いずも (護衛艦)
いずも | |
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![]() 護衛艦「いずも」(2021年10月3日) | |
基本情報 | |
建造所 | ジャパン マリンユナイテッド 横浜事業所磯子工場 |
運用者 |
![]() |
艦種 | ヘリコプター搭載護衛艦(DDH) |
級名 | いずも型護衛艦 |
建造費 | 1,208億円(初度費込) |
母港 | 横須賀 |
所属 | 第1護衛隊群第1護衛隊 |
艦歴 | |
計画 | 平成22年度計画 |
発注 | 2010年 |
起工 | 2012年1月27日 |
進水 | 2013年8月6日 |
竣工 | 2014年9月22日 (公試) |
就役 | 2015年3月25日 |
要目 | |
基準排水量 | 19,500トン |
満載排水量 | 26,000トン |
全長 | 248.0m |
最大幅 | 38.0m |
深さ | 23.5m |
吃水 | 7.1m[1] |
機関 | COGAG方式 |
主機 | IHILM2500IEC型ガスタービン × 4基 |
出力 | 112,000仏馬力 (82 MW) |
推進器 | スクリュープロペラ × 2軸 |
最大速力 | 30ノット |
乗員 | 520名(うち司令部要員50名)+長期宿泊可能者450名[1] |
搭載能力 |
貨油 3300kL 3 1/2tトラック × 50台 |
兵装 |
高性能20mm機関砲(CIWS) × 2基 SeaRAM 近SAMシステム × 2基 |
搭載機 |
SH-60J/K哨戒ヘリコプター × 7機 MCH-101輸送ヘリコプター × 2機 最大14機[1] |
C4ISTAR | OYQ-12 戦術情報処理装置 |
レーダー |
OPS-50 対空 OPS-28 対水上 OPS-20 航海用 |
ソナー | OQQ-23 ソナーシステム |
電子戦・ 対抗手段 |
NOLQ-3D-1 電波探知妨害装置 Mk.137 デコイ発射機 × 6基 OLQ-1 魚雷防御装置 × 1式 |
その他 | 作業艇 |
いずも(ローマ字:JS Izumo, DDH-183)は、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)。いずも型護衛艦の1番艦。艦名は令制国の出雲国に由来し、同じ読みの日本艦艇としては旧海軍の出雲型装甲巡洋艦「出雲」に続き二代目、海上自衛隊の護衛艦としては初代である。
全長 248.0mで、艦載機発着用に艦首から艦尾まで全通式の飛行甲板発着用を備え[2]、満載排水量は26,000トン。同じく全通甲板を備えた旧海軍艦艇との比較では、中型航空母艦(正規空母)である「蒼龍」(227.5m、20,295トン)を上回り、2019年時点、2番艦の「かが」と共に海上自衛隊史上最大の自衛艦である。建造費用は1,139億円[3]。海外メディアではヘリ空母と呼称・分類されることが多い[4]。
本記事は、本艦の艦歴について主に取り扱っているため、性能や装備等の概要についてはいずも型護衛艦を参照されたい。
艦歴[編集]

「いずも」は、平成22年度装備調達計画に基づく平成22年度計画19,500トン型ヘリコプター搭載護衛艦として、ジャパン マリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で2012年1月27日に起工され、2013年8月6日に命名・進水[5][6]、2014年9月22日に公試開始[7]。 2015年3月25日に就役し、第3護衛隊群(舞鶴基地)に編成替えとなった「ひゅうが」に替わり、第1護衛隊群第1護衛隊に編入された。定係港は横須賀。
2016年4月に発生した熊本地震により、就役後初となる災害派遣任務にあたった。任務は被災地支援にあたる陸上自衛隊を輸送するため4月19日に北海道小樽港に入港し、陸上自衛隊北部方面隊第1高射特科団を主力とした隊員約160人と車両40両を積載し、同日出港した[8]。
