放送

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放送(ほうそう)とは、音声映像文字などの情報電気通信技術を用いて一方的かつ同時に不特定多数(大衆)に向けて送信することである。

  1. 広義には公衆に向けて送信される音声等の全て
  2. 狭義には無線・有線によるもの
  • 広義には「通信」に含まれるが、狭義には通信(特定の受信対象者への送信)に含まない対概念である。

ここでは2について詳述する。放送を行う主体とその機器等を合わせて放送局(ほうそうきょく)と呼ぶ。

法令に基づく放送

法令による区分

日本では根拠となる法律により以下のように区分される。一般的に「放送」という場合、放送法に基づく放送を指す。

放送法による区分
  • 放送 - 公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信(法第2条第1号)
    • 基幹放送 - 電波法の規定により放送をする無線局に専ら又は優先的に割り当てられるものとされた周波数電波を使用する放送(法第2条第2号)
      • 衛星基幹放送 - 人工衛星放送局を用いて行われる基幹放送(法第2条第13号)
      • 移動受信用地上基幹放送 - 自動車その他陸上を移動するものに設置して使用し、又は携帯して使用するための受信設備により受信される事を目的とする基幹放送であつて、衛星基幹放送以外のもの(法第2条第14号)
      • 地上基幹放送 - 基幹放送であつて、衛星基幹放送及び移動受信用地上基幹放送以外のもの(法第2条第15号)
    • 一般放送 - 基幹放送以外の放送(法第2条第3号)
      • 衛星一般放送 - 人工衛星局、衛星基幹放送試験局、及び衛星基幹放送を行う実用化試験局を用いて行われる一般放送(法施行規則第2条第3号)
      • 有線一般放送 - 有線電気通信を用いて行われる一般放送(法施行規則第2条第4号)
        • 有線テレビジョン放送 - テレビジョンによる有線一般放送(法施行規則第2条第5号)
        • (有線テレビジョン放送以外の有線一般放送 - 定義条文なし)
      • 地上一般放送 - 一般放送であつて、衛星一般放送及び有線一般放送以外のもの(法施行規則第2条第4号の2)
著作権法による区分
  • 放送 - 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信(法第2条第8号)
  • 有線放送 - 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信(法第2条第9号の2)

放送の地位

新聞雑誌などの他のメディアと比較して、放送には特殊な位置づけが与えられている。その理由の1つは「電波の有限性(利用出来る電波の周波数域は限られている)」というものがあげられる。

また、放送は音声(テレビであれば映像も含まれる)で情報を伝えるメディアであり、生放送・生中継が出来ることから即効性もある。それゆえ、放送は他のメディアに比較し国民の思想・世論・人格形成などに与える影響が特に強いと考えられている。そこで、放送の中立性をはじめとして青少年の健全育成に配慮し、公共の福祉の為にこれを活用する必要があるとされる。

そういった理由から、現在日本における放送事業は放送法により規制され総務省(かつては郵政省)によって周波数の割り当てを受ける免許事業(許認可事項)であり、勝手に放送事業を行ってはならないとされている。ちなみにアメリカでは届け出制。但し最近では、放送技術や受・送信機技術の向上、衛星放送ケーブルテレビの普及等により、「電波の有限性」が規制根拠たりうるのかを疑問視する声もある。

事業者の区分

日本において国営放送は存在しないが、米軍の運用によるAFN(日本の管轄外)がある。公共放送には日本放送協会 (NHK)と放送大学学園が相当する。

放送系

  • 放送系 - 同一の放送番組の放送を同時に行うことのできる放送局の総体 (放送法第2条の2第2項第3号)
    • 親局 - 放送対象地域ごとの放送系のうち最も中心的な機能を果たす放送局
    • 中継局 - 親局以外の放送局(コールサインがある「放送支局」とされる子局もある)

放送対象地域

同一の放送番組の基幹放送を同時に受信できることが相当と認められる一定の区域(放送法第91条第2項第2号)。基幹放送普及計画(昭和63年郵政省告示第660号)により放送系毎に定められる。

