かなとこ雲
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![]() 航空機から見たかなとこ雲 | |
略記号 | inc |
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雲形記号 |
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類 | 積乱雲 Cb. |
種 | 雄大 con. |
変種 | かなとこ雲 |
高度 | 地上付近~20,000 m |
特徴 | 巨大、かなとこのような形 |
降水の有無 | あり(狭い範囲で局地的な雷雨) |
かなとこ雲(かなとこぐも、Incus)とは、成長した積乱雲のうち、頂上部分が広がって平らになっているもの。
雲形分類では、部分的に特徴のある雲を細分類した「副変種」として扱われ、積乱雲だけに見られる。
金属加工などで用いる金床に形状が似ていることからこう呼ばれている。学術名"Incus"も、ラテン語で「金床」を意味する。
てっぺんに毛羽立ったような雲がくっついている多毛雲とは似ているが異なる。ただ、かなとこは毛羽立ちの1種とみなされ、かなとこ雲は多毛雲に含められる。
原理[編集]
積乱雲は発達するにつれ高く盛り上っていく。やがて雄大雲が、対流圏界面と呼ばれる面に達すると、雲はそれ以上上へと盛り上がることができず、横に広がってくる[1]。対流圏界面はふつう高度17,000m(赤道付近の場合)~8,000m(極地の場合)で緯度が高いほど低くなるが、地域や季節によっても変化する。
対流圏界面よりも高い所にある成層圏に入ると、上空に行くほど気温が高くなっていく。これは大気の上下運動が起こりにくい状態である(成層安定な状態という)。このように成層圏では空気が上昇する事が難しいため、発達中の積乱雲の中に存在する上昇流は成層圏にはほとんど入り込めない。しかし下からは上昇流で続々と空気が供給されてくるため、行き場を失った空気は対流圏界面の下で横に広がるしかないのである。
観天望気には「かなとこ雲が立つときは暴風がくる」といったものがある[2]。
一般的に、積乱雲がかなとこ雲になったということは発達が力強く続いていることを示しており、その下の雨風も強い傾向にある。ただ、かなとこ雲のてっぺんの横に広がる部分があまりに巨大化した場合は、そこから上昇気流が下降気流に転じて積乱雲の本体が弱まることもある。
かなとこ雲の上部がちぎれて巻雲が発生することもある。
ギャラリー[編集]
かなとこの部分が下に盛り上がって乳房雲になっている。
宝永山から遠望。高度が高いかなとこ雲は遠方からも目立つ。
国際宇宙ステーションから撮影したかなとこ雲。全景が良く分かる。
かなとこの部分(濃密雲)が光を透過しコントラストをつくる夕景。
脚注[編集]
- ^ 石川県教育センタ 2007, p. 17.
- ^ 啓林館 2017.
出典[編集]
- 「「雲を見よう!空の不思議を知ろう -雲と空の観察と学習ガイドブック-」第1章 Ⅱ.雲のいろいろな顔-見え方・形(種と変種)による細分類 (PDF) 」 『石川県教育センター研究紀要「石川の自然」地学編』第31巻第14号、2007年、 13-18頁。
- “5.雲と天気の変化”. KEYプロジェクトフォローシート集. 啓林館 (2017年). 2019年10月26日閲覧。
- The Institute for Etymological Research and Education, “Spotlight on... Clouds” (英語), take our word it.: 1
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 衛星画像の特徴的パターン かなとこ巻雲 - かなとこ雲を捉えた気象衛星画像と地上写真の対応。気象衛星センター。