同年5月26日から5月27日に開催される伊勢志摩サミットの警戒監視のため、護衛艦「いかづち」他6隻とともに金城埠頭(愛知県名古屋市)に入港した[9]。
2017年5月1日、横須賀を出港し、安全保障関連法に基づき、自衛隊の艦船が平時にアメリカ海軍艦船を守る「米艦防護」を初めて実施した。房総半島沖周辺でアメリカ太平洋艦隊所属のルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦「リチャード・E・バード」と合流し、周辺の警戒、監視にあたりながら航行、3日午前には四国沖の太平洋上で護衛艦「さざなみ」が合同し、防護に加わった[10][11]。米艦防護は3日午後4時頃、鹿児島県の奄美大島沖で終了した。その後、「さざなみ」及びアメリカのミサイル駆逐艦2隻とともに、南シナ海で5月7日から10日にかけて陣形・通信などの日米共同訓練を実施[12]。2隻は5月15日にシンガポール共和国及び同国周辺海空域で実施されるシンガポール海軍主催国際観艦式及び多国間洋上訓練に参加し[13]、同月20日には医療活動などを通じて各国が交流を深めるアメリカ軍主導の「パシフィック・パートナーシップ」の一環としてベトナム・カムラン湾に寄港した[14]。6月4日にはフィリピンのスービックにも寄港し、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の視察を受けた[15]。 7月10日から17日までインド(チェンナイ) 及びインド東方海域で実施される日米印共同訓練(マラバール2017)に参加[16]。一連の派遣活動を終えた「いずも」は8月9日に横須賀基地に帰港した。
同年8月31日、横須賀基地逸見岸壁においてテリーザ・メイ英国首相の視察を受けた。日本の防衛大臣、海上幕僚長らも同席した[17]。
同年9月25日午前10時半頃、横須賀基地に停泊中の艦内で海自隊員ら11人が一酸化炭素(CO)中毒になり、病院に搬送された。いずれも軽傷。艦内では民間業者がふん尿をためるタンク内の清掃中だった[18]。
同年12月19日、僚艦「むらさめ」「いかづち」「はたかぜ」及びP-1 (哨戒機)とともに、カナダ海軍ヴィクトリア級潜水艦「シクティミ」(HMCS Chicoutimi)[19] との共同訓練を本州南方海域で実施[20]。
2018年9月8日午前7時20分頃、横須賀基地に停泊中、油圧作動油が海上に流出した。海上保安庁横須賀海上保安部によると、海自はオイルフェンスで拡散を防いでおり、吸着マットで大部分を回収した。 航空機用昇降機を使っていたといい、海自は海保に「油圧系の故障と思われる」と通報していた[21]。
同年10月11日より開催された済州国際観艦式に前年10月に韓国から招待を受け、本艦が参加する予定だった。しかし、自衛艦旗である旭日旗に対する韓国世論の近年の批判により、韓国海軍から自衛艦旗の掲揚自粛の要請を受けた。防衛大臣はじめ統合幕僚長、海上幕僚長がこの要請を批判し、到底受け入れられないとコメントを表明[22][23][24]、後に韓国側に今回の観艦式への参加を中止することを通達した[25]。
同年10月8日から10月10日にかけて、航空自衛隊およびアメリカ海軍と共同訓練を実施した。アメリカ海軍からは空母「ロナルド・レーガン」をはじめミサイル巡洋艦「アンティータム」「チャンセラーズビル」、ミサイル駆逐艦「ベンフォールド」が参加した[26][27]。
同年12月22日、本州南方海空域においてアメリカ海軍及びイギリス海軍との共同訓練を実施した。海自からは本艦のほか、P-1が参加、アメリカ海軍からはP-8A及び艦艇、イギリス海軍からはフリゲート「アーガイル」が参加した[28]。
2019年4月に予定されていた本艦の韓国釜山への入港を見送った。韓国周辺海域において各国艦艇による共同訓練を行う予定だったが、韓国海軍による海自機へのレーダー照射事件に加え、韓国側が主張する海自機による威嚇飛行を問題視するなど日韓関係が悪化している中、韓国に派遣できる状況にないと判断した。釜山には入港せず、周辺海域での共同訓練だけに参加することも検討していると報道された[29]。
