U4 (三洋電機)

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おしゃれなテレコから転送)

U4(ユーフォー)は、三洋電機ラジオカセットレコーダーのシリーズ名または製品番号である。1970年代末期に発売され、スマートな横長フォルムで「おしゃれなテレコU4」のキャッチコピーで親しまれたほか、同シリーズのイメージマスコットとなるダックスフントのイラストが商品に描かれていた。

1980年代に各社がこぞって類似商品を発売するほどのヒットを記録し、「ラジカセといえば横長でカラフルなもの」というイメージを確立した立役者である。

CDラジカセが主流となってからは、同社のCDを内蔵しないラジカセ全般の型番として「U4-XX」が使われていた。

1999年に従来のモデルのスタイルを取り入れたMD-U4が発売され実質的にシリーズが復活。7年後の2006年にもDIGITAL U4が発売されたが2009年末までに生産終了・販売終了。これによりU4シリーズは名実共に30年の歴史に幕を閉じた形となった。

歴代機種[編集]

シングルカセットモデル[編集]

MR-U4
1979年発売の初代U4。当初は同社のラジカセ「REC」シリーズの派生ブランドとして展開されていた。まだ他の三洋製ラジカセと同じ「MR-」の型番を名乗っている。当時の価格は43800円。
このラジカセのヒットにより小型でカラフルな「ファッションテレコ」という新たなジャンルが生まれた。ヘッドホンジャックは標準ステレオジャック(フォーンジャック)。アナログ(針)式のマルチレベルメーター(VUメーター/チューニングメーター/バッテリーメーター兼用)付き。単二電池5本(DC7.5V)駆動。使用可能なカセットテープはノーマルポジション用テープのみとなっている。1980年度グッドデザイン賞受賞。
MR-U4MKII
MR-U4のマイナーチェンジモデル。このモデルより「REC」シリーズから独立した。前後3曲の飛び越し選曲機構(AMSS)を搭載。
MR-U4MKIII
通称「メタルU4」。その通称名の通りメタルポジション用テープの録音・再生に対応(当機種に搭載されている録音用バイアスの制約上、ハイポジション用テープは再生のみ対応)。初代からこのモデルまでとMR-V8のライン入出力は一般的なRCA端子ではないため、使用の際には専用のDINプラグケーブルが必要となる。
MR-U4SL
通称「スリムU4」。薄型ボディながらツィーターが独立した4スピーカー構成。レベルメーターはLED式で、ヘッドホン端子も3.5mmステレオミニジャックに変更された。
MR-U4SX
ボディの黒い部分を減らすとともにレベルメーターを廃し、よりスマートなデザインになった。またこのモデルから単二電池6本(DC9V)駆動に変更され、出力もパワーアップした。スピーカーはフルレンジx2。
MR-U4SF
通称「リゾートU4」。チューニングダイヤルスケールに角度がつき、斜め上方から見やすくなった。スピーカーは2ウェイx2。
MR-U4SS
アナログテレビ放送の音声受信(1~12ch)に対応した。シングルカセットではこのモデルとU4GPのみ単二電池7本(DC10.5V)駆動のため、ACアダプター共用の際には注意が必要。
MR-U4SR
再生オートリバース機構を搭載した。テレビ音声は音声多重及びステレオ放送に対応。
MR-U4T
通称「タウンU4」。単三電池6本駆動として携帯性を高めたモデル。同様のコンセプトで「MR-U4TII」、「MR-U4TIII」、「MR-U4TA」も発売された。
MR-U4M
通称「U4マリンスポーツ」。アウトドアでの使用を想定した防水モデル。通常のFM/AM放送に加えて短波放送受信にも対応。1985年度グッドデザイン賞受賞。
MR-V8
型番こそ「U4」ではないものの「おしゃれなテレコ」を名乗り、U4の上位機種という位置付けだった。同社のMR-X900(Compo in 1)を小型化したようなデザイン。設計段階からメタルポジション用テープの録音・再生に対応している(当機種に搭載されている録音用バイアスの制約上、ハイポジション用テープは再生のみ対応)。価格は57800円。
MR-V8MKII
MR-V8の後継機種。ソフトタッチメカを採用。
MR-V9
ドルビーNR(Bタイプ)を内蔵した上位機。ボディーカラーも原色やパステル調が中心だったU4シリーズと異なり、中間色を多用して高級感を演出していた。
MR-U4GP
ドルビーNR(Bタイプ)を内蔵。MR-V9の後継にあたる。
MR-Q4
通常の前面2ウェイスピーカーx2に加えて、天面にもステレオスピーカーを搭載した異色機種。

ダブルカセットモデル[編集]

MR-WU4
初代の「ダブルU4」。ダイヤルスケールが垂直のMR-U4SXをダブルカセットにしたようなデザイン。単二電池7本(DC10.5V)駆動。
MR-WU4MKII
テレビ音声対応やデザインなど、機能はほぼシングルカセットのMR-U4SSに準じる。このモデルの頃からダブルカセットモデルがラインナップの主力となっていく。
MR-WU4MKIII
テレビ音声が音声多重及びステレオ放送に対応、再生オートリバース搭載など、機能はほぼシングルカセットのMR-U4SRに準じる。
MR-WU4UV
MR-WU4MKIIIのテレビ音声チューナーをVHF局(1~12ch)に加えてUHF局(13~62ch)対応(モノラル)としたモデル。
MR-WU4L
ダブルカセットモデルの廉価機種。

