きかんしゃ やえもん

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

きかんしゃ やえもん』は、日本絵本。作者は阿川弘之(文)と岡部冬彦(絵)。擬人化された古い蒸気機関車を主人公とする作品で、1959年岩波書店より「岩波の子どもの本」シリーズの一作として刊行された。小学校の国語教科書に掲載されたり、影絵劇化、アニメ映画化されるなど、広く知られたロングセラーであり、2007年9月までに累計122万冊が売れ[1]、刊行から半世紀以上を経た2017年現在でも新品で入手可能である。

ストーリー[ソースを編集]

田舎の町の小さな機関庫に、「やえもん」という名の蒸気機関車がいた。やえもんは年寄りの機関車で、同じくらい年寄りの小さな客車を引いて、町の大きな駅との間を、行ったり来たりしている。ある日、町の駅に着いたやえもんは、電気機関車などに「びんぼう汽車」と馬鹿にされ、「自分はまだまだ走れるのに」と、腹を立てたまま帰路についた。ところが、あまり腹を立てたために煙突から排煙だけでなく火の粉も吐き、それが線路脇の田んぼのわらに燃え移って、火事になってしまう。幸いすぐ消し止められたが、火事を起こしたやえもんに、周囲の住民たちはすっかり怒ってしまった。鉄道の職員たちは庇ってくれたものの、人々の怒りはおさまらず、やえもんは走ることを許されなくなり、とうとうスクラップにされることが決まってしまう。解体のため電気機関車に牽引されていこうとするとき、運良く通りかかった交通博物館の人に「日本に二、三台しか残っていない珍しい古い型の機関車だ。ぜひ譲ってもらいたい」と言われ、めでたく博物館で保存されることとなった。

刊行の経緯[ソースを編集]

1950年代当時、岩波書店は児童文学作品を刊行していたが、その多くは外国の作品であった。「岩波の児童書は翻訳ばかり」というイメージを払拭するために日本の絵本が企画され、その一つとして本作が生まれた[2]。しかし、当時の岩波の児童書は他の出版社と比べて高価だったために、価格低減の工夫として多色刷りと二色刷を交互に使用したり、表紙見返しまで本文が記載されるといった造本がおこなわれた[2]。このうち表紙見返しへの印刷については、2001年の改版に際して通常の造本に改められている[2]

内容に関して[ソースを編集]

  • やえもんのモデルは国鉄150形蒸気機関車(1号機関車)であるとされているが、作中では国鉄400形蒸気機関車に近い形状に描かれている。作画を担当した岡部は生前「物語のシチュエーションから熟考し、絵本のやえもんは明治の中頃イギリス製の蒸気機関車をお手本にして日本で作り、鹿島参宮鉄道などで使われていたものを、更にデフォルメして描いた」と証言していたことが伝えられている[3]
  • なお1号機関車が事情を知る元鉄道記者の青木槐三ら関係者の尽力により、最終的に当時の鉄道博物館(のち交通博物館を経て今の鉄道博物館)で保存されることとなったのは事実だが、その過程の「煙害によって運行できなくなった」という部分と「鉄くずにされる寸前に」という部分は創作である。150形は保存されることになった1930年当時、島原鉄道の1形機関車として現役で使用されており、同社社長の植木元太郎鉄道省(当時の国鉄および鉄道博物館の運営母体)の600形蒸気機関車656号機と交換することを条件に省への譲渡へ応じたほどである。
  • 本作に描かれている鉄道情景には、執筆された1959年当時の国鉄の状況が反映されている。
    • EF58形EH10形が本編中では「新しい電気機関車」と表記され、石炭を補給しているやえもんを馬鹿にしていた。
    • DD12形などといった機関車も明確にそれとわかる姿で描かれている。
  • やえもんの名前の由来は、作者の阿川がアメリカ合衆国へ行き、カリフォルニア州の農業で成功した自分より年配の日本人移民の人の名前が「やえもん」という名前だったらしく、そこから名前をとったとのこと。

影絵劇版[ソースを編集]

1970年劇団かかし座により初演[4]。語りは熊倉一雄[5]。本作でのやえもんの姿は原作絵本とは異なり、北海道の幌内鉄道が導入したことで知られる国鉄7100形蒸気機関車に近い。

また、NHK教育テレビジョンで、同じ劇団かかし座の出演により複数回にわたり映像化されている[6]。若林一郎の脚本、宇野誠一郎の音楽、熊倉一雄の語りによるものが、数年に一度、NHK教育テレビ『こどもにんぎょう劇場』で再放送されている。

