ひびき型音響測定艦

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ひびき型音響測定艦
AOS5201 Hibiki(DN-ST-92-02034).jpg
基本情報
種別 音響測定艦 (AOS)
運用者  海上自衛隊
就役期間 1991年 - 現在
前級 なし
次級 最新
要目
排水量 基準2,850トン (3番艦は50t増)
満載排水量 3,800トン
全長 67.0 m
全幅 29.9 m
深さ 15.3 m
吃水 7.5 m
機関方式 ディーゼル・エレクトリック方式
主機関 三菱S6U-MPTKディーゼル発電機×4基
・推進電動機×2基
推進器 スクリュープロペラ
出力 3,000馬力
最大速力 11ノット
航続距離 3,800海里 (10kt巡航時)
乗員 40名
レーダー OPS-16 対水上捜索用
OPS-9 航海用
ソナー AN/UQQ-2 曳航式
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ひびき型音響測定艦(ひびきがたおんきょうそくていかん、英語: Hibiki-class ocean surveillance ships)は海上自衛隊が運用している音響測定艦の艦級。同型艦は現在運用中の2隻[1]

潜水艦を超える秘匿性及び戦略性と機密保持を高めており、海上自衛隊の艦艇の中でも敷設艦海洋観測艦と音響測定艦に至っては内部の公開は一切されないことになっている。

来歴[編集]

1950年代より戦力化された原子力潜水艦は、水上航走やシュノーケル航走が不要になったことで、レーダーやアクティブ・ソナーなどに探知される可能性は極めて低くなっていた。一方で、常に原子炉蒸気タービンからノイズを発生するという弱点があり、パッシブ・ソナーにより遠距離からでも聴知しうると期待された。このことから冷戦初期の対潜戦では、アメリカ海軍パッシブ戦への移行によってソビエト連邦軍の強大な潜水艦戦力への対抗を図っており、SOSUSと攻撃型原子力潜水艦(SSN)、対潜哨戒機によるパッシブ対潜戦システムを構築し、成功を収めた[2]

しかしソビエト連邦は諜報活動などによってこのパッシブ対潜戦システムの重要性に気づき、1970年代中期より、ヴィクターIII型SSN(671RTM型)チャーリーII型SSGN(670M型)デルタ型SSBN(667B型)など、対抗策を講じて静粛性を格段に向上させた潜水艦の艦隊配備を開始した。これにより、米軍のパッシブ対潜戦システムの効果は減殺されはじめ、1980年代中期より、更に静粛化を進めたアクラ型SSN(971型)キロ型SS(877型)が大量配備されたことで、米軍対潜戦部隊が圧倒される懸念が生じていた[2]

これに対し、アメリカ海軍では従来のパッシブ・ソナーへの依存からの脱却を志向するようになった。この一環として開発されたのが監視用曳航アレイ・ソナー(SURTASS)である[2]。これは従来の艦載パッシブ・ソナーよりも更に低周波を利用しており、SOSUSを補完する戦略レベルの広域捜索手段として期待されていた[3]。アメリカ海軍では、1980年代中盤より配備を開始した。そして日米防衛首脳会議にもとづき、海上自衛隊でも、平成元年度および2年度計画で、SURTASS搭載艦を建造することとなった。これによって建造されたのが本型である。なお急遽決定されたこともあり、61中期防の枠外となっている[4]

設計[編集]

艦の規模や全般配置は、当時アメリカ海軍が整備していたビクトリアス級音響測定艦英語版に範をとっており、船型も、海自として初めてSWATH船(小水線面積双胴船)を採用した。これは、SURTASSの巨大な格納用ドラムを収容できる甲板面積を確保するとともに、荒天下でも長時間にわたって針路一定かつ低速で曳航を続けるのに適した船型であった[5]三井造船では、1980年代初頭に海洋科学技術センター(JAMSTEC)向けのSWATH船である「かいよう」を建造しており、そのノウハウが応用されたと言われている。上甲板上は、前方に艦橋構造物が配され、その直後から艦尾まではヘリコプター甲板となっている[1]

