「心肺蘇生法」の版間の差分
en:Cardiopulmonary_resuscitation&oldid=1024136507 から |
en:Cardiopulmonary_resuscitation&oldid=1024136507 から |
||
25行目: | 25行目: | ||
人間の脳は2分以内に心肺蘇生が開始された場合の救命率は90%程度であるが、4分では50%、5分では25%程度となる。{{main|[[カーラーの救命曲線]]}}したがって、救急隊到着までの数分間(5~6分)に、「現場に居合わせた人」(「[[バイスタンダー]]」「市民救助者」と呼ぶ)によるCPRが行われるかどうかが救命率に大きく関わる([[救命の連鎖]])。 |
人間の脳は2分以内に心肺蘇生が開始された場合の救命率は90%程度であるが、4分では50%、5分では25%程度となる。{{main|[[カーラーの救命曲線]]}}したがって、救急隊到着までの数分間(5~6分)に、「現場に居合わせた人」(「[[バイスタンダー]]」「市民救助者」と呼ぶ)によるCPRが行われるかどうかが救命率に大きく関わる([[救命の連鎖]])。 |
||
=== 有効性 === |
|||
{| class="wikitable" style = "text-align:center; margin:1em auto; font-size:95%" |
|||
|+ class="nowrap" | 成人におけるCPR後のアウトカム |
|||
|- |
|||
!rowspan=2| 年 |
|||
!米国における病院内CPR |
|||
!colspan="4"|米国における病院外でのCPR<ref name="mycares-reports">{{Cite web |url=https://mycares.net/sitepages/reports.jsp |title=National Reports by Year « MyCares |website=mycares.net |access-date=2019-06-26}}</ref> |
|||
|- |
|||
!トータル生還率 (出典) |
|||
![[バイスタンダー]]による<br>AEDを使用したCPR |
|||
!バイスタンダーによるCPR<br>(AED有無を問わない) |
|||
!CPR実施は<br>目撃されていない |
|||
!トータル生還率 |
|||
|- |
|||
|colspan="6" style="background:#ccc" |'''心拍再開に至った割合''' |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2018||||''49%''||''41.9%''||20.6%||''31.3%'' |
|||
|- |
|||
|colspan="6" style="background:#ccc" |'''退院生還率''' |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2018||||35%||16.2%||4.4%||10.4% |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2017||25.6% (p.e381,e390, 2019 AHA)<ref name="aha2019">{{Cite journal |last1=Benjamin Emelia J. |last2=Muntner Paul |last3=Alonso Alvaro |last4=Bittencourt Marcio S. |last5=Callaway Clifton W. |last6=Carson April P. |last7=Chamberlain Alanna M. |last8=Chang Alexander R. |last9=Cheng Susan |date=2019-03-05 |title=Heart Disease and Stroke Statistics—2019 Update: A Report From the American Heart Association |journal=Circulation |volume=139 |issue=10 |pages=e56–e528 |doi=10.1161/CIR.0000000000000659 |pmid=30700139|doi-access=free }}</ref> ||33%||16.4%||4.6%||10.4% |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2016||26.4% (p.e365, 2018 AHA)||32%||17.0%||4.7%||10.8% |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2015||23.8% (p.e471, 2017 AHA)<ref name="aha2017">{{Cite journal |last1=Benjamin |first1=Emelia J. |last2=Blaha |first2=Michael J. |last3=Chiuve |first3=Stephanie E. |last4=Cushman |first4=Mary |last5=Das |first5=Sandeep R. |last6=Deo |first6=Rajat |last7=de Ferranti |first7=Sarah D. |last8=Floyd |first8=James |last9=Fornage |first9=Myriam |date=2017-03-07 |title=Heart Disease and Stroke Statistics—2017 Update: A Report From the American Heart Association |journal=Circulation |language=en |volume=135 |issue=10 |pages=e146–e603 |doi=10.1161/CIR.0000000000000485 |pmid=28122885 |issn=0009-7322|pmc=5408160 }}</ref>||32%||16.7%||4.6%||10.6% |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2014||24.8% (p e270, 2016 AHA)<ref name="aha2016">{{Cite journal |last1=Mozaffarian Dariush |last2=Benjamin Emelia J. |last3=Go Alan S. |last4=Arnett Donna K. |last5=Blaha Michael J. |last6=Cushman Mary |last7=Das Sandeep R. |last8=de Ferranti Sarah |last9=Després Jean-Pierre |date=2016-01-26 |title=Heart Disease and Stroke Statistics—2016 Update |journal=Circulation |volume=133 |issue=4 |pages=e38–e360 |doi=10.1161/CIR.0000000000000350|pmid=26673558 |doi-access=free }}</ref> ||32%||16.7%||4.9%||10.8% |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2013||||||16.8%||4.7%||10.8% |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2012|| |||||||| |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2011||22.7% (p. 499, 2014 AHA)<ref name="aha2014">{{Cite journal |last1=Go |first1=Alan S. |last2=Mozaffarian |first2=Dariush |last3=Roger |first3=Véronique L. |last4=Benjamin |first4=Emelia J. |last5=Berry |first5=Jarett D. |last6=Blaha |first6=Michael J. |last7=Dai |first7=Shifan |last8=Ford |first8=Earl S. |last9=Fox |first9=Caroline S. |date=2014-01-21 |title=Heart Disease and Stroke Statistics—2014 Update: A Report From the American Heart Association |journal=Circulation |language=en |volume=129 |issue=3 |pages=e28–e292 |doi=10.1161/01.cir.0000441139.02102.80 |pmid=24352519 |issn=0009-7322|pmc=5408159 }}</ref> |||||||| |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2010|| |||||||| |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2009||18.6% (p. 12, Girotra supplement)<ref name="girotra-supp">{{Cite journal |last1=Girotra |first1=Saket |last2=Nallamothu |first2=Brahmajee K. |last3=Spertus |first3=John A. |last4=Li |first4=Yan |last5=Krumholz |first5=Harlan M. |last6=Chan |first6=Paul S. |date=2012-11-15 |title=Trends in Survival after In-Hospital Cardiac Arrest-supplement |url= |journal=New England Journal of Medicine |volume=367 |issue=20 |pages=1912–20 |issn=0028-4793 |pmid=23150959|pmc=3517894 |doi=10.1056/NEJMoa1109148 }}</ref>|||||||| |
