だるま女

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だるま女(だるまおんな)は、両腕両脚が無い女(だるまを語源とする)。

概要[編集]

戦前の見世物興行であった実話。また、誘拐・拉致された女性が両腕両脚を切断され、「だるま女」として慰み者や見世物とされているという実態は明らかではない都市伝説[1][2][3]

都市伝説のだるま女[編集]

1980年代初頭に流布し始めた都市伝説で[4]、「パッケージツアーで日本国外を旅行していた女子大生が、試着室に入った後に行方不明になり、数年後に別の国の街角で、両腕両足を切断されただるまのような姿で見世物にされているのを友人が発見する」というあらすじである[5]。試着室で女性が行方不明になるというストーリーの核心部分は、1969年5月頃にフランスで広まったデマ「オルレアンの噂」の変形と見ることができる[6]

この都市伝説は、日本国外から伝わってきた都市伝説が、リアリティを増すために日本人にとって身近なディテールに置き換えられて広まったものと考えられている[7]。この都市伝説が流行した時期は、女性の大学進学率が向上した時期と一致し[8]、また海外旅行が女性を中心に急増し始める少し前の時期であった[9]。この都市伝説からは、男性に先駆けて海外旅行という余暇の楽しみ方を実践しはじめた女子大生に対する戒めという意図が読み取れる[10]

歴史上のだるま女[編集]

  • 王朝を興した劉邦の正妻呂后は夫の死後、自分が生んだ劉盈(恵帝)の地位を脅かしかねないと、劉邦の側室であった戚夫人の手足を切断、更に薬物による会話能力破壊・聴覚破壊、眼球までくりぬき、生きたまま便所に配置し「人豚」と称して晒し者にしたとされる。これは『史記』に記載され、呂雉の残忍さを表すものとして有名な逸話であるが、当時の医療技術でそのまま生存させることが可能だったかは疑問である。
  • 中国史上、唯一人の女帝である武則天も、亡夫高宗の寵愛を争った王氏(前皇后)・蕭氏(前淑妃)両名の四肢を切断後、「蟒」・「梟」と無理やり改名させるという恥辱を与え、処刑したとされる。
  • 王朝末期、皇帝の寵愛を受けていた麗姫は西太后に妬まれ、だるま女にされたといわれるが、これは完全なフィクションであり、呂后や武則天と混同されているにすぎない。1985年に日本で公開された中国映画『西太后』のラストでこのシーンが出てくるが、実際の麗嬪(麗妃)は咸豊帝の唯一の娘・栄安固倫公主を生み、咸豊帝の没後も後宮で静かな余生を送った。同治光緒期には麗皇貴妃、麗皇貴太妃に加封され、1890年に54歳で死去した。死後、荘静皇貴妃とされ、東陵の咸豊帝の定陵の妃園寝(側室達の墓)に葬られている[11]

だるま女に関する作品[編集]

  • 『わらの街』 - 西村寿行の小説。女性を誘拐して高級売春婦としている組織が、抵抗の激しかった女性を見せしめのため、だるま女にしている、という設定。作品には登場しない。
  • 『猟奇エロチカ 肉だるま』 - グロAV。四肢を切断され、だるま女にされる。(もちろんフェイクの演出)
  • TOKYO TRIBE2』 - 井上三太の漫画。作中に登場する悪辣な権力者“ブッバ”の猟奇趣味の一つとして、このだるま女を作る場面がある。
  • 十三人の刺客』 - 暴君として描かれる松平斉韶が、一揆の首謀者の娘をだるま女にする、というストーリーが含まれている。また、そのだるま女が実際に登場する。
  • 『手足切断ダルマロリータ JUMP』 - アルバイトに応募してきた女子高校生風の女の子が手足を切断され売春婦になるという内容のアダルトビデオ
  • 『姫雛たちの午後』 - 岡すんどめの成人向け漫画。だるま女の読み切りだけを収録した作品集。
  • バイオレンスジャック』 - 永井豪ダイナミックプロによる漫画。関東スラム街編から肘や膝から先を切断され、自殺できないよう舌を抜かれた「人犬」と呼ばれる虐待用奴隷が登場する。

戦前の見世物興行[編集]

両腕・両足を損じた女性が裁縫、刺繍、書をしたためる姿などを見世物小屋で見せた例は実在し、中村久子が有名である。

脚注[編集]

  1. ^ 宇佐和通 『THE都市伝説』 新紀元社、2004年、131頁。
  2. ^ 松山ひろし 『3本足のリカちゃん人形―真夜中の都市伝説』 イースト・プレス、2003年、90-94頁。
  3. ^ 木原浩勝・岡島正晃・市ヶ谷ハジメ 『都市の穴』 双葉社〈双葉文庫〉、2003年、177-178頁。
  4. ^ 松田 2014, pp. 76,78.
  5. ^ 松田 2014, p. 75.
  6. ^ 松田 2014, pp. 95,102-103.
  7. ^ 松田 2014, pp. 94-98.
  8. ^ 松田 2014, p. 76.
  9. ^ 松田 2014, pp. 76-78.
  10. ^ 松田 2014, p. 78.
  11. ^ 加藤徹著『西太后』、中公新書 2005年、56頁など

参考文献[編集]

関連項目[編集]