ニンジン

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ニンジン
Mrkva.JPG
収穫されたニンジン
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : キキョウ類 campanulids
: セリ目 Apiales
: セリ科 Apiaceae
: ニンジン属 Daucus
: ニンジン(ノラニンジン) [1]
D. carota
亜種 : ニンジン
D. carota subsp. sativus [2]
学名
Daucus carota subsp. sativus (Hoffm.) Arcang. [2]
和名
ニンジン
英名
carrot
ニンジンの根
にんじん(根、皮むき、生)[3]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 152 kJ (36 kcal)
8.7 g
食物繊維 2.4 g
0.1 g
0.8 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(86%)
690 μg
(62%)
6700 μg
チアミン (B1)
(6%)
0.07 mg
リボフラビン (B2)
(5%)
0.06 mg
ナイアシン (B3)
(5%)
0.7 mg
(7%)
0.33 mg
ビタミンB6
(8%)
0.10 mg
葉酸 (B9)
(6%)
23 μg
ビタミンC
(7%)
6 mg
ビタミンE
(3%)
0.5 mg
ビタミンK
(17%)
18 μg
ミネラル
ナトリウム
(2%)
34 mg
カリウム
(6%)
270 mg
カルシウム
(3%)
26 mg
マグネシウム
(3%)
9 mg
リン
(4%)
25 mg
鉄分
(2%)
0.2 mg
亜鉛
(2%)
0.2 mg
セレン
(1%)
1 μg
他の成分
水分 89.7 g
水溶性食物繊維 0.6 g
不溶性食物繊維 1.8 g
ビオチン(B7 2.8 µg

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[4]
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
葉にんじん 葉 生[3]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 75 kJ (18 kcal)
3.7 g
食物繊維 2.7 g
0.2 g
1.1 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(18%)
140 μg
(12%)
1300 μg
チアミン (B1)
(5%)
0.06 mg
リボフラビン (B2)
(10%)
0.12 mg
ナイアシン (B3)
(7%)
1.1 mg
(9%)
0.43 mg
ビタミンB6
(12%)
0.15 mg
葉酸 (B9)
(18%)
73 μg
ビタミンC
(27%)
22 mg
ビタミンE
(7%)
1.1 mg
ビタミンK
(152%)
160 μg
ミネラル
ナトリウム
(2%)
31 mg
カリウム
(11%)
510 mg
カルシウム
(9%)
92 mg
マグネシウム
(8%)
27 mg
リン
(7%)
52 mg
鉄分
(7%)
0.9 mg
亜鉛
(3%)
0.3 mg
他の成分
水分 93.5 g
水溶性食物繊維 0.5 g
不溶性食物繊維 2.2 g
硝酸イオン 0.4 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した。試料: 水耕栽培品。別名: にんじんな。廃棄部位: 株元
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

ニンジン(人参、学名:Daucus carota subsp. sativus)はアフガニスタン原産のセリ科ニンジン属の2年草。

名称[編集]

属名 Daucus、種小名 carotaラテン語でそれぞれ「パースニップ」、「ニンジン」の意。英名 carrotや、栄養素カロテン(カロチン)の名は後者に由来。

日本語名「ニンジン」の由来、および中国語名については、オタネニンジンを参照されたい。

概要[編集]

ニンジンは原産地のアフガニスタン周辺で東西に分岐し、世界各地に伝播した。オランダを通りイギリスへと西方へ伝来しながら改良が行われた西洋系、中国を経て東方へと伝わった東洋系の2種類に分類できる。東洋系は細長く、西洋系は太く短いが、ともに古くから薬や食用としての栽培が行われてきた。

日本への伝来は16世紀で、この頃はと同様に食用としていたが、明治時代以降では一般に根のみを食べるようになった。現在でも地域によっては、間引きのため抜去された株が葉を食べる商品として出荷されることがある。日本で江戸時代に栽培されていた品種は東洋系が主流だったが、栽培の難しさから生産量が減少し、西洋系品種が主流になっている。