|||
|- |
|||
|{{rh}}| 2008||19.4% <ref name="girotra-supp"/> |||||||| |
|||
|- |
|||
|} |
|||
== 技法 == |
== 技法 == |
2021年5月28日 (金) 12:23時点における版
Cardiopulmonary resuscitation 心肺蘇生法 | |
---|---|
治療法 | |
トレーニング用のマネキンに心肺蘇生を行っている様子 | |
診療科 | 循環器学 |
ICD-9 | 99.60 |
MeSH | D016887 |
OPS-301 code | 8-771 |
MedlinePlus | 000010 |
心肺蘇生法(しんぱいそせいほう、CardioPulmonary Resuscitation, CPR)は、呼吸が止まり、心臓も動いていない(心肺停止)と見られる人の救命へのチャンスを維持するために行う循環の補助方法である。
CPRにおいては心臓マッサージ[1]を主に行い、余裕があれば気道確保し、呼吸の補助方法である人工呼吸も行う(総務省消防庁資料、『救急蘇生法の指針2015(市民用)』には、「救助者が人工呼吸の訓練を受けており、それを行う技術と意思がある場合」は人工呼吸を行う事とされている。)[2][3]
心肺蘇生法(以下CPRと略)は、特殊な器具や医薬品を用いずに行う一次救命処置(Basic Life Support, BLS)と、BLSのみでは心拍が再開しない場合に、救急車内や病院などで救急救命士や医師が気管挿入や高濃度酸素、薬剤投与も用いて行う二次救命処置(Advanced Life Support, ALS)の範囲がある。またBLSの範囲でも救急車内や病院などで行うCPRと、市民救助者が救急車が来るまでの間に行うCPRは異なる。訓練を受けていない市民救助者と訓練を受けている市民救助者でも一部異なる。
ここでは市民救助者によるBLSの範囲のCPRについて解説する。
CPRの意義
CPRとは脳への酸素供給維持である。
脳自体には酸素を蓄える能力がなく、呼吸が止まってから4~6分で低酸素による不可逆的な状態に陥る。そのため一刻も早く脳に酸素を送る必要がある。
人間の脳は2分以内に心肺蘇生が開始された場合の救命率は90%程度であるが、4分では50%、5分では25%程度となる。
したがって、救急隊到着までの数分間(5~6分)に、「現場に居合わせた人」(「バイスタンダー」「市民救助者」と呼ぶ)によるCPRが行われるかどうかが救命率に大きく関わる(救命の連鎖)。
有効性
年 | 米国における病院内CPR | 米国における病院外でのCPR[4] | |||
---|---|---|---|---|---|
トータル生還率 (出典) | バイスタンダーによる AEDを使用したCPR |
バイスタンダーによるCPR (AED有無を問わない) |
CPR実施は 目撃されていない |
トータル生還率 | |
心拍再開に至った割合 | |||||
2018 | 49% | 41.9% | 20.6% | 31.3% | |
退院生還率 | |||||
2018 | 35% | 16.2% | 4.4% | 10.4% | |
2017 | 25.6% (p.e381,e390, 2019 AHA)[5] | 33% | 16.4% | 4.6% | 10.4% |
2016 | 26.4% (p.e365, 2018 AHA) | 32% | 17.0% | 4.7% | 10.8% |
2015 | 23.8% (p.e471, 2017 AHA)[6] | 32% | 16.7% | 4.6% | 10.6% |
2014 | 24.8% (p e270, 2016 AHA)[7] | 32% | 16.7% | 4.9% | 10.8% |
2013 | 16.8% | 4.7% | 10.8% | ||
2012 | |||||
2011 | 22.7% (p. 499, 2014 AHA)[8] | ||||
2010 | |||||
2009 | 18.6% (p. 12, Girotra supplement)[9] | ||||
2008 | 19.4% [9] |
技法
胸骨圧迫
胸骨圧迫(きょうこつあっぱく)とは、一般に心臓マッサージと云われるものである。
心肺蘇生法の中心を成す対処法で、心停止した人の胸の心臓のあたりを両手で圧迫して血液の循環を促す。 胸骨の下半分、胸の真ん中に手の付け根を置き両手を重ねて、圧迫する。肘を真っ直ぐ伸ばし、100〜120回/分の速さで継続出来る範囲で強く、圧迫を繰り返す。ガイドラインでは「胸が約5cm沈むように圧迫するが、6cmを超えないようにする」とあるが、その場で測れる訳ではないので、継続出来る範囲で「強く」で良い。押したらしっかりと胸を元に戻す。訓練を受けていない救助者は自動体外式除細動器(AED)、または救急隊到着までハンズオンリーCPR[10]、つまり胸骨圧迫だけを続ける。
