おくすり手帳

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おくすり手帳

おくすり手帳(おくすりてちょう)とは、の服用履歴や、既往症、アレルギーなど、医療関係者に必要な情報を記載する手帳である[1]医師歯科医師薬剤師が、患者がどのような薬をどのくらいの期間使っているのかを確認するために使用する[1][2]。複数の病院を使う患者の薬物相互作用(飲み合わせ)の管理にも用いられるため、所有や管理は各患者が行う[1]

効果[編集]

薬は、その飲み合わせにより効果が増幅され副作用が出たり、逆に効果が弱まってしまうことがあるものである[1]処方オーダリングシステムを使用している場合、飲み合わせの悪い薬をあらかじめ設定すれば処方の段階でブロックをかけたり警告を表示する事が可能だが、他の医療機関で処方されている薬や一般用医薬品に関しては薬剤師などの専門知識を持つスタッフが確認する必要がある[3]。この確認の際にお薬手帳を利用することができる。

しかし、薬局が異なると相互作用のチェックが行われないことも多く、薬の多剤併用の問題の解決には至っていない[4]

また、アレルギー予防効果も期待される[1]。同じ薬で起きるアレルギーは、1度目より2度目のほうが強いと言われているため、お薬手帳を使って一度起きたアレルギーを予防することは大変重要となる[1]

使用方法[編集]

一般的に以下のような使用方法が推奨されている。

  • 病院・診療所・歯科医院・薬局に持参して記入と確認をしてもらえば、薬の飲み合わせや副作用を防ぐことができる[1]
  • 入院時に持参すれば、入院中の薬の最適な選択のために、今まで使っていた薬を参照してもらうことができる[1]
  • 急に具合が悪くなって、救急外来に行った場合には、「いつも飲んでいるお薬はありますか?」と聞かれるので、おくすり手帳を参照すればよい[1]
  • おくすり手帳に「患者は何も書き込んではならない」と誤解している人が多いが、患者は自由記載できるので、 薬の効き目や服用してからの体調変化や副作用の記録を患者自身で記録しておけば、次の診療に役立てることが出来る[5]
  • 薬や体調に関して、医師や薬剤師への質問事項をメモ代わりとして、おくすり手帳に記載することで、次回診察時や薬局訪問時におくすり手帳を見せる事で、忘れずに質問することができる[6]
  • ドラッグストアコンビニエンスストアで購入した薬やサプリメントの名前などを、患者自身が記入することも推奨されている[1][2]
  • 患者にとっては何気ないことでも、記載があれば医療従事者が見れば副作用の早期発見につながることがあるため、このような記録は有用である[5]
  • 自身の副作用歴・アレルギー歴・既往歴などを記入するページがあるため、健康管理に活用できる[1]
  • 患者自身が、薬を使用してからの検査結果を記録すれば、薬と検査の結果を関連付けて見ることが可能となる[7]
  • 薬局など医療機関で、周囲の人に聞かれたくない薬の名前があったり、病状がある場合は、おくすり手帳にその旨を書き込んでおき、おくすり手帳を見せる事で、意思疎通をする事が出来る。

など、基本的な薬の記録以外にも、患者自身・医療従事者自身の工夫や書き込みによって、意思疏通のツールや緊急時の対応の手掛かりなど、多様な活用方法があるのが特徴である。

歴史[編集]

おくすり手帳は、1993年(平成5年)、日本国内の患者15人が、別々の病院から抗ウイルス剤抗がん剤の処方を受け、併用服用して死亡した事件(ソリブジン薬害事件)をきっかけとして導入された[2]。飲み合わせが悪く、重篤な副作用が発生したのである。

2年後の1995年平成7年)1月17日阪神・淡路大震災兵庫県南部地震)が発生する。震災後、外傷など急性期の医療が一段落した際に、糖尿病などの慢性疾患の患者に対して、継続して行える最低限の医療は、それまで服用していたのと同じ薬を供給することである[8]

しかし、診療録などの記録を持っていない救護所に来る患者の薬についての記憶は、剤形や色に限られることが多く、同じ薬さえ渡すことが出来ない事態が起きた[8]。また、災害時の特例として、おくすり手帳があれば、処方箋なしで薬を受け取ることができる場合があり、災害における備えの意味でも認知され、急速に普及するようになった[9]

一部の医療機関や、調剤薬局における薬剤師からの顧客サービスとして始まった取り組みであるが、2000年(平成12年)に、薬の飲み合わせや併用禁忌チェックなどの効果が期待されて、厚生労働省の制度となり、調剤報酬として評価されるようになった[10][11]。薬剤の名称等をおくすり手帳に記載した場合、薬剤情報提供料に手帳記載加算が加算される。

2011年(平成23年)3月11日東日本大震災東北地方太平洋沖地震)においても、災害時の必要性が再認識された[12]。避難所等に避難している糖尿病や高血圧等の慢性疾患の患者から、被災前に使用していた薬を聞き取り、おくすり手帳に薬剤名等を記載することにより、効率的な診察が可能となり、また、救護所で処方された薬の名前等をおくすり手帳に記載して、患者に配布することにより、その後の別の避難先でも継続して治療を受けることが可能となった[1]

