だろう運転
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だろう運転(だろううんてん)とは、自動車をはじめとする機械の運転において、事故に繋がるような楽観的予測に基づいた運転を指す日本語の慣用句。
概要
[編集]自動車、軽車両(自転車など)、歩行者といったさまざまな存在が混在する道路交通において、特に高速で走行する自動車の運転者は、あらゆる可能性を考慮して安全運転に努めることが求められる。しかし、しばしば運転者は楽観的な(慎重さを欠いた)、あるいは自己中心的な(危険回避を他者の行動のみに依存する)予測に基づいて行動し、結果的に危機回避が遅れて事故に繋がることがある[1]。こうした態度を、日本の自動車教習所や警察などでは「だろう運転」という言葉で総称し、運転者に対してより注意深く予測や行動を行うことを啓蒙している。特に人身に関わる交通事故が起こった場合の「~だろう運転」は、過失割合においても多少の過失は問われることとなる。また、危険を予知する義務を怠ったとして「安全運転義務違反」の行政処分が下ることとなる。
使用
[編集]用語の初出は不明だが、労働安全教育に関する1960年の文献において、作業規律に反する用語として「単独作業、思いつき作業、手抜き作業、だろう運転」の4つが挙げられている[2]。1962年には全国産業安全大会において西濃運輸の田口福太郎が「ダロウ運転」という語を使用しており[3]、この頃には運輸業の分野でも使われていたことが伺える。
いわゆる交通戦争が拡大した1960年代末から1970年代初頭にかけて、複数の都道府県警察が年次報告などで「だろう運転」[4][5]やそれを事故原因とする統計数値[6][7]を扱うようになり、交通安全分野で広く用いられるようになっていった。
だろう運転の例
[編集]- 右折待ちの状態で前方から直進車が来た場合、「まだ余裕があるだろう」あるいは「譲ってくれるだろう」と判断して右折をする例。直進車の速度や距離、反応を見誤って、いわゆる右直事故を起こす可能性がある。
- 見通しの悪いカーブなどで、「対向車は来ないだろう」と判断して追い越しを行う例。正面衝突等を起こす可能性がある。
- 前方の車を追走する状態で、「急ブレーキをかけることはないだろう」と判断して、十分な車間距離を確保しない例。追突事故を起こす可能性がある。
- 深夜や僻地の道路において、「こんな時/所では歩行者や自転車はいないだろう」と判断して、歩行者や歩行者がいない前提での運転を行う例[8]。思わぬところから歩行者が現れて、対人事故を起こす可能性がある。
- 駐車の際「ここに停めても大丈夫だろう」と判断して、駐車する例。その車が死角となり、その死角から飛び出した人を別の車が轢いてしまう、という事故の元になる可能性がある。
- このような人身事故を起こしたドライバーは、しばしば「駐車車両の裏から歩行者が突然出てきて…」「まさかあんな所から自転車が飛び出してくるなんて…」といった、「相手に落ち度があった」とか「運が悪かった」といった意味合いの言い訳をすることがある。しかしこれらは言い換えればドライバーが知らず知らずのうちに自分に都合の良い予想をし、それに基づいて行動したことによる結果事故が起こったことを意味する。これとは逆に「かもしれない運転」をして危険を予測し、慎重な運転を行っていれば、こうした事故を防ぐことは可能といえる。
かもしれない運転
[編集]「だろう運転」の対義語として、より悲観的な(慎重な)視点から様々な可能性を想定し、十分な余裕(安全マージン)を持って運転することを指すのが、「かもしれない運転」である。
かもしれない運転の例
[編集]上述と同様のケースにおける「かもしれない運転」の例は、以下のようになる。
- 右折待ちで、直進車の動きに対して「思ったより速く進んでいるかもしれない」と判断して、十分な余裕ができるまで右折を待つ。
- 見通しの悪いカーブなどで、「対向車が来るかもしれない」と判断して、十分に見通しがよい場所に到達するまで追い越しを行わない。
- 前方の車を追走する状態で、「急ブレーキをかけるかもしれない」と判断して、十分な車間距離を確保する。
- 深夜や僻地の道路においても、「歩行者が突然現れるかもしれない」と判断して、歩行者がいる前提での運転を行う。
脚注
[編集]- ↑ 企業安全運転管理研究会「予測運転とだろう運転」『安全運転管理者のための5分間スピーチ』大成出版社、1990年4月、33頁。
- ↑ 大道明『これからの安全管理実務(厚生資料;第6集)』労務研究所、1960年、985頁。
- ↑ 田口福太郎「交通事故防止対策について」『全国産業安全大会研究発表集 第21回』、中央労働災害防止協会、1962年、242頁。
- ↑ 『交通統計 昭和42年』(レポート)京都府警察本部・京都府交通安全協会、1968年、4頁。
- ↑ 『交通白書 昭和46年』(レポート)長崎県警察本部・長崎県・長崎県交通安全協会、1972年、59頁。
- ↑ 『滋賀の交通 1971』(レポート)滋賀県警察本部・滋賀県交通安全協会、1972年、40頁。
- ↑ 『交通統計 昭和46年』(レポート)鹿児島県・鹿児島県警察本部・鹿児島県交通安全協会、1972年、38頁。
- ↑ 国土交通省大臣官房運輸安全監理官室 (2023年6月). “事故、ヒヤリ・ハット情報等の収集・活用の進め方~事故の再発・未然防止に向けて~(自動車モード編)” (PDF). p. 38. 2026年5月18日閲覧。
参考文献
[編集]警察庁交通課(監修)、全日本交通安全協会(編集・発行) (2006). 人にやさしい交通安全 (第7次改訂版). 全日本交通安全協会