クルミ
クルミ属 | ||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() オニグルミ Juglans mandshurica var. sachalinensis
| ||||||||||||||||||||||||
分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||
Juglans L. | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
クルミ | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Black walnut Walnut | ||||||||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||||||||
|
クルミ(胡桃、山胡桃、呉桃、英語: Walnut、Black walnut、学名:Juglans)は、クルミ科クルミ属の落葉高木の総称である。また、その核果の種子(仁)を加工した食用のナッツを指す。木材としては、英語を片仮名読みしてウォールナットと呼ばれる。
原産地はヨーロッパ南西部からアジア西部とされ、北半球の温帯地域に広く分布する。樹高は8メートルから20メートルに及ぶ。日本列島に自生している胡桃の大半はオニグルミと言い、核はゴツゴツとして非常に硬く、種子(仁)が取り出し難い。なお、クルミとして食用に利用される種は、クルミ属の植物の一部に過ぎない。
実[編集]
- 収穫量はアメリカ合衆国カリフォルニア州と中華人民共和国が多い。日本では長野県東御市がクルミの収穫量日本一である。
- 5月から6月にかけて開花し、その後に直径3 cm程度の仮果と呼ばれる実を付ける。仮果の中に核果が有り、その内側の種子(仁)を食用とする。脂質が実全体の70パーセントを占めている。また、ビタミンEを始め様々なビタミンやミネラルが豊富に含まれている。
- 食用としての利用は古く、日本では縄文時代から種実の出土事例があり、オニグルミを中心に食料として利用されていたと考えられている。文献資料においては『延喜式』に貢納物の1つとして記されている他にも、『年料別貢雑物』では甲斐国や越前国、加賀国においてクルミの貢納が規定されており、平城京の跡から出土した木簡にもクルミの貢進が記されている。
- 実から採れる油は食用にされる他、乾性油であるため木工製品の仕上げ用や油絵具の成分として使われる。
- アメリカ合衆国では子孫繁栄の意味を込め、結婚式の際にクルミの実を撒く習慣が有る。
- 非常に硬く簡単には割れないため、専用のくるみ割り器(クラッカー)も有る。なお、クルミ割り人形は、これを人形の頭にして顎にクルミを挟ませ、噛み割るように見せる道具である。
- オニグルミはハンマーを使わないと割れないが、シナノグルミ(菓子クルミ)やヒメグルミは核果同士を縦筋に合わせて手の腹で押したり握り潰せば、容易に割れる。
- クルミの摂取は認知機能を向上させる可能性が示唆されている[1]。
果樹栽培との関係[編集]
クルミはニセアカシアやイタチハギなどと共に植物の病害であるリンゴ炭疽病(人畜に感染する炭疽病と全く無関係)の伝染源になり易く[2][3]、リンゴなど果樹栽培の際には伐採するなど、周辺の植生に注意が必要である。
木材およびその利用[編集]
木材としては、日本国内でも「ウォールナット」と言う英語を元にした名称で扱われる。アメリカ合衆国北部やカナダで育ったクルミ材であり、チークやマホガニーと共に世界三大銘木の1つに数えられる。1660年から1720年にかけ、ヨーロッパ市場ではイギリスデザインやウォールナット種の製品が大変な人気を博し、ヨーロッパ家具の歴史では「ウォールナットの時代」と呼ばれるほど持て囃された。
木質は重硬で衝撃に強く、強度と粘りを有し、狂いが少なく加工性や着色性も良いという特性を持つ。落ち着いた色合いと重厚な木目から、高級家具材や工芸材に用いられてきた。アメリカ合衆国大統領の指揮台やアメリカ合衆国最高裁判所のベンチに使用される。また、耐衝撃性の強さを活かして、ライフルの銃床にも使用される場合がある。また、チップは燻製を作るの際のスモークチップとしても用いられる。
以上のように、クルミは木材として優秀なために、持続的な伐採が行われた結果、良質なクルミ材を製材できる大木が枯渇気味であり、現代ではクルミ材は高級木材として扱われる。
含まれる種[編集]
- 食用とされる種
-
- カシグルミ(菓子胡桃)Juglans regia L. var. orientis (Dode) Kitam. synonym
- オニグルミ(鬼胡桃)Juglans mandshurica var. sachalinensis, (Syn. Juglans ailantifolia)
- ヒメグルミ(姫胡桃)Juglans mandshurica var. cordiformis, (Syn. Juglans ailantifolia var. cordiformis)
- シナノグルミ(菓子胡桃、テウチグルミ) Juglans regia, (Syn. Juglans regia var. orientis)
- その他
- クルミ科のヒッコリー(英語:hickory、中国語:美国山核桃、学名:Carya spp.)の材は、ドラムスティックの材料に多く使われる。また、スキー板や杖など運動器具の材料にもされる。また、食品の燻煙材の1つとしても用いられる。
「くるみ餅」の地域性[編集]
仙台などで「くるみ餅」と言えば、クルミの餡で和えた餅を指す。堺などで「くるみ餅」と言えばダイズの餡、または、枝豆の餡で包んだ餅や白玉を指し、植物のクルミではなく、餡で包む(くるむ)事が語源である[4]。青森ではすり鉢で擦ったくるみだれを餅にかけて食べる習慣がある。[5]
文学[編集]