同年4月30日から7月10日にかけて護衛艦「むらさめ」とともに平成31年度インド太平洋方面派遣訓練に参加。派遣中にブルネイ・ダルサラーム国、マレーシア、フィリピン共和国、シンガポール共和国、 ベトナム社会主義共和国 を訪問し、シンガポールのチャンギ港周辺で実施されるADMMプラス海洋安全保障実動訓練及び同国で行われる国際海洋防衛装備展示会(IMDEX))Asia2019に参加する[30]。
進出途上の5月3日から9日にかけて九州西方から南シナ海に至る海空域においてアメリカ海軍、インド海軍及びフィリピン海軍と共同巡航訓練を実施した。参加部隊は、アメリカ海軍ミサイル駆逐艦「ウィリアム P.ローレンス」、インド海軍ミサイル駆逐艦「コルカタ」及び補給艦「シャクティ」、フィリピン海軍フリゲート「アンドレス・ボニファシオ」[31]。 5月19日から22日にはスマトラ島西方海空域のインド洋においてフランス海軍、オーストラリア海軍及び米海軍と日仏豪米共同訓練(ラ・ペルーズ)を実施する。参加艦艇はフランス海軍原子力空母「シャルル・ド・ゴール」、ミサイル駆逐艦「フォルバン」、フリゲート「プロヴァンス」「ラトゥーシュ・トレヴィル」、補給艦「マルヌ」、オーストラリア海軍フリゲート「ツゥーウムバ」、潜水艦、アメリカ海軍ミサイル駆逐艦「ウィリアム P.ローレンス」[32]。
6月26日には、ブルネイ沖で日本の海上保安庁巡視船「つがる」とヘリ発着艦など共同訓練を実施した[33]。
これに前後して、5月23~24日にアンダマン海においてインド海軍と、同29日にマレー半島南西岸でマレーシア海軍と、南シナ海では6月10~12日および19~20日にアメリカ海軍と、13~15日にカナダ海軍と、同17日にベトナム海軍と、同26日にブルネイ海軍と、同28日にはスールー海でフィリピン海軍と共同訓練を重ねるとともに、各国に寄港した。また、この航海では陸上自衛隊水陸機動団隊員が乗り組んで長期洋上活動の訓練を行った[34]。
上記訓練の合間、シンガポールで5月14日から16日にかけて開催された国際海洋防衛装備展示会に参加した。その際に実施した一般公開で、見学者が艦内部の昇降機内に2時間程閉じ込められるトラブルが発生した[35]。
2021年9月8日から9日にかけて関東東方の海空域において、護衛艦「いせ」とともにイギリス海軍空母打撃群(CSG21:イギリス海軍空母「クイーン・エリザベス」、イギリス海軍駆逐艦「ディフェンダー」、イギリス海軍補給艦「タイドスプリング」、「フォートビクトリア」、オランダ海軍フリゲート「エファーツェン」、カナダ海軍フリゲート「ウィニペグ」、イギリス軍とアメリカ海兵隊のF-35B戦闘機)と日英米蘭加共同訓練(PACIFIC CROWN 21‐4)を実施する[36]。
2021年10月3日、固定翼戦闘機F-35B(アメリカ海兵隊岩国基地所属機)の発着艦試験に成功した[37]。
同年12月15日、海上自衛隊は男女群島の西約350kmの海域において、同海域を南東進する中国海軍空母「遼寧」、レンハイ級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイⅡ級フリゲート1隻及びフユ級高速戦闘支援艦1隻の計4隻を確認、4隻は沖縄本島と宮古島との間の海域を南下して太平洋へ向けて航行し、東シナ海及び太平洋において艦載ヘリの発着艦を実施、北大東島の東約300kmの海域においてルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイⅡ級フリゲート1隻と合流し、同海域及び沖大東島の南東約315kmの海域において「遼寧」の艦載戦闘機及び艦載ヘリの発着艦を実施、ジャンカイⅡ級フリゲート1隻と分離した後、同年12月25日午前0時頃に沖縄本島と宮古島との間の海域を北西進し、東シナ海へ抜けた。この間、護衛艦「あきづき」、第4航空群所属P-1及び第5航空群所属P-3C、緊急発進した航空自衛隊の戦闘機と共同して所要の情報収集・警戒監視を行った[38][39][40][41]。