極力ほかの人を巻き込む。秒単位で12345と数えてもらうだけでもよい。5秒の間に8回以上なら100回/分以上を満たしている(後述)。数えることに応じてもらえれば、胸骨圧迫を代わってもらえる可能性が高い。疲れてきたらまわりの人に1分間だけでも代わってもらう。「強く早く」を維持するためにも交代は必要である。胸骨圧迫を中断する時間を最小限にする。 心肺蘇生の国際ガイドライン(2010年改訂)では、心肺蘇生法の中で胸骨圧迫の迅速な開始と、中断の最小化がもっとも重要視されるようになった。
なお「心臓マッサージ」は外科医が胸を切開し手で直接心臓を揉むという方法であって、胸骨圧迫は心臓マッサージではないという意見もあるが誤解である。胸を切開して行う心肺蘇生法は開胸心(臓)マッサージ、開胸CPRといい、二次救命処置(Advanced Life Support; ALS)に含まれるが、それに対して開胸せずに行う心臓マッサージを閉胸心マッサージということがある。その閉胸心マッサージの中で、医師や看護師、救急隊員以外の一般市民が救急車が来るまでの間に行う一次救命処置(Basic Life Support; BLS)として推奨されている心臓マッサージが、この胸骨圧迫である。
心臓マッサージ機
この節の加筆が望まれています。 |
日本における成人へのCPRの実施例
以下に意識・呼吸ともに無い場合のCPRを行う手順の概略をJRC ガイドライン2015に沿って記す。 CPRは厳密にはAEDを含まないが、実際には不可分であるため、ここではAEDも含めたBLSの範囲で手順を説明する。各手順の詳細は一次救命処置(BLS)を参照されたい。
1. 安全を確認
- 二次災害を防ぐため、まず周囲の安全を確認する。
2. 意識の確認
- 意識の有無を確認する(両手で両肩を叩きながら、相手の耳元で「大丈夫ですか!?」と呼びかける。また、証明書類などから名前がわかっている場合には、「○○さん、大丈夫ですか!?」と呼びかけると、より効果的である)。
3. 応援を呼ぶ
- 119番に通報。訓練を受けていない人は、その場で自分で携帯から119番通報をすれば、何を確認してどうすればよいかのアドバイスが得られる。そのアドバイスの中にAEDの手配、及び以下のCPRのやり方が含まれる。
極力まわりの人を巻き込む。例えばAEDを取りに行ってもらう、119番通報した際に電話を切らずに指示を仰ぐ(電話口で通信指令員に相談する)。
4. 呼吸の確認
- 見た範囲で規則的で正常な呼吸をしているか。呼吸していれば回復体位。判別不能、不自然な呼吸、または10秒以内に確認できなければ「呼吸無し」として扱う。不自然な呼吸、例えばしゃくりあげるようなゆっくりとした不規則な呼吸は「死戦期呼吸」といい、心停止(心室細動)直後数分の間に約半数の人に起きる。これを「呼吸有り」と安心してしまうと大切な救命のチャンスを逃してしまう。呼吸の確認に迷ったらすぐに胸骨圧迫をする。
5. 心臓マッサージ(胸骨圧迫)(Circulation, C)
- 前述。
6. 気道確保(A:Airway)
- 訓練を受けていない市民救助者は行わなくてよい。
- 訓練を受け、自信のある市民救助者の場合は、仰向けに寝かせた状態で片方の手で額を押さえ、もう片方の人差し指と中指で顎を上に持ち上げる(頭部後屈顎先挙上法)ことにより行う。口の中に異物があれば除去する。
7. 人工呼吸(B:Breathing)
- 訓練を受けていない市民救助者は行わなくてよい。
- 訓練を受け、自信のある市民救助者の場合は、鼻を押さえ胸部がふくらむよう息を約1秒吹き込む。この際、感染病防止の観点から専用のポケットマスク等を患者の口に取り付ける[12]。人工呼吸を行う間隔は胸骨圧迫30回毎に2回が目安。ただしこのための胸骨圧迫の中断は10秒以内とする。
8. AEDによる除細動(D:Defibrillation)
- AEDが到着したら使用する。体が濡れていれば拭き取る。それ以外の手順はAEDの音声ガイダンスに従えば良い。公共の場に配備されているAEDは一般の人でも使えるように操作を自動化しており、電気ショックが必要であるかどうかもAEDが心電図を解析し自動的に判断する。
なお、アメリカ心臓協会(AHA)のTVコマーシャル では、一般市民向けにもっと簡略化して「まず救急へ通報、次に胸の真ん中を強く早く押す」、だけを強調している。そして「早く」、つまり胸骨圧迫のテンポについては、ディスコ映画の「サタデー・ナイト・フィーバー」の名曲「ステイン・アライヴ」を推奨している。この曲のテンポは1分間に103回で、思い出しながら押すと約113回/分であったということから採用された。「強く」の程度については触れていない。とっさの場合には深さの検証など出来ないし、CPRの講習で4~5cm(旧ガイドライン)といっても初心者はおおむねそれより弱い。従って「強く」だけ意識してもらえれば良いということである。
ハンズオンリーCPR、すなわち胸骨圧迫だけでも良いとする根拠は、現行のガイドラインが、すべての人に完璧な心肺蘇生法を要求するのではなく、ひとつだけでも正しいことが行えるように普及することを、救命のための重要な理念としているためである。そのことから蘇生の最も重要な鍵とされている絶え間ない胸骨圧迫に焦点を置いた指導をいう。実際の場面では人工呼吸への抵抗感からCPRを躊躇する人が多く、胸骨圧迫だけで良いならCPRの実施率が期待できること。目の前で倒れた人の場合は、倒れて10分程度の救急車が来るまでの時間であれば、絶え間ない胸骨圧迫が行われた場合の救命率が高いというデータがあることなどによる。ただし、呼吸停止から心停止となることが多い小児や溺水などの心停止では、血液中の酸素の枯渇が必発であるため人工呼吸が必要である。