放送法第92条に於いて、「特定基幹放送事業者及び基幹放送局提供事業者は、その基幹放送局を用いて行う基幹放送に係る放送対象地域において、当該放送があまねく受信できるように努めるものとする」と規定されている。 飛地、地形上の制約、物理的制約その他によりこの規定を達成していない主な放送事業者は次の通り(† は平成新局

  • テレビ北海道†(アナログ放送では帯広・釧路・網走エリアの全域と旭川エリアの一部地域おいて視聴不可であった。デジタル放送では2011年8月26日開局した釧路送信所と平取町にある振内中継局を皮切りにアナログ未開局地域におけるデジタル放送でのカバー拡大を順次行なっているが、現在でも旭川・帯広・釧路・網走エリアの各一部地域がデジタル放送でも未だに視聴不可となっている。開局時期が未定となっているアナログ未開局地域も順次設置する方針を打ち出している。)
  • FM NORTH WAVE†(網走エリア全域と札幌・函館・室蘭・旭川・帯広・釧路エリアの各一部地域で聴取不可。なおradikoでの再配信は行なっていない。)
  • さくらんぼテレビ†(アナログ放送では山間部の多くの地域において視聴不可だったが、デジタル放送では2010年までに山間部の一部地域を除き、県内全域で視聴可能となった。)
  • ふくしまFM†(会津地方西部で聴取不可。2012年3月31日まではradikoにより聴取可能だった)
  • TBSラジオ文化放送ニッポン放送NHK東京第1第2FMの各ラジオ放送、TOKYO FM小笠原諸島で聴取不可)
    • このうち、NHKラジオ第1放送とTOKYO FMについては現在既設の小笠原村営光ファイバーケーブルを使用した防災放送受信機により聴くことができる。なお、下記のJ-WAVEを含めた民放各局はradikoにより聴取が可能であり、NHK(AM・FM)も2011年9月1日開始の「NHKネットラジオ らじる★らじる」により聴取可能となっている。
  • J-WAVE伊豆大島を除く東京都島嶼部で聴取不可だが、radikoにより聴取が可能)
  • SBCラジオ木曽地域の一部で聴取不可だが、radikoにより聴取可能。内、一部地域はCBCラジオ東海ラジオでカバー)
  • MBSラジオABCラジオラジオ大阪北近畿紀伊半島で聴取不可、ただし夜間は聴取でき、地元局も放送している番組は聴取できるため、不便になるようなことは少ない。ただし、福知山等はNHKの中継局がある関係でABCラジオは終日聴取不可。なお、これらの地域でもradikoにより聴取が可能。)
  • BSSラジオ山陰両県の山間部の一部で聴取不可だが、radikoにより聴取が可能。内、一部地域はRCCラジオでカバー)
  • あいテレビ†、愛媛朝日テレビ†(アナログ放送では山間部の多くの地域において視聴不可。デジタル放送では新局で開局したところもあるものの、未だに視聴不可の地域も残されている)
  • 高知さんさんテレビ†(アナログ放送では山間部の多くの地域において視聴不可だったが、デジタル放送では2010年までにごく一部の地域を除いて県内全域で視聴可能となった。)
  • FM Nagasaki長崎市東部・西海市対馬市壱岐市五島市などで聴取不可。これらの地域でもradikoにより聴取が可能。)
  • 大分朝日放送†(アナログ放送では山間部の多くの地域において視聴不可。デジタル放送では新局で開局したところもあるものの、未だに視聴不可の地域も残されている)
  • ミューFM†(薩南諸島で聴取不可。radikoでの再配信は行なっていない。)
  • NHK沖縄放送局(ラジオ第2・FM 大東諸島で聴取不可)
    • これまで聴取困難とされていたNHK沖縄放送局〈ラジオ第1のみ〉、琉球放送ラジオ〈RBCiラジオ〉、ラジオ沖縄についてはFM波による中継局が2007年4月1日に開局しこの困難も解消された。また、NHKラジオ第2・FMについてはラジオ第1とともに2011年9月1日に開始した「NHKネットラジオ らじる★らじる」によりこの困難は解消された(但し、関東地方の放送内容となるため本来の九州・沖縄ブロックおよび沖縄県域のローカル放送は聴取できない)。
  • FM OKINAWA先島諸島大東諸島で聴取不可。)