2022年5月1日午後0時頃、海上自衛隊は、男女群島の西約350㎞の海域において、同海域を南進する中国海軍空母「遼寧」、レンハイ級ミサイル駆逐艦1隻、ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦3隻及びフユ級高速戦闘支援艦1隻を確認した。また、同日午後6時頃、沖縄本島の北西約480㎞の海域において、同海域を東進する中国海軍ジャンカイⅡ級フリゲート1隻を、2日午前6時頃、大正島(沖縄県)の北約160kmの海域において、同海域を南進する中国海軍ルーヤンⅡ級ミサイル駆逐艦1隻を確認した。 その後、これら8隻の艦艇が沖縄本島と宮古島との間の海域(宮古海峡)]を南下し、太平洋へ向けて航行したことを確認した。また、東シナ海において艦載ヘリの発着艦を確認した。防衛省・自衛隊は、本艦と第4航空群所属P-1及び第5航空群所属P-3Cにより、所要の情報収集・警戒監視を行った[42]。 5月3日正午頃にも「遼寧」、ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦3隻、ルーヤンⅡ級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイⅡ級フリゲート1隻及びフユ級高速戦闘支援艦1隻の計7隻が、沖大東島の南西約160㎞の海域において航行していることを確認した。また、正午頃から午後6時頃にかけて、「遼寧」の艦載戦闘機及び艦載ヘリの発着艦を確認[43]、その後5月10日まで、昼夜を問わず毎日「遼寧」の艦載戦闘機及び艦載ヘリの発着艦が確認され、護衛艦「てるづき」と共同して情報収集・警戒監視を行った[44]。(「遼寧」の艦載戦闘機及び艦載ヘリの発着艦は以後5月12日まで毎日行われたが、その情報収集・警戒監視は「てるづき」が行った[45])
同年6月13日、令和4年度(2022年度)インド太平洋方面派遣(IPD22:Indo-Pacific Deployment 2022)に参加するため、護衛艦部隊第1水上部隊として護衛艦「たかなみ」及び搭載航空機3機とともに横須賀を出港した[46][47]。 同年6月19日から24日にかけて、太平洋において、日米豪共同訓練(NOBLE PARTNER 22)を実施した。米海軍からは空母「エイブラハム・リンカーン」、巡洋艦「モービル・ベイ」、駆逐艦「グリッドレイ」・「サンプソン」「スプルーアンス」が、オーストラリア海軍からは強襲揚陸艦「キャンベラ」、フリゲート「ワラマンガ」、補給艦「サプライ」が参加し、各種戦術訓練(防空戦等)を実施した[48]。翌25日には米補給艦「ヘンリー・J・カイザー」と日米共同訓練(ILEX22‐2)を実施した[49]。6月27日、ハワイ周辺海空域において、フランス領ポリネシア駐留フランス軍フリゲート「プレリアル」と日仏共同訓練(オグリ・ヴェルニー22‐4)を実施した[50]。
同年6月29日から8月4日にかけて、ハワイ諸島及び同周辺海空域等において実施される米海軍主催多国間共同訓練(RIMPAC2022)に参加する。自衛隊からはほかに第3航空隊のP-1哨戒機1機と陸上自衛隊西部方面隊が参加し、 各種戦術訓練(各種戦訓練、ミサイル射撃訓練等)及びHA/DR(Humanitarian Assistance/Disaster Relief:人道支援・災害救援)を実施する[51]。
8月5日、ハワイ周辺海空域においてメキシコ海軍フリゲート「ベニート・フアレス」、揚陸艦「ウスマシンタ」と日メキシコ親善訓練を実施[52]。8月7日には米海軍補給艦「ペコス」と日米共同訓練(ILEX22‐6)を実施[53]。8月9日にカナダ海軍フリゲート「ウィニペグ」、ニュージーランド海軍補給艦「アオテアロア」と日加新共同訓練を実施した[54]。