2014年(平成26年)4月医療費改定に伴い、おくすり手帳を持参した場合より持参しなかった場合の方が、薬剤服用歴管理指導料が70円安くなる改定が行われた[10]。持参した場合には410円(3割負担なら130円)、持参しなかった場合には340円(同110円)となる[10]。柔軟な対応が可能になる反面、国民の健康を守るという観点からは問題がある[10]

日本薬剤師会の三浦洋嗣副会長は、おくすり手帳による情報提供を義務化せよ、との指摘に応じて前回の改定時に盛り込み、一生懸命やっている薬局のほうが圧倒的に多い、としたうえで、「知らないうちに薬袋にシールが入っていた」などの指摘から評価点数が見直されたとして、大変残念だと述べた[13]。三浦は、2年後に点数を取り返せるように「努力をしていただくようお願いをするしかありません」としている[13]

2015年(平成27年)12月、2016年(平成28年)度の改定において、厚生労働省がおくすり手帳の活用を促し、「かかりつけ薬局」の推進にもつなげることを目的として、同じ薬局でおくすり手帳を持参して2回以上利用した場合、患者の自己負担額が安くなるシステムの導入を検討している事が、中央社会保険医療協議会で示された。これについて、日本薬剤師会の委員からも賛成する意見がだされている[14]。2016年(平成28年)度より、おくすり手帳を半年以内に同一薬局に持参すると、調剤薬局で支払う自己負担代金が安くなった。

電子化[編集]

全国的におくすり手帳の電子化が進んでおり、大阪府薬剤師会が日薬学術大会で披露した「大阪e―おくすり手帳」や、川崎市薬剤師会が川崎市やソニーと協力して製作した「harmo(ハルモ)」などが知られる[15]。また日本調剤ではおくすり手帳だけでなく、処方箋をアプリ上から写真を撮り、最寄りの調剤薬局に送るという時間短縮にも繋がる機能をまとめたアプリも出している。

この電子化の流れは、日本国政府のIT戦略本部が掲げた「どこでもMY病院構想」に呼応して始まったもので、紛失などがあっても支障がない「いつでも・どんな状況下でも最適な医療を受けられる」状況を目指している[15]。しかし、ファイル互換性の無い、異なる仕様での電子化が、混乱を招くことが懸念されている[15]

2015年(平成27年)には厚生労働省が電子版「おくすり手帳」の仕様を共通化させる方針を固めている[16]

出典[編集]

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l お薬手帳サイト”. 静岡県薬剤師会. 2014年6月2日閲覧。(日本語)
  2. ^ a b c 薬の部屋Q&A”. 宮崎県薬剤師会. 2014年6月2日閲覧。(日本語)
  3. ^ 笠原忠、木津純子・諏訪俊男 『新しい薬学事典』 朝倉書店、2012年、166頁。ISBN 978-4-254-34029-7
  4. ^ 土田絢子「一向に減らない多剤併用、新薬で新たな相互作用も」、『日経メディカル』第2013巻第4号、2013年4月、 54-55頁。
  5. ^ a b 堀美智子、鈴木則子 『お薬手帳の実践的活用法』 株式会社じほう、2009年、17頁。ISBN 978-4-8407-4018-0
  6. ^ http://www.m-ikkou.co.jp/useful/flower/flower201204/ フラワー薬局通信 お薬手帳を活用しよう! 株式会社メディカル一光
  7. ^ 堀美智子、鈴木則子 『お薬手帳の実践的活用法』 株式会社じほう、2009年、19頁。ISBN 978-4-8407-4018-0
  8. ^ a b 堀美智子、鈴木則子 『お薬手帳の実践的活用法』 株式会社じほう、2009年、8頁。ISBN 978-4-8407-4018-0
  9. ^ 震災とお薬手帳”. フラワー薬局通信. 2014年6月2日閲覧。(日本語)
  10. ^ a b c d 4月から医療費が変わる!おくすり手帳は持つべきか、持たざるべきか?”. ダイヤモンド・オンライン. 2014年6月2日閲覧。(日本語)
  11. ^ 堀美智子、鈴木則子 『お薬手帳の実践的活用法』 株式会社じほう、2009年、6頁。ISBN 978-4-8407-4018-0
  12. ^ 東日本大震災時におけるお薬手帳の活用事例 (PDF)”. 日本薬剤師会. 2014年6月2日閲覧。(日本語)
  13. ^ a b 編集部「三浦洋嗣副会長に聞く 今改訂のポイント(2014年2月25日インタビュー)」、『調剤と情報』第20巻第4号、株式会社じほう、2014年4月、 20-23頁。
  14. ^ 同じ薬局2回以上利用で患者負担減- お薬手帳の活用促す、厚労省 ー医療介護CBNEWS http://www.cabrain.net/news/article/newsId/47517.html
  15. ^ a b c 広がるお薬手帳の電子化と問題点” (日本語). 薬局新聞.net. 2014年6月2日閲覧。
  16. ^ 電子版「お薬手帳」共通化へ 厚労省、利便性向上に向け標準仕様の構築検討 産経新聞

関連項目[編集]