など、平成新局の殆ど(主にアナログテレビ放送)が規定を達成できていない。また、平成新局は資金面が乏しいことから2006年以降の地上デジタル放送の中継局整備であまり多く設置することが出来ず、CS再送信やIP放送に任せてしまおうと検討する放送局があったが、総務省や地元自治体などの支援(建設費用の一部を助成すること)によりアナログ未開局地域を含めて先発局と同等の数で設置が進められてきている。逆に放送対象地域外に電波が飛んでいる場合がある(スピルオーバー現象。IP放送の場合方式によれば全国からの受信を可能にしてしまうおそれがある)。デジタル放送の電界強度次第ではアナログでは難視聴状態でもデジタルでは鮮明に受信できる可能性も地域によって出てくる。なお、ラジオ(AM/FM・短波)放送については上記以外のFM局でも山間部などの辺境地の多くは難聴や視聴不可となる地域も多い。AMの場合、送信所・中継局の設置に波長の関係から送信鉄塔自体が高くなり、その高い鉄塔を支えるためのワイヤー設置等で広大な土地が必要とする関係から、中継局を多く設置できず、民放を中心に放送対象地域全域をカバー出来ていないケースが多く、一方で高出力局を中心にスピルオーバーが起こっている既存の親局・中継局が多いことから、既存の親局・中継局の増力はスピルオーバーをなお一層拡大させる問題があるため、増力を実施できるケースは殆ど無いのが実情である。

放送区域

一の基幹放送局の放送に係る区域。一般的にいえば、標準の受信設備で放送を良好に受信できると想定される区域(強・中電界地域)のことであり、地上波電界強度により機械的に定まる。これらは総務省令「基幹放送局の開設の根本的基準」(昭和25年12月5日電波監理委員会規則第21号)第2条第1項第15号で規定されている。放送対象地域が放送系毎に定められるのに対し、放送区域は無線局(送信所)毎に定められる。例えば地上アナログテレビジョン放送の場合、地上4メートルの高さにおいて電界強度が毎メートル3ミリボルト(3mV/m)、言い換えれば70dBu以上である区域、地上デジタルテレビジョン放送の場合、地上10メートルの高さにおいて地上波電界強度が毎メートル1ミリボルト(1mV/m)、言い換えれば60dBu以上である区域(放送エリアのめやすのエリア内)が放送区域である。これは、UHFテレビ放送の場合アナログ放送は地上4メートルの高さ、デジタル放送は地上10メートルの高さで14〜20素子程度のUHF八木・宇田アンテナを設置した場合の受信できる範囲に相当する。移動体端末で1セグメント放送受信の場合、地上10メートル未満の高さでの受信になってしまうため、放送区域内でも受信時に電界強度が弱い場合は受信できなく、実際にはエリアは広いことが多いため逆に放送区域外でも環境によっては受信が容易な場合も多い。地上波のFM放送・テレビ放送の場合、パラスタックアンテナ(大型でアンテナの設置・維持管理が困難である欠点があったが、最近は設置・維持管理を容易にしようと小型で遠距離受信可能なアンテナ(マスプロ電工の「LS14TMH」、DXアンテナの「UBL-62DA」、八木アンテナの「US-LD14CR」など)が発売されている)をアナログ放送は地上4メートルを超える高さ、デジタル放送は地上10メートルを超える高さに設置することによって放送区域外(弱電界地域)でも良好に受信できる場合がある。場合によってはアンテナと受信機の間に受信ブースターを取り付ける。

免許

放送局(放送試験局、放送衛星局、放送試験衛星局及び放送を行う実用化試験局(電気通信業務を行うことを目的とするものを除く)を含む)の免許は無線局免許手続規則(昭和25年電波監理委員会規則第15号)に基づき、以下の区分ごとに行われる。