同年8月21日から29日にかけて、グアム島及び同周辺海空域において日米豪韓加共同訓練(PACIFIC VANGUARD22)を実施した。日本側は本艦のほか、護衛艦「たかなみ」、潜水艦、P-1哨戒機、UP-3D多用機、陸上自衛隊水陸機動団等。米海軍からは潜水艦、貨物弾薬補給艦「アメリア・イアハート」、P-8A哨戒機、EA-18G電子戦機。米海兵隊は第3海兵機動展開部隊第5航空艦砲連絡中隊。オーストラリア海軍からは駆逐艦「シドニー」、フリゲート「パース」。韓国海軍駆逐艦からは「セジョン・デワン」「ムンム・デワン」。カナダ海軍はフリゲート「バンクーバー」が参加し、対水上射撃訓練、対地射撃訓練、対水上戦訓練及び対潜戦訓練等、各種戦術訓練を実施した[55]。同年8月30日から9月7日にかけて、グアム周辺から南シナ海の訓練海空域において、日米加共同訓練(ノーブル・レイヴン22)に参加した。米海軍駆逐艦「ヒギンズ」、補給艦「ラパハノック」「ジョン・エリクソン」、カナダ海軍フリゲート「バンクーバー」が参加し、各種戦術訓練を実施した[56]。
同年9月11日から9月17日にかけて、アンダマン海からベンガル湾の海空域において実施された日印共同訓練(JIMEX2022)に参加し、インド海軍駆逐艦「ランヴィジェイ」、フリゲート「サヒャドリ」、コルベット「カドマット」「カヴァラッティ」、哨戒艦「スカーニャ」、補給艦「ジョティ」、潜水艦、P-8I、MIG-29K、DORNIER-228等と各種戦術訓練(対空射撃訓練、対水上射撃訓練、対潜戦訓練、防空戦訓練、洋上補給等)を実施した[57]。同年9月21日から23日にかけて、マレーシア沖からシンガポール沖に至る海空域において、カナダ海軍フリゲート「ウィニペグ」と日加共同訓練(KAEDEX22)を実施し[58]、引き続き9月23日から10月1日には南シナ海海空域において日米加共同訓練(ノーブル・レイヴン22‐2)を実施した。参加艦艇は本艦と「たかなみ」、カナダ海軍フリゲート「ウィニペグ」に加え、海自潜水艦、米海軍駆逐艦「ヒギンズ」、補給艦「ビッグ・ホーン」が参加し、各種戦術訓練を実施した[59]。10月5日、「たかなみ」とともに115日間にわたる派遣を終え帰国した[60]。
2023年4月20日から9月17日にかけて、護衛艦「さみだれ」「しらぬい」及び搭載航空機4機とともに、令和5年度インド太平洋方面派遣(IPD23)に参加する[61]。
横須賀に停泊中の同年5月18日、G7広島サミット参加のため来日したリシ・スナク英国首相の訪問を受け、甲板上で儀仗隊による栄誉礼で迎えた[62]。
歴代艦長[編集]
代 | 氏名 | 在任期間 | 出身校・期 | 前職 | 後職 | 備考 |
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艤装員長 | ||||||
- | 吉野 敦 | 2013.8.6 - 2015.3.24 | 広修大・ 36期幹候[63] |
おおなみ艦長 | いずも艦長 | |
艦長 | ||||||
1 | 吉野 敦 | 2015.3.25 - 2016.3.27 | 広修大・ 36期幹候 |
いずも艤装員長 | 護衛艦隊司令部勤務 | |
2 | 甲斐義博 | 2016.3.28 - 2018.4.1 | 防大31期 | 統合幕僚学校教育課 第1教官室学校教官 |
佐世保海上訓練指導隊司令 | |
3 | 本山勝善 | 2018.4.2 - 2020.8.27 | 防大34期 | 海上幕僚監部総務部総務課渉外班長 | 護衛艦隊司令部勤務 →2020.12.1 水上戦術開発指導隊司令 |
|
4 | 川内健治 | 2020.8.28 - 2022.1.11 | 防大34期 | 海上訓練指導隊群司令部首席幕僚 | 護衛艦隊司令部勤務 →2022.2.2 水上戦術開発指導隊司令 |
|
5 | 小城尚徳 | 2022.1.12 - 2023.3.30 | 防大38期 | かしま艦長 →2021.11.29 護衛艦隊司令部勤務 |
水上戦術開発指導隊司令 | |
6 | 城 武昌 | 2023.3.31 - | 防大37期 | 第1海上訓練支援隊司令 →2023.3.27 護衛艦隊司令部勤務 |
艦名[編集]
命名される前は、平成22年度(2010年度)予算で建造される護衛艦であることから、年度にヘリコプター護衛艦を意味する記号の「DDH」を付け、「22DDH」と呼ばれていた。
