発電
発電(はつでん、英: Electricity generation)は、電力以外のエネルギーを電力へ変換すること。
自然界では積乱雲中での発電により雷が発生するほか、地球そのものも巨大な発電機であるとされ、発電された電流によって地磁気が維持されているという[1]。また、動物に発電するものがいくつかある。人工的なものでは電磁誘導の原理を用いた発電機によるものと、それ以外の方法で電気を得る方法がいくつかある。可動部分を持たず、エネルギーを直接変換して直流を得る装置は、特に電池と呼ばれる。
発電を行う施設を発電所という。日常的な生活の中では、主にここから供給される電気を利用している。それ以外の施設において、発電所によらず発電施設を持つ場合、自家発電(じかはつでん)という。
発電の種類
発電機による発電
発電機は電磁誘導によって運動エネルギーを電力に変換する装置である。具体的にはコイルに対して磁石を回転させることで電気を発生させる。動力を何から得るかによって以下のように様々な種類がある。
- 火力発電:燃料の持つ化学エネルギーを燃焼により熱に変換し、さらに運動エネルギーに変換する発電。熱を得る方法、熱から運動を得る方法によりさらに細分される。
- 汽力発電:熱により水蒸気を作り、蒸気タービンを回す発電。広義には蒸気タービンを用いる発電を総称していう。
- 内燃力発電:気体の膨張により内燃機関を回す発電。
- コンバインドサイクル発電:内燃力発電の排熱で汽力発電を行う発電。
- 廃棄物発電:廃棄物をエネルギー源として行う。
- 原子力発電:核反応により熱エネルギーを得る発電。運動エネルギーへの変換は、通常は蒸気タービンを用いる。
- 核融合発電:原子核の融合によってエネルギーを得る発電。
- 水力発電:水の位置エネルギー及び運動エネルギーによる発電。
- 地熱発電:地熱により熱エネルギーを得る発電。
- 太陽熱発電:太陽光の熱エネルギーによる発電。太陽光を直接電気に変える太陽光発電とは別。
- 風力発電:風の運動エネルギーによる発電。
- 波力発電:波の運動エネルギーによる発電。
- 海流発電:海流の運動エネルギーによる発電。潮流発電ともいう。
- 潮力発電:潮の干満の位置エネルギーによる発電。潮汐発電ともいう。
- 炉頂圧発電:高炉の高圧ガスでタービンを回す発電。
- 冷熱発電:液化天然ガス(LNG)の冷熱を利用し、中間熱媒体を液化、循環させる方法と、気化した高圧ガスで直接タービンを動かす方法がある。主にLNGの受け入れ基地などで用いられる。
- 海洋温度差発電:海面の温水と深海の冷水の温度差を利用する発電。
- 人力発電:人間を動力源とする発電。燃料や電池の補給が難しい局面で重宝される。
別のエネルギーを直接電力に変換する発電
電力以外のエネルギーを直接電力に変換する発電には以下のようなものがある。
- 燃料電池発電:燃料の化学エネルギーを直接電力に変換する発電。部分出力でも発電効率が良い。
- 太陽光発電:太陽光エネルギーを太陽電池で直接電力に変換する発電。自然エネルギーなので燃料の購入の必要がない。
- 宇宙太陽光発電:宇宙空間で太陽光発電を行い、それによって得た電力を地上に送る。
- MHD発電:ファラデーの法則に基づきプラズマなどを用いて発電する。
- 熱電発電:温泉水と河川水などの温度差を利用して熱電変換素子により発電する。
- 振動発電:圧電素子と振動板を組み合わせることにより、音や振動のエネルギーを電気エネルギーに変換する発電。
発電の原理
電磁誘導
発電機は前述のように電磁誘導により電力を生む。電磁誘導による発電は、磁力線を導体が横切ることによって起こる現象であり、得られる出力は以下のように表される。
eは起電力(V)、vは速度(m/s)、Bは磁束密度(Wb/m2)、lは横切る導体の長さ(m)、θは磁力線からの偏角(rad)である。これは、磁力線を長さl(m)の導体が速度v(m/s)で横切ったときに導体に発生する起電力を求める式である。この式から、電磁誘導によって大きな起電力e(V)を得るためには、
- 磁界を強くする
- 速度を上げる
- 磁力面積を拡大する
ことが必要であるとわかる。
電気化学反応
電池のうち「化学電池」と呼ばれる種類の電池は電気化学反応により電力を生む。電気化学反応は、2種以上の活物質の接触によって生じるもので、反応で生じた電極間の電圧を出力として取り出す。この出力は、単純には以下の式のように表される。
eは起電力(V)、ΔGは反応におけるギブスエネルギー変化、nは反応電子の価数、Fはファラデー定数(C/mol)である。これは、反応に関与する活物質の活量がすべて1で平衡状態にあるときの標準電極電位である。
