デンプン

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デンプン澱粉Starch)とは、分子式C6H10O5n炭水化物多糖類)で、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子である。構成単位であるグルコースとは異なる性質を示す。種子球根などに多く含まれている。

高等植物細胞において認められるデンプンの結晶(澱粉粒)やそれを取り出して集めたものも、一般にデンプンと呼ばれる。澱粉粒の形状や性質(特に糊化特性)は起源となった植物の種類によりかなり異なる。トウモロコシから取り出されたものを特にコーンスターチと呼ぶ。

分子の構造

デンプンはその構造によってアミロースアミロペクチンに分けられる。アミロースは直状の分子で、分子量が比較的小さい。アミロペクチンは枝分かれの多い分子で、分子量が比較的大きい。アミロースとアミロペクチンの性質は異なるが、デンプンの中には両者が共存している。デンプンの直鎖部分は、グルコースがα1-4結合で連なったもので、分岐は直鎖の途中からグルコースのα1-6結合による。アミロースはほとんど分岐を持たないが、アミロペクチンは、平均でグルコース残基約25個に1個の割合でα1-6結合による分枝構造をもつ(直鎖部分の長さは18~24残基、分岐間は5~8残基の間隔がある)。なお、動物における貯蔵多糖として知られるグリコーゲンはアミロペクチンよりもはるかに分岐が多く、3残基に一回の分岐(直鎖部分の長さは12~18残基、分岐の先がさらに分岐し、網目構造をとる)となり、アミロースやアミロペクチンとは区別される。トウモロコシの種子などでもこのグリコーゲンの顆粒が存在する。


α-グルコース分子が直鎖状に重合している部分は、水素結合によりα-グルコース6個で約1巻きのラセン構造となっている。また、ラセン構造同士も相互に水素結合を介して平行に並び、結晶構造をとる。分子は二重螺旋状態での結晶と、一重螺旋状態での結晶を作りうる。まず二重螺旋状態の結晶には、お互いのグルコース残基上の水酸基同士で直接水素結合を形成するタイプ(A型。コーンスターチなどの穀類由来のものがこの形)、間に水分子一層をはさむタイプ(B型と呼ぶ。馬鈴薯などの根茎・球根由来のものがこの型)と、両者の混合したタイプ(C型。根由来のもの)がある。また一重螺旋状態の結晶はV型と呼ばれ、天然ではデンプン顆粒に含まれる油脂成分がアミロースの一重螺旋のなかに包接された、包接錯体として存在している。

物理的性質

  • アミロース・アミロペクチンともに、白色の粒粉状物質で、無味・無臭。
  • アミロースは熱水に溶けるが、アミロペクチンは溶けない。
  • 天然の結晶状態にある澱粉をβデンプンと呼び、
  • 澱粉中の糖鎖間の水素結合が破壊され糖鎖が自由になった状態の澱粉をαデンプンと呼ぶ。

糊化

澱粉を水中に懸濁し加熱すると、澱粉粒は吸水して次第に膨張する。加熱を続けると最終的には粒子が崩壊し、溶解する。この現象を糊化という。このとき、澱粉懸濁液は白濁した状態から次第に透明になり、急激に粘度を増す。粒子が最大限吸水した時粘度が最大となり、粒子の崩壊により粘度は低下する。

澱粉の糊化は、結晶構造をとっている澱粉分子の隙間に水分子が入り込むことでその構造が緩み、各枝が水中に広がることによって起こる。このとき澱粉が溶解しているように見えるが、前述したようにアミロペクチンは溶解しているわけではない。

老化

糊化した澱粉の溶液を冷却すると、糊液は次第に白濁し、水を遊離して不溶の状態となる。これを老化と呼ぶ。

澱粉糊液の老化は、水中に分散した澱粉分子が再び結晶化することにより起こる。ただし、完全にもとの状態に戻るわけではない。

これが澱粉を原料に含むパンなどの食品が、時間を経ると硬くなる主要な原因といえる。これを防ぐ方法として、トレハロースマルトースなどの糖類が使用されている。

性質の応用

常温においても高pH水酸化ナトリウム溶液によって澱粉は糊化する。これは工業用の糊としてダンボールや紙管、壁紙の接着に用いられる。

食品業界においては、糊化はα化(アルファ化)と呼ばれ、αデンプンの状態から凍結と乾燥を繰り返すことで製造できる、いわゆる「お湯で戻るインスタント食品」が多く存在する。

日本でも長野県の郷土料理で凍り蕎麦などの保存食が古くから伝わり、十勝新津製麺が販売するインスタント麺の製造工程でもこの方法が採用されている。 また、炊いた米を凍結乾燥することでアルファ化米などの製品が考案、販売されている。 また

化学的性質

ヨウ素デンプン反応

デンプン水溶液にヨウ素溶液(ヨウ化カリウム溶液)を加えると、デンプン分子のラセン構造の長さによって青色~赤色を呈する鋭敏な化学反応。この反応は、ラセン構造の内部にヨウ素分子が入り込むことに由来し、鋭敏な反応である。水溶液を加熱するとラセン構造からヨウ素分子が外れるため、呈色は消える。

直鎖の長さと呈色の関係
鎖長(グルコース残基) 対応するラセン長 呈色
12 2 無色
12~15 2 褐色
20~30 3~5
35~40 6~7
45 9

加水分解

デンプン水溶液に希硫酸を加えて加熱すると、デンプンはデキストリンマルトースを経てグルコースまで分解される。

デンプンの消化

ヒトがデンプンを食べるとまず、唾液中の消化酵素アミラーゼ(唾液アミラーゼ;プチアリン)により、アミロースとアミロペクチンのα1-4結合が不規則に切断され、デキストリンマルトース(麦芽糖)に分解されていく。デンプンを含む食品を噛み続けると甘味が感じられるようになるのはこのためである。