放送事業者等の外資規制

放送が影響力の大きいメディアであることをかんがみ、基幹放送事業者認定放送持株会社並びに基幹放送局提供事業者への外資規制が設けられている。

  • 特定地上基幹放送事業者 - 外国人が業務を執行する役員に就任すること及び5分の1以上の議決権を保有することを制限(電波法第5条第4項)。
  • 認定基幹放送事業者 - 外国人が業務を執行する役員に就任することを制限。認定地上基幹放送事業者にあっては、加えて5分の1以上の議決権を保有することを制限(放送法第93条第1項第6号)。
  • 認定放送持株会社 - 外国人が業務を執行する役員に就任すること及び5分の1以上の議決権を保有することを制限(放送法第159条第2項第5号)
  • 基幹放送局提供事業者 - 外国人が代表者に就任すること、役員のうち3分の1以上を占めること及び3分の1以上の議決権を保有することを制限(電波法第5条第1項、通常の無線局と同じ規制)。

これに抵触した特定地上基幹放送事業者あるいは基幹放送局提供事業者に対して、総務大臣は改善命令や電波法第75条第1項に基づく無線局免許の取消しの処分を行わなければならない。但し無線局免許の残存期間中はその状況を勘案し、免許を取消さないことができる(電波法第75条第2項)ため、抵触しても必ずしも取消しになるとは限らない(当然ながら、その状況下での免許更新はできない)。

同様に、これに抵触した認定基幹放送事業者及び認定放送持株会社に対しては、総務大臣はその認定を取消すことができる(放送法第104条、第166条第1項第1号)としている。

これらを防ぐための防衛措置として、外国人からの株式の名義書換請求を拒否することを認めている(放送法第116条、第125条、第161条)。

なお一般放送事業者に関してはこのような規定がなく、基幹放送事業を兼業している、あるいは無線局免許を受けている場合を除き、外資支配を理由とした事業者登録の抹消、若しくは業務の停止処分を受けることはない。

「放送」と「放映」の違い

NHK放送文化研究所の見解[1]によると、「放映」はテレビ放送を指す場合と映画を放送する場合とがあり、その範囲がはっきりせず、大抵の場合は「テレビで放送する」という言い方で表現できる。このため、放送では原則として「放送」を使い「放映」は使わないとのことである。

放送法令適用外の放送

ビル内、事業所内などに備えつけられたスピーカーに、有線、場合によっては無線の通信設備により、一斉送信をおこない、連絡や呼び出しなどに使われる。これらも放送法においては一般放送の定義に含まれるが、微弱電力無線通信設備ワイヤレスマイクの一部等)、単一の構内に完結する自営有線電気通信設備(構内放送)やこれに類似する車両・船舶・航空機内の有線電気通信設備(車内放送等)、引込端子数が501未満の有線電気通信設備(小規模有線テレビジョン放送)、引込端子数が501以上の有線ラジオ放送設備を用いて行う放送は、原則として放送法の適用除外となり、無線局免許申請や一般有線放送の登録・届出手続を要しない。

但し、有料放送業務や協会放送受信契約締結義務など、放送法またはそれに伴う政省令や技術基準において「除外の除外」条項を設けている場合や、有線電気通信法における有線電気通信設備、消防法における非常用放送設備などの他法令による規制あるいは基準が設けられている事がある点に注意が必要。また無線局免許を要する一般放送のうち、受信障害対策中継放送についても、これとほぼ同様に扱われている。

なお在日米軍による無線放送(AFN)は、日米安全保障条約に基づき、日本の法令の対象としていない。

校内放送

小学校、中学校、高等学校などの学校には、このための設備が整えられている。児童、生徒や教員がこれを使い、全校生徒あるいは特定の生徒に対し連絡をしたり呼び出しをしたりする。これを校内放送と言う。児童、生徒の委員会活動として一般的に放送委員会が設けられていて、これに所属する児童、生徒を放送委員という。放送委員は、朝礼の時に教員がしゃべるマイクロフォンを校庭等に流れるようにしたり、昼休みにいわゆるお昼の放送をしたり、下校の時刻を知らせる放送を行ったりする。

関連項目

コンテンツ

放送方式など

電波

災害関連

衛星・デジタル関連

有線系

マスコミ・放送倫理

制作関連

その他

脚注

  1. ^ NHK放送文化研究所」 NHKオンライン、2000年10月1日
  2. ^ 博士も知らないニッポンのウラ』 30 「超天才Dr.苫米地英人の「洗脳」秘録 苫米地英人」