光起電力効果
電池のうち「物理電池」、その中でも「光電池(太陽電池)」と呼ばれる種類の電池は光起電力効果により電力を生む。
この節の加筆が望まれています。 |
ゼーベック効果
電池のうち「物理電池」、その中でも「熱電池」と呼ばれる種類の電池はゼーベック効果により電力を生む。ゼーベック効果は、2種以上の物体の接触点の温度差によって生じるもので、反応によって生じた電極間の電圧を出力として取り出す。2種の物体を用いた場合のこの出力は、単純には以下の式のように表される。
eは起電力(V)、SAとSBはそれぞれ物体A,Bのゼーベック係数、T1 と T2 は2つの接点の温度(K)である。
その他
- 原子力電池のうち実用化されているものは、放射性崩壊により発生する熱をゼーベック効果により電気に変換するものなどで、上記を参照のこと。理論上は放射性崩壊によるエネルギーが直接電子を放出させる「熱イオン変換方式」もあるが実用化はされていない。
- 静電気に関連する静電誘導、誘電分極、焦電効果、圧電効果などもあるが、起電力の保持時間が極端に短いため専らセンサやスイッチ等の素子として用いられ、発電を目的として用いられることはほとんどない。雷はその過大な電圧と瞬時性から電力源としての利用は疑問視されている。ただ、比較的低電圧の大気電位をコンデンサ(キャパシタ)と併せて電力源として利用する大気電流発電は研究が行われている。
各国の電力源
2008年の全世界の総発電量は20,261TWh(テラワット時、20,260,838GWh)であった。 これは地球が太陽から1年間に受けるエネルギー(1,525,284,000TWh)の0.001%に相当する。 電力源の内訳は67%は化石燃料、18%は再生可能エネルギー*、13%は原子力による。 化石燃料の大半は石炭と天然ガスであり、石油は5.5%。再生可能エネルギーは大半が水力(92%)で次いで風力(6%)、地熱(1.8%)、太陽光発電は再生可能エネルギーの0.3%で、総発電量の0.06%であった。数値はIEA/OECDより[2] これらの燃料の中には電力以外に熱源、動力源として消費されるものもあるがここでは電力源のみを考慮している。
全世界で2008年に火力、原子力、水力、コージェネレーション・プラント、その他の発電所で消費された総エネルギーは石油換算トン(ktoe)で4,398,768キロトンであった。 これは全世界の一次エネルギー供給量(TPES)の36%であった。 生産された電力はグロスで1,735,579キロトン相当の電力(20,185TWh)であった。 発電効率は39%。残りの61%の一部(3%)はコージェネレーションの熱源として利用されたが大半は排出された。 また289,681キロトン相当の電力(発電量の17%)は発電所での内部消費と送電ロスで消費され、最終的に消費者へは1,446,285キロトン相当の電力(16,430TWh)が供給された。 これは発電およびコージェネレーションに投入されたエネルギーの33%であった。IEA 2008 Energy Balance for Worldより
- | 石炭 | 石油 | ガス | 原子力 | 水力 | その他 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
電力 (TWh/年) | 8,263 | 1,111 | 4,301 | 2,731 | 3,288 | 568 | 20,261 |
割合 | 41% | 5% | 21% | 13% | 16% | 3% | 100% |
2008年の主要国の電力源
以下の表にリストした30ヶ国は人口がトップ20位か、GDPが20位以内の国と、参考にサウジアラビアを含めた。 CIA World Factbook 2009より
これら30ヶ国の合計は対全世界比、人口で77%、GDPで84%、消費電力で83%であり、各指標の30ヶ国の平均値は全世界の平均値と近似している。
国名 | 化石燃料 | 原子力 | 順位 | 再生可能 | バイオマス 他 | 合計 | 順位 | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
石炭 | 石油 | ガス | 小計 | 順位 | 水力 | 地熱 | 太陽光 | 太陽熱 | 風力 | 潮汐 | 小計 | 順位 | バイオ マス |
廃棄物 | その他 | 小計 | 順位 | |||||
