に長生きな事で知られている種である。最も長い記録は8.6cmの個体で507歳というものがあり、これは動物の中では最も長生きした個体ではないかと考えられている。この個体は、中国王朝の1つに因み「 (en:Ming (clam))」と名付けられている。明は2006年バンガー大学ジェームズ・スコースらの研究チームによってアイスランドの大陸棚で採集された。貝殻には成長に伴って木の年輪に相当する模様が生じるため、その本数を数える事により年齢が推定できる。この際に推定された年齢は405歳から410歳であり、1982年にアメリカの海域で捕獲された220歳のアイスランドガイを上回った。この記録はギネス世界記録にも掲載された。しかし、2012年に改めてこの個体の年輪を数え、放射性炭素年代測定法も組み合わせて調べた結果、507歳であることが判明した。即ち、明は当初考えられていた物より100年以上古い、1499年生まれであることが分かった。年齢が100歳以上も訂正されたのは、細かい部分の年輪が数えづらい事に原因があった[5][6][7]

明について、一部の報道では「年齢調査のために貝を開かれたために殺された。」あるいは「年齢を調べる際に誤って貝を開いてしまったために死んでしまった。」という主旨の報道がなされ[5][8][9]、研究者達には批判のメールが多数寄せられた[6]。しかし、これは事実と反する部分がある[5]英国放送協会はこの件について、ウォーターゲート事件 をもじって「クラムゲート (Clam-gate) 事件」という見出しを付けている[6]。明は他の約200の個体と共に採集され、陸地に運ぶまでの船の中で冷凍保存されたため、調査の段階ではすでに死亡していたのである。200個体というのは、アイスランドガイ全体の生息数のごくごく一部にすぎない。そして、生きた状態での明を見た際、これはごく平凡な大きさのアイスランドガイであったという。明の研究チームと同じく、アイスランドガイの研究をしているマデリン・メティによれば、これらの貝は一定の年齢に達すると成長が遅くなるため、例えば大きな個体を採集したとしても、見かけで100歳なのか300歳なのかを見分けるのは困難であるという[5]。保全生物学者のマーク・パウエルは、明が約400歳だと思われていた2007年に自身のブログで、この大きさの個体は市場では珍しくない大きさであり、見かけも高齢さをアピールする要素は全くない地味なものであるため、高齢であるだけの理由で保護されない限り、例え最大だろうと最高齢だろうとおかまいなく捕獲されクラムチャウダーに放り込まれるであろうという主旨のコメントを残している[10]。先述のメティも、2013年において同じようなコメントを残している[5]

アイスランドガイの年輪は古気候の推定に利用されている。アイスランドガイは4歳から192歳の複数の個体を調べた結果、誕生から25年間以外は、少なくとも150年間にわたって安定した成長を維持し、老化の影響も無視できるほど小さいことが知られているため、年輪の幅を用いた海水温の変化を調べるには都合がよいのである[11]。この種の研究の歴史は古く、1868年には374歳の個体の年輪が調べられ、1550年から1620年1765年1780年に発生したと見られる小氷期と、1815年に大規模な噴火を起こしたタンボラ山の影響による地球の平均気温の低下が反映されていた事が確認されている[12]。なお、この374歳という記録は先述のギネス世界記録において掲載されておらず、非公式記録として扱われている[13]。なお、北大西洋においては500年も遡って研究できる資料はアイスランドガイ以外には発見されていないという[5]

出典[編集]

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関連項目[編集]