ガイドライン2015での変更点
ポイントは胸骨圧迫を極力早く行うこととその中断を最小にすることである。またすべての救助者が訓練の有無に関わらずCPRを実施することが可能なように手順を分かりやすくしたことである。また119番側では連絡をしてきた者に胸骨圧迫のみのCPRを指導するべきであるとした[13]。手順の主な変更は次の通り。
- 胸骨圧迫の深さが「4~5cm程度」、「少なくとも5cm以上」を経て「5cm以上で6cmを超えない」に。(小児や乳児の場合は胸の厚みの1/3)
- 胸骨圧迫のテンポが「100回/分程度」、「少なくとも100回/分以上」を経て「100回~120回/分」に。
- 胸骨圧迫は『押したらしっかりと胸を元に戻す』が強調された。圧迫と圧迫との間で力を入れたり、もたれかかったりしない。止まってしまった心臓の代わりに血液を循環させるイメージを持ち、適切な圧迫と圧の解除する。
- 胸骨圧迫の中断が10秒を超えないようにすることが強調された。AEDの電極パッドを貼る際も胸骨圧迫を継続する事が望ましいので、心肺蘇生はなるべく複数人で助け合って行うように。
- 呼吸が異常と感じた場合は心停止状態とみなして、ためらわず胸骨圧迫するように改訂された。傷病者を発見したら正常な呼吸かどうか、意識があるかの確認をするが、この時不自然と感じたり、心停止かどうか迷った場合にはすぐにCPR(心肺蘇生法)を開始する。
- 脈の確認はガイドライン2005から不要。医療従事者でも正確ではなくかつ時間を要する。市民救助者には心理的抵抗感も大きい。
- 胸骨圧迫の位置は「胸の真ん中」。「両乳首の真ん中」より即座に判りやすく[14]、判断が容易であるので圧迫開始が早くなる。衣服の上からで良い。
- 人工呼吸の訓練を受けており、それを行う意思がある救助者は、全ての成人心停止傷病者に対して胸骨圧迫と人工呼吸を実施することを提案している。
生還率
重病患者においては、少なくとも10%がCPRにより生還している。米国病院における2001-2010年におけるサンプリング調査によれば、[15]、全体の生還率は19%であり、癌患者においては10%、透析患者では12%であった。
80歳以上となると14%、黒人で15%、介護施設患者で17%、心不全の患者で19%、ICU外の心臓モニタリング患者で25%であった。進行がん患者を対象とした別の研究では、10%の生還率であった[16]。スウェーデンにおける患者を対象とした研究では、CPR後少なくとも30日生存した患者は、70〜79歳では40%、80〜89歳では29%、90歳以上では27%であった[17]。
脚注
- ^ 通常「心臓マッサージ」といわれるものは、正確には「胸骨圧迫」。
- ^ 人工呼吸、省略OK? 変わる心肺蘇生法 京都市消防局が救命講習(産経West 掲載日:2015.4.4。参照日:2018.6.18.)
- ^ 救急蘇生法の指針2015(市民用)(総務省消防庁)
- ^ “National Reports by Year « MyCares”. mycares.net. 2019年6月26日閲覧。
- ^ Benjamin Emelia J.; Muntner Paul; Alonso Alvaro; Bittencourt Marcio S.; Callaway Clifton W.; Carson April P.; Chamberlain Alanna M.; Chang Alexander R. et al. (2019-03-05). “Heart Disease and Stroke Statistics—2019 Update: A Report From the American Heart Association”. Circulation 139 (10): e56–e528. doi:10.1161/CIR.0000000000000659. PMID 30700139.
- ^ Benjamin, Emelia J.; Blaha, Michael J.; Chiuve, Stephanie E.; Cushman, Mary; Das, Sandeep R.; Deo, Rajat; de Ferranti, Sarah D.; Floyd, James et al. (2017-03-07). “Heart Disease and Stroke Statistics—2017 Update: A Report From the American Heart Association” (英語). Circulation 135 (10): e146–e603. doi:10.1161/CIR.0000000000000485. ISSN 0009-7322. PMC 5408160. PMID 28122885 .
- ^ Mozaffarian Dariush; Benjamin Emelia J.; Go Alan S.; Arnett Donna K.; Blaha Michael J.; Cushman Mary; Das Sandeep R.; de Ferranti Sarah et al. (2016-01-26). “Heart Disease and Stroke Statistics—2016 Update”. Circulation 133 (4): e38–e360. doi:10.1161/CIR.0000000000000350. PMID 26673558.