全世界 | 8,263 | 1,111 | 4,301 | 13,675 | - | 2,731 | - | 3,288 | 65 | 12 | 0.9 | 219 | 0.5 | 3,584 | - | 198 | 69 | 4 | 271 | - | 20,261 | - |
率 | 41% | 5.5% | 21% | 67% | - | 13% | - | 16% | 0.3% | 0.06% | 0.004% | 1.1% | 0.003% | 18% | - | 1.0% | 0.3% | 0.02% | 1.3% | - | 100% | - |
中国 | 2,733 | 23 | 31 | 2,788 | 2 | 68 | 8 | 585 | - | 0.2 | - | 13 | - | 598 | 1 | 2.4 | - | - | 2.4 | 14 | 3,457 | 2 |
インド | 569 | 34 | 82 | 685 | 6 | 15 | 12 | 114 | - | 0.02 | - | 14 | - | 128 | 6 | 2.0 | - | - | 2.0 | 16 | 830 | 5 |
アメリカ合衆国 | 2,133 | 58 | 911 | 3,101 | 1 | 838 | 1 | 282 | 17 | 1.6 | 0.88 | 56 | - | 357 | 4 | 50 | 22 | 0.8 | 73 | 1 | 4,369 | 1 |
インドネシア | 61 | 43 | 25 | 130 | 19 | - | - | 12 | 8.3 | - | - | - | - | 20 | 17 | - | - | - | - | - | 149 | 20 |
ブラジル | 13 | 18 | 29 | 59 | 23 | 14 | 13 | 370 | - | - | - | 0.6 | - | 370 | 3 | 20 | - | 0.2 | 20 | 4 | 463 | 9 |
パキスタン | 0.1 | 32 | 30 | 62 | 22 | 1.6 | 16 | 28 | - | - | - | - | - | 28 | 14 | - | - | - | - | - | 92 | 24 |
バングラデシュ | 0.6 | 1.7 | 31 | 33 | 27 | - | - | 1.5 | - | - | - | - | - | 1.5 | 29 | - | - | - | - | - | 35 | 27 |
ナイジェリア | - | 3.1 | 12 | 15 | 28 | - | - | 5.7 | - | - | - | - | - | 5.7 | 25 | - | - | - | - | - | 21 | 28 |
ロシア | 197 | 16 | 495 | 708 | 4 | 163 | 4 | 167 | 0.5 | - | - | 0.01 | - | 167 | 5 | 0.02 | 2.5 | - | 2.5 | 13 | 1,040 | 4 |
日本 | 288 | 139 | 283 | 711 | 3 | 258 | 3 | 83 | 2.8 | 2.3 | - | 2.6 | - | 91 | 7 | 15 | 7.3 | - | 22 | 3 | 1,082 | 3 |
メキシコ | 21 | 49 | 131 | 202 | 13 | 9.8 | 14 | 39 | 7.1 | 0.01 | - | 0.3 | - | 47 | 12 | 0.8 | - | - | 0.8 | 17 | 259 | 14 |
フィリピン | 16 | 4.9 | 20 | 40 | 26 | - | - | 9.8 | 11 | 0.001 | - | 0.1 | - | 21 | 16 | - | - | - | - | - | 61 | 26 |
ベトナム | 15 | 1.6 | 30 | 47 | 25 | - | - | 26 | - | - | - | - | - | 26 | 15 | - | - | - | - | - | 73 | 25 |
エチオピア | - | 0.5 | - | 0.5 | 29 | - | - | 3.3 | 0.01 | - | - | - | - | 3.3 | 28 | - | - | - | - | - | 3.8 | 30 |
エジプト | - | 26 | 90 | 115 | 20 | - | - | 15 | - | - | - | 0.9 | - | 16 | 20 | - | - | - | - | - | 131 | 22 |