命名・進水式で艦名が公表されることになっていたが、式についての案内を記載した海上幕僚監部の2013年7月16日のプレスリリースにおいて、黒塗りしていた本艦の艦名がパソコン上の操作によって見られる状態になっていた。海幕はミスに気づいて当該文書ファイルをすぐに差し替えた[64][65]。
本艦の艦名においては、旧海軍の戦艦に使用されていた「長門」の名前を継ぐ「ながと」を推す声もあったが、日本国内外で波紋を呼ぶ可能性があることから見送られた[66]。なお、旧海軍の艦船では装甲巡洋艦「出雲」があり、「いずも」の艦内には装甲巡洋艦「出雲」との比較図が飾られている。一部の中国メディアは、装甲巡洋艦「出雲」が日中戦争時に第三艦隊の旗艦として上海に派遣された経歴のある艦であったことを理由に、この命名を批判的に報じた[67]。
その他[編集]
艦内神社は艦名にちなんで出雲大社が勧請され、賽銭箱も置かれている[68]。
命名後に「いずも」のロゴマークが公募され、「ヤマタノオロチと天叢雲剣」をモチーフにしたものが選出された[69]。
海上自衛隊としては初となる衛生士が配属された(衛生員は以前より存在していた)[68]。初配置された衛生士は女性であり[68]、准看護師と臨床検査技師の資格を持ち、部下として看護師、診療放射線技師、救急救命士の資格を持つ衛生員が乗艦した[68]。
空母化構想[編集]
「いずも」にF-35Bを搭載できるよう、2020年度防衛予算に甲板などの改修費31億円が初めて計上された[70]。
また、「いずも」に搭載予定のF-35Bを42機アメリカから購入することを決めた[71]。
「いずも」の改修は、まず2020年度分としてF-35Bの発着艦を可能にするための甲板の耐熱強化や電源設備の設置などの改修が行われ、2021年6月25日に横須賀へと帰還した。甲板にはアメリカ海軍の規定に準拠したF-35B離着陸用の黄色のセンターラインが引かれるなど、外見の変化が見られた[72]。
その他、F-35Bを安全に運用するための艦首形状を四角形に変更する改修工事や、艦内区画の整備などは、2024年度末から始まる2度目の改修で実施される予定になっている。カタパルト(射出機)や「スキージャンプ台」と呼ばれる傾斜滑走路を設置する予定はない[73]。
(2023年4月23日第一次改造終了)
防衛省は2021年8月31日、令和4年度防衛予算編成に向け、「いずも」と「かが」にF-35Bを搭載できるよう、いずも型護衛艦改修費として67億円を概算要求した。内訳は「いずも」の着艦誘導装置を先行取得するための費用が36億円、アメリカ軍からの技術支援経費が12億円、「かが」の航空管制室の視認性を高めるための工事経費が13億円などとなっている。アメリカ海軍とレイセオン社が共同開発した全天候型着艦誘導システム「ジェイパルス(JPALS:Joint Precision Approach and Landing System)」の搭載が予定されている。なお、令和4年度予算においては「いずも」の分に限られ計上されている[74]。
アメリカ海兵隊総司令官デビッド・バーガー海兵隊大将は2021年9月1日、アメリカ海兵隊のF-35Bステルス戦闘機が今年11月までに「いずも」で発着艦試験を実施することを明らかにした。バーガー総司令官は、アメリカのシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)とアメリカ海軍協会(USNI)が主催するオンライン対話で述べた[75]。
防衛省は2021年10月5日、アメリカ海兵隊岩国航空基地の第242海兵戦闘攻撃飛行隊“Bats”所属のF-35Bステルス戦闘機2機が3日に護衛艦「いずも」にて発着艦試験を実施したと発表した[76]。実施海域は四国沖で、海上自衛隊の艦艇にF-35Bが発着艦するのは初めてであり[77]、日本艦艇における固定翼機の発着艦も第二次世界大戦後初となる。