- ^ Go, Alan S.; Mozaffarian, Dariush; Roger, Véronique L.; Benjamin, Emelia J.; Berry, Jarett D.; Blaha, Michael J.; Dai, Shifan; Ford, Earl S. et al. (2014-01-21). “Heart Disease and Stroke Statistics—2014 Update: A Report From the American Heart Association” (英語). Circulation 129 (3): e28–e292. doi:10.1161/01.cir.0000441139.02102.80. ISSN 0009-7322. PMC 5408159. PMID 24352519 .
- ^ a b Girotra, Saket; Nallamothu, Brahmajee K.; Spertus, John A.; Li, Yan; Krumholz, Harlan M.; Chan, Paul S. (2012-11-15). “Trends in Survival after In-Hospital Cardiac Arrest-supplement”. New England Journal of Medicine 367 (20): 1912–20. doi:10.1056/NEJMoa1109148. ISSN 0028-4793. PMC 3517894. PMID 23150959 .
- ^ ハンズオンリーCPRに関するAHA勧告声明を参照
- ^ フェースシールドの紹介
- ^ AEDの中にはたいていは透明ビニールシートでできたフェイスシールドが入っている。ただしこれは直接口を付けることへの心理的抵抗を減らす目的のものであって、吐瀉物などをブロックする効果は無いか、または十分ではない。
- ^ JRC(日本蘇生協議会)には日本赤十字社や消防庁も加わっている。
- ^ 乳頭と乳頭を結んだ線上というのは信頼性に欠けるとする。「胸の真ん中」は誤差が少ない。
- ^ “Hospital variation in survival after in-hospital cardiac arrest” (英語). Journal of the American Heart Association 3 (1): e000400. (January 2014). doi:10.1161/jaha.113.000400. PMC 3959682. PMID 24487717 .
- ^ “Patterns of Resuscitation Care and Survival After In-Hospital Cardiac Arrest in Patients With Advanced Cancer”. Journal of Oncology Practice 13 (10): e821–e830. (October 2017). doi:10.1200/JOP.2016.020404. PMC 5640412. PMID 28763260 .
- ^ Hirlekar, G.; Karlsson, T.; Aune, S.; Ravn-Fischer, A.; Albertsson, P.; Herlitz, J.; Libungan, B. (September 2017). “Survival and neurological outcome in the elderly after in-hospital cardiac arrest”. Resuscitation 118: 101–106. doi:10.1016/j.resuscitation.2017.07.013. ISSN 1873-1570. PMID 28736324.
参考文献
- 『JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版』日本蘇生協議会
関連項目
- 一次救命処置
- 救急医療
- バイスタンダー
- 国際ガイドライン
- 善きサマリア人の法(Good Samaritan law)
- 日本蘇生協議会(JRC)
- スローコード - 蘇生の見込みのない患者に行う形式的な心肺蘇生で医療倫理の面で禁止されている。無駄な蘇生処置だが手は尽くしたという遺族向けのパフォーマンスを show code と言う。
- トリアージ
- 心肺蘇生法の歴史
- 救命救急のABC - 救命処置の優先度、気道(Airway)、呼吸(Breathing) 循環器(Circulation)を並べて一般に周知していた。2010年にCABの優先度となった。
- 指定自動車教習所 - 普通自動車の運転免許証取得時の教習で、心肺蘇生法の実技授業が設けられている。
外部リンク
- 市民のための心肺蘇生 - 日本救急医学会
- 救急蘇生法 - 日本医師会
- AEDで助かる命 - 日本心臓財団
- JRC蘇生ガイドライン2015 - 日本蘇生協議会
- 救急蘇生法の指針2015(市民用) - 厚生労働省
- 成人における心肺蘇生(CPR) - MSDマニュアル
- 乳児および小児における心肺蘇生(CPR) - MSDマニュアル
- 心肺蘇生と救急心血治療のためのガイドラインアップデート2015 - アメリカ心臓協会
- 心肺蘇生と救急心血管治療のための AHA ガイドラインの重点的アップデート 2019 - アメリカ心臓協会
その他、BLSのガイドライン等については一次救命処置の外部リンクを参照