しゃっくり
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しゃっくり(噦り、吃逆、呃逆、嗝、英語; hiccup)とは、横隔膜(または、他の呼吸補助筋)の強直性痙攣および、声帯が閉じて「ヒック」という音が発生することが一定間隔で繰り返される現象。ミオクローヌス(myoclonus:筋肉の素早い不随意収縮)の一種である。
しゃっくりは明確な原因がなくても起こるが、様々な刺激が舌咽神経から延髄に伝わり、横隔膜や声帯を動かすことでも起きる。その刺激は鼻水、煙草、炭酸や熱い食べ物[1]、会話などがきっかけになることがある。他にストレスが原因になるほか、まれに逆流性食道炎や脳腫瘍などのがん[1]、腎臓病、延髄梗塞といった疾患によって引き起こされることもある。
神経伝達物質のうちγ-アミノ酪酸(GABA)はしゃっくりを抑える。酔っ払いがしゃっくりしやすいのは、GABAの働きが弱まっているためである[1]。
治療法[編集]
しゃっくりの多くは数分から数十分で止まるが、疾患が原因である場合は止まりにくく、衰弱してしまうこともある。長期間にわたって続くものに対しては、投薬などの治療が必要になる[2]。医師による投薬治療では、クロルプロマジンやメトクロプラミドが用いられることがある[3]。
しゃっくりに対しては数多くの民間療法があるが、紙袋を口に当てて呼吸するといった方法は血中の二酸化炭素濃度を高めることでしゃっくりを止めようとするものである。腹式呼吸で吸える限り吸い、横隔膜を一杯まで縮めた状態で保持したあとゆっくり吐く方法もある。また、酢を飲む[3]、驚かせる、水を飲む、舌を引っ張る、目をこする、砂糖をスプーン一杯飲む、動かないといった行為で迷走神経を刺激することも効果がある[2]。また、両方の指を耳の穴に入れて、両方を強めに30秒から60秒ほど押さえ続けると止まる場合がある。耳の奥には、脳からお腹の臓器へ繋がる迷走神経があり、この迷走神経に間接的に刺激を与えると、しゃっくりが止まる効果が期待できる。
しゃっくりに関する文化[編集]
ギネス世界記録によれば、しゃっくりの世界最長記録保持者はアメリカのチャールズ・オズボーン (1894–1991年) である。オズボーンのしゃっくりは 1922年に豚を屠殺していた時に始まり、以後68年間、毎分40回(その後、毎分20回に低下)のペースで続いた。このしゃっくりはオズボーンが亡くなる1年前、1990年にようやくおさまった[4]。この間、オズボーンはバラエティー番組などに出演し一躍有名になったが、普通の生活を送っていたという。
また、イギリスの男性が脳腫瘍により2年以上しゃっくりをし続け、日本のテレビ番組『ザ!世界仰天ニュース』の取材を受けた。そのことがきっかけで治療を行い、手術で脳腫瘍を取り除いたことで回復した[5][6]。
呼び名[編集]
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一般的には、「しゃっくり」が正しい呼び名となっているが、「ひゃっくり」や「さくり」などの呼び方もある。英語では、「ヒカップ」(綴りは hiccup またはhiccough)のように言い、日本の「ひゃっくり」同様、しゃっくりが発生した時に出る、「ヒック」という音から連想できるものである。
また、ドイツ語では「シュルックアウフ」、スペイン語では「イポ」、フランス語では「オケ」(綴りは hoquet: 男性名詞)のように発音する。フィンランド語やノルウェー語では「ヒッカ」「ヒッケ」で、日本語の発音にかなり近いように思われるが、ロシア語では「イコータ」(綴りは Икота)という発音になっている。
出典[編集]
- ^ a b c 友愛記念病院救急科部長近藤司への取材による解説。【ののちゃんのDO科学】しゃっくり、なぜ出るの?『朝日新聞』土曜朝刊別刷り「be」2021年1月9日(5面)2021年3月1日閲覧。
- ^ a b “メルクマニュアル家庭版, はじめに 91 章 運動障害”. MSD. 2011年5月22日閲覧。
- ^ a b 長引くしゃっくりには要注意 日経メディカルオンライン 2016年8月11日
- ^ “Longest attack of hiccups”. BBC. 2011年5月22日閲覧。
- ^ “ザ!世界仰天ニュース 医療スペシャル パート15”. 日本テレビ. 2009年11月29日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年5月22日閲覧。
- ^ “Cured of the hiccups after suffering for years”. BBC (2010年1月11日). 2011年5月22日閲覧。