岸田文雄内閣は2021年12月24日、令和4年度(2022年度)防衛予算編成で「いずも」と「かが」にF-35Bを搭載できるようにする改修費として61億円を計上し、閣議決定した。内訳は「いずも」の着艦誘導装置を先行取得するための費用が36億円、アメリカ軍からの技術支援経費が12億円、「かが」の航空管制室の視認性を高めるための工事経費が13億円となり、いずれも2021年8月公表の概算要求額が満額認められた[78]。
脚注[編集]
- ^ a b c 月刊『世界の艦船』2015年5月号(通巻816号)p.2
- ^ 護衛艦「いずも」「かが」とは NHK(2023年5月19日閲覧)
- ^ 防衛省 (2012年). “平成23年度 行政事業レビューシート 事業番号0036 護衛艦(DDH)” (PDF). 2020年7月11日閲覧。
- ^ "Japan deploys heli carrier JS Izumo to safeguard Indian, Pacific Oceans"New Straits Times Online(2019年5月26日)By Adrian David、2019年6月21日閲覧。
- ^ 其山史晃 (2013年8月6日). “海自最大の「ヘリ空母」進水 護衛艦いずも全長248m”. 『朝日新聞』 2013年8月6日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」が進水”. 朝日新聞社 (2013年8月7日). 2021年3月5日閲覧。
- ^ Ridzwan Rahmat (2014年9月28日). “Japan puts helicopter carrier Izumo on sea trials”. IHS Jane's Defence Weekly 2014年9月29日閲覧。
- ^ 海自最大艦「いずも」、初の災害派遣任務 陸自輸送で北海道・小樽出港 産経ニュース(2016年4月20日)
- ^ “海自最大の護衛艦も投入 全長248メートル、ヘリ5機が同時発着可能 三重・志摩沖を警戒” (2016年5月23日). 2018年10月16日閲覧。
- ^ 「海自が初の米艦防護、防衛相が命令…北をけん制」YOMIURI ONLINE(2017年4月30日)
- ^ 米艦防護、護衛艦2隻…呉から「さざなみ」 YOMIURI ONLINE(2017年5月3日)
- ^ “南シナ海で日米が共同訓練”. 産経新聞ニュース (2017年5月10日). 2017年5月13日閲覧。
- ^ シンガポール海軍主催国際観艦式への参加について (PDF) 海上幕僚監部(2017年4月26日)2021年10月9日閲覧
- ^ 「日米艦船、越カムラン湾に初の同時寄港 中国を牽制…災害救助など共同訓練」 産経ニュース(2017年5月21日)
- ^ “ドゥテルテ大統領、護衛艦「いずも」を視察 ルソン島で”. 朝日新聞ニュース. (2017年6月4日)
- ^ 日米印共同訓練(マラバール2017)への参加について (PDF) 海上幕僚監部(2017年6月23日)2021年10月9日閲覧
- ^ 平成29年8月31日 テレーザ・メイ英国首相による護衛艦「いずも」視察について[リンク切れ]防衛省
- ^ “海自護衛艦「いずも」でCO中毒、11人軽症 横須賀基地”. 産経新聞ニュース. (2017年9月25日) 2017年9月25日閲覧。
- ^ Long Range Patrol Submarines カナダ海軍ホームページ(2019年6月23日閲覧)
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- ^ “護衛艦「いずも」と「かが」の軽空母化、F35B搭載の改修費61億円を予算計上”. 高橋浩祐. Yahoo!ニュース. 2021年12月24日閲覧。
関連項目[編集]
- 海上自衛隊艦艇一覧
- 出雲 (装甲巡洋艦) - 出雲型装甲巡洋艦の1番艦。
外部リンク[編集]
- 船舶の情報と現在位置 - MarineTraffic.com
- 【ロング版】護衛艦「いずも」での発着艦検証作業 防衛省 海上自衛隊 公式チャンネル