唾液アミラーゼの作用は食べ物がに送られた後もしばらく続くが、強酸性の胃液によってアミラーゼは次第に失活する。

胃の内容物が十二指腸に送られると、膵臓から分泌された膵液によって中和される。そして膵液に含まれるアミラーゼ(膵アミラーゼ;アミロプシン)によりデンプンはマルトースにまで分解される。

マルトースはさらに膵液と腸液に含まれるα-グルコシダーゼ(マルターゼ)により最終的にグルコース(ブドウ糖)に分解され、小腸で吸収される。

デンプンの製造

植物が細胞内に貯蔵している澱粉粒を取り出す。基本的には植物細胞の細胞壁を破壊して取り出すが、原料とする植物の種類や用途により蛋白質あるいは脂質の除去が必要となることもある。
原料となる植物としては、ジャガイモコムギトウモロコシサツマイモコメキャッサバクズカタクリ緑豆など様々な物が用いられている。
利用される植物の部位は、種子および果実がある。根および茎からの澱粉粒の抽出は比較的容易だが、種子・果実(特に種子)からの抽出は、蛋白質や脂質の分離操作を必要とすることが多い。

原料となる植物とそのデンプンの性質

トウモロコシ澱粉

  • いわゆる、コーンスターチ。
  • アミロース含量25%
  • 粒径2-30µm、平均粒径15µmで小さめ、非常に細かく角張っている。
  • 白色度は高く、吸湿性は少なく、灰分は最も少ない。一方、蛋白質、脂質の含量が多め。糖化原料として多く用いられる。糊化時の粘度は中庸だが安定性が高く、接着力や糊液の浸透性も高いため、化工澱粉原料として用いられる。

ワキシーコーンスターチ(もちトウモロコシ)

  • アミロースをほとんど含まない。
  • 糊化温度は低く、透明なゲルを形成する。

ハイアミロースコーンスターチ(ハイアミローストウモロコシ)

  • アミロース含量60-70%
  • 糊化温度は非常に高い(135℃以上にしないと完全には糊化しない)。

小麦澱粉

  • アミロース含量25%
  • 粒径2-40µm、平均粒径15-40µmからなる大粒と2-10µmからなる小粒からなり、粒子は凸レンズ型。
  • 品質のばらつきが多く、多くの製造所で粒度区分と純度に従って等級を指定している。大粒子区分を精製した特級品は糊化温度が低く、冷却時の粘度が高くなる。他の澱粉と比較して糊化時の粘度はやや低いが、冷却時粘度が高くゲル化能力も高い。糊液の粘度安定性は良好で、老化しにくく離水も少ない。水産練り製品、菓子などで粘調剤として利用されており、一般的には浮き粉と称されている。

米澱粉

  • アミロース含量15-20%
  • 平均粒径2-5µmと市販澱粉中最も小さい。このため製造上歩留まりを下げるのが難しく(60%程度)高価になる。また、粒子は全体的に角張っている。
  • 粒子の形状とその大きさから、微細な凹凸に付着し平滑面とする効果が大きい。米澱粉は工業用としての利用が主で、印画紙用、化粧品用として用いられる。食品の手粉、打ち粉などに用いられ、和菓子用としては、白玉粉として知られる。

豆類(ソラマメ緑豆小豆など)

  • アミロース含量30-35%
  • 粒径25-40µm(そらまめ)
  • 糊化温度がやや高く(80℃)、冷却時に硬いゲルを形成する。食品ではソース、フィリングとして利用される。緑豆春雨はこの硬いゲルの形成を利用したもの。特に細胞澱粉(細胞膜に包まれた状態にある澱粉のこと)は100℃においても糊化しないため、餡として用いられる。

馬鈴薯澱粉

  • アミロース含量20-25%
  • 粒径2-80µm、平均粒径30-40µmと、市販澱粉の中で最大の粒形となっている。
  • いわゆる、片栗粉(本来は、カタクリ地下茎から採取した澱粉を指す言葉であったが、近年市販されている片栗粉と呼ばれるもののほとんどは馬鈴薯澱粉となっている)。澱粉としてはリン酸の含量が多い。
  • 加熱時の糊化温度は低く、膨潤力、溶解力が強い。透明で粘着力が強い糊液が得られる。糊化時の糊液の粘度は非常に高い。ただし、粘度の安定性は乏しい。食塩等の塩類により糊化の状態が大きく変化する。塩の存在下では、糊化が抑制され、糊液も離水しやすくなる。糊化に用いる水の水質、あるいは調味により容易に糊化が抑制されるため、扱いが難しいといわれる。

甘藷澱粉

  • アミロース含量15-20%
  • 粒径2-35µm、平均粒径18-20µm、形状は釣鐘形。
  • 加熱時の糊化温度はやや高く、完全に糊化する。
  • 液化酵素(α-アミラーゼ)により極めて溶けやすいため、ほとんどが糖化原料となる。ゲル形成時に独特の食感を持つため、食品用として、春雨葛切り、自然乾燥品がわらびもちの原料となる。また、ラムネ菓子の原料としても用いられている。

タピオカ澱粉(キャッサバ

  • アミロース含量15%
  • 粒径2-40µmで粒径分布は広く、形状は多角形または半球形。
  • 加熱時の糊化温度は低く(59℃)、加熱により容易に吸水膨潤し、80℃以下で完全に糊化する。糊液の透明度が高く、粘度も高い。ゲル化しにくい。このため、食品の増粘剤として優れている。半糊化乾燥の粒状品がタピオカパールとして流通している。

デンプンの利用

非常に多岐にわたる。

また、利用の形態も様々な物がある。