さくらんぼの実る頃
「さくらんぼの実る頃」( - みのるころ、仏:
発表(本国フランスで)[編集]
銅工職人でパリ・コミューンの一員であったジャン=バティスト・クレマンが作詞し、それにテノール歌手のアントワーヌ・ルナールが曲を付け、1866年に発表された。
歌詞は題名の通りサクランボの実る頃の儚い恋と失恋の悲しみを歌った曲であるが、パリ・コミューンの崩壊後の1875年前後からコミューンへの弾圧、特に参加者が多数虐殺された「血の一週間」を悼む思いを込めて、第三共和政に批判的なパリ市民が頻りに唄ったことから有名になった。
以降、イヴ・モンタン、コラ・ヴォケール、ジュリエット・グレコなどシャンソンの代表的な名歌手が持ち歌にして来ており、現在に至る。
日本にて[編集]
日本語題には「桜んぼの実る頃[1]」または「さくらんぼの季節[1][2]」、「桜の花咲くとき[1]」等があり、日本でも古くから親しまれている。
1982年、当時のフランス大統領:フランソワ・ミッテランが訪日した際、昭和天皇がフランス大使館で開催した夕食会を訪問した。この会の中で、ミッテランの友人であり歌手のギー・ベアールと昭和天皇が本作を歌唱したという逸話がある[3]。
1992年にはスタジオジブリの宮崎駿監督のアニメ映画『紅の豚』の挿入歌として用いられた。加藤登紀子演じる「マダム・ジーナ」が本作をフランス語で歌唱する場面が登場するほか、同時に発売された加藤のシングル「さくらんぼの実る頃」にはフランス語版と日本語版が収録されている[4]。
2007年には若松孝二監督の『実録・連合赤軍』の中で、重信房子と主人公の遠山美枝子の別れの場面の挿入歌として和田山奈緒が歌唱したものが用いられた[5]。
JASRACに於いては2017年12月現在、0J3-0177-2 TEMPS DES CERISES LE /ORIGINAL/(外国作品/出典:SM(録音実績)/副題:CHERRY TIME /ORIGINAL/、TEMPS DES CERISE /ORIGINAL/)として作詞・作曲共にPD状態で登録、加藤登紀子の他に 越路吹雪や石井好子、岸洋子、金子由香利ら、計32名がアーティストとして登録されている[6][7]。
上記名義以外には 009-2252-8 さくらんぼの実る頃(内国作品/出典:PA(出版者作詞者作品届))として訳詞:加藤登紀子、出版者:揆楽舎名義でも登録されている[1]。こちらはオリジナルと異なり日本での訳詞者(加藤)と出版者への著作権が新たに発生しているため、こちらの版での日本語詞を書籍やウェブページ等で用いるためには別途の楽曲使用申請と許諾が必要となることから要注意である[8]。
本作および本作関連楽曲の登録状況は検索結果から2017年12月現在16作品存在する[9]が、オリジナル作品版(0J3-0177-2 TEMPS DES CERISES LE /ORIGINAL/)以外のものは訳詞や編曲、出版者の登録が改めて為されて居り、更にはその殆どが2017年時点で著作権存続中である[8]。
楽曲の構成[編集]
本稿では加藤登紀子による1992年発表のピアノ伴奏音源と、それを元に記譜した楽譜(ピアノ・リダクション/大譜表)について述べる。
※楽譜のプレイバック内容は、楽譜作成ソフトウェア『Finale2014年版』への打ち込み・再生結果による。
- 変イ長調(A♭)であり、テンポ表記はTempo rubato。テンポ(拍の速度)は「♪(音価:8分音符)≒ 130」である[10][11]。
- 拍子の拍節は6⁄8拍子を基調とし、時折、3⁄8拍子が挿入される。
- 臨時記号は殆ど認められず、装飾音符もそれほど多くないため、比較的読譜しやすい。
- 但し、多くの箇所(大部分)でピアノ・パートの音符がヘ音記号からト音記号に掛けての大譜表(五線同士)を跨いでいる[12]。
- 曲の最後半部〜ラストはフェルマータが用いられており、定量時間の延長を意識してたっぷり演奏する。
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- 最後の1小節部分のみ、9⁄8拍子として解釈の上、採譜・コピーし演奏しても良い。
脚注[編集]
- ^ a b c d JASRAC作品データベース検索サービス J-WID 検索結果
- ^ こちらの邦題が原題の直訳に近い。共に用字は各種存在する。
- ^ 西川恵『知られざる皇室外交』角川新書 p60-64
- ^ 「Discography」TOKIKO WORLD (加藤登紀子オフィシャルサイト)、2009年11月21日閲覧。
- ^ 新たな年も、濃密なオールナイトで幕開け 若松孝二公式ブログ、2008年01月11日
- ^ JASRAC作品データベース検索サービス J-WIDヘルプ 「作品を歌唱、演奏したすべてのアーティストを表示しているものではありません。」との旨が記載されている。
- ^ それ故にたとえ「公に」本作を演奏・歌唱し発表しても、全ての発表をJASRACが把握し切れて居らず、また本作がPD状態であるため楽曲利用者から申告され難い面もあり(申告せずともオリジナル版に於いては著作権上、何も問題無い)、実際の本作利用者・アーティストこと録音者の数は遙かに多いものと推定される。
- ^ a b 外国作品・内国作品共にオリジナル(原作)が著作権の満了・消滅した作品であれど、新たに歌詞を制作したり編曲を施して公開した場合には改めて著作権が発生するとJASRACは説明している。「二次的著作物」の項も参照。)
- ^ JASRAC作品データベース検索サービス J-WID 作品タイトル:『さくらんぼの実る頃』での検索結果
- ^ 「♩(音価:4分音符)」ではない事に要注意。
- ^ 一般的にポピュラー音楽でのテンポ(拍の速度)は「♩:(4分音符)」で記載される場合が大半であるため、誤って本作のテンポを「♩:(4分音符)」と認識し演奏すると、本来の2倍の速度で演奏してしまう事となる。飽くまでも本作でのテンポは「♪(8分音符)」である。
- ^ 今村康(YASUSHI IMAMURA)編曲によるピアノ伴奏譜より。