なお、一般に薬草として用いられているオタネニンジン(朝鮮人参・高麗人参とも)はウコギ科の植物であり、植物分類学上ニンジンとは異なる植物である。

植物としての特徴[編集]

栽培には涼しい気候が適しているが、苗の段階では比較的高い温度にも耐えられる。そのため夏に種を撒いて秋から冬に収穫する方法が最も容易である。しかしニンジンは発芽率が低く、の吸水力が弱いため種撒き後にが乾燥すると極端に発芽が悪化するため、雨後を狙って種を撒くのが好ましい。また乾燥を防ぐために潅水したり、新聞紙籾殻などで被覆すると効果的である。

短根ニンジンは多くの土質で栽培が可能なためあまり考慮する必要はないが、有機質に富んだ砂質土壌が最適とされる。しかし過湿に弱く、水はけが悪いと根腐れを起こしてしまう。土壌酸度弱酸性から中性が適し、酸性ほど生育が遅れ、裂根が多くなる。また線虫(ネコブセンチュウ類やネグサレセンチュウ類)の被害を受けやすいので、前作に被害にあったところは避ける。また、日陰では茎葉ばかりが茂り、根の肥大が悪くなるためなるべく日陰になりやすい場所は避けたほうが良い。

長根種は一部の地域で栽培されているだけで、現在は五寸ニンジンと呼ばれる長さ15 cm内外の品種が多く栽培されている。これは品種も肉質や外皮の色、形状と揃い、カロチンの含有量、作りやすさなどを目的にして改良が進んでいるものである。このほかプランターでの栽培が容易な長形や丸形のミニニンジンもある。

ニンジンは種を撒いて発芽するまでに7 - 10ほどかかり、その後の生育も遅いペースで進む。新聞紙などを掛けて乾かないように管理していると、雑草が一斉に生えてきてどれがニンジンかわからないくらいになる。また生えてきたニンジンは生育が遅いため、除草作業を怠ると雑草に負けてしまい枯れてしまうので、生えてきた雑草に注意し、小さいうちに早く抜き取ることが大切である。

東洋系ニンジン[編集]

中国で改良された東洋系のニンジンは、16世紀に日本に伝えられ、各地で作られるようになった。赤色の金時にんじんを筆頭に、甘味が強くてニンジン特有の臭みが少なく、煮ても形が崩れにくいので和風の料理に重宝される。なかでも京料理では比較的多く用いられることから金時ニンジンは「京人参」とも呼ばれ、京野菜のひとつに数えられている。しかし、栽培しにくいことがネックとなり、第二次世界大戦後西洋系ニンジンが主流となってきている。正月料理用などとして、現在でも晩秋から冬にかけて市場に出回るが、栽培量が少ないためこの季節以外では入手が難しい。この他沖縄県の伝統野菜のひとつで黄色い島ニンジンまたはチデークニーと呼ばれる品種や、アフガニスタン原産の黒人参などが東洋系に含まれる。

西洋系ニンジン[編集]

ニンジンの自動計量・パッキング装置

西洋系ニンジンは、オランダフランスで改良がすすみ、江戸時代末期に日本に伝来した。主にオレンジ色をしており、甘味もカロチンも豊富に含んでいる。五寸ニンジンが一般的な品種で、ちょうど五(15 - 20 cm)ぐらいの長さで、金時ニンジンなどと比べて太めなのが特徴。

かつての品種は特有のニンジン臭が強く、子供の嫌う野菜の筆頭格であったが、品種改良により最近では臭いも薄くなった。全国の気候に応じた品種が栽培されていて、1年中市場に出回っているが、ニンジン本来の旬は9月頃から12月頃である。

栄養・調理[編集]

[編集]