ソナー性能に影響しないよう水中放射雑音の低減が重視されており、主機関はディーゼル・エレクトリック方式とされた。推進発電機は水線上の高い位置に配置されており、水面下の没水部船体(ロワーハル)に電動機が設置されている[6]。この推進発電機の原動機としては、三菱重工のS6U-MTPKディーゼルエンジン(単機出力1,320馬力)が採用され、4セットが搭載された[7]。また機関制御監視記録装置により、通常航海中の無人化が図られている[5]

装備[編集]

上記の経緯より、本級の中核的な装備となるのが監視用曳航アレイ・ソナー(SURTASS)である。これは、曳航ケーブルは6,000 ft (1,800 m)、そして曳航アレイは実に全長8,575 ft (2,614 m)におよぶ長大なシステムであった。曳航深度は500–1,500ft (150–460m)、速力は3ノットである[3]。導入前の段階では「高性能聴音装置」と称されていたが[8]、海上自衛隊では単に「曳航ソーナー装置」(SURTASS)と称されている[5]。本級は、SURTASSを展開して日本近海を遊弋し、潜水艦の音響情報を収集する[9]。収集した音響情報は、陸上の対潜水艦戦作戦センター(ASWOC)に送られ、探知予察などの資料となる[9]

なおSURTASSの調達費はアメリカ合衆国が半分を負担したという説もあり、その運用要員としてアメリカ海軍軍人が乗艦しているとも言われている[8]。SURTASSの搭載作業も、完成した艦をアメリカに回航して行った[9]

同型艦[編集]

平成29年度計画において、「はりま」以来、29年ぶりの本型艦の建造が発表された (建造費、234億円)。平成29年度計画艦、29AOSは船体設計こそは同型であるが内部におけるシステムは最新のネットワークによる艦内統合情報や音響観測関連機器を取り入れている。

29AOSはあくまでも増勢であり「ひびき」、「はりま」の艦齢寿命を見越した代替艦ではない。

艦番号 艦名 建造 起工 進水 就役 所属
AOS-5201 ひびき 三井造船
玉野事業所
1989年
(平成元年)
11月28日
1990年
(平成2年)
7月27日
1991年
(平成3年)
1月30日
海洋業務・対潜支援群
第1音響測定隊
呉基地
AOS-5202 はりま 1990年
(平成2年)
12月26日
1991年
(平成3年)
9月11日
1992年
(平成4年)
3月10日
AOS-5203 平成29年度計画艦
(29AOS)
2018年度
(平成31年)
予定
2019年度
(平成32年)
予定
2021年
(平成33年)
3月予定
海洋業務・対潜支援群予定
(呉基地)

参考文献[編集]

  1. ^ a b 「海上自衛隊全艦艇史」、『世界の艦船』第630号、海人社、2004年8月、 172頁、 NAID 40006330308
  2. ^ a b c 山崎眞「水上艦と潜水艦 今どっちが優勢か? (特集 世界の水上戦闘艦 その最新動向)」、『世界の艦船』第832号、海人社、2016年3月、 106-109頁、 NAID 40020720360
  3. ^ a b Norman Friedman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. p. 24. ISBN 9781557502681. http://books.google.co.jp/books?id=l-DzknmTgDUC. 
  4. ^ 岡部いさく「補助艦 (特集 自衛艦2014) -- (自衛艦の技術と能力)」、『世界の艦船』第790号、海人社、2014年1月、 144-149頁、 NAID 40019881942
  5. ^ a b c 技術開発官(船舶担当) 『技術研究本部50年史』(PDF)、2002年、72-115頁。2012年8月25日閲覧。
  6. ^ 森恒英 「10. 海洋観測艦と敷設艦」『続 艦船メカニズム図鑑』 グランプリ出版、1991年、270-283頁。ISBN 978-4876871131
  7. ^ 阿部安雄「機関 (自衛艦の技術的特徴)」、『世界の艦船』第630号、海人社、2004年8月、 238-245頁、 NAID 40006330308
  8. ^ a b 国立国会図書館 (1988年10月20日). “第113回国会 内閣委員会 第7号”. 2016年5月31日閲覧。
  9. ^ a b c 『自衛隊装備年鑑 2006-2007』 朝雲新聞、283頁。ISBN 4-7509-1027-9

外部リンク[編集]