ドイツ | 291 | 9.2 | 88 | 388 | 6 | 148 | 6 | 27 | 0.02 | 4.4 | - | 41 | - | 72 | 9 | 20 | 9.4 | - | 29 | 2 | 637 | 7 |
トルコ | 58 | 7.5 | 99 | 164 | 16 | - | - | 33 | 0.2 | - | - | 0.85 | - | 34 | 13 | 0.1 | 0.1 | - | 0.2 | 19 | 198 | 19 |
コンゴ民主共和国 | - | 0.02 | 0.03 | 0.05 | 30 | - | - | 7.5 | - | - | - | - | - | 7.5 | 22 | - | - | - | - | - | 7.5 | 29 |
イラン | 0.4 | 36 | 173 | 209 | 11 | - | - | 5.0 | - | - | - | 0.2 | - | 5.2 | 26 | - | - | - | - | - | 215 | 17 |
タイ | 32 | 1.7 | 102 | 135 | 18 | - | - | 7.1 | 0.002 | 0.003 | - | - | - | 7.1 | 23 | 4.8 | - | - | 4.8 | 10 | 147 | 21 |
フランス | 27 | 5.8 | 22 | 55 | 24 | 439 | 2 | 68 | - | 0.04 | - | 5.7 | 0.5 | 75 | 8 | 2.1 | 3.8 | - | 5.9 | 9 | 575 | 8 |
イギリス | 127 | 6.1 | 177 | 310 | 7 | 52 | 10 | 9.3 | - | 0.02 | - | 7.1 | - | 16 | 18 | 8.1 | 2.9 | - | 11 | 5 | 389 | 11 |
イタリア | 49 | 31 | 173 | 253 | 9 | - | - | 47 | 5.5 | 0.2 | - | 4.9 | - | 58 | 11 | 4.4 | 3.3 | 0.9 | 8.6 | 6 | 319 | 12 |
韓国 | 192 | 15 | 81 | 288 | 8 | 151 | 5 | 5.6 | - | 0.3 | - | 0.4 | - | 6.3 | 24 | 0.5 | 0.2 | 0.1 | 0.7 | 18 | 446 | 10 |
スペイン | 50 | 18 | 122 | 190 | 14 | 59 | 9 | 26 | - | 2.6 | 0.02 | 32 | - | 61 | 10 | 2.5 | 1.6 | 0.3 | 4.3 | 11 | 314 | 13 |
カナダ | 112 | 9.8 | 41 | 162 | 17 | 94 | 7 | 383 | - | 0.03 | - | 3.8 | 0.03 | 386 | 2 | 8.3 | 0.2 | - | 8.5 | 7 | 651 | 6 |
サウジアラビア | - | 116 | 88 | 204 | 12 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | 204 | 18 |
台湾 | 125 | 14 | 46 | 186 | 15 | 41 | 11 | 7.8 | - | 0.004 | - | 0.6 | - | 8.4 | 21 | 0.5 | 3.0 | - | 3.5 | 12 | 238 | 16 |
オーストラリア | 198 | 2.8 | 39 | 239 | 10 | - | - | 12 | - | 0.2 | 0.004 | 3.9 | - | 16 | 19 | 2.2 | - | - | 2.2 | 15 | 257 | 15 |
オランダ | 27 | 2.1 | 63 | 92 | 21 | 4.2 | 15 | 0.1 | - | 0.04 | - | 4.3 | - | 4.4 | 27 | 3.7 | 2.9 | 0.1 | 6.8 | 8 | 108 | 23 |
国名 | 石炭 | 石油 | ガス | 小計 | 順位 | 原子力 | 順位 | 水力 | 地熱 | 太陽光 | 太陽熱 | 風力 | 潮汐 | 小計 | 順位 | バイオ マス |
廃棄物 | その他 | 小計 | 順位 | 合計 | 順位 |
発電する生物
生物は細胞膜の性質として膜電位を持つため、すべての生物はわずかながら電気を作っている。しかし一部にはそれを方向をそろえて作り出すことで、より高い電圧を生み出すものがある。
この節の加筆が望まれています。 |