CD内蔵モデル[編集]

MR-U4CD
1986年発売。CD内蔵モデルの初号機。ダブルカセットモデルの右側のデッキをCDプレーヤーに置き換えたようなデザインで、CDは蓋を開けてカセットのように縦に挿入する。ボディーカラーはグレーのみ。定価69800円。
1980年代にラジカセのイメージを一新した「おしゃれなテレコ」であったが、音楽メディアの主流がCDに移るにつれその小型で薄い筐体ではCDの高音質を十分に生かすことができず、また直径12cmのディスクを扱うには物理的制約もあったことから、各社ともCDプレーヤー内蔵のラジカセは再び大型化し重厚長大路線を歩み始めることになる(バブルラジカセ)。サンヨーでもラジカセを含めたカセットレコーダー全般を表す型番だった「MR-」をCDありの「PH-」となしの「U4-」に再編したため、シリーズとしてのU4は残ったものの、CD内蔵モデルの機種数はごく僅かである。

MD-U4[編集]

1996年に一時撤退したMDオーディオの再参入製品として1999年4月に発売。メーカー希望小売価格は5万円。MDデッキ(録再)とラジオチューナー・外部入出力端子(ステレオミニジャック・PC接続端子)のみ搭載させ、CDからMDへデジタル接続でダビングして楽しむといった従来のMDシステムの概念を覆した代物であった。

製品的には家電メーカー各社が発売していたオーディオカセットレコーダーに代わりMDレコーダーを装備した「パーソナルMD/CDシステム」(カセットを加えたものはMD/CDラジカセ)と「ポータブルMDプレーヤー」の中間の位置づけであり、「MDシステム」としては非常に軽量・コンパクトで、アウトドアでも気軽に使えるように狙っていた。

外装違いの2モデルが発売され、MD-U4Rはオレンジ色でダックスフントを彷彿とさせる台形に近い形、MD-U4Tはシルバーと黒系色で往年のラジカセを意識した角張った長方形のデザインとなっている。

既にソニーミニコンポ「MDピクシー」やシャープのポータブルMD録再機のオプションとして実用化されていたPC接続キットを新たに発売し、シリアルポートで接続したWindows PCでMD-U4へのリモートコントロールやタイトル入力や、PCのサウンドカードと本体をステレオミニジャックで接続することで、CD-ROMドライブで再生した音楽CDをMDへアナログ音声となるがシンクロ録音する機能が搭載されている。

しかしながら、CDプレーヤーが搭載されなかった事で前述の通りCDからMDへ自己ダビング(コレクション)する事が出来ず、当初は生産量などの問題から価格がほかのMDラジカセより高価であった事から売れ行きは伸び悩み、後継機を発売することなく2001年までカタログ掲載されていた。次第に販売価格が値下がり、2001年以降は在庫品処分として希望小売価格の半額以下で売られた店もあった。

1999年のCMにはKONISHIKI(現・〈六代目〉小錦八十吉)WAGが出演。2000年発売の倉木麻衣のシングル「Secret of my heart」のPVにも登場している。

DIGITAL U4(MAJ-U4CT1)[編集]

2006年発売。カセットレコーダーとCDプレイヤー、SDカードスロットとUSB端子を搭載し、パソコンを使わずに機器の音源をSDメモリーカードUSBメモリMP3型式で録音できる。機能継承機種としてSDマイクロコンポDC-UR100が2008年に発売されていた。

影響[編集]

初代U4のヒットを受け、他の家電メーカ各社も同様のコンセプトのラジカセを売り出すこととなった。 当時の各社の愛称は次の通り。

松下電器産業(現・パナソニック
LOVE CALL(ラブコール) … 当初は同社のラジカセである「ステレオ・マック」を少し小さくし機能を減らしただけであったが、のちに赤などのカラフルな小型ラジカセになっていった。カセットが3つ付いたダブルカセットならぬ「トリプルカセット」の機種なども販売していた。ただし、トリプルカセットは高価なのとトリプルデッキと倍速録音を駆使して海賊版テープ作成が一層楽に出来るため販売期間は思いのほか短命に終わった。
東京芝浦電気 → 東芝(現・東芝エルイートレーディング〈製造元〉/東芝ライフスタイル〈販売元〉)
BOMBEAT mini(ボンビートミニ)、SUGAR(シュガー) … CDラジカセ登場初期には「SUGAR CD」と言う愛称でCD搭載モデルも製造していた。
日立
PREDISCO(パディスコ) … 70年代のラジカセから愛称を引き継いでいた。
パイオニア(ホームAV機器事業部、現・オンキヨーテクノロジー〈製造元〉/ティアック〈販売元〉)
Ranaway(ランナウェイ) … 本体にショルダーベルト(肩掛けベルト)の付いた小型・軽量ステレオラジカセの「SK-200」(通称・ランナウェイ ハングオン)が存在していた。
ソニー
Metal365(メタル365)、Metal101(メタル101)、YOKOHAMA(ヨコハマ)など … 特にDIGITABLE(デジタブル)は断面がほぼ正方形のボディーにソニー独自のAPMスピーカーを搭載した高級機種だった(のちに廉価モデルも発売)。
アイワ(初代法人)
Foot Work(フットワーク)など

その他シャープ(大型ラジカセのサーチャーとは別にQT-****というシリーズを作っていた)、日本ビクター(現・JVCケンウッド)なども特に愛称は無いものの(RC-S**シリーズ)製造・販売していた。

外部リンク[編集]