なお、後述のアニメ版とは異なり、物語中のセリフも含め、内容的なアレンジはほとんど無く、原作に忠実な形で映像化されている。

アニメ版[ソースを編集]

東映まんがまつり[ソースを編集]

SLブームだった1974年に、主人公をD51形に変更し、脇役に新幹線を据えるなど、大幅にアレンジした形でアニメ映画化された。

3D映画[ソースを編集]

2009年10月3日より『とびだす!3D東映アニメまつり』の1作として3DCGアニメ化された。上映時間は約30分。同時上映は『デジモンアドベンチャー3D デジモングランプリ』、『デジモンセイバーズ デジタルワールド危機イッパツ!』、『ゲゲゲの鬼太郎 鬼太郎の幽霊電車』。公開記念として公開日に交通科学博物館でミニSLやえもん号の乗車会も行われた。

2010年2月21日発売の、本作を含む4作品セットのDVD『CG東映アニメまつり』では、立体映像ではなく通常映像での収録であるが、映像特典としてアナグリフ方式3D版も収録されており、3Dメガネも付属する。

スタッフ[ソースを編集]

  • 原作 - 『きかんしゃやえもん』(文・阿川弘之/絵・岡部冬彦)岩波書店刊
  • 監督 - 貝澤幸男
  • プロデューサー - 鷲田正一
  • CGプロデューサー - 氷見武士
  • CG製作主任 - 横尾裕次
  • CG製作統括 - 樋口宗久/小塚憲夫
  • 脚本 - 小山真/小山高生
  • 音楽 - 高木洋
  • キャラクターボード - 宮原直樹
  • 美術ボード - 本間禎章
  • 編集 - 福光伸一
  • 録音 - 阿部智佳子
  • 音響効果 - 今野康之
  • 製作 - とびだす!3D東映アニメまつり製作委員会(東映アニメーション/東映/東映ビデオ
  • CG監督 - 新井啓介
  • CGスーパーバイザー - 佐藤直樹
  • モデリングスーパーバイザー - 米澤真一
  • アニメーションスーパーバイザー - 高橋友彦
  • リギングスーパーバイザー - 今泉歩
  • コンポジットスーパーバイザー - 池田正憲

主題歌[ソースを編集]

「頑張のうた」

キャスト[ソースを編集]

やえもん
  • 大東京駅の片隅の倉庫で邪魔者扱いされていた古い機関車。
  • スクラップになりそうになった所を、ネズミ達の協力で動けるようになる。
マウ
  • やえもんを家にしていた勇気のあるネズミ。ネズミ達のリーダー格でやえもんを動かそうとする。
スー
  • マウの妹。カー助と共にカラス達を集め、石炭を集める。
カー助
  • やえもんの煙突に住み着くマウやスーの友達のカラス。物知り。
サマ
  • ネズミを襲うネコ。やえもんに撃退されたため、恨みを持つ。
ノソ
  • マウの兄。弱腰。チョビを背負っている。
チョビ
  • マウの末っ子。泣き虫だが、いざというときはノソを引っ張るくらい力がある。
ディム
フック
  • ディムに牽引されるクレーン車。お調子者で倉庫を破壊する。
通勤電車3姉妹
新幹線(エヌとゼット)
ナレーション

出典・脚注[ソースを編集]

  1. ^ トーハン『ミリオンぶっく』2008年度版。
  2. ^ a b c 中川あゆみ「きかんしゃやえもん」(大阪府立国際児童文学館ウェブサイト 「日本の子どもの本100選 1945年〜1978年」)[1]
  3. ^ 竹迫祐子「絵本、むかしも、いまも… 第37回」『子どもの本だより』(徳間書店)2003年7-8月号[2]。厳密にこれに該当する機関車は存在しないが、400形の派生形の1つである870形(イギリスよりの輸入機)の1両が鹿島参宮鉄道で使用されたほか、同じく派生形の800形は参宮鉄道汽車製造に発注して国内で製造されている。
  4. ^ 劇団かかし座の歴史」 劇団かかし座
  5. ^ きかんしゃやえもん」 劇団かかし座
  6. ^ 製作は1970年代前半と思われるが、正確な時期は未確認。

関連項目[ソースを編集]

外部リンク[ソースを編集]

[[きかんしゃやえもんとびだす3D東映アニメまつり>http://www.toei-anim.co.jp/movie/2009_anime_matsuri/yaemon/]]