α-ラクトアルブミン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
LALBA
Protein LALBA PDB 1a4v.png
PDBに登録されている構造
PDB オルソログ検索: PDBe RCSB
識別子
記号 LALBA, entrez:3906, LYZG, lactalbumin alpha
外部ID OMIM: 149750 MGI: 96742 HomoloGene: 1720 GeneCards: LALBA
遺伝子の位置 (ヒト)
12番染色体 (ヒト)
染色体 12番染色体 (ヒト)[1]
12番染色体 (ヒト)
LALBA遺伝子の位置
LALBA遺伝子の位置
バンド データ無し 開始点 48,567,684 bp[1]
終点 48,570,066 bp[1]
RNA発現パターン
PBB GE LALBA 207816 at fs.png
さらなる参照発現データ
オルソログ
ヒト マウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_002289

NM_010679

RefSeq
(タンパク質)

NP_002280

NP_034809

場所
(UCSC)
Chr 12: 48.57 – 48.57 Mb Chr 12: 98.48 – 98.48 Mb
PubMed検索 [3] [4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト 閲覧/編集 マウス

α-ラクトアルブミンは、タンパク質である。牛乳乳清タンパク質の重要な成分であり(~1 g/l)、また他の多くの哺乳類の乳にも含まれる。ヒトでは、LALBA遺伝子がコードする[5][6][7]

機能[編集]

霊長類では、α-ラクトアルブミンの発現はプロラクチンに反応して正に調節され、ラクトースの生産量を増加させる[8]

α-ラクトアルブミンは、ラクトースシンターゼヘテロ二量体の調節サブユニットを形成し、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが触媒部位を形成する。これらのタンパク質は一緒に働いて、ラクトースシンターゼがガラクトースの一部をグルコースに転移させ、ラクトースを合成することができるようにしている。α-ラクトアルブミンがβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼと複合体を形成すると、グルコースとのアフィニティが約1000倍も上昇し、ガラクトースを重合させる機能が失われる。これにより、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをラクトースシンターゼに変化させることで、ラクトース形成経路を形成させる。

多量体として、α-ラクトアルブミンはカルシウムイオン亜鉛イオンに強く結合し、恐らく抗細菌、抗腫瘍活性を持つ。等の酸性環境で形成されるヒトのα-ラクトアルブミンのフォールディングバリアントは、HAMLETと呼ばれ、腫瘍細胞にアポトーシスを起こさせると考えられている[5]

クリーヴィランド・クリニックのVincent Tuohyの研究は、α-ラクトアルブミンを乳癌ワクチンの基礎として用いるものである。乳癌は通常、出産適齢期を過ぎた人生の後半に発病する。このタンパク質は通常、妊娠後期や授乳期にしか発現しないが、Tuohyは、このたんぱく質は新しく形成された腫瘍でも発現していることを発見し、「彼らがやっていることの1つは、α-ラクトアルブミンのような適切ではないタンパク質を作ることだ」と記した。Tuohyのグループは、α-ラクトアルブミンをターゲットとするワクチンを開発し、患者自身の免疫系を騙して、α-ラクトアルブミンを発現する胸の組織を攻撃させ、癌細胞を高い確率で殺させた。実際に、腫瘍が発達する前にワクチンを接種されたマウスは乳癌から100%守られた。組織の損傷や炎症は胸の組織に限定されたが、ヒトの乳癌の患者は通常出産適齢期を過ぎているため、このことはあまり問題にならないと考えられる[9]

物理的性質[編集]

分子量は14178 Da、等電点は4.2と4.5の間である。β-ラクトグロブリンとの構造上の最大の違いの1つは、共有縮合反応の開始点となるフリーなチオール基を持たないことである。結果として、純粋なα-ラクトアルブミンは、変性や酸性化によってゲルを形成しない。

進化[編集]

α-ラクトアルブミンの配列比較により、リゾチーム、特にカルシウムイオンと結合するc-リゾチームとの強い類似性が示された[10]。従って、考えられる進化史は、c-リゾチームの遺伝子重複の後に突然変異が起こったということである[11]。この遺伝子は、哺乳類と鳥類の最後の共通の祖先(有羊膜類出現後の単弓類双弓類の分岐点に相当する)より前から存在し、起源は恐らく約3億年であると考えられる[12]

出典[編集]

  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000167531 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000022991 - Ensembl, May 2017
  3. ^ "Human PubMed Reference:". 
  4. ^ "Mouse PubMed Reference:". 
  5. ^ a b Entrez Gene: LALBA lactalbumin, alpha-”. 2013年10月1日閲覧。
  6. ^ Hall L, Davies MS, Craig RK (January 1981). “The construction, identification and characterisation of plasmids containing human alpha-lactalbumin cDNA sequences”. Nucleic Acids Res. 9 (1): 65–84. doi:10.1093/nar/9.1.65. PMC 326669. PMID 6163135. http://nar.oxfordjournals.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=6163135. 
  7. ^ Hall L, Emery DC, Davies MS, Parker D, Craig RK (March 1987). “Organization and sequence of the human alpha-lactalbumin gene”. Biochem. J. 242 (3): 735–42. PMC 1147772. PMID 2954544. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=1147772. 
  8. ^ Kleinberg JL, Todd J, Babitsky G (1983). “Inhibition by estradiol of the lactogenic effect of prolactin in primate mammary tissue: reversal by antiestrogens LY 156758 and tamoxifen.”. PNAS 80 (13): 4144–4148. doi:10.1073/pnas.80.13.4144. PMC 394217. PMID 97356016. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=394217. 
  9. ^ Michael Eisenstein (2011). Nature 471 (7339): S8-S9. doi:10.1038/471S8a. 
  10. ^ Acharya KR, Stuart DI, Walker NP, Lewis M, Phillips DC (1989). “Refined structure of baboon alpha-lactalbumin at 1.7 A resolution. Comparison with C-type lysozyme”. J. Mol. Biol. 208 (1): 99–127. doi:10.1016/0022-2836(89)90091-0. PMID 2769757. 
  11. ^ Qasba PK, Kumar S (1997). “Molecular divergence of lysozymes and alpha-lactalbumin”. Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol. 32 (4): 255–306. doi:10.3109/10409239709082574. PMID 9307874. 
  12. ^ Prager EM, Wilson AC (1988). “Ancient origin of lactalbumin from lysozyme: analysis of DNA and amino acid sequences”. J. Mol. Evol. 27 (4): 326–35. doi:10.1007/BF02101195. PMID 3146643. 

関連文献[編集]

外部リンク[編集]