さまざまな色のニンジン

カロテノイドを含む黄色や橙色のものや、前述の黒人参などアントシアニンを含む濃紫色や紅紫色のものがある。長さ15 cm内外の短根ニンジンが周年店頭に並び、さまざまな料理に広く利用される。生食、炒める、煮るなど、多くの方法で調理が可能である。玉葱じゃがいも・人参をあわせて家庭常用3野菜という人もいる。西洋料理のブイヨン出汁)作りやソフリットなど、料理にうまみを出す用途にも用いられる。甘みの強い素材なので、ハルヴァケーキなどデザートの素材ともなる。摺り下ろして絞ったジュースも日常的に利用されている。

ビタミンA前駆体となるプロビタミンAであるカロテン類が豊富で、緑黄色野菜に分類される。カロテンの呼称がニンジンのラテン語名に由来するように、ニンジンのカロテン量はずば抜けて多く、中くらいの半本で、1日のビタミンA必要量がとれるほどである。またビタミンBCカルシウムも多く、栄養的価値が高い。β-カロテンを多く含み、カロテノイドの一種であるリコピンを多く含むトマトといっしょに食べると予防によいと言われている。一方、東洋系ニンジンの金時ニンジンに含まれるカロテンとしてはトマト同様リコピンが多く、一方β-カロテンはほとんど含まれていない。リコペンはビタミンAには変換されないため、ビタミンAの供給源として金時ニンジンは不適である。

生のニンジンにはビタミンCを失活させるアスコルビナーゼ(ascorbinase, EC 1.10.3.3, 反応)という酵素が含まれているので生食は好ましくないとも言われている[5]。このアスコルビナーゼはビタミンCを破壊するためダイコンなどビタミンCの多い野菜との相性が問題となるが、少量のレモンを混ぜるとアスコルビナーゼのビタミンC破壊作用を弱めることができる[6]。しかし同じくアスコルビナーゼを含むキュウリの項にある様に、これによって失活されたと見えるビタミンCは、実際は酵素作用によって還元型ビタミンCから酸化型ビタミンCに変異したのであり、酸化型に変わったビタミンCでも体内で還元型に戻るという可逆的性質を持ってるため今日では生理作用も還元型と同等であるとされてる。

ニンジン独特の苦みは、メレイン6-ヒドロキシメレイン6-メトキシメレインが原因である。

2004年平成16年)8月国際家政学会での発表によると、油を使うなら、200もの高温は避け、短時間での調理にとどめる方が、カロテンの消化・吸収が良くなる。人参の皮は、白っぽく非常に薄いもので、機械により、出荷地で既に剥かれている。多くの人が皮だと思い捨てている部分には、実にグルタミン酸やカロテンなどの栄養が豊富に含まれている。

[編集]

ニンジンの葉

まれに出荷される葉は、野菜炒め・天ぷら・お浸しなどで食べることが可能である。味はセリに似て、独特の清涼感がある。

電子レンジでの発火現象[編集]

未調理の状態のごく少量のニンジンを電子レンジで加熱すると、電子レンジのマイクロ波によってニンジン内に電気が発生し、眩いスパーク現象と共に発煙して炭化することがある。これらの現象を回避するには、ニンジンに少量のをかけるか、一度に調理する量を100 g以上に増やすことが必要である[7]

馬との関係[編集]

日本では『の好物』とされ、観光牧場ではエサやりイベント用飼料の定番となっている。このイメージから、「馬の鼻先にニンジンをぶら下げて走らせる」という連想が生まれ、人にやる気を出させるための「褒美」のたとえとして「ニンジン」が使われるようになった。

ウマに限らず動物は一般に甘味のあるものを好むため、家畜調教などで褒美として甘い飼料を与える事がある[8]。ウマの場合、ヨーロッパではリンゴなどの果物パン角砂糖が、日本では(安価な)ニンジンが用いられた[9]。このため、日本で育ったウマはニンジンを好むが、他国で育ちニンジンを食べ慣れていないウマは食べなかったり、むしろ嫌う事もある。

類似の例として、ネコに魚があげられる。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]