- 北欧神話には、女神イズンがクルミの実へ変えられる話が有る。
- 『今昔物語』には、サナダ虫の嫌いな物として、クルミが挙げられている。
- クルミの実を「胡桃」と書いて、これを俳句において秋の季語として用いる場合がある[6][注釈 1]。さらに、未熟なクルミの実を「
青胡桃 」と書いて、こちらは夏の季語として用いる場合がある[7][注釈 2]。
健康[編集]
ナッツはタンパク質と健康的な脂肪の優れた供給源であり、特にナッツの一種は記憶力を改善する可能性がある。UCLAの2015年の研究では、クルミの消費量の増加と認知テストのスコアの改善が関連付けられた。クルミは、α-リノレン酸(ALA)と呼ばれるオメガ3脂肪酸の一種を多く含んでいる。ALAやその他のオメガ3脂肪酸が豊富な食事は、血圧を下げ、動脈をきれいにすることにつながった。それは心臓と脳の両方にとって良いことである[8]。
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 2,738 kJ (654 kcal) |
13.71 g | |
糖類 | 2.61 g |
食物繊維 | 6.7 g |
65.21 g | |
飽和脂肪酸 | 6.126 g |
一価不飽和 | 8.933 g |
多価不飽和 | 47.174 g |
15.23 g | |
トリプトファン | 0.17 g |
トレオニン | 0.596 g |
イソロイシン | 0.625 g |
ロイシン | 1.17 g |
リシン | 0.424 g |
メチオニン | 0.236 g |
シスチン | 0.208 g |
フェニルアラニン | 0.711 g |
チロシン | 0.406 g |
バリン | 0.753 g |
アルギニン | 2.278 g |
ヒスチジン | 0.391 g |
アラニン | 0.696 g |
アスパラギン酸 | 1.829 g |
グルタミン酸 | 2.816 g |
グリシン | 0.816 g |
プロリン | 0.706 g |
セリン | 0.934 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 12 µg9 µg |
チアミン (B1) |
(30%) 0.341 mg |
リボフラビン (B2) |
(13%) 0.15 mg |
ナイアシン (B3) |
(8%) 1.125 mg |
パントテン酸 (B5) |
(11%) 0.57 mg |
ビタミンB6 |
(41%) 0.537 mg |
葉酸 (B9) |
(25%) 98 µg |
ビタミンB12 |
(0%) 0 µg |
コリン |
(8%) 39.2 mg |
ビタミンC |
(2%) 1.3 mg |
ビタミンD |
(0%) 0 IU |
ビタミンE |
(5%) 0.7 mg |
ビタミンK |
(3%) 2.7 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 2 mg |
カリウム |
(9%) 441 mg |
カルシウム |
(10%) 98 mg |
マグネシウム |
(45%) 158 mg |
リン |
(49%) 346 mg |
鉄分 |
(22%) 2.91 mg |
亜鉛 |
(33%) 3.09 mg |
マンガン |
(163%) 3.414 mg |
セレン |
(7%) 4.9 µg |
他の成分 | |
水分 | 4.07 g |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース(英語) |
項目 | 分量(g) |
---|---|
脂肪 | 65.21 |
飽和脂肪酸 | 6.126 |
1価不飽和脂肪酸 | 8.933 |
18:1(オレイン酸) | 8.799 |
多価不飽和脂肪酸 | 47.174 |
18:2(リノール酸) | 38.093 |
18:3(α-リノレン酸) | 9.08 |
画像[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ なお『旺文社 国語辞典(第8版)』によれば秋の「樹木」の項目にクルミは無く、あくまで「果実・木の実」の項目に「胡桃」が挙げられている。
- ^ なお『旺文社 国語辞典(第8版)』によれば夏の「樹木」の項目にクルミは無く、あくまで「果実・木の実」の項目に「青胡桃」が挙げられている。
出典[編集]
- ^ クルミが記憶力を向上させる[リンク切れ]
- ^ 岩波靖彦、近藤賢一、飯島章彦「リンゴ炭疽病の効率的な防除効果試験法」『関東東山病害虫研究会報』2003年 2003巻 50号 p.65-69, doi:10.11337/ktpps1999.2003.65
- ^ 飯島章彦「リンゴ炭そ病のシナノグルミからの伝染」『関東東山病害虫研究会年報』1994年 1994巻 41号 p.123-125, doi:10.11337/ktpps1954.1994.123
- ^ 四代目旭堂南陵『事典にない大阪弁 絶滅危惧種の大阪ことば』(浪花社、2014年)172頁に詳細なレシピがある。
- ^ 青森では「くるみだれ」で餅を食べる
- ^ 松村 明・山口 明穂・和田 利政(編)『旺文社 国語辞典(第8版)』 p.1432 旺文社 1992年10月25日発行 ISBN 4-01-077702-8
- ^ 松村 明・山口 明穂・和田 利政(編)『旺文社 国語辞典(第8版)』 p.1431 旺文社 1992年10月25日発行 ISBN 4-01-077702-8
- ^ “Foods linked to better brainpower” (英語). Harvard Health (2017年5月30日). 2021年12月9日閲覧。
- ^ USDA栄養データベースUnited States Department of Agriculture