うま味

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

うま味旨み旨味、うまみ)は、主にアミノ酸であるグルタミン酸アスパラギン酸や、核酸構成物質のヌクレオチドであるイノシン酸グアニル酸キサンチル酸など、その他の有機酸であるコハク酸やその類などによって生じるの名前。5基本味の1つ。

うま味の歴史・発見・認知[編集]

うま味物質は、東京帝国大学(現在の東京大学教授だった池田菊苗によって、1908年だし昆布の中から発見された。最初に発見されたうま味物質はグルタミン酸であった。うま味となるだし昆布や鰹節を使用した出汁は、日本料理において基本となる伝統的調理手順のひとつである。そのため、日本の学者は「ダシがきいていない」という味覚は塩味や酸味が足りないのとは違う感覚であることを経験的に知っており、うま味の存在に早くから気づいていた。

東南アジアにおいてもうま味を含有する調味料である魚醤が使用されてきた。タイ料理においてナンプラー(魚醤)が有名であり、ベトナムでは、中国の影響を受けた地域で炒めものが主であることに対し、ベトナム南部の地域ではうま味としてニョクマム(魚醤)が使用されている。魚介類を塩漬け加工した調味料魚醤は、タイベトナム南部、カンボジア等で伝統的に使用されている調味料である。また、中国でも福建省など一部の沿岸地域において魚醤が使用されていたなど、東南アジアを中心とした海洋沿岸地域では、うま味として利用されてきた伝統的な調味料が残る。

1913年小玉新太郎鰹節から抽出したイノシン酸もうま味成分であることを確認した。さらにこののち、シイタケ中からグアニル酸が抽出され新たなうま味成分であることが発見された。

一方で、西洋文化圏においては、フランス料理におけるフォンブイヨンコンソメのように、だしによってうま味を増す料理法も一部存在したものの、多くの料理においてはトマトグルタミン酸を豊富に含む)、チーズのような酸味などが強い食材によってうま味を補給したり、何より肉料理においては肉の煮汁自体がうま味の供給源となったため、うま味を増すことに多くの意識は向けられなかった。そのため、日本の学者の主張するうま味の存在は、多くの欧米の学者には懐疑的に受け止められ、うま味なるものは塩味・甘味などがほどよく調和した味覚に過ぎないと考えられていた。

しかし2000年味蕾にある感覚細胞にグルタミン酸受容体mGluR4)が発見されたことで[1][2]、俄然うま味の実在が認知されるに至った。

うま味成分[編集]

うま味物質は蛋白質や核酸に富んだ細胞原形質成分に多く含まれ、主として蛋白質の豊富な食物を探知することに適応して発達した味覚であると考えられる。

代表的なうま味成分のうち、アミノ酸の一種であるグルタミン酸は植物に、核酸の一種であるイノシン酸は動物に多く含まれることが多い。イノシン酸など、うま味を感じさせるヌクレオチドは呈味性ヌクレオチドという。

また、アミノ酸系のうま味成分と核酸系のうま味成分が食品中に混在すると、うま味が増すことが知られている。これを「うま味の相乗効果」と呼ぶ。実際に日本料理では昆布だしと鰹だし(動物性の食材を使用できない精進料理では昆布とシイタケのだし)を合わせるといった調理が行われ、中華料理でも長ねぎと鶏がらスープを合わせるといった調理が行われている。

現在、これらの天然から取れるうま味成分は、主として発酵工業の手法で人工的に製造され、うま味調味料として使われている。うまみ調味料の製造においても、主成分のl-グルタミン酸ナトリウムの他に、グアニル酸イノシン酸を添加して、うま味の相乗効果を出している例が多い。

その他にも、食用のハエトリシメジに含まれるトリコロミン酸、毒キノコテングタケに含まれるイボテン酸類に含まれるコハク酸コハク酸ナトリウムにも強いうま味がある。またレモンに含まれるクエン酸リンゴに含まれるリンゴ酸などの果実酸類には、食品のうま味を高める作用がある。

名称[編集]

「うま味」の命名は、その成分物質がグルタミン酸であることを発見した池田菊苗による。池田は、それまでに知られていた酸味(さんみ)・甘味(かんみ)・塩味(えんみ)・苦味(にがみ)の四基本味に加わるべき第五の基本味としてこれを「うま味(うまみ)」と名付けた[3]

日本国外、特にその存在の認知が遅れた欧米諸国の言語においては、従来この「うま味」に相当する表現が存在しなかったため、現在のところ日本語を借用した「umami」を便宜上代用している場合が多い。ただし、英語の「savory」(直訳:肉料理の風味がある)や「brothy」(直訳:肉の煮汁の風味がある)、そしてこれらに相当する各国語の表現を使用する試みも見られている。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Nelson G, Chandrashekar J, Hoon MA, et al (2002). “An amino-acid taste receptor”. Nature 416 (6877): 199–202. doi:10.1038/nature726. PMID 11894099. 
  2. ^ A taste for umami(Nature Neuroscience 3, 99 - 100 (2000) )
  3. ^ 発表当時からこの表記。池田菊苗「新調味料に就て」 東京化学誌 第30帙第8冊 1909, 823ページ「今或人の發議に從つて說明の便利の爲めに此の味を「うま」味と名づけて置きます」 (原文では「うま「味」」に傍点)[1]

外部リンク[編集]